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2022/08/08

🇧🇼逆さまつげ

まつげが内側に向き、眼球表面に触れている状態

逆さまつげとは、本来は外向きに生えているまつげが内向きに生えて、眼球の表面に触れている状態。まつげが角膜を刺激するため、目やにや涙が多くなり、目が充血します。

目の縁に沿って生えているまつげは、いわば目の門番。目にゴミや虫などが入ろうとすると、すぐに察知して、まぶたを閉じさせます。そのまつ毛が角膜側を向く原因には、まぶた自体が内向きにまくれ込んでいる眼瞼(がんけん)内反と、まぶたには問題はなく、毛根からのまつ毛の生え方がいびつで角膜側を向く睫毛乱生(しょうもうらんせい)とがあります。

眼瞼内反には、先天性のものと加齢性(老人性)のものが多く、いずれもまぶたの皮膚や皮下脂肪の過剰やたるみ、皮下の筋肉の筋力低下などによるものです。

先天性の眼瞼内反で、まぶたの内反の程度が軽く、皮膚などが過剰なため、まつ毛全体の生える方向全体が内向きである場合、特に睫毛内反と呼ぶことがあります。乳幼児、若年者に多くみられるのが、睫毛内反の特徴です。

乳幼児の場合、まぶたの特に下まぶたの脂肪が過剰なためにふっくらとしていて、まぶた自体が内側を向いているもので、小学校入学時までにその脂肪も成人とほぼ同じになり、自然にまぶたが外側を向いてきて、ほとんどの場合、自然に治癒します。

高齢者に多い加齢性(老人性)の眼瞼内反では、皮下脂肪が少なくなって、上まぶたがやせてたるんでくるために、まつげが内反することもよくあります。加齢によって涙の分泌も減っているため、目の症状が出やすいのが特徴です。

また、これらのほかに、炎症などの結果、まぶたが変形して起こる瘢痕(はんこん)性の逆さまつげや、まぶたがけいれんして起こる逆さまつげなどもあります。いずれも、一並びのまつ毛全体が角膜側を向くので、多くのまつ毛が角膜に当たることになります。

一方、睫毛乱生は眼瞼縁炎など、まつ毛の毛根部の炎症によって引き起こされることが多く、角膜に当たるまつ毛の数は1本のみの場合から多数の場合までいろいろです。

症状としては、幼児ではまばたきが多くて、目をよくこすったり、光をまぶしがったり、目やにや涙が多くなったり、目が充血したりします。生後間もない乳児では、まつげが細く軟らかいため、症状はあまり出てきません。小児、成人では、幼児の症状に加え、異物感、痛みなどが生じます。成長するとまつげが硬くなるため、角膜の傷がひどくなり、角膜が混濁して視力が低下してくる場合もあります。

逆さまつげの検査と診断と治療

涙や目やにが多いなど同様の症状でも、結膜炎、眼瞼縁炎などの場合もあるので、早めに専門医を受診して、原因をはっきりさせることが大切です。

眼科外来での診察では、まぶたの形状、まつ毛が角膜に接触していること、角膜の傷の程度などを診断します。常時まつ毛が角膜に接触している場合のほかに、眼球運動やまばたきの強さ次第で、まつ毛が角膜に接触する場合があります。

先天性の眼瞼内反、睫毛内反の場合、成長とともに1歳前後で自然に治ることが多いので、それまでは抗生物質入りの点眼液や眼軟膏(なんこう)を用いて眼球を保護し、様子をみるのが普通です。

2歳以上で治らない場合、さらなる成長に伴い自然治癒することも期待できますが、症状の強さ次第では手術を考えます。4~5歳になっても症状が軽減しない時などは、手術をします。

加齢性の眼瞼内反では、まつ毛を抜くと一時的に症状は改善しますが、再びまつ毛が生えると同じことの繰り返しになります。また、抜くにしても、一並びのまつ毛全体を抜く苦痛も決して軽くはありません。手術して治すほうが効果的です。

睫毛乱生でも、まつ毛を抜くと一時的に症状は改善しますが、まつ毛が生えるとやはり同じことの繰り返しです。抜く本数が少なくても、繰り返せば炎症を引き起こしたり、さらに太いまつ毛が生えてくる場合もあります。

きっちり治すには手術が必要で、まつ毛の毛根を電気の針で焼く睫毛電気分解や冷凍凝固、あるいは眼瞼内反手術に準じた手術などが行われます。簡単には治らない場合もあります。

🇧🇼桜根母斑

褐青色の色素斑が顎の下や首の回りに現れる皮膚の疾患

桜根母斑(さくらねぼはん)とは、顎(あご)の下や首の回りに現れる、境界の不明瞭な褐青色の色素斑。

母斑は、皮膚の一部分に色調や形状の異常が現れる状態で、あざとも呼ばれています。ほくろ(黒子)も母斑の一種で、その一番小さい型に相当します。

桜根母斑には、生後間もなく色素斑ができる早発型と、小児期や思春期に色素斑ができて徐々に拡大する遅発型の2種類があります。

色素斑は、顎の下や首の回りの淡褐色の皮膚の上に、濃青色から青みを帯びた小さな斑点がたくさん集まった状態で現れます。皮膚の表面は滑らかで、盛り上がったりしません。

原因は、メラノサイト(メラニン細胞、色素細胞)にあります。通常は表皮にあって、メラニンという皮膚の色を濃くする色素を作り出すメラノサイトが、深い部分の真皮の上層に存在し増殖しているために、皮膚が褐青色に見えてしまいます。

通常、色素斑は大きさや状態が変化せず持続して存在し、自然に消えることはありませんが、悪性化を心配することもありません。

なお、同様の性状の色素斑が片側のまぶたから額、頬(ほお)にかけて現れるものを太田母斑と呼び、同様の性状の色素斑が肩から上腕に現れるものを伊藤母斑と呼びます。

桜根母斑の見た目が気になるようなら、カバーマークによる化粧で色を隠すのも選択肢の一つですが、皮膚科、皮膚泌尿器科、ないし形成外科を受診し色素斑を除去することも勧められます。

桜根母斑の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、ないし形成外科の医師による診断では、部位や色素斑の様子から視診で判断します。皮膚をほんの少し切り取って病理組織検査を行うと、真皮上層に色素含有メラノサイトが認められます。

また、蒙古(もうこ)斑が手足や顔、腹部、背中の上部、胸などに現れる異所性蒙古斑や、通常のほくろよりも全体に青色が強く、青色から黒色調に見えるタイプのあざである青色母斑などの皮膚疾患と鑑別します。

皮膚科、皮膚泌尿器科、ないし形成外科の医師による治療では、悪性化の心配はないため、見た目の問題で気になるならQスイッチレーザー治療により、色素斑を除去します。

Qスイッチレーザーには、ルビーレーザー、アレキサンドライトレーザー、ヤグレーザーなどがあり、レーザーの種類により多少の効果や経過の違いがみられます。特定のレーザー光線を照射すると、皮膚の中にあるメラニン色素に対してのみ反応するため、周辺の正常な皮膚組織へのダメージを極力抑えながら、色素斑の元になっているメラニン色素だけを破壊することができます。

いずれのレーザー治療も痛みを伴うため、麻酔シール、注射などを使用して痛みの緩和を行います。治療対象となる桜根母斑の色が濃く、範囲が広い場合は、1〜2回のレーザー照射だけは不十分で、およそ3カ月の間隔で、少なくとも5~6回の照射を行います。

治療時期は何歳からでも可能ですが、小児の場合は全身麻酔が必要なため3歳ごろから開始するのが普通で、早期から開始するほうが効果が高いといわれています。成人の場合でも、かなり色調が改善し、完全に色素斑を除去できることもあります。

