膵臓がんの経過に、皮膚や体内にいる真菌(カビ)の一種が関係しているとする研究結果を東京医科歯科大消化管外科とアメリカの研究機関の共同研究チームが国際科学誌「ガストロエンテロロジー」に発表しました。
関与が疑われるのは真菌の一種「マラセチア・グロボーサ」。体表や体内にいるありふれた真菌で、皮膚の病気との関係は知られていたものの、近年、膵臓がんの増悪との関係についての報告が相次いでいました。実際のがん組織で関連を調べたのは初めてで、抗がん剤治療の際に抗真菌薬を組み合わせるなど、膵臓がん治療の選択肢を広げる可能性があるとしています。
同科の奥野圭祐助教、絹笠祐介教授らとアメリカのシティオブホープナショナルメディカルセンターなどとの共同研究。1998年から2017年にかけて日本の3施設で患者から摘出され、凍結保存されていた膵臓がんの組織180人分をPCR検査にかけ、この真菌の有無と濃度を調べた結果、78人の検体から真菌が見付かりました。
理由はわかっていないものの、陰性例では検査精度を高めても真菌は見付からず、陽性との中間の濃度に当たる検体はありませんでした。男性のほうが、陽性の割合が高くなりました。
78人の陽性例と残る102人の陰性例とでその後の経過を比較したところ、陽性の患者のほうが、手術から3年の全生存率が低くなりました。また、がんが再発せず死亡しなかった人の割合(無再発生存率)も低くなりました。
奥野助教は、「手術後にその後の経過を予測する手掛かりになる可能性が示された。今後、関与のメカニズムの解明が必要だが、これまで日常診療で使用している抗真菌薬が膵臓がん治療の選択肢になり得る」と話しました。
2023年12月12日(火)
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