全国の小学5年生と中学2年生を対象に50メートル走など、8つの項目で体力や運動能力を調べる今年度の国の調査で、男子は新型コロナウイルスの感染拡大以降初めて合計点が前の年度を上回り、女子の低下傾向も、これまでより緩やかになったことがわかりました。 スポーツ庁は、新型コロナによる行動制限が緩和され、体を動かす活動が増えた影響が考えられると分析しています。
国は、平成2008年度から、全国の小学5年生と中学2年生を対象に、50メートル走やボール投げ、反復横とび、上体起こし、握力、立ち幅跳び、長座体前屈などの8つの項目で体力や運動能力を調べており、今年度は約190万人が対象になりました。
この中で、実技8項目の成績を数値化した「体力合計点」の全国平均は、男子が小中学生ともに新型コロナの感染拡大以降、初めて上昇傾向に転じ、「握力」を除く、すべての項目で前の年度を上回りました。
中でも、「立ち幅跳び」は、小学生が1メートル51センチ余りで、前回より3ミリ伸びたほか、中学生が1メートル96センチ余りで、調査開始以来、最もいい成績となりました。
一方、女子の体力合計点は、小学生がほぼ横ばい、中学生は過去最低を更新しましたが、低下傾向はこれまでより緩やかになり、改善の兆しがみられるということです。
このうち、「長座体前屈」は、小中学生ともに前の年度を上回り、小学生が38センチ余りで、前の年度と比べて2・7ミリ伸びて、これまでで最もいい成績となり、中学生が46センチ余りで、過去2番目にいい成績となりました。
全国体力テストの合計点は、男女ともに2019年度から低下が続き、昨年度は調査開始以来、最も低くなっていましたが、新型コロナの感染拡大以降、初めて改善傾向を示す結果となりました。
これについてスポーツ庁は「学校や地域で行動制限が緩和されて、体を動かす活動が増えた影響が考えられる」と分析し、今後は、コロナ禍で減少した運動習慣を生活の中で定着させることが課題だとしています。
調査結果の分析にかかわった、子供のスポーツ学が専門の中京大学の中野貴博教授は、男子と女子では体力合計点の回復の度合いに差があり、中学女子では、前の年度を下回ったことについて「運動に対する気持ちは、男子のほうがポジティブな傾向が強く、思春期の発達を考えても中学校2年生ぐらいの女子は、運動の好き嫌いが分かれ、やらない時間が続くことでちょっと距離を置く傾向がある。コロナ禍を経て、ほかの学年や男子に比べると、その影響が強く残った可能性がある」と指摘しています。
その上で、「運動が得意だという意識が強くない女子でも、競技ベースではないものや、仲間同士でやるものには非常にいい反応を示すので、そこを理解して、いろいろな運動をさせる取り組みを強化していくことで、数年かけて元の水準に戻せるのではないか」と話していました。
2023年12月23日(土)
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