🇲🇼鎖骨骨折

肩部の胸の左右に一対ずつある鎖骨に生じる骨折

鎖骨骨折とは、肩部の胸の左右に一対ずつある鎖骨に生じる骨折。

鎖骨は、体幹の骨である胸骨と肩甲骨をつなぎ、胸と肩を真っすぐに保つ支柱の役目を果たしています。皮膚表面近くにあり、前から見るとほぼ一直線のような形状、頭のほうから見るとS字型の形状をしており、長い外観からもその存在を確認できます。

鎖骨骨折は、転倒して手や肘(ひじ)あるいは肩を地面などに突いた時に、その衝撃による外力が鎖骨に伝わって生じます。また、衝突などによって外力が直接鎖骨に働いて生じます。折れる瞬間、ボキッという音を聞くことも多く、皮膚表面近くにある骨なので、外側からの観察でも容易に骨折を確認できます。

乳幼児では、遊んでいる時に鎖骨骨折を生じることがあります。乳幼児は骨が厚い骨膜で包まれているため、骨の連続性が完全には断たれず、ヒビが入る不全骨折になることが多くみられます。着替えなどで痛がるようであれば、鎖骨骨折を生じていることがあります。小中学生では、遊んでいる時とともにスポーツ中の鎖骨骨折も多くみられます。

大人では、ラグビー、アメリカンフットボール、サッカー、柔道などのコンタクトスポーツ中の鎖骨骨折が多くみられます。また、自転車、バイクなどの転倒事故やそのほかの交通事故によって、大きな外力を受けた際に、鎖骨骨折に至ることもあります。

交通事故の場合、骨が折れるとともに周囲の軟部組織が損傷され、皮膚に傷口が開いた状態の開放骨折(複雑骨折)のことも多く、鎖骨の下にある神経や血管の損傷を合併することがあります。

さらに、外力からの衝撃による以外に、鎖骨骨折は新生児に生じることが多いのが特徴的。新生児が産道を通る時に、両肩に力がかかって鎖骨が折れるもので、骨の形成が不十分なためとされています。特に、逆子で足のほうから生まれる場合、腕を上に上げた状態となって不自然な力が加わるので、鎖骨骨折の危険がより高まることになります。

鎖骨骨折を生じると、骨折はほとんどが鎖骨の中央3分の1の部位で発生します。骨の連続性が完全には断たれると、体の中央寄りの近位骨片は上方へずれ、肩寄りの遠位骨片は下方にずれます。鎖骨の正常なS字型の形状が変形し、さらに両骨片は重なり合って1~2センチ短縮し、肩幅が狭くなり、肩が落ちます。

骨折した部位に皮下出血やはれ、痛みが生じ、腕や肩を動かすと痛みが強まります。痛みで腕を上げることができなかったり、無理に腕を上げようとすると骨が砕けるようなゴリゴリ感があったりします。

鎖骨骨折の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、鎖骨の変形、はれ、痛み、皮下出血、圧痛、骨折部の異常な動きなどの症状と、X線(レントゲン)検査により鎖骨に骨折が認められることで、容易に確定できます。X線検査で確定できない場合でも、CT(コンピュータ断層撮影)検査により確定できます。

整形外科の医師による治療には、保存療法と手術療法の2つがあり、時間をかけて保存療法を行うことが多く、時に手術療法を行います。

ほとんどの鎖骨骨折の場合、鎖骨の下にある神経や血管が傷害を受けることは少なく、保存療法で完治が可能です。できるだけ発症者の胸を反らせて、重なり合って短縮した骨片を整復します。次いで、包帯を使用する8字帯固定法や、専用の鎖骨バンドなどで患部の安定性を確保して、痛みを軽減し、時間をかけて骨折した部位の骨癒合を図ります。

変形している骨を徐々に矯正し、骨を形成する能力が高い乳幼児では2~3週間、小中学生では4~6週間程度と、長期間の固定が必要となりますので、日常生活、学業、運動の制限があり、大人では仕事の制限もあります。

手術療法は、骨片が多数あるもの、鎖骨の短縮が強い場合、皮膚に損傷がおよぶ開放骨折の場合、腕神経損傷や血管損傷が疑われる場合、骨癒合が難しい遠位の鎖骨骨折、保存治療で癒合しない骨折などが対象となります。

手術では、鎖骨を金属のワイヤーと棒で固定します。手術後に鎖骨骨折が治癒した後に、固定具を除去します。

保存療法であっても、手術療法であっても、早期に治療を受ければ、鎖骨骨折の予後は良好です。

🇲🇼坐骨結節裂離骨折

骨が弱い成長期に発生しやすいスポーツ障害で、骨盤の坐骨結節にある骨端線の部分が裂離骨折する障害

坐骨(ざこつ)結節裂離骨折とは、骨盤の坐骨結節にある骨端線という、骨の端にある成長軟骨が骨に変わってゆく境目の部分が裂離骨折する障害。骨が弱い成長期に発生しやすいスポーツ障害で、骨盤裂離骨折の1つです。

骨盤の中でも、両方の臀部(でんぶ)の最も下にあって大きな楕円(だえん)形の坐骨結節は、腰掛ける時に椅子(いす)の面に接して体重を支える部分で、大腿(だいたい)ニ頭筋、半腱様(はんけんよう)筋、半膜様筋からなるハムストリングスという大きな強い筋肉が付着しています。そのため、非常に大きな力が働く部分です。

この座骨結節に付着しているハムストリングスが、スポーツで生ずる疾走動作やジャンプ動作などで収縮することによって、座骨結節付着部を急激に牽引(けんいん)するために、成長期の骨盤に残っていて、完成された大人の骨と比べると力学的に弱い骨端線の部分が裂離骨折します。

坐骨結節裂離骨折は、ハムストリングが繰り返し収縮する疾走動作による発生が最も多く、スポーツの種目では短距離走、サッカー、野球などで起こりやすくなります。股(こ)関節屈曲、膝(しつ)関節伸展を急激に行うジャンプ動作による発生もあり、スポーツの種目ではハードル走、走り幅跳び、三段跳び、スケートなどで起こりやすくなります。

発生すると殿部に痛みを生じ、歩行時、股関節屈曲時、膝関節伸展時に痛みが増強します。受傷直後は激痛を生じることもありますが、休息したり時間が経過するとあまり痛くなくなることも珍しくありません。そのため肉離れと自己診断し、医師による診断が遅れることがあります。

坐骨結節裂離骨折は、中学生、高校生である12~18歳に好発し、14~16歳がピーク。女子より強い筋力を持つ男子に圧倒的に多く、ほとんどは右側の骨盤部分の座骨結節に発生しています。

坐骨結節裂離骨折の検査と診断と治療

整形外科、形成外科の医師による診断では、X線(レントゲン)検査を行うと、受傷時はわかりにくいものの、坐骨結節に剥離(はくり)した骨折片を認めます。必要に応じてCT(コンピュータ断層撮影)検査を行うと、こちらでも骨折片を確認できます。

整形外科、形成外科の医師による治療では、骨折部のずれが少なければ、安静による保存的治療を行います。1週間のアイシング(冷却)を徹底し、1~2週間の安静後に、4週間程度の松葉杖(づえ)歩行を行い、歩行時痛がなくなってから可動域訓練と筋力訓練を行います。少しずつ負荷を増やし、X線検査で骨の癒合を確認しながら、12~16週でのスポーツ活動への復帰を目指します。

骨折部のずれが大きく、保存的治療で骨の癒合が図れない時や、早期のスポーツ活動への復帰を望む時は、そのほかの骨盤裂離骨折である上前腸骨棘(こっきょく)裂離骨折や下前腸骨棘裂離骨折に比べて治癒まで長期間を要するため、骨折片をスクリューなどで整復固定する手術を行うこともあります。

