厚生労働省の専門部会は21日、アメリカのモデルナがメッセンジャーRNA(mRNA)技術を用いて開発したRSウイルス感染症のワクチンの承認を了承しました。正式に承認されれば、新型コロナウイルス用以外で国内初のmRNAワクチンとなります。
名称は「エムレスビア」で、60歳以上が使うとRSウイルス感染症を予防する効果があるといいます。アメリカやヨーロッパですでに承認されています。
RSウイルスは小児の感染が多く、発熱や鼻水といった風邪症状が出て、重症化することがあります。高齢者は重い気管支炎や肺炎の原因になるほか、ぜんそくなどの持病が悪化するケースもあります。
モデルナによると、日本では年に推定約6万3000人が入院し、約4500人の死亡原因になっているといいます。
mRNAワクチンは、ウイルスのタンパク質の遺伝情報を人工的に合成して製造します。注射後、体内でつくられたタンパク質に免疫システムが反応し、ウイルスへの免疫ができます。
新型コロナのワクチンとして実用化が進み、2023年には関連技術を開発した研究者がノーベル賞を受賞しました。
大阪大の位高啓史教授は、「ほかの感染症でも、免疫形成に必要なタンパク質の遺伝子配列が決まれば、以降のmRNAを合成してワクチンにする作業は共通だ。従来のワクチンに比べて開発スピードが速い」と指摘します。
エムレスビアは、RSウイルス用のワクチンとしては国内3例目となります。厚労省によると、残る2種類のワクチンと比べて重大な副作用の発生頻度などに特段の違いはないといいます。
モデルナは、インフルエンザと新型コロナの混合ワクチンを手掛けています。最終段階の治験が進行中で、承認されれば1回の注射で2つの感染症に対応できます。接種する人の利便性が高まるほか、医療機関の業務効率化にもつながります。
感染症だけでなく、がん治療などへの応用も進んでいます。モデルナとアメリカの製薬大手メルクの日本法人MSDは、皮膚がんの一種であるメラノーマ(悪性黒色腫)や一定の種類の肺がんを治療するワクチンを共同で開発中です。MSDが製造販売するがん免疫薬「キイトルーダ」とmRNAワクチンを併用して治療効果を高めます。
現在国内で進んでいる新規のmRNA医薬品の治験は、すべて外資系企業によるものです。コロナ禍のような感染症危機時に、ワクチンや治療薬を海外に依存することは経済安全保障の観点からもリスクになるため、国内企業による創薬ノウハウの蓄積が欠かせません。
2025年4月23日(水)
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