高血圧の治療に関する指針が今年8月、6年ぶりに改訂され、治療目標の血圧が75歳以上も他の世代と同じ値になった。生活習慣の改善や適切な治療につなげてもらうよう、血圧を下げるための具体的な対策が解説されている。
血圧とは、心臓から送り出された血液が血管の内側を押す圧力のことである。慢性的に高い状態を高血圧といい、診断基準は上の血圧が140以上、または下の血圧が90以上となる。該当する人は推計で4300万人いる。放置すると動脈硬化が進み、脳卒中や心臓病、腎臓病を引き起こすリスクがある。
血圧を下げる治療は生活習慣の改善の指導をまず行い、それから薬を用いて血管を広げたり、塩分(ナトリウム)を水分と一緒に排出したりする。
日本高血圧学会の治療指針の改訂は2019年以来である。高血圧の診断を受けた後、患者が目指す「治療目標」の血圧について、75歳未満は上130、下80未満とし、75歳以上は血圧が下がることでふらついて転倒する恐れがあることなどから、上140、下90未満と設定していた。
近年の研究で75歳以上では、厳しい目標値のほうが、死亡率や心臓病などのリスクを抑えられることがわかった。そこで、目標値を共通化した。ただし、めまいや立ちくらみなどの急激な血圧低下に伴う症状があれば、速やかに主治医に相談してもらう。
指針の名称は「高血圧管理・治療ガイドライン」とし、「管理」という言葉を新たに加えた。作成委員会では、具体的な行動に結び付けてもらうため、医療者だけでなく、一般にもよりわかりやすい内容にまとめたとしている。委員長で沖縄県北部医療財団理事長の大屋祐輔さんは、「より高い関心を持って、治療に主体的に取り組んでもらいたい」と話している。
生活習慣の改善では、食塩の摂取量を1日6グラム未満に減らし、カリウムを多く含む野菜を食べることを例に挙げている。カリウムには余分なナトリウムを排出する働きがある。毎日30分以上の有酸素運動と、スクワットなどの筋トレも勧められている。
日本高血圧学会理事長で自治医科大教授の苅尾七臣(かりお・かずおみ)さんは、「血圧を適切に下げるには、毎日自宅で血圧測定をすることが大切です」と語り、指針でも診断と治療に役立つとしている。
肘より上の上腕にカフを巻くタイプの血圧計を用意し、朝と夜に測定する。朝は朝食前と排尿後、夜は就寝前に行う。
習慣化して継続することが大切である。スマートフォンのアプリと連動してデータを自動でグラフにする血圧計もある。
2025年10月24日(金)
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