再発予防のためには、骨盤周囲の筋肉や股関節のストレッチを十分に行うことが重要です。

2022/08/04

🇺🇾坐骨神経痛

坐骨神経が圧迫されて、臀部から太ももの裏に痛み

坐骨(ざこつ)神経痛とは、坐骨神経が圧迫されることによって、強い痛みが生じる神経痛の総称。坐骨神経痛は症状の表現であり、疾患名ではありません。

原因として最も多いのは、外傷によって腰の椎間板(ついかんばん)ヘルニアを起こし、それが坐骨神経を圧迫する場合です。発症者の年齢は、20歳代から40〜50歳代が多く、中腰になったり、急に腰を上げたり、重い物を持ち上げようとした時に、いわゆるぎっくり腰を起こして激痛に見舞われます。

そのほか、脊髄腫瘍(せきずいしゅよう)や変形性脊椎症による骨の圧迫、がんの転移、帯状疱疹(ほうしん)による神経根炎、糖尿病、アルコール中毒などによって起こることもあります。

痛みは、臀部(でんぶ)の坐骨神経根から太ももの後ろを走り、ひざから下は下肢の外側を走って、かかとに抜けるのが一般的です。痛みが激しい時には、寝返りもできず、静かに横になっている以外、方法がありません。痛みと同時に、脊椎神経根の分布に従って、痛覚のまひや下肢、ことに足首のまひも起こってきます。

持続性の激しい痛みが多く、体位を変えたり、足を曲げたりすると激痛が起こります。足の位置によって坐骨神経が引っ張られるために、圧迫や刺激を受けている神経根がさらに刺激されて、痛むのです。

足を伸ばしたまま太ももを持ち上げると激痛が起こるので、これをラセッグ兆候と呼んで、坐骨神経痛の診断に応用されています。痛みの強い場合には、知覚の鈍麻や過敏の範囲が坐骨神経の範囲より広がって、下肢全体に及んでいることもあります。

坐骨神経痛の検査と診断と治療

椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛の場合には、痛みの走り方、範囲、運動神経まひの広がり、ラセッグ兆候のほか、脊椎のX線検査、脊髄の造影法、髄液の検査などを行い、圧迫されている部位、程度を調べます。

また、変形性脊椎症の程度、骨へのがんの転移の有無なども調べ、 神経への圧迫がなければ、糖尿病ないし、ほかの中毒性末梢(まっしょう)神経炎の有無などを調べ、坐骨神経痛の原因となっている疾患の検索を行います。

坐骨神経痛の治療は、その原因となっている疾患によっても変わってきます。原因が明らかな時は、その原因を取り除くことが根本的な治療につながりますが、原因がわからない時や原因を取り除けない時は、対症療法になります。

椎間板ヘルニアによる場合には、安静にし、仰向けに寝て、下肢の牽引(けんいん)療法を行います。温熱治療としてホットパックや極超短波などが行われ、痛みやしびれを抑えるために、非ステロイド性消炎鎮痛剤の飲み薬や坐薬が使われることもあります。圧迫が高度で、知覚鈍麻などが強ければ、外科的に神経根部を圧迫しているところを除去すれば、症状は完全に治ります。

また、変形性脊椎症を合併している場合には、コルセットを着用し、再発の防止に努めます。

椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛は、数週間の安静だけでもよく治ります。この場合、できるだけ硬い布団の上で寝るようにします。腰に負担のかかるような無理な姿勢は、禁物です。

糖尿病が原因となっている場合には、糖尿病をよくコントロールするだけで、症状が改善していきます。食事療法や軽い運動を行って、体力を増強し、抵抗力を高めるようにすることが大切です。

🇺🇾ささくれ

爪の周囲の皮膚が細かく裂けたり、めくれたりする状態

ささくれとは、爪(つめ)の周囲の皮膚部分が指先の部分から細かく裂けたり、めくれたりする状態。逆むけ、ハングネイルとも呼ばれます。

ささくれができる原因の一つは、皮膚の水分が不足する乾燥。洗い物や掃除、洗濯などの家事が、指先の乾燥を招き、ささくれを引き起こします。

特に、空気が乾燥した冬の寒い日にお湯を使って洗い物をしている人は、温度差により指先が一気に乾燥しやすく、ささくれになりやすいといえます。さらに、食器を洗う時に使う洗剤には強い殺菌作用があるため、指先の皮脂が出す油分も一緒に洗い流してしまうため、乾燥してしまう原因になります。

最近では、パソコン作業でのデスクワークが原因で、ささくれを起こす人が増えています。パソコン作業を長時間続けることにより、指先に負担がかかってしまい、乾燥することがあります。同じ姿勢のままタイピングをする時間が長いため、指先まで保湿成分がゆき渡らなくなっている可能性があります。

また、血行不良もささくれの原因。冷え性の女性の特に指先が冷たいのは、血流が悪い証拠。血流が悪いと栄養素や酸素が十分にゆき届かないことが原因で、乾燥しやすくなり、ささくれもできやすくなります。

さらに、栄養バランスが悪いと、ささくれができやすくなります。爪や爪の周囲の皮膚は蛋白(たんぱく)質でできていますから、蛋白質やビタミンC、ビタミンA、カルシウムなどの栄養素が不足すると、ささくれができやすくなります。

ささくれは、無理に引きはがしてはいけません。ささくれを無理に引きはがすと、真皮が露出したり出血し、そこからばい菌が入ってしまうことがあり、ひどくなると化膿(かのう)してしまいます。

カンジダという真菌の一種に感染するとカンジダ性爪囲爪炎(そういそうえん)になり、黄色ブドウ球菌、連鎖球菌、大腸菌、緑膿菌などの化膿菌に感染すると化膿性爪囲炎(ひょうそ)になります。

ささくれの対処方法

ささくれをそのままにして置くと、何かに引っ掛かったりして痛いなど、どうしても気になる時は、眉毛(まつげ)をカットするような先の細いハサミで処理するのがよいでしょう。爪の根元にある甘皮の処理をするキューティクルニッパーなどがあると便利で、できるだけささくれの根元からカットするとよいでしょう。

カットした跡が傷になっていたり、痛みを感じるようであれば、絆創膏(ばんそうこう)などで保護したほうがいいでしょう。

ささくれができないように予防するには、手を乾燥させないことが大切で、そのためにはハンドクリームを塗るのが効果的です。洗い物や掃除、洗濯をして水やお湯を使った後や、パソコン作業の合間などに、こまめにハンドクリームを塗るのがよいでしょう。

指先のマッサージで血行をよくすることも、ささくれの予防になります。小指から1本1本、マッサージをしていきます。その際には、爪の横をもみほぐすようにしてマッサージをしましょう。

また、指の根元から指先までしっかりマッサージすると、より血行がよくなります。マッサージをする際には、摩擦を避けるためにもクリームやオイルを使いましょう。

マニキュアや除光液などは指を乾燥させる原因になりますので、マニキュアを塗る前や除光液を使った際には、オイルで爪と指をマッサージするようにしましょう。爪を強くするためにも、オイルを塗ってのマッサージは必要です。また、除光液に入っているアセトンという成分は、水分や油分を取り去ってしまうもの。アセトンが入っていない除光液を選ぶとよいでしょう。

乾燥がひどかったりし、ささくれがひどい時には、まずは化粧水で水分補給をしましょう。顔のケアを同じで、まずは化粧水で水分をしっかりと浸透させて、保湿クリームを塗ります。

時には、ネイルサロンで甘皮のケアなど、爪のケアをしてもらうと、指先もきれいになります。ネイルサロンにいったからといって、マニキュアを塗らなくてもいいのです。

甘皮は必要以上にあると、水分を吸収してしまうこともあります。余分な甘皮を処理することで、爪や指先の乾燥対策にもなるのです。ハンドケアとしてハンドパックなどをしてもらうと、手がしっとりとして乾燥対策にもなります。

