増加の一途をたどっている小中高生の自殺の要因の一つに鬱(うつ)病など精神疾患も指摘されている折、2022年度からは高校の保健体育の教科書に精神疾患についての記載が40年ぶりに復活しました。子供たちが「心の病」についての正しい知識を持つことで、予防や早期治療につなげようと、教育現場では試行錯誤を続けています。
大修館書店の教科書「新高等保健体育」では、計6ページにわたってイラストとともに鬱病や統合失調症など主な疾患の症状や対処法、予防法などを紹介。人の言葉に過敏になったり、電車に乗れなかったりと各疾患の具体的なサインも掲載し、誰もが罹患(りかん)し得る病気であることや、知識を身に付けることで早期発見と周囲の人の支援につながると説明しています。
背景の一つには、小中高生の自殺者の増加があります。厚生労働省によると2022年の自殺者は514人と過去最多。また、国立成育医療研究センターが子供対象の精神科がある16の医療機関に調査したところ、「死にたい」という希死念慮を持つと診断された20歳以下の外来患者は、2022年度で214人で、調査を開始した2019年度から1・6倍となりました。
一方で、高校で必修化するだけでなく、義務教育段階の小中学校での学習が必要との声も上がっています。精神疾患に罹患した成人のうち、約50%が14歳までに、約75%が24歳までに発症しているという海外の研究結果もあり、発症のピークは10歳代前半とみられるためです。
精神疾患を抱える人の家族らでつくる「全国精神保健福祉会連合会」の小幡恭弘(やすひろ)事務局長は、高校での必修化に「正しい知識を持つ取っ掛かりになる」と評価しつつも、自身や周囲の不調に早期に気付くには、小中学生からの学習が必要と強調。「早い段階から学ぶ機会を設け、年齢を重ねながら疾患について理解していくことが重要」と指摘しています。
2024年2月8日(木)
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