2025/10/13

🟥「無痛分娩」最大10万円の助成スタート、東京都に相談急増 医療機関側に「逼迫」懸念も

 東京都による「無痛分娩(ぶんべん)」の助成が今月始まり、妊婦らの申し込みや問い合わせが急増している。都道府県としては初の試みで、都は少子化の改善につなげたい考えだ。ただ、医療機関側の逼迫(ひっぱく)が心配されるケースもみられ、専門家は対策の必要性を指摘する。

 9月中旬の週末、都内の産科クリニックの待合室で、無痛分娩を検討する妊婦向けの説明会が開かれ、20人以上が参加した。クリニックでは都の制度が公表された今年1月以降、無痛分娩に関する問い合わせが増えているという。院長は「出産の時の痛みで体力を大幅に奪われる人もいる。無痛分娩で体力を温存できるメリットもある」と説明した。

 友人の勧めで無痛分娩に興味を持ったという練馬区の保育士の女性(32)は、11月に第1子の出産を予定する。初産で痛みに耐えられるか不安だったといい、「子育ては何かとお金がかかるので、負担が少しでも減るのは助かる」と話す。

 無痛分娩の費用は10万~20万円ほど。母体の急変に備えて蘇生機器を整えるなど一定の安全基準を満たし、都に届け出た病院・診療所で出産した都内在住者は、最大10万円の助成を受けられる。

 都が3月下旬に設置した問い合わせ窓口でも、「どうすれば申請できるのか」「自分は対象か」といった相談が急増。件数は9月までの半年間で496件だったが、今月は1~9日だけで143件に達した。都に届け出た病院・診療所も、都内で出産できる医療機関の8割に当たる125施設(9月末時点)に上り、制度は妊婦と医療機関の双方から支持を得ているようだ。

 ただ、無痛分娩は麻酔による合併症を引き起こすリスクがある。分娩が長引いて赤ちゃんを吸引しなければならない事態も起こり得る。

 東邦大医学部産科婦人科学講座の中田雅彦主任教授(60)は「デメリットを理解していない妊婦は多い」と明かす。同大大森病院(大田区)では、昨年まで1割ほどだった無痛分娩の取扱件数が6割前後に増えたという。中田主任教授は「希望者がさらに増えた際に対応し切れるのか不安」とも語る。

 都が昨年8~10月、都内の母親約1万1000人を対象に行った調査では、無痛分娩で出産した母親は35・8%にとどまった。だが、次回出産時の希望を聞いたところ、無痛分娩で出産したいと答えた割合は63・3%に上った。助成が始まったことで、希望する妊婦はさらに増えるとみられる。

 無痛分娩に詳しい神奈川県立保健福祉大の田辺けい子准教授(助産学)は「出産時の痛みや苦しみに悩む女性もおり、選択肢を広げることにつながる助成は高く評価できる。無痛分娩の需要は全国的に高まっており、都の制度はモデルケースになる」と評価。一方、「希望者の急増により、安全性を担保できるか懸念している。出産に携わる医師や助産師について、無痛分娩の知識や技術を底上げさせる取り組みも必要だ」と指摘する。

  ◆無痛分娩=局所麻酔で出産の痛みを和らげる方法。国内では背中に入れた管から麻酔薬を入れる硬膜外麻酔が主流。日本産婦人科医会の調査では、2023年の出産全体の中で無痛分娩が占める割合は13・8%で、5年前の倍以上に増えている。

 2025年10月13日(月)

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