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2022/08/17

🇰🇲新生児黄疸

新生児の血液中にビリルビンが増えて組織に蓄積し、皮膚や眼球結膜が黄色みを帯びる状態

新生児黄疸(おうだん)とは、新生児の赤血球が破壊され、血液中にビリルビン(胆汁色素)が増加して脂肪組織に沈着した結果、皮膚や眼球結膜が黄色く見える状態。新生児は大人に比べて黄疸になりやすく、ほとんどが生理的黄疸で特に治療は必要ありませんが、中には病的な黄疸もあります。重症な黄疸を治療せず放置した場合、脳性まひを残す危険もあります。

生理的黄疸は、90パーセント前後の新生児に起こります。血液中の赤血球が破壊される際に、ヘモグロビン(血色素)からできるビリルビンが黄染の原因で、ビリルビンは肝臓で処理され、腸から便中に排出されますが、生理的黄疸は新生児期に特有の要因により起こります。

その理由としては、新生児は大人に比べて赤血球数が1・5~2倍程度多い多血症で血液濃度が高く、赤血球の寿命も短いため、ビリルビンが大人より多量に産生されること、新生児は肝臓の機能が未熟なため、ビリルビンがほとんど脂溶性で細胞毒性の強い間接型ビリルビン(非抱合型ビリルビン)として排出されること、新生児は腸管運動が十分でないため、腸に排出されたビリルビンが再度肝臓に吸収されることが挙げられます。

生理的黄疸は一般に、生後2〜3日に皮膚が黄色に見えるようになります。顔面から始まり、体の中心部、そして手足へと黄染が強くなっていって、生後4〜5日でピークを迎え、生後1週間を過ぎると自然に消えて、肌色に落ち着きます。

大部分は軽くて、特別の治療を必要としません。

ただし、生まれた時の体重が2500グラム未満の低出生体重児では、間接型ビリルビンが脳の神経細胞に蓄積、黄染していろいろな神経症状を来す核黄疸を生ずる危険があります。まれですが、成熟児にも核黄疸が起こります。

新生児黄疸の検査と診断と治療

小児科の医師による診断では、足の裏などから血液を採取して血液中のビリルビン値を調べます。

小児科の医師による治療では、生理的なものであり通常は自然に治りますが、黄疸が高度な場合は光線療法という治療を行います。

新生児を裸にしてアイマスクを付け、波長420~460nm(ナノメートル)のブルーの光を当てるもので、光エネルギーが作用すると皮膚や皮下毛細血管内のビリルビンの分解が促進されたり、水溶性で細胞毒性の弱い直接型ビリルビン(抱合型ビリルビン)に変えられて、胆汁中に排出されます。

光線療法でもビリルビン値が下がらない場合、あるいは早い時期に核黄疸の危険性がある場合などは、ビリルビンのたまった血液が脳に移行するのを防ぐために、交換輸血を行います。新生児自身の血液をゆっくり取り出しながら、見合う量を輸血する治療法で、新生児自身の約85パーセントの血液が交換されます。

現在では、交換輸血と同程度の効果を持つガンマグロブリンの静脈内注射療法も存在しています。

🇰🇲新生児仮死

新生児が生まれた時に産声を上げず、自発呼吸をしない状態

新生児仮死とは、生まれた時に新生児が産声を上げず、正常な自発呼吸をしない状態。出生時仮死とも呼ばれます。

胎児は母体の胎盤から臍帯(さいたい)を通じて酸素や栄養をもらい、二酸化炭素を処理してもらっています。生まれた時に臍帯を通じた母体からの酸素が十分に得られなくなると、血中の酸素濃度が下がって二酸化炭素濃度が上がり、呼吸中枢が刺激されて呼吸運動が始まります。

順調なお産であれば生まれた直後に呼吸運動が始まり、空気が肺に入って自発呼吸が始まります。その際、新生児は肺を膨らませるために大きく呼吸をするので、声帯を通る時に産声という泣き声を上げるのです。一般に、新生児は出生後30秒以内に産声を上げます。

新生児仮死では、生まれた時に産声を上げず、呼吸がうまく行えない上に、手足の動きも弱く、皮膚の色合いも悪くなっています。

産科の医師や助産師は、生後1分の時点で、新生児の全身状態を心拍数、呼吸、筋肉の緊張の程度、刺激に対する反射、皮膚の色合いの5項目について、それぞれ0〜2点ずつを与えて、その合計点の0〜10点で評価しています。

これがアプガースコアで、6点(または7点)以下だと新生児仮死といい、全出産の約10パーセントに起こります。また、アプガースコア3点以下を重症仮死、4〜6点(または7点)を中等症仮死といいます。

新生児仮死がある場合は、生後3分後、5分後に再評価したり、アプガースコアが正常になるまでの時間を計るなど、産科の医師や助産師は慎重に経過観察をします。

新生児仮死では、全身の低酸素と循環障害の結果、呼吸障害、心筋障害、低酸素性虚血性脳症、腎不全、チアノーゼ、血液のアシドーシス(酸性化)などさまざまな異常が同時にみられます。

ごく軽症の仮死では後遺症はありませんが、重症仮死では呼吸がほとんどなくて心拍が非常に低下している状態で、長い間呼吸しなかった場合は、酸素不足のため死亡したり、命を取り留めてもけいれんなどの神経症状が出たり、脳に障害を残して脳性まひになることがあります。

胎盤の働きが悪いために、胎児に酸素を十分に送ることができない場合や、胎盤がはがれたり、臍帯が圧迫されたりして、母親と胎児の間の血液循環が妨げられた場合、脳が強く圧迫された場合、逆子の場合などに、新生児仮死が起こります。

また、お産の時、母親に全身麻酔をかけると、仮死状態で生まれることがあります。

新生児仮死の治療

軽い新生児仮死の時は、産科の医師や助産師が足の裏をたたいたりして刺激すると、顔をしかめ、呼吸が始まるので、心配はありません。

重い仮死では、皮膚は青白く、刺激しても反応がなく、一刻を争って気管にたまっている羊水や粘液を取り除いたり、酸素吸入などをする蘇生(そせい)術を産科の医師や助産師が行います。

蘇生術により新生児の状態が安定すれば、新生児特定集中治療室(NICU)に収容し、保温、酸素投与、人工換気、点滴などの本格的な蘇生術を産科や新生児科、小児科の医師が施したり、その後の管理を行います。

重症仮死では、全身の臓器障害を合併するため、それに対して必要な治療も行います。全出産の約1パーセントで、本格的な蘇生術を要します。

仮死状態で生まれた新生児は、退院後も定期検診が必要です。

🇰🇲新生児月経

生後間もない女の子の新生児の性器から出血があること

新生児月経とは、生後3~5日ころの、女の子の新生児の性器から出血を認める状態。

出血量は多くなく、おむつに少量の血液が付着する程度で、生後1週間程度で出血は終わります。また、大便が出る時だけ、息んだ弾みで性器からの出血を認める女の子の新生児もいます。

おむつ交換の際に母親が気付き、どこからの出血か判断できずに不安にあることもありますが、疾患ではありませんし、生理痛のようなものが起こることも、貧血になることもありません。もちろん、すべての女の子の新生児に起こるわけではありません。

新生児月経が起こる理由は、生後2~3日目ころ、胸が膨らんできたり、乳腺(にゅうせん)から乳汁様の液体が出たりする魔乳(奇乳)と同じように、胎児期における母親の女性ホルモンの影響です。

妊娠中、母親の卵巣から分泌されている卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌量が増加し、この2つの女性ホルモンが胎盤を介して胎児の血液にも移行します。

この女性ホルモンの作用によって、卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌量が増えると、胎児の子宮の内側を覆う子宮内膜が月経の時と同様に厚くなり、黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌量が増えると、子宮内膜が厚くなった状態が維持されます。

出生後、臍帯(さいたい)が切断され、母親との関係が絶たれると、女性ホルモンが急激に減少して、その影響が急速に失われ、特に黄体ホルモン(プロゲステロン)が減少することにより、やがて子宮内膜がはがれ落ち、体外に排出される時に消退性出血が起こると考えられています。

新生児月経と同様に、生後間もない女の子の新生児の性器から、透明から乳白色の膣(ちつ)分泌物である下り物をごく少量認めることもあります。新生児帯下(たいげ)といい、こちらも胎児期における母親の女性ホルモンの影響で起こります。こちらもすべての女の子の新生児に現れるものではありません。

新生児月経の量は少ないですから、自然に出血が止まるのを待てばよく、特別な処置は必要ありません。

出血量が多かったり、生後1週間以降も出血が続いたり、出血がある時に激しく泣いたり、機嫌が悪かったりなどの症状があれば、何らかの疾患が疑われますので、一度、産科、または小児科を受診し診察を受けてください。

受診する際には、血液が付着したおむつを持参すると、出血の量や状態からより正確な診断が受けられます。

🇸🇨新生児呼吸窮迫症候群

低出生体重児が生まれて2〜3時間後に発症する、呼吸不全の一つ

新生児呼吸窮迫症候群とは、低出生体重児が生まれて2〜3時間後に発症する、呼吸不全の一つ。新生児肺硝子(しょうし)膜症とも呼ばれます。

発症する大部分は、1500グラム以下の低出生体重児で、特に生まれた時の体重が少ない場合ほど、発症しやすくなります。成熟児はまれにしか発症しないものの、母親に糖尿病があると、比較的発症しやすくなります。