栄養バランスの取れた食事をしていないために、ささくれができることもありますので、蛋白質やビタミン、ミネラルなどの栄養素をしっかりと食事から取り入れるようにしましょう。

睡眠不足や酒の飲みすぎ、ストレスなどをためない生活をすることも、ささくれを作らないようにするためには必要です。また、血流が悪くなっている可能性が高いため、長時間パソコン作業をする際は適度に体を動かすなどして、体に血液を巡らせると効果的です。

🇨🇱匙状づめ

つめの甲の先端、あるいは全体の表面がへこんでいる状態

匙状(さじじょう)づめとは、つめの甲の先端、あるいは全体がスプーン状にへこむ状態。スプーンネイルとも呼ばれます。

全指のつめがスプーン状に表面がへこんでいる場合、成人では鉄欠乏性貧血の症状のことがあります。同時に、口角炎、口唇炎、赤い舌がある場合は、さらにその可能性が強いので、内科を受診する必要があります。

鉄欠乏性貧血は、体内の鉄が不足することにより、赤血球の中に含まれているヘモグロビン(血色素)の産生が不十分になって、発症する貧血です。ヘモグロビンは肺から各臓器や組織に酸素を運び、不必要になった二酸化炭素を持ち帰って、肺から外に出すなど重要な働きをしていますので、ヘモグロビンの産生が不足すると、全身に運ばれる酸素の量が減少し、体が酸素不足になって貧血を起こし、めまいや、立ちくらみ、匙状づめの症状が現れたりします。体内には、鉄分がため込まれているため、すぐに鉄分がなくなってしまうということはありませんが、ため込まれている鉄分がなくなった時に症状が現れます。

また、数本のつめだけに、スプーン状に表面がへこんでいる変化がみられる場合は、局所的な原因のことが多く、クリーニング業など、酸やアルカリ、有機溶剤などに長期間、接している人に生じることがあります。

また、匙状づめは、手先に圧迫のかかるような職業の人にも多くみられます。

匙状づめの検査と診断と治療

医師による匙状づめの治療では、鉄剤を内服します。この鉄剤には、徐放性鉄剤と非徐放性鉄剤があります。徐放性鉄剤は、胃から腸にかけてゆっくりと鉄を放出して、少しずつ吸収されるため、胃粘膜への刺激は少なく、空腹時に飲むことができます。ただ、この製剤は胃酸がないと効果がないため、胃の切除を受けた人には使えません。非徐放性鉄剤は、胃を切除した人や胃酸の分泌が低下している高齢者、低酸症の人に吸収可能な薬剤です。

徐放性、非徐放性ともに主な副作用として、悪心、嘔吐(おうと)、食欲不振、腹痛、下痢、便秘などの胃腸障害を起こすことがあります。鉄剤を服用すると便が黒くなることがありますが、心配はいりません。貧血が改善されたからといって、医師の指示なしに服用をやめてはいけません。赤血球中のヘモグロビンの量が正常になっても、その後2〜3カ月は服用を継続する必要があります。

匙状づめは、生活習慣の改善によって予防することができます。まず、無理なダイエットや偏食、不規則な食事、夜更かしを改め、鉄分の多い食品を積極的に摂取します。仕事上、どうしても薬品を使用しなければいけないという人にとっても、鉄分を意識的に摂取することはお勧め。また、指を保護するアイテムを使用するのもお勧めです。

成人男性は鉄分を1日約12〜15mg、成人女性は15〜20mgの摂取を心掛けたいもの。女性は月経や妊娠、授乳のため鉄分が失われやすいので、男性より多くを必要とします。鉄分を多く含む食品は、大豆、大豆製品、レバー、ひじき、もずく、のり、あさり、かき、ほうれん草、小松菜、切干大根、いわし丸干し、牛もも肉、まぐろ赤身など。

蛋白(たんぱく)質を摂取することも、大切です。ヘモグロビンは鉄と蛋白質でできているので、肉や魚、豆腐、卵などを適量食べます。また、ビタミンCは鉄の吸収を促進させる働きがあるので、野菜や果物なども食べるようにします。緑茶や紅茶、コーヒーに含まれるタンニンを鉄分と一緒に摂取すると、鉄分の吸収が悪くなりますので、食事とは時間をずらして飲むといいでしょう。

🇨🇱サットン白斑

黒子を中心にして、周囲の皮膚に白いまだらが円形に生じる疾患

サットン白斑(はくはん)とは、色素性母斑の一番小さい型である黒子(ほくろ)を中心にして、周囲の皮膚に白斑が円形に生じる疾患。サットン母斑、遠心性後天性白斑とも呼ばれます。

小児や青年の胴体や顔、頸部(けいぶ)などにみられ、外に向けてだんだん大きくなる傾向があります。その半数くらいに、全身どこにでも突然、皮膚の一部の色が抜けて、その部分が白斑、すなわち白いまだらとなる尋常性白斑の合併がみられます。

サットン白斑は徐々に広がりますが、それに伴って中心にある黒子は縮小するようになり、最終的には消えます。中心の黒子が消失すると、周囲の白斑も消失していく傾向があります。

サットン白斑は、中心にある色素性母斑である黒子や、皮膚の色素であるメラニンを作るメラノサイト(メラニン細胞、メラニン形成細胞、色素細胞)に対する自己免疫反応が原因といわれています。この正常でない免疫反応が、中心にある黒子に対して生じ、次いで、黒子の周囲の正常な皮膚のメラノサイトに対しても生じると、メラノサイトを変性させたり、消失させるために皮膚の色が抜けて、白いまだらが円形に生じることになります。

なお、中心に黒子がないのに、腫瘍(しゅよう)や母斑の周囲に同じような白斑ができることをサットン現象といいます。最も危険なのは悪性黒色腫(メラノーマ)で、しばしばみられます。血管腫、皮膚線維腫、表皮母斑、青色母斑、老人性疣贅(ゆうぜい)(いぼ)などでも、このサットン現象が起こることがあります。

サットン白斑の検査と診断と治療

皮膚科、ないし皮膚泌尿器科の医師による診断では、視診で判断します。皮膚をほんの少し切り取って病理組織検査を行うと、黒子の周囲の皮膚のメラノサイトの消失、あるいは変性が見られ、その周りにはマクロファージおよびリンパ球の浸潤が見られます。

皮膚科、ないし皮膚泌尿器科の医師による治療では、中心の黒子が消失すると周囲の白斑も軽快していくため、治療として中央の色素性母斑である黒子だけを切除する場合もあります。初期の段階で切除すると、白斑は自然に消えて治癒します。

また、特に支障がない場合、経過観察になることもあります。基本的には、尋常性白斑と同様の治療方法がとられます。

尋常性白斑と同様の治療としては、外用剤として副腎(ふくじん)皮質ステロイド軟こうやビタミンD3軟こうなどを使用する治療と、紫外線照射療法(PUVA療法)が一般的です。外用剤の皮膚への塗布は、内服薬に比べて全身に及ぼす副作用が少なく、免疫の働きを調節する作用があります。

紫外線照射療法(PUVA療法)は、オクソラレンという薬を10〜30分前に塗布、ないし2時間前に内服し、その後、長波長紫外線を照射する方法です。紫外線の働きで残っている色素細胞が活発になり、色素を作るようになるのを期待します。紫外線に当たった後は、せっけんで薬をよく洗い落とします。近年では、中波長紫外線(UVB)のうち、治療に有効な波長のみを全身に照射するナローバンドUVB療法も行われています。

