厚生労働省は、医師が知識や技能を習得するための「自己研鑚(けんさん)」に関する2019年7月の通達を一部改正し、労働に該当する具体例として、大学病院での教育や研究を明示しました。従来の通達は、自己研鑚と労働の線引きが曖昧(あいまい)で、 恣意(しい) 的な運用を懸念する声が医療現場から上がっていました。医師の残業時間を制限する「医師の働き方改革」が4月から始まるのを前に、解釈を明確化する狙いがあります。改正は1月15日付。
厚労省は、診療などの本来業務と直接関連がなく、上司の指示もない自己研鑽は、労働に該当しないとの考え方を通達で示し、その運用方法については別の通達で説明していました。
しかし、昨年8月、甲南医療センター(神戸市)の専攻医が過労自殺した問題が発覚。労働基準監督署が認定した長時間労働について、センター側は「自己研鑚が含まれる」と反論し、各地の医師から、本来は労働に当たる時間が自己研鑚として処理されているとの声が相次いでいました。
こうした状況を受け、自己研鑚の考え方に関する通達は維持した上で、運用方法に関する通達を改正しました。大学病院の教育や研究は本来業務に当たると明示し、具体的には、学生の試験問題の作成・採点、学生の論文作成に対する指導などを挙げました。
その上で、こうした教育や研究に直接関係のある自己研鑽に関しても、労働時間内に、指示された場所で行う場合は労働時間と見なし、上司の明示・黙示の指示で行う場合は、所定労働時間外でも労働時間と見なすと説明しています。
一般病院については、具体例は示しませんでした。その理由について厚労省は「自己研鑚と業務の区分がむずかしい」としているものの、今回の改正で「医師と上司の理解が一致するよう双方で十分に確認すること」を求める文言を新たに加えました。
厚労省は「一般病院も、大学病院の考え方に準じて業務との関連性を適切に判断してほしい」としています。
2024年1月24日(水)
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