微細なプラスチック片「マイクロプラスチック(MP)」が、雲や雪の中からも見付かったことが、早稲田大の大河内博教授(環境化学)や北見工業大(北海道北見市)の大野浩准教授らの研究で8日までにわかりました。海洋汚染が大きな問題となっていますが、大気中ではより小さく、人体に取り込まれた場合の影響は大きいとの指摘があります。ただ研究例は少なく、実態解明が急務です。
MPはプラスチックごみが波や紫外線などで壊れることによって生じる粒子で、大きさが5ミリ以下のもの。有害な化学物質を吸着する性質があり、海洋生態系への影響が懸念されるほか、人間も魚介類を通じて摂取している恐れが指摘されています。
大河内教授らの研究チームは2021~2022年、富士山頂など3地点で採取した雲水にMPが含まれていることを野外観測で初めて実証しました。MPが紫外線劣化により水をはじきにくくなり、雲の核となっている可能性があります。有機物などを表面に吸着していると、さらに核になりやすくなるといいます。
MPは紫外線で劣化する際、温室効果ガスを排出します。一方で雲の形成を促進して太陽光を地表に届きにくくし、地球温暖化の予測モデルを不確実なものにしている可能性もあります。発生源ははっきりしないものの、陸のほか「日本では近海から台風や冬の北西からの季節風で巻き上げられた海洋MPが有力ではないか」と推測します。
雪からMPを発見したのは、氷雪学を専門とする大野准教授。2021~2023年、世界自然遺産の知床や旭岳(2291メートル)など、道内9カ所で採取した雪を分析すると、全地点で検出されました。
知床など人の生活圏外では、プラスチック容器に使われるポリエチレンなど0・06ミリ以下のごく小さいものが中心で、大気によって運ばれたと考えられるといいます。一方、都市部では合成ゴムや比較的大きなMPが見付かり、車のタイヤなど現地由来の可能性が高くなっています。
大河内教授によると、大気中のMPは0・1ミリ以下で海洋と比べて小さくなっています。海洋と同様に日常的に使われるプラスチックが主ですが、上空にあることから強い紫外線にさらされ劣化が早くなっています。MPが呼吸で取り込まれると、肺に蓄積されるほか、より微細なものは血液中に入り込み全身に広がると考えられ、飲食物に混入したものとは異なり体外に排出されにくくなっています。
ただ大気中のMPに言及した論文が初めて登場したのは2016年。研究手法が統一されておらず、大気中にどのようなサイズのMPがどれほどあるかなど、実態の把握が進んでいません。
大河内教授は、「まだまだわからないことが多い。特に健康リスクについて明らかにし、対処を考えていきたい」と話しています。
2024年4月8日(月)
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