普通、新生児は生まれた瞬間に産声を上げ、自発呼吸を始めると肺が広がります。新生児呼吸窮迫症候群では、主として肺が未熟なため、肺を広げておく肺サーファクタントという物質が欠如していて、そのために肺がよく広がらず、肺に空気が入りにくくなって呼吸不全が起こります。

肺が広がっているところも一部分あり、顕微鏡で見ると、その部分にガラスのような膜ができているので、新生児肺硝子膜症とも呼ばれます。

生まれて2〜3時間後に呼吸数が1分間に60以上と速くなり、息を吸う時に肋骨(ろっこつ)の間や胸骨の下部がへこんだり、息苦しそうにうめき声を出すなどの呼吸困難が現れます。酸素不足のために、皮膚は紫色になります。

呼吸困難は次第にひどくなり、生後24〜48時間が最も重くなる時で、呼吸が停止したり、死亡したりします。

生後3~4日目になると肺サーファクタントの産生が始まるため、4日目まで生き延びることができれば、呼吸困難は次第に軽くなり、治ります。

新生児呼吸窮迫症候群の治療

極めて高度の呼吸管理が必要なので、設備と要員の整った新生児特定集中治療室(NICU)を備えた医療機関に搬送し、そこで治療を行うことが必要です。

新生児特定集中治療室(NICU)では、小児科、新生児科の医師などが肺に管を入れて人工呼吸器による呼吸補助を行いながら、できるだけ早期に人工肺サーファクタントを気管から肺に注入します。胎便の吸引や、新生児仮死などが原因にある場合は、肺の洗浄、強心薬などによる循環の補助などの治療も、同時に行います。

多くは、2〜3日で改善しますが、数週間の治療が必要になることもあります。

予防的な治療として、妊娠33~34週以前に早産となりそうな場合には、出産前に母体にステロイド剤を投与して胎児の肺サーファクタントの産生を促すことが行われています。

🇸🇨新生児低血糖症

新生児の血液中の糖分が少なくなっている状態

新生児低血糖症とは、生まれたばかりの新生児の血液に含まれる糖分が少なくなっていて特有の症状が現れる状態。

新生児に低血糖が認められても、すぐに正常な血糖値に回復することが多いのですが、中には低血糖の状態が続いてしまうケースもあります。血液に含まれる糖分は人間の脳の働きを支える重要なエネルギー源であるため、低血糖の状態が続いてしまうと、脳に悪影響を与えて神経系の後遺症を引き起こす可能性があります。

胎児は低血糖にならないように、母親の胎内にいる時から胎盤を通して糖分を摂取し、出生後には母乳やミルクから糖分を得て、正常な血糖値を保っていきます。

生まれたばかりの新生児は、それまで胎盤を通じて行われていた栄養供給が止まり、母乳かミルクを飲むまでは栄養を摂取できなくなります。胎盤を通じて得ていた糖分の摂取も一時的に途切れてしまうため、新生児が低血糖になるのは生理的なものだといえます。一般的に、新生児の血糖値は生まれた後に急速に下がり、1〜2時間後には最も低くなります。

出生直後に血糖値が下がっても、ほとんどの新生児は体内の仕組みのお陰で、徐々に血糖値は上昇していきます。しかし、中には血糖値が正常に上がらず、低血糖の治療が必要になる場合もあります。

新生児の低血糖を引き起こす原因はさまざまで、主にインスリンの過剰分泌がある場合と、ない場合に分けられます。

インスリンは膵臓(すいぞう)のランゲルハンス島にあるベータ細胞から分泌されるホルモンで、骨格筋や肝臓、組織において血液から細胞内への糖分の吸収を促し、エネルギーを作ったり蓄えたりする働きを持つほか、血糖値を上昇しすぎないよう調節する役割も持っています。このインスリンが過剰に分泌されていたり、成長ホルモンなど血糖値を上昇させるホルモンが欠乏していたりすると、低血糖を引き起こします。

例えば、妊娠中の母親が糖尿病にかかっていた場合、胎盤を通して通常より多くのブドウ糖が胎児に送られるため、血糖値を下げる働きを持つインスリンの分泌量も増えています。出生直後には、胎盤によるブドウ糖の供給は止まっても、インスリンは分泌され続けるために血糖値が下がり、新生児に低血糖の症状が現れることになります。

インスリンの過剰分泌がない場合も、早産児や低出生体重児で、肝臓や筋肉に蓄えているグリコーゲンの量が少ないと、一時的に低下した血糖値を上げることができず、低血糖を引き起こしやすくなります。このほか、感染症も新生児の低血糖を引き起こす原因と考えられています。

新生児の低血糖が軽症であれば、目立った症状が現れないことが多いのですが、重症の場合は、元気がなく母乳を飲まない、ボーッとして意識レベルが低い、けいれんに似た動きをする、無呼吸になる、顔色が悪く青白くなっていたりチアノーゼが起きている、汗をたくさんかき呼吸が荒くなる、などの症状が現れることがあります。

新生児低血糖症の検査と診断と治療

小児科の医師による診断は、血糖値を調べる血液検査を行うのが一般的です。低血糖とともに起きやすい電解質異常を調べる検査を行うこともあります。

小児科の医師によなどる治療は、無症状の場合には、できるだけ速やかに母親の直接授乳、ないしミルクによる栄養供給を開始します。経口摂取が困難な場合や、授乳などを行ったにもかかわらず低血糖が改善しない場合、症状のある場合、無症状でも血糖値が20~25㎎/dl未満の場合は、基本的にブドウ糖を点滴で投与します。点滴だけでは症状が改善しない場合は、ステロイド剤の投与や血糖を上昇させるホルモン、またはインスリンの働きを抑える薬を使うことがあります。

また、低血糖を引きこしている原因についても調べ、原因となっている疾患がわかれば、その治療も同時に行います。

血糖値と体調が落ち着いてきたら、母親の直接授乳などを増量し、糖分を供給していきます。血糖値が安定し、点滴の必要がなくなるまでは、入院の上で治療を行います。

新生児低血糖症は、早期に適切な治療が行われた場合には予後は良好なのですが、発見が遅くなって治療が遅れてしまうと、低血糖の状態が長く続き、脳に何らかの障害を残す恐れがあります。特に早産児や低出生体重児で産まれ、新生児仮死があった場合は、様子を注意深く観察する必要があります。

🇸🇨新生児テタニー

新生児の血液中のカルシウム量が少なくなり、けいれんを起こす疾患

新生児テタニーとは、新生児の血液中のカルシウム量が少なくなり、上肢中心のけいれんを起こす疾患。新生児低カルシウム血症とも呼ばれます。

新生児テタニーは発症時期により、出生後48時間以内に発生する出生直後のテタニー(早発型低カルシウム血症)と、生後1週間前後に発症する古典的新生児テタニー(晩発型低カルシウム血症)、輸血時に血液に混合されたクエン酸ナトリウムが血中でカルシウムイオンと結合して起こる交換輸血によるテタニーに分けられます。

新生児、特に未熟児は出生後に血清カルシウムが一時的に低下することが多く、それに伴って筋肉が異常な収縮を起こして硬直し、けいれんなどの症状を起こすものを出生直後のテタニーといいます。副甲状腺(せん)ホルモンの分泌低下やビタミンDの不足なども、原因になります。早産、新生児仮死、帝王切開、母親が糖尿病の場合にも、発症率が高くなります。

古典的新生児テタニーは、リン酸含有量の多い牛乳や乳製品を飲むことが原因と考えられ、母乳栄養児にはまず起こりません。

症状としては、意識障害を伴わない、上肢中心のけいれんが特徴で、数分間持続します。重症の場合は、全身のけいれん、無呼吸、不整脈、チアノーゼ、むくみなども現れます。

新生児は不安状態になり、四肢を震わせ、泣き叫びます。興奮状態が過ぎると、急に手足をだらりとして動かさず、嗜眠(しみん)状態になります。このような嗜眠が繰り返して起こります。症状は外部からの刺激に誘発されて現れ、泣くと症状が悪化する場合があるので、泣かせない工夫が必要です。

新生児テタニーの検査と診断と治療

新生児テタニーは、声門けいれん、てんかんなどほかの原因によるけいれん発作と区別できないことがあります。区別できない場合は、血清および尿中カルシウム濃度の測定が役立ち得ます。

なお、検査や診察で、症状が全くない潜在性のテタニーが初めて発見されることもあります。

治療では、症状の程度に応じて、グルコン酸カルシウムの点滴や乳酸カルシウムの内服によるカルシウム投与、鎮けい剤投与などが行われます。その後も経過を観察し、その原因に合った検査と治療が行われます。

2022/08/16

🇰🇮魔乳

生後間もない新生児の乳頭から乳汁様の液体が分泌される現象

魔乳(まにゅう)とは、生後2~3日ころから1週間ころの間に、新生児の胸が膨らむとともに、乳頭(乳首)から乳汁様の半透明から白色の液体が分泌される状態。奇乳、鬼乳とも呼ばれます。

