千葉県は8月30日、市原市にある千葉県循環器病センターで2022年2月、入院中の70歳代男性に血栓予防の抗凝固薬を処方し忘れ、男性が死亡する医療事故があったと発表しました。外部の有識者を招いた事故調査委員会の調査が終了し、遺族との和解が成立したため、詳細を公表しました。
同センターによると、男性は県内在住で、心不全や不整脈の持病がありました。2022年2月、呼吸苦でセンターに救急搬送され、集中治療室に緊急入院しました。その際、主治医は抗凝固薬「リクシアナ」の内服を中断し、注射用の抗凝固薬「ヘパリン」の点滴に切り替えました。
治療で症状が改善し、男性は入院4日目に一般病棟に移りました。この時にヘパリンの点滴は終了しましたが、主治医がリクシアナの再開を失念し、処方しませんでした。
男性は入院11日目、血栓が脳血管に詰まる心原性脳梗塞(こうそく)を発症。大脳機能に障害が起きて死亡しました。
事故調査委員会は調査報告書で、「抗凝固薬の中断が脳梗塞の発症に影響した可能性がある」としています。主治医は、心臓に関係した症状のある患者を10人以上担当し、多忙でした。看護師や薬剤師らが再開の手立てを講じることもできませんでした。
センターは再発防止のため、電子カルテに抗凝固薬の内服状況を入力するチェックリストを設け、看護師が情報を記入する、入院患者が病棟を移動する際はチェックリストを移動先の看護師に引き継ぐ、といった運用を始めています。医師以外の医療従事者が内服状況を共有するためです。
センターの中村精岳病院長は、「患者や家族に申し訳ない。今後は医師や薬剤師、看護師などで薬の服用状況を共有する体制をつくるなどして、再発防止に努めたい」と述べました。
2024年9月1日(日)
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