食道がんの手術で、従来の開胸手術に比べ、より患者の負担が少ない胸腔鏡(きょうくうきょう)による手術を行った場合でも、長期的な生存期間が劣らないとする研究結果を、国立がん研究センターなどが30日、発表した。今後、食道がんの診療ガイドラインが改訂され、胸腔鏡手術の推奨度が上がるという。
食道がんは、年間に約2万7000人が診断され、中高年男性に多い。のどと胃をつなぐ食道にできるために手術範囲が広く、従来の開胸手術は患者の負担が大きいことが指摘されてきた。近年、胸に小さな穴を開け、カメラや器具を入れて行う胸腔鏡手術が普及し、多くの医療機関で行われているものの、長期的な成績を比較した研究はなかったという。
研究は、国立がん研究センターが支援し、国内の多施設が参加する日本臨床腫瘍(しゅよう)研究グループ(JCOG)が行った。2015〜2022年に手術可能と判断された患者300人を、開胸手術と胸腔鏡手術に無作為に割り当てて調べた。
その結果、開胸手術は3年後の生存割合が70・9%だったのに比べ、胸腔鏡手術は82・0%。合併症の発生に大きな違いはなく、術後の呼吸機能の低下は開胸手術が12・5%、胸腔鏡手術は9・7%と抑えることができた。傷の痛みは胸腔鏡手術が少なかったという。
研究チームの竹内裕也・浜松医科大教授は、「今回の研究では、日本内視鏡外科学会の技術認定医など熟練した外科医のもとで手術が行われた。今後の治療も、同等の技術のもと行われるようガイドラインで推奨する」と話す。
一方で、近年はロボット支援による手術も急速に増えつつあるものの、長期的な有効性などが十分示されておらず、さらなるエビデンスの蓄積が必要だとした。
論文はイギリスの医学誌に掲載された。
2025年10月31日(金)
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