妊娠中、母体では女性ホルモンの一つである卵胞ホルモン(エストロゲン)が卵巣から多量に分泌され、これが乳腺(にゅうせん)を発達させるとともに、脳下垂体に作用して乳汁分泌を促すプロラクチンの分泌を抑制しています。ところが、出産とともに、卵胞ホルモンの分泌が急速に低下し、プロラクチンの分泌の抑制がなくなるために、プロラクチンの分泌が増加し、乳汁(母乳)の分泌が開始されます。

妊娠中、母体の卵胞ホルモンは胎盤を通じて胎児の血液にも移行していますが、出生後、臍帯(さいたい)が切断され、母体との関係が絶たれると、卵胞ホルモンが急激に減少して、その影響が急速に失われるため、母体と同様な機構でプロラクチンが少量分泌され、これが作用して乳腺が刺激され、新生児の乳頭から乳汁様の液体が分泌されるのです。乳汁様の液体の成分は、乳汁と同一です。

魔乳は生後2~3日ころから分泌され始めることが多く、搾ったりせずに放置すれば数日から1週間程度で出なくなります。中には、5~6週間にわたって分泌がある場合もあります。新生児の体質や、母体から移行していたホルモンの量で、期間は変わってきます。

成熟した新生児では、生まれた当初から左右の乳房が大きな場合がありますが、これも胎盤経由のホルモンと自分自身のホルモンによって乳腺が発達したものと考えられています。

この時期の乳腺の発達には男女差はなく、男の子の新生児でも乳房が膨らんだり、魔乳が見られたりすることがあります。

ヨ-ロッパでは昔、魔女信仰の影響から、新生児の乳頭から分泌される乳汁様の液体が魔女の薬の材料になるとされて「Witch’s milk(魔女のミルク)」と呼ばれていたことから、日本では魔乳と呼ばれるようになったようです。ヨーロパでは魔法使いの女が採りに来る前に早く搾ってしまわなくてはならないと信じられていたそうですが、近年では搾ったり、触ったりすると、かえって乳腺が刺激されていつまでも液体が出続けたり、細菌が入って感染を起こすことがあるため、搾ったり、触ったりしてはいけないものとされています。

新生児の魔乳は自然に止まるのを待てばよく、特別な処置は必要ありません。乳汁とは少し違うような色の液体が出てくる場合は、乳腺などが傷付いている可能性がありますので、一度、産科、または小児科を受診し診察を受けてください。

🇵🇭母性喪失症候群

子供が十分な愛情を感じられないまま育ち、精神的な発達や身体的な成長に遅れを生じる状態

母性喪失症候群とは、母子関係や家族関係の問題によって、子供が十分な愛情を感じられないまま育った結果、情緒の発達、言語や知的能力の発達、さらに身体発育の遅れと行動異常を生じる状態。愛情遮断症候群、情緒剥脱(はくだつ)症候群とも呼ばれます。

乳幼児から6歳児程度の子供に多くみられます。母親など養育者からの愛情を感じられない極度のストレスや不安から、子供は心から安らいでグッスリ眠ることができず、成長するために必要な成長ホルモンが睡眠時に脳下垂体から十分に分泌されなくなる結果、身体的な成長に遅れが出るほか、精神的な発達にも遅れが出ると考えられています。

子供は愛情ばかりでなく、十分な栄養を与えられていないこともあります。入院、死亡、離婚などによる母親不在の環境が原因となったり、母親など養育者が深い悩みを抱えていたり、うつ状態であったり、薬物依存や知的障害、精神的な病気を持っていたりして、適切な子育てができないことが原因となったりします。

母親など養育者自身が子供時代に十分な愛情を受けて育っていない場合に、世代を超えて子育てに影響する世代間伝達、愛情不足の連鎖もあります。

栄養障害によって現れる症状として、身長が低い、体重の増えが悪い、腕や脚が細い、やせている、肋骨(ろっこつ)が目立つ、お尻がへこんでいるなどがあります。不適切な養育の結果として観察される症状としては、おむつかぶれがひどい、皮膚が汚い、汚い服を着ているなどがあります。子供の心理的な変化や行動異常によって現れる症状としては、目を合わせない、表情が乏しい、感情表現が乏しい、動作が緩慢、抱きついたり寄り添ったりしない、親に抱かれるのを嫌がる、異様な食欲増進、尿や便をもらす、寝付きが悪い、かんしゃくを起こすなどがあります。

愛情不足の養育が生後1年以内に始まり、3年以上続く時は、情緒や知能の障害が永久に回復しないといわれています。

養育者が子供の母性喪失症候群に気付いたら、母子手帳の成長曲線をつけてみたり、子供らしい豊かな表情をしているかどうか、気を配りましょう。心配なことがあれば、小児科医や保健師に相談しましょう。

母性喪失症候群の検査と診断と治療

小児科の医師による診断では、身長、体重、頭囲の計測値から成長曲線をつくり、子供の成長を評価します。食事の内容から、栄養学的な分析をします。また、養育環境についての情報を集めます。

小児科の医師による治療では、食事の内容について養育者に栄養指導を行い、子供の年齢に見合った十分な食事を与えるようにします。

また、子供と養育者にとって、ストレスの少ない環境になるように調整をします。母親など養育者に対する心理カウンセリングが必要な場合もあります。子供にとってストレスの少ない環境で、年齢に見合った十分な栄養を与えると体重が増加し、成長ホルモンの反応も回復して身長の伸びが促進されなど、成長の遅れは取り戻されます。

しかし、虐待やネグレクト(育児放棄)など養育者の子育てに重大な問題がある場合、ケースによっては養育者と子供を遠ざけることも必要です。入院で治療を受けさせたり、乳児院など保護観察施設で養育したりすることで遅れていた成長が改善されることもあります。

母親が不在の場合、あるいは母親がいても子供に愛情を十分に与えることができない場合には、母親に代わって父親や親に代わる養育者が十分な愛情を注ぐことで防ぐことは可能です。

2022/08/15

🇻🇳発達障害

脳の機能的な問題が原因

発達障害とは、乳児期から幼児期にかけての発達過程が何らかの原因によって阻害され、認知、言語、社会性、運動などの機能の獲得が障害された症状の総称。基本的には、脳の機能的な問題が原因で起こるものです。

脳医学の進歩により、今までは落ち着きがない、集中力がない、親の躾(しつけ)がなってないといわれていた子供たちの脳に、発達の遅れや障害が見付かるようになり、それぞれの症状に応じて名称が付けられています。どの発達障害にも共通しているのは、人とのコミュニケーションが苦手という点です。

多くの子供たちは成長とともに、障害を適切な療育や教育によって克服したり、投薬で自己コントロールの方法を学んでいきます。大人になっても発達障害の克服が難しい場合は、障害者手帳の交付などを受けて、福祉支援を受けることができます。

発達障害の代表的なものとして、知的障害(精神発達遅滞)、広汎性発達障害(自閉症)、高機能広汎性発達障害(アスペルガー症候群・高機能自閉症)、注意欠陥多動性障害(AD/HD)、学習障害(LD)などがあります。

発達障害の原因は遺伝子異常、染色体異常、体内環境の異常、周産期の異常、生まれた後の病気や環境などさまざまですが、多くの場合、はっきりとした原因はわかりません。養育態度の問題など心理的な環境要因や教育が原因となったものは、発達障害に含めません。

学術的には、発達障害に知的障害を含みますが、一般的に、あるいは法律上は、知的障害を伴わない軽度発達障害だけを指します。平成17年4月に施行された発達障害者支援法も、知的障害者以外の軽度発達障害者だけを支援対象として規定しています。

軽度発達障害は、高機能広汎性発達障害、注意欠陥多動性障害、学習障害の3つが代表的なものです。この軽度発達障害の子供では、障害の程度が軽く、一見普通と変わらないた、社会での認知度が低く、わがままや育て方の問題などとされていることが少なくありません。学童期の子供の5~6パーセントが軽度発達障害と考えられており、とりわけ教育現場での適切な対応が求められています。

発達障害のそれぞれの症状

知的障害(精神発達遅滞)は、年齢相応の知的能力がなく、社会的自立の上で支援が必要とされます。ダウン症など染色体異常によるものもありますが、原因が特定できないものも多くあります。人口の2~3パーセントが該当すると見なされ、知的障害者の福祉制度を利用することが可能です。

広汎性発達障害(自閉症)は、主たる兆候が幼児期に顕著。生後3年以内に下記の3つの兆候が同時にある場合に、自閉症と診断されます。(1)社会性の障害で、他者とのやりとりが苦手、他者の意図や感情が読み取りにくい、仲間を作ることが苦手。(2)コミュニケーションの障害で、言葉の発達が遅れる、おうむ返しが多い、会話が一方的で自分の興味関心事だけ話す、ごっこ遊びや物まね遊びができない。(3)こだわり行動で、興味の偏りと決まりきったパターンへの固執、同じ行動をいつまでも繰り返す。