治療の効果があると、白斑の中に点状の色素斑ができて徐々に拡大し、島状の色素斑になります。続いて、白斑の周囲にも色素が増強すると、徐々に周囲の肌色になじんできます。

🇧🇴里吉病

体のあちこちの筋肉が縮んで、けいれんを起こし、激しい痛みを生じる疾患

里吉(さとよし)病とは、全身の筋肉に、こむら返りが起きてけいれんし、激しい痛みを生じる疾患。全身こむら返り病とも呼ばれます。

1963年に、神経内科の里吉榮二郎・医師によって初めて報告された原因不明の疾患で、神経の伝わりが障害される自己免疫疾患の一種、あるいは経口摂取した栄養分の消化吸収が障害される吸収不良症候群の一種と考えられています。

大人になってから発症することもありますが、多くの場合10歳前後から発症し、進行性に症状が悪化します。

筋肉のけいれんのほかに、脱毛が特徴でほぼ全例にみられ、下痢も多くみられます。

これらの3兆候のほかに、骨や関節の変形、発育障害、内分泌機能の低下などもよくみられる症状で、10歳代の女性ではホルモンの異常を伴いやすく無月経がみられます。

筋肉のけいれんは最初、腕、太ももなどの一部にみられるだけですが、次第に全身に及び、頸筋(けいきん)から咬筋(こうきん)、側頭筋、舌筋にまで、けいれんがみられることがあります。

いわゆるこむら返りで、 ふくらはぎの筋肉がつるという状態と同じような現象が数秒から数分にわたって続き、1日に数回から、1日中全身のあちこちの筋肉に起きている状態まで、さまざまな程度に出現します。

予後不良で、10年前後から20〜30年にわたって、緩やかに進行し、呼吸まひ、栄養障害で死亡します。

里吉病の検査と診断と治療

内科、神経内科、内分泌代謝科、整形外科などの医師による診断では、全身の筋肉のけいれんや、脱毛、下痢、あるいは月経の有無で判断します。

内科、神経内科などの医師による治療では、疾患そのものを治す治療法は確立されていないため、症状を和らげる対症療法を行います 。

対症療法としては、筋弛緩(しかん)剤のダントロレンナトリウム(商品名ダントリウム)の内服療法や、ステロイド系抗炎剤のプレドニゾロン(商品名プレドニン)の内服療法、免疫抑制剤のタクロリムス(商品名プログラフ、グラセプター)とステロイド剤の併用療法、ステロイド剤を大量に点滴するステロイドパルス療法などが試みられており、筋肉のけいれん、脱毛、下痢の症状が多少軽快するのみです。

🇵🇾挫滅症候群

四肢の筋肉に持続的な圧迫が加えられ、その圧迫から解放された後に起こる全身障害

挫滅(ざめつ)症候群とは、体の一部が長時間にわたって何かに挟まれるなどして、四肢の筋肉に持続的な圧迫が加えられ、その圧迫から解放された後に起こる各種の全身障害。クラッシュ症候群とも呼ばれます。

地震や台風、竜巻などの災害時には、倒壊した建物や家具の下敷きになって多発します。災害時以外では、交通事故などで何かに挟まれ、救出までに時間を要した場合にも発症します。まれに、特定の筋肉を過度に酷使する運動を行うことにより発症する場合もあります。

体の一部、特に四肢が長時間にわたって持続的な圧迫を受けると、筋肉が損傷を受け、組織の一部が壊死(えし)します。その後、圧迫された状況から解放されると、壊死した筋細胞からカリウム、ミオグロビン、乳酸などが血液中に大量に漏出します。

そのため、挫滅症候群を発症すると意識の混濁、唇や指先が紫色になるチアノーゼ、失禁などの症状がみられるほか、高カリウム血症、ミオグロビン血症、凝固障害などの全身的な異常を示します。高カリウム血症により心室細動、心停止が引き起こされたり、ミオグロビン血症により腎臓(じんぞう)の尿細管が壊死し、急性腎不全が引き起こされたりします。

圧迫から解放された直後は、意識があるために軽傷とみなされ、その後突然、容体が悪化して重篤となり、死に至ることも少なくありません。

両下肢に起こった挫滅症候群では、損傷部にはれと点状出血を生じ、両下肢はまひします。下肢の知覚障害、運動障害もみられますが、少なくとも多少の左右差があります。

挫滅症候群の検査と診断と治療

整形外科、形成外科の医師による診断では、受傷した時の状況や、損傷部のはれ、知覚まひや運動まひから判断可能ですが、導尿により赤褐色のミオグロビン尿を認めれば確定できます。

血液検査では、血液が酸性になる代謝性アシドーシス、血液濃縮、高カリウム血症、低カルシウム血症、高クレアチンキナーゼ血症、凝固障害などの異常が現れます。

整形外科、形成外科の医師による治療では、高カリウム血症、代謝性アシドーシスを改善するために、炭酸ナトリウム、グルコン酸カルシウムを投与します。高度で持続する高カリウム血症には、緊急の血液透析を行います。

損傷した四肢のはれは時間がたつとともに進行しますので、筋肉の圧力が高ければ、圧力を抜くための筋膜切開を行います。

受傷から救出までに時間がかかり、治療が遅れた場合は、軽症でも腎不全が起こり、肺水腫(すいしゅ)を合併することもあるため、人工呼吸器による呼吸管理と人工腎臓による血液浄化を行います。

2022/08/02

🇱🇷サラセミア

正常なヘモグロビンを作ることができず、貧血を起こす疾患

サラセミアとは、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビン(血色素)の合成障害によって、貧血を来す疾患。地中海貧血とも呼ばれます。

血液にはさまざまな細胞が含まれ、骨の中心にある骨髄で作られます。ヘモグロビンは赤血球の主要な構成要素であり、肺から各臓器や組織に酸素を運び、不必要になった二酸化炭素を持ち帰って、肺から外に出すなど重要な働きをしています。合成障害によって正常なヘモグロビンの産生が不足すると、全身に運ばれる酸素の量が減少し、体が酸素不足になって貧血を起こし、めまいや、立ちくらみが現れたりします。

ヘモグロビンは、141個のアミノ酸を持つα鎖グロビンと呼ばれる蛋白(たんぱく)質と、146個のアミノ酸を持つ非α鎖グロビンと呼ばれる蛋白質の各2分子からなる構造をしています。4分子には鉄を含むヘムが1個結合しており、計4個のヘムが酸素と結合し、各臓器や組織に酸素を運んでいます。

サラセミアは、α鎖グロビンや非α鎖グロビンの合成障害によって、正常なヘモグロビンを作ることができず、1つ1つの赤血球が小さい小球性で、その1つの赤血球に含まれるヘモグロビンの量が少ない低色素性という小球性低色素性貧血を示します。α鎖グロビンの異常によるものをαサラセミア、β鎖グロビンの異常によるものをβサラセミアといいます。

サラセミアの発症者は生まれ付き、グロビンを作る設計図に相当する遺伝子に異常があるため、正常なヘモグロビンを作ることができません。常染色体優性遺伝という形式で遺伝する疾患で、両親のいずれかがサラセミアを発症していた場合に、子供に遺伝する可能性が高くなります。自然発生することは、ほとんどありません。

もともと地中海に面した地域に多く、日本人の発症者は少ないと考えられていましたが、最近になって日本人にも決して少なくないことが調査研究で明らかになっており、九州や西日本に多いとされています。

日本人におけるサラセミアの頻度は、αサラセミアで新生児3500人に1人、βサラセミアで新生児1000人に1人程度であると見なされています。αサラセミア、βサラセミアともに軽症型であるため、赤血球の寿命が短くなって壊れ、ヘモグロビンが多量に血球外に出される溶血という現象が発生する溶血性貧血の割合は少なく、特にβサラセミアでは全体の6%にしか溶血性貧血は認められません。