人口の0.5パーセント程度が自閉症に該当すると見なされ、知的障害者の福祉制度を利用することが可能です。

高機能広汎性発達障害 (アスペルガー症候群・高機能自閉症)は、自閉症と同じ幼児期の兆候を持ちますが、発達するにつれて症状が目立たなくなります。自閉症と診断されても、知的な遅れのないものが高機能自閉症で、さらに言葉の発達に問題を持たないものがアスペルガー症候群です。

知的には標準またはそれ以上で、関心ある領域には博士並みの知識を持っていることがあり、自分の気持ちがすむかどうかへのこだわりがあります。また、動作が不器用であることが少なくありません。中核症状である社会性の障害は軽くはなく、仕事の得手不得手があり、あいまいなことの判断に迷うなど、社会的自立においては大きな問題を持ちます。

注意欠陥多動性障害(AD/HD)は、(1)注意集中が難しい、(2)多動、落ち着きがない、(3)衝動的、思い付いたらた行動に移してしまう、の3つが同時にある場合に、障害と診断されます。学業や社会的な活動に支障を来し、集団生活が始まると特徴が次第にはっきりしてきます。

「注意集中が難しい」は、忘れ物が多い、気が散りやすい、指示に従えず授業を最後までやり遂げられない、気持ちを集中させて努力し続けなければならない課題を避けるなどの症状を指しています。「多動」は、すぐに席を離れてしまう、手足をいつもそわそわ動かしている、しゃべりすぎるなどが特徴です。「衝動的」は、順番を待つのが難しい、他の人がしていることを遮ったり、じゃましたりする、すぐにキレて手が出てしまうなどの症状です。チックを伴っていることもよくあり、人口の3パーセント程度が該当すると見なされますが、薬物療法が著効する場合もあります。

学習障害(LD)は、一般的な知的発達は標準またはそれ以上ですが、聞く、話す、読む、書く、計算する、推論するなどの特定能力の一部だけの習得と使用に困難を示し、学力の著しい偏りがあります。読み書きがとても不得意、数の概念がわからず計算ができない、テストの問題の意味がわからないといった症状がみられます。注意集中力や落ち着きがない場合や、不器用な場合もあります。人口の5パーセント程度が該当するというデータもあります。

以上の発達障害の、それぞれの症状とは別に、周囲から障害を理解されないために、家族から虐待されたり、同級生や教師から不当ないじめにあったりすることが、少なくありません。それによって2次的に心因反応が起こったり、身体化症状が出たりすることがよくあります。

一般的な治療法と生活上の注意

児童精神科医、小児神経専門医を始めとした医師による診断では、面接や診察、質問用紙や発達テストなどを使って、症状を調べます。実際には、それぞれの病気がきちんと分かれて診断されるとは限らず、症状が重なっていることが少なくありません。

また、それぞれのの発達障害に対する根本的な治療はなく、どのように社会に適応していくかということが大切になります。

高機能広汎性発達障害は、基本的には治る病気ではありません。社会生活でのトラブルをたくさん経験することになりますが、青年期を上手に過ごすことができれば、その後の生活も安定して過ごせることが多いといわれています。

注意欠陥多動性障害は、その約3分の1は自然に治ります。しかし、約半数は成人になっても障害を持ち続け、社会生活のトラブルの原因となることがあります。

この注意欠陥多動性障害には、中枢神経興奮剤の塩酸メチルフェニデートが有効とされています。この薬には覚醒(かくせい)作用があり、多動を抑制し集中力を高める効果があります。

しかし、効果は3~4時間と短いため、学校での生活に合わせて朝1回、あるいは朝昼2回服用とします。休日や夏休みには使用しないのが、一般的です。副作用として食欲不振、興奮、チック症状の悪化などがあります。実際によく使われていますが、日本の保険制度では効能、効果として注意欠陥多動性障害は認められていません。6歳未満の小児では安全性が確立していないため、使用しないことになっています。

塩酸メチルフェニデートの効果がない場合、抗うつ薬のイミプラミンが有効なことがあります。また、中枢性降圧剤のクロニジンも有効なことがあり、特にクロニジンはチック症状にも効果があるとされています。

薬物は根本的な治療ではないとして、治療に反対する意見もあります。アメリカでは、注意欠陥多動性障害の治療のために塩酸メチルフェニデートを投与されていた大人や子どもに死亡例があることを、食品医薬品局(FDAF)が公表し、注意を促しています。

学習障害は、障害がなくなるということはありません。しかし、自分をきちんと理解し適切な仕事につければ、普通の社会生活を送ることができます。

🇰🇮低出生体重性低身長症

極めて小さく生まれ、3歳を過ぎても身長が一定の基準に追い付かない低身長症

低出生体重性低身長症とは、妊娠週数(在胎週数)の割に極めて小さく生まれ、3歳を過ぎても身長が一定の基準に追い付かない状態。SGA(Small-for-Gestational Age)性低身長症とも呼ばれます。

子供の低身長症は、身長の伸びを妨げる原因によっていくつかの種類に分けられますが、その中の1つに相当します。

厚生労働省の調査によると、生まれたばかりの新生児の平均身長は男児49・2センチ、女児48・7センチ、平均体重は男児3076グラム、女児2990グラムと報告されています。実際には平均より大きく生まれる新生児もいれば、平均より小さく生まれる新生児もいるわけで、小さく生まれた新生児の中には、母親の胎内にいる間の妊娠週数(在胎週数)からみた時に、身長の伸びや体重の増加がゆっくりで、一定の基準に追い付かずに生まれてくる新生児がいます。

こうした新生児は、胎内発育遅延児(SGA児)と呼ばれます。原因については、母体や胎盤が原因のこともあれば、胎児や遺伝の問題ということもあり、さまざまな要因が重なりあっていると考えられます。

男児の標準的な成長をみると、1歳までに25センチ、1~2歳の間に10センチ、2~3歳の間に8センチ伸びますから、約50センチで生まれた新生児は3歳の時におよそ93センチに成長すると予測できます。子供の体には、こうした成長パターンが組み込まれているために、たとえ小さく生まれたとしても、10人中9人の子供は3歳になるまでの間に、身長が標準の範囲まで追い付きます。

しかし、10人中1人くらいの割合で、3歳を過ぎても身長が標準の範囲まで追い付かない子供がいます。こうした子供は、低出生体重性低身長症(SGA性低身長症)と呼ばれます。

低出生体重性低身長症の子供は、成長ホルモンの分泌はほぼ正常なものの、幼児期を過ぎ、小学校に上がってからも低身長のまま経過することが報告されています。また、通常に比べて思春期の訪れがやや早い傾向もあります。低身長のまま思春期を早く迎えることで、成人になっても背が低いことが予測されます。

低出生体重性低身長症か否かを知る手段の1つに、成長曲線をつける方法があります。成長曲線は、生まれた時からの子供の成長を折れ線グラフで示すもので、母子手帳にも付いています。子供の身長の測定値を継続して記載し、過去のものと線で結んでグラフ化します。あらかじめ標準的な身長グラフも記載されているので、その標準身長と子供の身長を比較してみましょう。もともと、胎内発育遅延児(SGA児)で、3歳になっても-2SD(標準偏差)以上の差がみられる場合は、低出生体重性低身長症が強く疑われます。

子供に低出生体重性低身長症が疑われたら、小児科、小児内分泌科の専門医を受診してください。低身長を改善するために、3歳から成長ホルモンによる治療を始めることが可能です。成長ホルモンの効果は個人差がありますが、効果を出すにはなるべく早い時期から治療を開始するほうが望ましいとされています。

低出生体重性低身長症の検査と診断と治療

小児科、小児内分泌科の医師による診断では、まず生まれた時の様子や、妊娠週数(在胎週数)と体重と身長、その後の成長の様子などを聞くので、受診する保護者には母子手帳や成長曲線の記録などを持参するようにしてもらいます。また、身長と体重の測定などで現在の成長の状況なども調べ、血液中の成長ホルモンの量や、ほかの下垂体ホルモンの量を測定し、総合的に判断します。

低身長には、低出生体重性低身長症以外にも、体質性のもの、疾患によるものなどさまざまな原因が考えられるため、下垂体とその周辺のMRI検査、CT検査を行うこともあります。鑑別すべきものに、思春期遅発症、甲状腺(こうじょうせん)機能低下症による低身長などがあります。

小児科、小児内分泌科の医師による治療は、ヒト成長ホルモンを注射することで、脳の下垂体から分泌される成長ホルモンを補って、背の伸びを促進させる成長ホルモン療法を行います。ヒト成長ホルモンは、以前はヒト下垂体から抽出していたので、その生産量に限りがありました。現在では、遺伝子工学技術を応用して大量に産出されるようになり、十分な治療が行われています。

本剤は注射液ですが、毎日少量ずつ投与するのが効果的で、自己注射が認められているため、小さい時は保護者が、大きくなると本人が注射の打ち方を習い、毎日1回寝る前に皮膚の下5ミリの部位に皮下注射します。

現在、使いやすくて安全なペン型の注射器が普及しています。従来のものよりも針先を細くして痛みを少なくしたり、注射器に補助具をつけることで針先が見えなくなるなどの工夫がされています。また最近では、ボタンを押すだけで注射できる全自動の注射器や、針のない圧力式注射器も登場しています。このような注射器を使えば安定した注射ができ、自宅で治療を続けることができます。ヒト成長ホルモンの注射を始めた子供の日常生活上の特別な注意点はなく、運動は自由、食事も自由です。

成長ホルモン療法により1年目は平均8センチぐらいの身長の伸びが認められますが、2年目、3年目と伸びは落ちていきます。すぐに正常身長になるというような治療ではありません。長期治療した例の最終身長の平均は、男性で160センチ、女性で148センチ前後とされています。

🇹🇱低体重児

低体重児とは、生まれた時の体重が2500g未満の新生児のこと。正しくは、低出生(ていしゅっしょう)体重児といいます。近年は増加傾向にあり、妊婦のやせ志向や、妊娠中の喫煙、飲酒などが、その背景にあると見なされています。

この低(出生)体重児はさらに、出生体重が1500g未満の場合は極低(出生)体重児に、1000g未満の場合は超低(出生)体重児に分類されます。かつては、極低(出生)体重児を極小未熟児、超低(出生)体重児を超未熟児と呼んでいました。

原因を大きく分けて、在胎週数が短くて出生する早産のために、赤ちゃんの出生体重が低くなる場合と、子宮内での体重増加が悪い子宮内発育制限のために、赤ちゃんの出生体重が低くなる場合があります。

子宮内発育制限は、先天性心疾患、染色体異常など胎児自身の異常や、妊娠中毒症、極端なやせ、喫煙や飲酒など妊婦側の異常、胎盤および臍帯(さいたい)の異常で起こります。

早産と子宮内発育制限、両方の原因が組み合わさって出生する赤ちゃんは、早産低出生体重児といいます。

低出生体重児であっても、在胎週数がほぼ正期産に近くて先天性異常などを持たず、体の機能が成熟している赤ちゃんには、あまり問題はありません。出生直後に低血糖などになりやすいものの、出生後の授乳、体重増加はおおむね良好に推移します。

小さく早く生まれた赤ちゃんは、体の機能が未熟なために生後さまざまな合併症を起こしやすく、免疫力も弱いために重症の感染症にかかりやすくなります。特に、極低体重児や超低体重児では、その傾向が高くなりますので、在胎週数36週未満の赤ちゃんは一般に、新生児特定集中治療室(NICU)に入って保育されます。

2022/08/14

🇩🇴新生児ヘルペス

新生児が単純ヘルペスウイルスに感染して、生後2週間以内に発症する疾患

新生児ヘルペスとは、新生児が単純ヘルペスウイルスに感染して、生まれてから2週間以内に発症する疾患。新生児単純ヘルペスウイルス感染症とも呼ばれます。

新生児ヘルペスの感染ルートは、胎内感染、産道感染、出生後の感染の3つが考えられています。

胎内感染は胎児感染とも呼ばれ、母親が単純ヘルペスウイルスに感染した場合に、子宮の中にいる胎児も垂直感染するもの。発生頻度は、あまり多くはありません。

産道感染は、母親が単純ヘルペスウイルスに感染した場合に、新生児が生まれる時に通る産道で垂直感染するもの。この感染ルートによる発生頻度が、一番多くなっています。母親が単純ヘルペスウイルスに初感染だった場合には、新生児への感染率もさらに高くなります。

出生後の感染は、新生児が生まれた後に水平感染するもの。単純ヘルペスウイルスに感染して口唇ヘルペスなどを持つ母親や父親、医療従事者、お見舞いにきてくれた人から、キスなどを通じて感染します。

新生児ヘルペスを発症した新生児の症状は、単純ヘルペスウイルスが増殖する場所により、全身型、中枢神経型、皮膚型(表在型)の3つに分類されます。

全身型の新生児ヘルペスは、単純ヘルペスウイルスが血液を介して全身の臓器に広がるもので、新生児ヘルペスの半分以上を占めます。出生後2~7日で発症することが多く、授乳力の低下、微熱、活動性の低下などの症状がみられます。無呼吸や、皮膚が黄色になる黄疸(おうだん)がみられることもあります。

この全身型の場合、必ずしもヘルペスの特徴である水疱(すいほう)がみられるわけではありません。しかも、予後が悪く、治療で抗ウイルス剤が使用可能になった現在でも、約40パーセントの新生児が死亡しています。生存した場合も、高い確率で重度の後遺症を残します。

中枢神経型の新生児ヘルペスは、全身型に比べ発症が遅く、活動性の低下や微熱、けいれんなどの症状が現れます。全身型と同様に、必ずしも水疱がみられるわけではありません。この中枢神経型では、新生児ヘルペス脳症などの後遺症を残すことがあります。

皮膚型(表在型)の新生児ヘルペスは、皮膚や口、目などに紅斑(こうはん)を伴う水疱がみられるのが特徴で、予後は良好です。この皮膚型は、新生児ヘルペスの2割程度を占めます。

単純ヘルペスウイルスには1型と2型があり、大人のヘルペスの場合、1型は口や目などの上半身に感染することが多く、2型は性器などの下半身に感染することが多いのが一般的です。新生児ヘルペスの場合、2型の感染が8割程度、1型の感染が2割程度を占めます。2型の感染は新生児ヘルペス髄膜炎、1型の感染は新生児ヘルペス脳炎を起こすことが多いとされています。

新生児が母乳やミルクを飲む量が少なくなったり、元気がなくなったり、微熱が出たりという症状が出た際は、小児科、産婦人科を受診することが必要です。通常の細菌感染と間違いやすいため、注意が必要です。

新生児ヘルペスの検査と診断と治療

小児科、産婦人科の医師による診断では、臨床症状から新生児ヘルペスが疑われる時には、速やかに治療を開始することが一般的です。病変部から採取した細胞に多核の巨細胞を認めたり、単純ヘルペスウイルス抗原を検出する補助診断法が有力ですが、感度が低いことが難点です。

小児科、産婦人科の医師による治療では、アシクロビルやバラシクロビルなどの抗ウイルス剤を注射し、水疱には軟こうを塗布します。栄養補給、呼吸補助、けいれんのコントロールなどの対症療法も、併せて行います。

また、妊娠中の母親が単純ヘルペスウイルスに感染したことが事前に判明した場合には、妊娠の時期によって適切な治療を行います。妊娠初期では、胎児に影響が出る可能性があるので抗ウイルス剤は使いませんが、妊娠中期くらいになれば、抗ウイルス剤を服用して治療します。

出産予定の3週間以内に単純ヘルペスウイルスに感染している場合には、分娩時の新生児への母子感染のリスクを回避するために、帝王切開による出産を選択する場合もあります。

🇩🇴新生児ヘルペス脳炎

新生児が単純ヘルペスウイルスに感染して脳炎症状を現す疾患

新生児ヘルペス脳炎とは、単純ヘルペスウイルス1型(口唇ヘルペス)あるいは単純ヘルペスウイルス2型(性器ヘルペス)の初感染時に発症し、脳炎症状を現す疾患。

新生児ヘルペス脳炎の感染ルートは、胎内感染、産道感染、出生後の感染の3つが考えられています。

胎内感染は胎児感染とも呼ばれ、母親が単純ヘルペスウイルスに感染した場合に、子宮の中にいる胎児も垂直感染するもの。発生頻度は、あまり多くはありません。

産道感染は、母親が単純ヘルペスウイルスに感染した場合に、新生児が生まれる時に通る産道で垂直感染するもの。この感染ルートによる発生頻度が、一番多くなっています。母親が単純ヘルペスウイルスに初感染だった場合には、新生児への感染率もさらに高くなります。

出生後の感染は、新生児が生まれた後に水平感染するもの。単純ヘルペスウイルスに感染して口唇ヘルペスなどを持つ母親や父親、医療従事者、お見舞いにきてくれた人から、キスなどを通じて感染します。

新生児ヘルペス脳炎を発症した新生児の症状は、単純ヘルペスウイルスが増殖する場所により、全身型、中枢神経型の2つに分類されます。

全身型の新生児ヘルペス脳炎は、単純ヘルペスウイルスが血液を介して全身の臓器に広がるもの。出生後2~7日で発症することが多く、授乳力の低下、微熱、活動性の低下などの症状がみられます。無呼吸や、皮膚が黄色になる黄疸(おうだん)がみられることもあります。必ずしもヘルペスの特徴である水疱(すいほう)が皮膚や口、目などにみられるわけではありません。

予後が悪く、治療で抗ウイルス剤が使用可能になった現在でも、約10パーセントの新生児が死亡しています。生存した場合も、高い確率で重度の後遺症を残します。

中枢神経型の新生児ヘルペス脳炎は、単純ヘルペスウイルスが血液を介して脳関門を通過し、脳内に到達するもの。全身型に比べて遅く、出生後11日ほどで発症し、授乳力の低下、活動性の低下や微熱、けいれんなどの症状が現れます。全身型と同様に、必ずしも水疱がみられるわけではありません。