遺伝子の異常により軽症型から重症型まであり、サラセミアの症状はさまざまです。発症者はヘモグロビンが不足するために貧血を起こし、黄疸(おうだん)、皮膚潰瘍(かいよう)、脾腫(ひしゅ)、胆石、肝機能障害などの症状を示しますす。心臓や脳に運ばれる酸素が少なくなることで、心不全や意識消失を引き起こすこともあります。

日本人の場合は軽症型が多く認められ、一般には小球性低色素性貧血の症状が生後2~3カ月から出始めます。自覚症状としては、皮膚が白くなる、成長が遅くなる、気難しくなったりふさぎ込んだりする、お腹が張る感じがするなどがあります。

日本人にまれな重症型のβサラセミアで、父親由来と母親由来の両方の遺伝子に異常があるホモ接合体、父親由来と母親由来のいずれか一方のみの遺伝子に異常が認められる複合ヘテロ接合体では、不均衡なヘモグロビン産生が赤血球膜障害を招いて溶血性貧血を起こし、一生涯、輸血を余儀なくされます。顔面の骨や頭蓋(ずがい)骨が通常よりも肥厚化するサラセミア様顔貌(がんぼう)を示すこともあります。

胎児のうちに重症型のβサラセミアのホモ接合体、複合ヘテロ接合体が診断されれば、子宮内胎児死亡を防ぐための胎児輸血や、研究段階である胎児遺伝子治療への道が開けます。

サラセミアの検査と診断と治療

小児科、ないし血液内科の医師による診断では、血液検査を行い、血液に含まれる細胞の数や形態などを調べます。ヘモグロビンA2やヘモグロビンFという異常なヘモグロビン、形態が崩れたり壊れたりした赤血球が含まれていないかどうか確認します。

次に骨髄検査を行い、腰骨の中の骨髄をほんの一部を針で採取します。採取した骨髄は、病理医が顕微鏡を使って、造血幹細胞の状態を詳細に観察します。さらに超音波検査を行い、腹の中にある脾臓や肝臓が大きくなっていないかどうか調べます。

遺伝子検査では、グロビンを作る設計図に相当する遺伝子を調べて、どのような異常があるか調べます。複数の遺伝子異常が存在し、どの遺伝子異常があるかによって重症度が大きく異なるため、治療の選択が大きく変わります。

小児科、ないし血液内科の医師による治療では、外来への通院により、貧血の改善を図ります。軽症の場合は、定期的に血液検査を行い貧血の有無をチェックします。不必要な鉄製剤の投与などを避け、妊娠や感染症の合併などの要因で一過性に引き起こされる貧血症状の増悪に注意を払います。

重症の場合は、輸血療法を行い、不足しているヘモグロビンを補充します。輸血療法では、点滴と同じ要領で腕の静脈に針を刺し、1回で200~400mlの血液を補充します。血液検査を行って赤血球の値を確認しながら、月に数回、外来への通院により、血液補充を継続します。ヘモグロビンが補充されて運ばれる酸素が多くなるため、心臓や脳にかかる負担が減ることで自覚症状が改善します。

場合によっては、数十年という長期間にわたって輸血療法を継続する必要があります。その際は、頻回な輸血の副作用である鉄過剰症が問題となります。鉄は心臓や肝臓に少しずつ蓄積するため、頻回の輸血により鉄が過剰になると、心臓や肝臓の機能が低下するため、経口除鉄剤の服用により、体内からの鉄の排出を促進する鉄キレート療法を併用します。また、鉄製剤の内服薬は禁止します。

鉄キレート療法の副作用として、吐き気や下痢、嘔吐(おうと)、腹痛などの胃腸症状、腎(じん)障害が出ることがあります。

重症型の一部の症例では、造血幹細胞移植が選択肢の一つとなります。HLA(ヒト白血球抗原)という型が一致する臓器提供者(ドナー)から提供された造血幹細胞を移植することで、血液を作る細胞を入れ替える治療で、サラセミアを完全に治すことのできる唯一の治療法です。

🇱🇮サルコイドーシス

多臓器に肉芽腫を作る、原因不明の疾患

サルコイドーシスとは、結核を始めとする感染症によく似た病巣を、全身のいろいろな臓器に作る疾患。そのような病巣をサルコイド、一般的には類上皮細胞肉芽腫(にくげしゅ)と呼んでいます。類上皮細胞肉芽腫は、類上皮細胞、T細胞、マクロファージなどからなる塊です。

原因は不明で、よく認められるサルコイドーシスの症状は目のかすみ、視力低下、せき、呼吸苦、皮膚の発疹(はっしん)、不整脈などで、小さな肉芽腫が多数発生した臓器の障害として出現します。しかし、一定の病変の拡大が認められる前は無症状のことが多いために、発症者の約40パーセントは自覚症状に乏しく、住民検診や職場検診で発見されています。

無症状のことが多くて日本での発症者数は不明ですが、推定有病率が人口10万人当たり2.2人で、男女別では男性1.7人、女性2.6人と女性に多い疾患。発症年齢でみると、20~30歳代と50~60歳代の二峰性のピークを示し、高年齢層のピークが著明です。地域別に見ると、北部が南部と比較して発症者数が多い傾向にあります。

現在まで原因が明確にされるに至っていませんが、結核を始めとする感染性肉芽腫性疾患と病理組織像が大変似ていることから、何らかの感染症が関与しているのではないかと、以前より考えられてきました。結核では、乾酪壊死(かんらくえし)というチーズに似た壊死部分で、細胞の融解したものが肉芽腫の中央にみられます。サルコイドーシスの肉芽腫では、乾酪壊死はみられません。

現在の日本では、グラム陽性の嫌気性細菌であるアクネ桿菌(かんきん)が原因菌の一部として、研究の対象となっています。一方、どこにでもある種々の環境刺激に対して、免疫反応が起きたとする報告もあります。欧米では、Lー型結核菌、ウイルス、自己免疫などと関係があるとする報告があります。

サルコイドーシスの症状は、罹患(りかん)臓器によって異なります。主に侵される臓器は、目、皮膚、肺、心臓、神経。

目では、ぶどう膜炎を合併し、目のかすみや、まぶしさ、充血に加えて、視力低下、飛蚊(ひぶん)症、眼圧上昇を来すことがあります。皮膚では、ひざ、ひじ、顔面などに瘢痕(はんこん)浸潤、皮膚サルコイドという皮疹ができます。すねに結節性紅斑(こうはん)という皮疹ができることもあります。

肺では、両側肺門リンパ節腫脹 (BHL) がみられるのが特徴的で、ほとんど無症状です。一部の発症者は次第に、肺野病変を合併して、せき、呼吸苦を来し、さらに肺線維症やブラ(肺嚢胞〈のうほう〉)への感染が起こると、呼吸困難が進みます。このような例は全体の5パーセント以下で、10年以上の年月を要します。

心臓では、不整脈が最も多く認められ、心不全、心筋梗塞(こうそく)を引き起こすこともあります。動悸(どうき)や失神発作、呼吸困難、浮腫を来し、致死的となることがあります。神経では、尿崩(にょうほう)症となり、多尿になることがあります。精神症状や、脳梗塞に似た多彩な症状が出ることもあります。

その他の臓器では、ひざや足の関節痛、耳下腺(じかせん)のはれ、わきの下や首のリンパ腺のはれ、乳腺の腫瘤(しゅりゅう)、皮下や筋肉内の腫瘤などがみられます。また、発熱や体重減少などの全身症状が出ることもあります。

サルコイドーシスの検査と診断と治療

サルコイドーシスでは、胸部X線検査やCT検査で、肺門リンパ節腫脹 (BHL)特有の陰影が認められるのが特徴的です。健康診断で胸部X線検査を行った結果、偶然見付かるケースも多く認められます。