この中枢神経型でも、運動まひや知的障害、てんかんなどの後遺症を残すことがあります。

新生児ヘルペス脳炎においては、単純ヘルペスウイルス1型の感染が単純ヘルペスウイルス2型の感染より2倍多いとされています。

新生児が母乳やミルクを飲む量が少なくなったり、元気がなくなったり、微熱が出たりという症状が出た際は、小児科、産婦人科を受診することが必要です。

新生児ヘルペス脳炎の検査と診断と治療

小児科、産婦人科の医師による診断では、臨床症状から新生児ヘルペス脳炎が疑われる時には、速やかに治療を開始することが一般的です。

血液検査、髄液検査、頭部CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査を行うこともあります。血液検査では、肝機能異常、LDH(乳酸脱水素酵素)増加を高頻度に認めます。髄液検査では、ウイルス分離法ないしPCR法という遺伝子検査で採取した髄液を調べると、単純ヘルペスウイルスのDNAが検出されます。頭部CT検査などの画像診断では、局在性脳炎のみならず、しばしば全脳炎の様相を確認します。

小児科、産婦人科の医師による治療では、アシクロビルやバラシクロビルなどの抗ウイルス剤を長期間にわたって点滴注射し、水疱には軟こうを塗布します。栄養補給、呼吸補助、けいれんのコントロールなどの対症療法も、併せて行います。

また、妊娠中の母親が単純ヘルペスウイルスに感染したことが事前に判明した場合には、妊娠の時期によって適切な治療を行います。妊娠初期では、胎児に影響が出る可能性があるので抗ウイルス剤は使いませんが、妊娠中期くらいになれば、抗ウイルス剤を服用して治療します。

出産予定の3週間以内に単純ヘルペスウイルスに感染している場合には、分娩時の新生児への母子感染のリスクを回避するために、帝王切開による出産を選択する場合もあります。

🇬🇶新生児メレナ

消化管から出血し、血便や吐血を生じる新生児の疾患

新生児メレナとは、主に生後1日から数日に消化管から出血し、血便が出たり血を吐いたりする疾患。

この新生児メレナは従来から、血液を凝固させるために必要なビタミンKの欠乏による出血性疾患と見なされ、現在は予防のために出生当日と退院時、1カ月健診時にビタミンK2シロップを飲ませていますが、消化管からの出血にはさまざまな原因があります。

まず、仮性メレナと真性メレナの2つに分けられます。仮性メレナは、新生児が出産の際に母胎血を飲み込んだり、授乳の際に母親の乳首周辺からの出血を飲み込んで、黒色の血便を排出したり、血液を吐いたりするもの。

一方、真性メレナは、新生児の消化管自体からの出血によるもので、さらに特発性メレナと症候性メレナの2つに分けられます。

特発性メレナは、血液凝固の仕組みが障害されたもので、それ以外に原因となる疾患の発見されないもの。生まれたばかりの新生児では、生理的に凝固因子が減少した状態にあり、腸内細菌の働きが発育して凝固因子の一つであるビタミンKを作れるようになるには数日を要し、母乳に含まれるビタミンKの量も少ないので、凝固因子の減少の程度が強く起こったりすると発症します。

症候性メレナは、胃、腸管などの消化管にはっきりした疾患があって、その部分症状として血便をみるもの。消化管の疾患としては、食道炎、出血性胃炎、胃潰瘍(かいよう)、胃穿孔(せんこう)、十二指腸潰瘍、腸重積症、壊死(えし)性腸炎、細菌性腸炎、ミルクアレルギーなどがあります。

特発性メレナの多くは、生後1〜5日の間に症状が現れます。授乳とは無関係に嘔吐(おうと)が起こり、吐物には、胃液のために黒褐色に変色した血液が混じっています。便も黒いタール様です。

出血が大量の場合には、吐物や便に新鮮な血液が混じり、皮膚の色が貧血のため青白くなることもあります。へそからの出血や、皮下出血を認めることもあります。

生後3週間以降に発症すると、頭骸(とうがい)内出血を引き起こす可能性が高まり、重症だと後遺症が残ることもあります。母乳栄養児で生後2〜3カ月して頭蓋内出血を引き起こす場合は、乳児ビタミンK欠乏症といいます。

新生児メレナの検査と診断と治療

医師による診断では、仮性メレナと真性メレナを区別するアプト試験、貧血や血小板減少の有無を調べる血液検査、肝機能異常の有無を調べる検査、出血傾向の有無を調べる検査、細菌性腸炎の有無を調べる便培養、X線検査、内視鏡などにより総合的に判断し、重症度の評価を行います。

仮性メレナの場合は、治療の必要はありません。特発性メレナでは、減少した凝固因子がビタミンKの作用によって肝臓で合成されるので、治療にはビタミンKが使われます。出血の程度が強く、緊急の止血を要する時は、新鮮凍結血漿(けっしょう)輸血を行います。

そのほか、血小板輸血、胃洗浄や、制酸剤、胃粘膜保護剤、潰瘍の薬であるヒスタミンH2受容体拮抗(きっこう)剤の投与などが行われ、24時間以内に循環血液量の60パーセント以上の出血が続く時には外科的手術が行われます。

🇷🇸新生児溶血性黄疸

新生児の赤血球が急激に破壊され、早発黄疸や貧血などの症状が現れる疾患

新生児溶血性黄疸(おうだん)とは、さまざまな原因により新生児の赤血球が急激に破壊され、生後24時間以内に出現する早発黄疸や貧血などの症状が現れる疾患。

血液型不適合妊娠や母体の疾患によるもの、新生児の赤血球の先天異常によるもの、薬剤や感染によるものの大きく3つに、新生児溶血性黄疸は分けられます。

この中では、血液型不適合妊娠に伴う新生児溶血性黄疸が最も多くみられ、母親と新生児の間のABO式血液型不適合、およびRh式血液型不適合が代表的です。

ABO式血液型不適合は、O型の母親がA型もしくはB型の子供を妊娠した場合に起こるものです。このABO式血液型不適合は全出生の約2パーセントに認められ、ABO式血液型不適合溶血性黄疸の発症頻度は3000人に1人です。

Rh式血液型不適合は、Rh陰性の母親がRh陽性の子供を妊娠した場合に起こるものです。Rh式血液型不適合は、ABO式血液型不適合に比べて重症化することが多くなっています。

どちらの場合も、新生児の血液型抗原が母親に欠如している場合、その血液型抗原に感作されて、これに対する抗体が母親の血液中にできます。この抗体は、流産や出産時の胎盤剥離(はくり)の際に、少量の胎児赤血球が母体の血液に入ってできることが多いため、普通、初回の妊娠では起こりません。

2回目以降の妊娠中には、母親の血液中の抗体が胎盤を通過して胎児の血液中に入ると、抗原抗体反応が起こり、胎児の赤血球が破壊(溶血)される際に、その中のヘモグロビン(血色素)から作られる大量のビリルビン(胆汁色素)ができてしまうことがあります。ビリルビンが胎児の体内で異常に増え、体内に一定量以上残った場合は、組織に蓄積するために皮膚などが黄色くなる黄疸を来します。

ABO式血液型不適合溶血性黄疸は、初回の妊娠から起こり、第1子から発症する可能性もあります。一方、Rh式血液型不適合溶血性黄疸は、Rh陰性の母親がRh陽性の子供を産み、次回の妊娠で胎児がRh陽性である場合に問題になります。日本人のRh陰性の頻度は、約0・5パーセントとされ、200人に1人です。

なお、輸血歴のある女性が輸血血液に感作され、妊娠出産時に特殊な血液型不適合を示す可能性もあります。

赤血球の破壊(溶血)は、胎児や新生児に貧血をもたらすほか、出生後の新生児に重症黄疸をもたらします。

妊娠中は、大量にできたビリルビンが胎盤を通じて母体へ排出されるため、胎児の黄疸は軽くてすみます。ところが、破壊(溶血)が強い場合は、貧血によって胎児水腫(すいしゅ)となり、胎内で死亡することもあります。

新生児溶血性黄疸の検査と診断と治療

小児科の医師による診断では、ABO式、Rh式血液型など母子間の血液型不適合の有無を調べます。母子間に血液型不適合があり、母体血液中に胎児の赤血球に感作された結果生じた抗体が認められた場合や、新生児の赤血球に胎盤を通して移行してきた母親由来の抗体が認められた場合に、診断が確定します。

小児科の医師による治療では、新生児の血液中のビリルビン値により、光線療法や、免疫グロブリンの点滴静注を行います。重症例では、交換輸血が必要です。

光線療法は、新生児を裸にして強い光を照射することで、ビリルビンをサイクロビリルビンに化学変化させる治療法です。サイクロビリルビンは尿によって排出されるため、体の中のビリルビンは速やかに減少します。強い光線による視神経の障害を避けるため、眼帯で遮光する必要がありますが、光線治療は長時間受けても副作用はみられず、有効な治療法です。

光線療法でビリルビン値が下がらない場合には、交換輸血を行います。新生児自身の血液をゆっくり取り出しながら、見合う量を輸血する治療法で、新生児自身の約85パーセントの血液が交換されます。

免疫グロブリンの点滴静注は、第2子以降のRh式血液型不適合溶血性黄疸を予防するための治療で、第1子出産直後に、抗Rh抗体を含むγ(ガンマ)グロブリンを母体に点滴静注し、2回目以降の妊娠の際に胎児の血液中で抗原抗体反応が起こらないようにします。