また、医師の診断において、ぶどう膜炎や皮膚病変が特徴的であれば、サルコイドーシスを疑うことになります。病変部位の生検で乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫が証明されれば、診断が確定します。はれたリンパ節や、皮膚病変、あるいは気管支鏡や手術で採取した肺組織などから生検します。診断の補助検査としては、血液検査でガンマグロブリン、リゾチーム、アンギオテンシン変換酵素(ACE)の上昇がみられ、ガリウムシンチグラフィーで病変部位への集積像がみられると、サルコドーシスと見なされます。ツベリクリン反応が陰性化することも、結核との鑑別に重要です。心臓病変の診断には、心電図やホルター心電図、心エコーなどが必要となります。

このサルコイドーシスの診断は、専門医であれば比較的容易にできます。しかし、治療に関しては原因が不明な現在、真の治療はできません。ただし、発症者の約90パーセントという大多数では予後がよく、無治療で2〜3年以内に自然軽快する人もたくさんいます。無症状で肺門リンパ節腫脹 (BHL)が認められるだけの場合など、類上皮細胞肉芽腫は自然消失することが多いからです。発症者の約10パーセントは、治療中止が困難か、進行性です。

無症状の例では、特に薬物治療はせず、一般には許される限り3~6カ月は細心の注意を払って、経過を観察することがほとんどです。症状が強くなり必要ありと判断されれば、結核などと同様な細胞性免疫が疾患の発生に関係があるものと考えられているため、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド)を第一選択薬とした薬物治療が行われます。罹患臓器の種類と重症度によって、副腎皮質ホルモンの投与方法、量、期間、中止の目安などが異なります。使用に際してはその副作用が問題で、最初に多くの量を使い、徐々に減らしていき、少量で維持します。

 副腎皮質ホルモン無効例、再発症例、難治化症例などでは、各種の免疫抑制剤なども使用されます。心臓病変に対しては、抗不整脈剤などの併用や、ペースメーカー装着が必要な場合もあります。

心臓や中枢神経に病変が及んだ場合や、類上皮細胞肉芽腫が自然消失せずに進展して肺線維症を起こしてしまった場合は、予後が悪いので、定期的な検査による長期に渡る綿密な経過観察が必要です。まれな症例として、心臓病変による突然死、肺線維症で死亡する場合もあります。

🇱🇾サルコペニア

年齢を重ねるとともに筋肉量が減少し、筋力または身体能力が低下した状態

サルコペニアとは、年齢を重ねるとともに筋肉量が減少し、筋力または身体能力が低下した状態。原発性サルコペニア、加齢性筋肉減弱症とも呼ばれます。

サルコペニアは、ギリシャ語のsarco(筋肉)、penia(減少)を合わせた造語で、1980年代後半にアメリカの研究者が提唱しました。

主に高齢者にみられ、運動機能、身体機能に障害が生じたり、転倒、骨折、寝たきりの危険性が増大し、自立した生活を困難にする原因となることがあります。

2010年に欧州の老年医学の研究グループが診断基準を作りましたが、欧米人のデータを基にした基準値は、体格の異なるアジア人には必ずしも適さないと考えられました。そこで、日本、韓国、中国、香港、タイなど、アジアの7つの国・地域の研究者が協力し、2013年にアジア人向けの診断基準をまとめました。

サルコペニアの定義は、(1)筋肉量の減少(2)筋力の低下(3)身体能力の低下のうち、(1)と、(2)か(3)のどちらかがある状態です。

アジア人向けの診断基準では、高齢者がサルコペニアかどうかを診断する際、まず握力と歩行速度を測定します。基準値は、握力が男性26キログラム未満、女性18キログラム未満、歩行速度が秒速0・8メートル以下。どちらか一方でも該当すると、サルコペニアが疑われます。

握力の基準値は、両手で各3回測り、最高値をとります。歩行速度の秒速0・8メートルの目安は、青信号で横断歩道を渡りきれるかどうかです。

確定診断には、X線を用いる特殊な検査法であるDXA法(二重X線吸収法)で筋肉量を測定し、男性7・0(キログラム/平方メートル)、女性5・4(同)の基準値未満なら、サルコペニアとされます。

ただし、サルコペニアは疾患名として確立しておらず、この筋肉量測定法は普及していないので、握力か歩行速度が基準値以下なら注意が必要と考えられます。

70歳以下の高齢者の13〜24パーセント、80歳以上では50パーセント以上に、サルコペニアを認めるという報告があります。仮に筋肉量が基準値を超えているのに、握力や歩行速度が基準値以下なら、パーキンソン病や変形性膝(しつ)関節症など、ほかの病気が影響している可能性もあるとされます。

筋肉の量は20歳代前半をピークに、25~30歳ころから減少の進行が始まり、生涯を通して進行していきます。40歳代以降は年1パーセントの割合で減少し、75歳を超えると減る割合はより大きくなります。筋肉の量の減少は、活動性の低下だけでなく、組織や細胞の変化など多くの因子によって起こります。

また、筋肉の量の減少は広背筋、腹筋、膝伸筋群、臀筋(でんきん)群などの抗重力筋において多くみられるため、立ち上がりや歩行が次第に億劫(おっくう)になり、放置すると歩行が困難になり、高齢者の活動能力の低下の大きな原因となっています。

頻繁につまずいたり、立ち上がる時に手を掛けるようになると、症状がかなり進んでいると考えられます。特に、つまずきは当人や周囲が注意力不足のせいだと思い込んでいることが多いため、筋力の低下が原因と気付かないことが多く、注意が必要です。

サルコペニアの対策と軽減策

筋肉量の減少や筋力の衰えを予防、改善するには、運動と栄養補給の組み合わせが大切です。

運動としては、特に下半身の筋肉を鍛えるスクワットなどが推奨されます。ウオーキングなどの有酸素運動も、取り入れたほうがよいでしょう

栄養補給としては、蛋白質(たんぱくしつ)に含まれる必須アミノ酸の一つで、筋肉を作る役割があるロイシンの摂取が効果的。肉や魚、卵、乳製品、大豆など、ロイシンを多く含む食品を毎日食べたほうがよいでしょう。

🇱🇻サルコペニア肥満

加齢による筋肉減少と、肥満の両方を併せ持つ状態

サルコペニア肥満とは、筋肉の減少と肥満の両方を併せ持つ状態。サルコペニアとは、加齢による筋肉の減少を指し、サルコが筋肉、ペニアが減少という意味です。

サルコペニア肥満では、2つの要因が重なって、通常の肥満よりもさまざまな病気になるリスクが高まります。高血圧などの生活習慣病にかかりやすく、また運動能力、特に歩行能力を低下させるため、転倒、骨折、寝たきりになるリスクが高まります。

しかし、筋肉が減少する一方で脂肪が増加するため、全体として体重や体形が変わらない場合があるために気付きにくく、発見が遅れがちで生活習慣病などが進行しやすくなります。

男女とも60歳代でサルコペニア肥満が増え始め、70歳代以上になると約3割が該当するといわれます。また、女性に多いといわれています。

しかし、サルコペニア肥満は高齢者だけがなるわけではなく、若い世代の間でも予備軍がみられます。筋肉の量は20歳代をピークに、40歳代以降は年1パーセントの割合で減少していくため、40歳代以降ではサルコペニア肥満、もしくはその予備軍が4人に1人ともいわれています。

基本的に、運動不足で必要以上の食事を取る人なら、サルコペニア肥満になる可能性があります。また、過度な食事制限を課す誤ったダイエットによって筋肉が減少する状態も、将来のサルコペニア肥満につながります。