🇦🇷百日ぜき

百日ぜきとは、急性の呼吸器系の感染症で、百日ぜき菌の感染によって起こります。乳幼児の病気というイメージがありますが、最近の日本では、乳幼児の感染が年々減っているのに、大人の感染は増加傾向にあり、全体の4割近くを占めています。大人の感染者には、20~40代の人が多くみられます。

その病名が示すように、独特のせき発作が長期にわたって持続するのが、百日ぜきの特徴です。通常、感染後7~16日間の潜伏期間を経て、せきや鼻水などの普通の風邪症状で始まります。やがて、せきの回数が増えて程度も激しくなります。典型的なせき発作では、5~15回かそれ以上の回数の連続したせきが出て、その後に長くて高い音のする深い吸気があります。発作の後は、呼吸は正常に戻りますが、その後すぐに新たなせき発作が始まります。

多くの場合、熱はないのですが、途切れなく続く、短い連続的なせき込みによる嘔吐(おうと)やチアノーゼ、顔面の浮腫(ふしゅ)、結膜充血などが見られます。せき発作は夜間のほうが起こりやすいため、不眠の原因になることもあります。

この百日ぜきには予防接種(ワクチン)があり、近年では、百日ぜき、破傷風、ジフテリアの3種が一緒になった三種混合ワクチンとして接種されます。しかし、ワクチンの効果は一生続くわけではなく、次第に低下していくので、子供のころにワクチン接種を受けたのに、大人になってかかる人が出てくるわけです。

もっとも大人では、せきは長期間続くものの、典型的なせき発作は見られず、やがて回復します。しかし、せきだけなので、百日ぜきと分からないままにしていると、ワクチン未接種の乳幼児に移す可能性があり注意が必要です。

2歳未満の乳幼児の場合、最も症状が重くなります。病気は約6週間続き、軽いかぜのような症状の時期、重いせきの発作が起こる時期、そして徐々に回復する時期の3段階で進行します。

乳児では、息苦しさと呼吸の一時的な停止が起こり、皮膚が青くなることがあります。約4分の1は肺炎を発症し、呼吸困難に陥ります。百日ぜきの結果として、中耳炎もしばしば発症します。まれに、乳児の脳に影響を与えることもあります。脳の出血、腫(は)れ、炎症などにより、けいれん、錯乱、脳の損傷、精神遅滞などが生じます。

百日ぜきに対する治療では、エリスロマイシン、クラリスロマイシンなどのマクロライド系抗菌薬が使われます。これらは、特に早期のうちに使うと有効です。周囲の人への感染を防ぎ、せきを早く治すためにも、しつこいせきがなかなか取れないようなら、早めの受診が勧められます。

🇨🇴新生児落屑

新生児の皮膚がポロポロと剥がれ落ちる状態

新生児落屑(らくせつ)とは、新生児の皮膚の表面がカサカサになってむけ、はがれ落ちる状態。新生児皮膚落屑とも呼ばれます。

まるで脱皮のように古い皮膚がポロポロと落ちて、その下から新しい皮膚が現れます。体のいろいろなところから始まり、全身の皮がむけるまで続きます。

これは新生児にみられる生理現象なので、心配する必要はありません。生後1~2日から生後1カ月のうちに起こり、はがれ始めたら1~2週間程度ですべてはがれ落ちるのが、一般的です。

新生児落屑の原因は、母親の胎内の中から外の世界に出てきたことによる環境の変化だと考えられています。胎児の時は母親の胎内の中で温かな羊水に包まれているため、皮膚は常に潤っている状態ですが、外の世界に出た瞬間から空気や光に触れて皮膚が急激に乾燥していきます。

生まれた当初は、胎脂(たいし)と呼ばれる保湿機能を持つ成分が体の表面を覆っているため、急激な乾燥から皮膚を守ってくれます。生後、日数が経つにつれて胎脂の水分は蒸発し目立たなくなっていきますが、その保湿機能はもう少し長く働いてくれます。

やがて胎脂の付着が減ってゆくと、皮膚が乾燥していき、顔や手の皮膚までがポロポロと落ちる新生児落屑が起こります。

中には新生児落屑が現れない新生児もいますが、それは母親の胎内にいる時から胎脂が落ちて、皮膚もむけてしまっているからだと考えられるので、心配はいりません。

新生児落屑に対しては、特別なケアは必要ありません。一見すると乾燥しているようなので、ベビーローションなどで保湿したくなりますが、こらえて様子をみましょう。新生児が母親の胎内から出て、外界への環境変化に対応している途中なので、まずは何も塗らないことです。

落屑の量が多くて気になるようなら、沐浴(もくよく)時にガーゼで軽く洗って落としてあげましょう。ただし、自然にはがれてくるものなので、強くこすったり、手でつまんだり、無理やり引っ張ってはがすのは禁物です。下から現れる新しい皮膚はとても薄いので、新しい皮膚まではがれてしまうこともあります。

新生児落屑であれば、わざわざ産科、または小児科か皮膚科に行く必要はありません。生理的な現象なので、治療する必要もないからです。

ただ、新生児落屑を無理にはがしてしまって、新しい皮膚までむけてしまったような時は、皮膚炎を起こす可能性もあるので、一度、産科、または小児科か皮膚科を受診しましょう。

また、新生児落屑が長く続くような場合は、注意が必要です。本来であれば新生児落屑は1~2週間程度で終わるので、2週間以上続くような場合はなんらかの皮膚の疾患を発症している可能性があるからです。

極めてまれですが、全身の皮膚がうろこ状になってしまう先天性魚鱗癬(ぎょりんせん)のような疾患は、新生児落屑に似ていることがあるため注意が必要です。

>新生児の皮膚はまだ完成されたものではないので判断がつきにくいですが、少しでも違和感があるようなら産科、または小児科か皮膚科を受診すれば安心です。

🇻🇪新生児涙嚢炎

生まれ付き涙の排出がうまくいかないために、涙が集まる涙嚢に炎症が起きる疾患

新生児涙嚢(るいのう)炎とは、生まれ付き涙の排出がうまくいかないため、目の内側と鼻の間で、下まぶたに近い部分にある涙嚢という袋に炎症が起きる疾患。

涙は目じりの側の上まぶたの外方にある涙腺(るいせん)で作られ、それが常に結膜や黒目の表面を潤して、上まぶたと下まぶたの内側の縁に各1個ずつある涙点から涙小管と呼ばれる細い管に入って、涙嚢に集まります。さらに、鼻涙管を通って鼻腔(びこう)に抜けて出ます。

ところが、新生児によっては、鼻涙管から鼻腔に通じる部分に膜のようなものが残っていることがあります。これを先天性鼻涙管閉塞(へいそく)と呼び、涙が鼻に流れることができないため、目にたまり、外にこぼれます。

涙嚢にいつも涙がたまるようになると、細菌が繁殖しやすくなるため、炎症を起こすことがあります。これが新生児涙嚢炎です。新生児はもともと鼻涙管が細いため、鼻涙管閉塞を起こしていない正常な新生児が新生児涙嚢炎になることも、よくあります。

新生児涙嚢炎が進むと、涙嚢の部分がはれて、触ると痛がり、目やにが多く出ます。涙嚢を圧迫すると、膿(うみ)が出てくることもあります。

新生児が生まれて間もなくから目やにが多く、いつも涙を浮かべているような状態が認められた時は、お湯に浸した清潔なガーゼでこまめに目やにふき取り、様子を見守ります。こうしたケアで治まれば心配いりません。

しかし、目がはれたり、赤くなったり、目頭を圧迫すると膿が出てくるようなら、眼科を受診することが勧められます。

新生児涙嚢炎の検査と診断と治療

眼科の医師による診断ではまず、目頭にある涙点から生理食塩水を注入する涙管通水検査を行います。正常であれば、生理食塩水が鼻の奥に通過してゆくことが確認できますが、生理食塩水が涙点から逆流する場合は、先天性鼻涙管閉塞であると診断することができます。

さらに、逆流した生理食塩水の中に膿が多く含まれている場合は、涙嚢炎まで合併していると判断できます。

眼科の医師による治療では、抗生物質の点眼や内服を行います。点眼した薬をよくゆき渡らせるためと、たまった膿を排出する目的で、涙嚢のマッサージも同時に行うと効果的です。

炎症がある程度治まっも、点眼は続けて行い、再発を予防します。

根本的に治療するためには、鼻涙管閉塞を解消します。自然治癒も期待できますが、もし自然に開通しない場合には、ブジーという細い針金のようなものを涙点から挿入し、涙嚢から鼻涙管に通して、膜様の閉塞部分を突き破るようにします。

この処置で鼻涙管が開通できないことがごくまれにあり、この場合は涙嚢から鼻腔へ涙の道を作る手術を行うこともあります。

🇵🇰水痘(水ぼうそう)

全身に水膨れが現れ、かゆみを伴う感染症

水痘(水ぼうそう)とは、ヘルペスウイルスの一種の水痘・帯状疱疹(たいじょうほうしん)ウイルスが原因で起こる疾患。全身に次々と小さな水膨れが現れ、かゆみ、発熱を伴います。

一般に冬から春にかけて、子供に流行する疾患で、時折、大流行することもあります。感染経路は、主に空気感染、飛沫(ひまつ)感染で、水疱液の接触感染もあります。ウイルスは強い感染力を持っているため、病院などでは同一フロアにいるだけで軽度の接触と見なします。

従って、水痘にかかった時には、水膨れが完全にかさぶたになるまで、幼稚園や学校、会社などは休まなければなりません。通常は1週間くらいで治り、免疫力が低下している場合には、重症化することがあります。

ほとんどの人が子供の時にかかりますが、最近では、小児期に感染する機会が減ってきていることから、大人になってから初めてかかる例も増えてきています。大人の水痘は、脳炎や肺炎の合併が多くて重症となることが多いので、注意が必要です。また、妊婦が出産直前に感染すると、生まれた新生児は重症水痘になりやすいため、緊急の処置が必要になります。

潜伏期間は11~21日で、発疹(はっしん)の現れる1日前から、軽い発熱、だるさ、食欲低下がみられます。症状の初めは、数個の発疹がみられるだけですが、その後数時間で、全身に円形の赤い発疹が現れ、すぐにエンドウ豆大の水膨れになります。水膨れは数日でかさぶたとなりますが、次々と新しく発疹が現れるので、新旧さまざまな発疹が混在してみられるのが特徴です。

発疹は胸の辺りや顔に多くみられるほか、頭髪部や外陰部、口の中の粘膜など、全身の至る所にみられます。発疹の数が少なく軽症な場合には、熱も38~39℃くらいで3~4日で解熱します。重症の場合には、39℃前後の熱が1週間ほど続くこともあります。

また、かゆみを伴うために引っかいてしまうと、細菌の二次感染を起こす危険性があります。水膨れが乾燥し、かさぶたになってから、2週間くらいでかさぶたはとれます。少し跡が残ることがあります。

一度かかると免疫ができるため、再び水痘にかかることはほとんどありません。しかし、水痘の原因である水痘・帯状疱疹ウイルスは、初感染した水痘が治った後も神経節に潜伏しています。そして、数十年後に、疲れがたまったり、体の抵抗力が落ちたりするなど、何らかのきっかけにより、潜んでいたウイルスが再び暴れ出すと症状が現れます。

この場合、水痘のように全身に水膨れが現れることはなく、神経に沿って帯状に水膨れが現れる帯状疱疹として発症します。

症状に合わせた治療法

水痘(水ぼうそう)は軽いものから重いものまであり、発症者によってさまざまな症状が現れるので、医師の判断の下に症状に合わせた治療を受けるようにしましょう。

水痘の典型例では多くの場合、その皮膚症状から容易に診断できます。非典型例でほかの病気との区別を要する場合や、早期に診断を確定する必要がある場合などには、水疱の底にある細胞を採取し、蛍光抗体法を用いて水痘・帯状疱疹ウイルス抗原を検出します。また、抗体検査を水痘の発症者に行えば、ウイルスの初感染であることが確認できます。

治療には対症療法しかありませんが、原因となるウイルスの増殖を抑える治療と、発熱、かゆみなどの症状を和らげる治療があります。

乳幼児期の水痘は軽症である場合が多いので、非ステロイド性解熱鎮痛薬、かゆみ止めの抗ヒスタミン薬やフェノール亜鉛華軟膏(なんこう)などが処方され、安静などによる対症的な治療が行われます。

年長児あるいは成人などでは、比較的に重症化することが多いので、抗ウイルス薬のアシクロビル、バラサイクロビルなどの内服を行います。

悪性腫瘍(しゅよう)やその他の疾患により免疫状態が低下している場合では、致死的になることがあるので、入院した上でアシクロビル、ビダラビンなどの点滴静脈注射が行われる場合があります。

水膨れが壊れたら、抗生剤入りの軟膏で二次感染を防ぎます。また、化膿(かのう)がなければ、ドレッシング材などで覆って湿潤環境を維持することで、皮膚に跡が残りにくくなる場合があります。

予防手段としては、水痘ワクチンが使用されます。水痘ワクチンは弱毒化生ワクチンであり、接種により80~90パーセント程度の発症阻止効果があります。発症した場合も症状は軽くてすみますし、ワクチンによる重い副作用もほとんど発生していません。

日常生活で注意すること

全身症状が軽くても、発疹がすべてかさぶたになって症状が治まるまで、安静にしていることが大切。熱が高い場合には、両脇(わき)を冷やすなどとともに、脱水状態にならないように水分を十分取るようにします。

水痘(水ぼうそう)はかゆみを伴うため、つい引っかいてしまいがちですが、水膨れをつぶすと、化膿したり、跡が残ることもあります。水膨れはつぶさないようにし、手などを清潔にして細菌感染を起こさないようにします。引っかいてしまわないように、爪(つめ)を丸く切ったり、手袋をするのもよいでしょう。

また、水痘・帯状疱疹ウイルスは伝染力が強いので、発疹が現れる1日前からかさぶたになるまでのおよそ1週間くらいは、他人に感染する可能性があります。くしゃみや咳(せき)、会話などによって飛び散ったウイルスが、気道から吸引されて移るため、水痘にかかったことのない人の近くに寄らないようにします。

特に、家族の中に水痘にかかったことのない人がいる場合には、感染する可能性が高く、家族から感染した場合は重症化することが多いので、注意が必要です。

熱がある時や新しい水膨れが増えている間は、入浴は控えます。ほとんどの水膨れがかさぶたになれば、これらを破らないように気を付けながら入浴してもよいでしょう。入浴した後には、皮膚から細菌が入らないように処置が必要なこともあるので、医師に相談して指示を受けましょう。

学校保健法による第2類学校伝染病に指定され、すべての発疹がかさぶたになるまでは、幼稚園や学校を休ませることになっていますので、それまでは子供が元気でも休まなければなりません。すべての発疹がかさぶたになれば、人に移すこともないので、集団の中に入っても大丈夫です。

通常、1週間程度で治りますが、もし4~5日を過ぎても発熱が続いたり、体がだるいなど具合が悪いような場合には、他の病気を合併している可能性がありますので、すぐに医師に相談しましょう。

🇵🇰水頭症

水頭症(すいとうしょう)とは、脳脊髄(せきずい)液の産生、循環、吸収などいずれかの異常によって、髄液が頭蓋(とうがい)内にたまり、脳の内側で4つに分かれて存在する脳室が正常より大きくなる病気です。脳脊髄液による脳の圧迫が、脳機能に影響を与えます。

生まれ付きの異常で起こっている場合を先天性、生まれてから生じた異常で起こってきた場合を後天性と区別しています。

先天性水頭症の原因としては、先天的な障害(奇形)や、母胎内での感染が挙げられます。いくつかの骨が結合してできている頭蓋骨は、生まれてしばらくの間、骨同士の結合が弱く、軟らかく組み合わさっています。生まれ付き水頭症を持っている乳児や、頭蓋骨の結合が軟らかい時期に水頭症になった乳児は、脳脊髄液が余分にたまって大きくなった脳室の圧力によって、頭蓋骨を押し広げる状態が続く結果、頭が大きくなることが起こります。

後天性水頭症の原因としては、頭蓋内出血(脳室の内部への出血の波及、けがによる硬膜下血腫(けっしゅ)など)、炎症(髄膜炎に代表される感染症など)、脳腫瘍(しゅよう)などが、年齢を問わず挙げられます。

頭の拡大が目立つ乳児までの時期以降、余分な脳脊髄液による内圧の上昇は、脳を直接圧迫する力となり、頭痛、吐き気、嘔吐(おうと)を引き起こします。食欲不振、体重減少、全身倦怠(けんたい)感など頭の症状とは考えにくいことも起こり、長い間、気付かれない場合もあります。また、神経への影響から、視力の低下、眼の動き方の不自由などを起こします。

一方で、大人の水頭症には、頭の圧力が上がった症状を示さない正常圧水頭症があります。脳室が大きくなっていて、認知障害、歩行障害、尿失禁といった特徴的な症状がありながらも、頭の圧力は高くなりません。くも膜下出血後や髄膜炎の治った後に認められることが多く、原因不明の特発性のものもあります。

水頭症そのものに対する治療としては、一時的な、緊急避難的な治療と、永続的な治療が行われます。

一時的な治療では、ドレナージと呼ばれる方法が一般的で、余分な脳脊髄液の一部分を頭蓋骨の外へ流す処置の総称です。先天的、後天的を問わず、頭の圧力が急上昇した状態による病状の不安定さを解除するために、救急処置として行われます。

永続的な治療では、シャントと呼ばれる手術法が一般的で、乳幼児から大人まで、年齢、原因を問わず行われています。本来の脳脊髄液の流れの一部分から、シャントチューブと呼ばれる細い管を用いて、頭以外の腹腔(ふくこう)や心房などへ脳脊髄液を流す仕組みを作ります。

内視鏡手術も行われています。神経内視鏡を用いて、脳の内部に本来ある脳脊髄液の流れ方の経路とは別に、新しい経路を作ります。治療できる年齢や原因に制約があり、シャントにとって変わる治療法にはいまだ至っていません。

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