筋肉が加齢や運動不足によって減少していくのに伴って、基礎代謝が減り、体が必要とするカロリーが少なくなります。にもかかわらず、以前と変わらない食事を続けていると、余分なカロリーが脂肪になって体に蓄積するようになり、サルコペニア肥満になる可能性が生じます。

サルコペニア肥満の怖いところは、これに気付きにくいという点にあります。通常の肥満だと、体形に変化があって自覚しやすく、ダイエットや運動をする気になりますが、サルコペニア肥満は見た目の変化があまりないので、これまでと同じような生活や食事を続けがちです。

歩幅が短くなる、1秒間に80センチ以下と歩行速度が遅くなる、駅の階段を上る際に手すりに手を掛ける、つま先立ちで歩くことができない、椅子(いす)に座った状態から片足で立ち上がれない、片足立ちで60秒立っていられない。

以上の足の筋力が衰えた際の症状に、もし当てはまるなら、サルコペニア肥満、あるいは予備軍の可能性があります。

足の筋力の低下に合わせて、測定した体脂肪率も肥満レベルであれば、サルコペニア肥満である可能性がかなり高くなります。

公的に認められた数値の定義ではないものの、筋肉の割合が男性で27・3パーセント未満、女性で22パーセント未満、体重を身長の2乗で割った体格指数のBMIが25以上、の2つの条件を満たした場合、サルコペニア肥満と判定するという定義もあります。

体脂肪率、筋肉の割合、BMIとも、家庭用の電子体重計で測定できます。

サルコペニア肥満の対策と軽減策

サルコペニア肥満の解消は、通常のサルコペニアや通常の肥満より困難です。ただの肥満であれば、食事を減らすことで解消できます。サルコペニアだけなら、筋力トレーニングを行い、高蛋白(たんぱく)な食事を取れば、高齢者であっても筋力は回復します。

しかし、サルコペニア肥満では、食事を制限しながら筋力トレーニングを行うことになり、そのバランスを取るのが難しくなります。つまり、食事を減らすと筋力が低下する場合がありますし、筋力トレーニングの後の食事を取りすぎればさらなる肥満につながります。

また、サルコペニア肥満で寝たきりの患者や虚弱な高齢者は、運動することも難しいので、サルコペニア肥満の解消は非常に難しいものとなります。

サルコペニア肥満は防ぐ運動としては、特に下半身を鍛えるスクワットなどが推奨されます。脂肪を減らすためにウオーキングなどの有酸素運動も、取り入れたほうがよいでしょう。食事に関しては、食べすぎないという対策からもう一歩進んで、油分の多い食材を控え、筋肉の元となる蛋白質やアミノ酸の多い食材を意識して取るようにするのがよいでしょう。

🇱🇹サルモネラ食中毒

鶏卵や鶏、豚、牛の肉が原因食となって発生する食中毒

サルモネラ食中毒とは、サルモネラ菌が原因となって起こる食中毒。重症の食中毒を起こすこともあります。

サルモネラ菌は、もともと自然界に広く分布し、鶏(にわとり)、豚、牛などの家畜や家禽(かきん)、犬や猫などのペットも保有しています。血清型別という方法で約2500種に分けられ、低温や乾燥に強い性質があります。

一般に、1グラム中に1万個以上の菌が増殖した食品を食べると感染し、中毒症状を起こします。幼児や高齢者では、わずかな菌量でも感染します。一般に、人から人へ伝染することはありませんが、乳幼児や高齢者では、二次感染することもあります。

原因となる食品としては、サルモネラ菌を持っている鶏、豚、牛などの肉や、鶏卵などをよく火を通さないで食用にしたもののほか、納豆、氷小豆、乳製品などが挙げられます。特に近年では、鶏卵に含まれるエンテリティディスという血清型の菌によって、生卵を始めとして、卵焼き、オムレツ、手作りケーキやマヨネーズなどからもサルモネラ食中毒が起こっています。

また、ペットから感染したサルモネラ菌が原因となって、食中毒が起こることもあります。

原因食を食べてから、12〜48時間の潜伏期間を経て発症し、発熱、寒け、頭痛、腹痛、下痢、嘔吐(おうと)、全身脱力感などを起こします。下痢は水様便から粘血便で、渋り腹を伴うことが多く、しばしば強い症状が現れます。

これらの症状は2〜3日で改善し、多くは1週間以内で回復します。

ただし、潜伏期間や症状は、摂取した菌の量や発症者の健康状態、年齢によって変化します。乳幼児ではわずかな菌量でも発症し、場合によっては激しい下痢、強い腹痛、血便などの重い症状を示すこともあります。

下痢、嘔吐などの回数が多くなると、特に乳幼児や高齢者では、脱水症状が強くなることがしばしばあります。脱水症状とは、体内の水分が不足するために全身のバランスが崩れ、心臓などの循環器、腎臓(じんぞう)、肝臓の働きが悪くなることで、ひどくなったまま放置すればショック状態となり、死に至ることもあります。

サルモネラ食中毒の検査と診断と治療

食中毒によって乳幼児や高齢者の脱水症状が強くなった場合には、内科、消化器科、胃腸科、小児科の専門医を受診します。

医師は急性の中毒症状から感染を疑いますが、サルモネラ食中毒と確定するには、実際に糞便(ふんべん)などから原因となっている菌を分離することが必要です。食べた食品、季節、年齢も参考になります。

感染初期や軽症の場合は、整腸剤や補液の点滴による対症療法を行います。重症化した場合は、抗菌剤の投与による治療を行います。抗菌剤は原因菌に有効な種類を使用することが原則ですが、原因菌の分離には24〜48時間かかるので、急を要する場合には症状、原因食、季節、年齢などから推定して治療を始めます。

ほとんどの場合は点滴や抗菌剤などで治りますが、サルモネラ菌は下痢の症状が消えても長期間、排菌される傾向があるので、検査を続ける必要があります。

サルモネラ食中毒を予防するためには、以下のことを心掛けます。食肉や卵は、十分に加熱する。まな板、包丁、ふきんなどはよく洗い、熱湯や漂白剤で殺菌する。調理後は、早めに食べる。食品の長期間の保存は、できるかぎり避ける。ペットに触れた後は、よく手を洗う。

🇱🇻三角筋肩峰部褐青色母斑

生まれ付きか乳児期に発症し、褐青色のあざが肩や腕に発生する皮膚の疾患

三角筋肩峰部褐青色母斑(さんかくきんけんぽうぶかっせいしょくぼはん)とは、生まれ付きか乳児期に発症し、褐青色の母斑が肩や腕に認められる皮膚疾患。伊藤母斑、肩峰三角筋部褐青色母斑とも呼ばれます。

皮膚の一部分に色調や形状の異常として現れるものが母斑で、あざとも呼ばれています。ほくろ(黒子)も母斑の一種で、その一番小さい型に相当します。

三角筋肩峰部褐青色母斑は、胎児期から多くは生後1カ月以内の乳幼児期に症状が現れ、男子より3倍多く女子に認められます。

原因は、メラノサイト(メラニン細胞、色素細胞)にあります。通常は表皮にあって、メラニンという皮膚の色を濃くする色素を作り出すメラノサイトが、深い部分の真皮に存在し増殖しているために、皮膚が褐青色に見えてしまいます。

母斑は、後鎖骨上神経および外上腕皮神経の支配領域にみられ、肩峰という肩甲骨の最も上の部分を中心に、肩関節を前後および外側から覆っている三角筋がある鎖骨上部、上腕外側に、淡褐色の皮膚の上に濃青色から青みを帯びた小さな斑点がたくさん集まった状態で現れます。皮膚の表面は滑らかで、盛り上がったりしません。片側だけの肩や腕に出現することが多いものの、まれに両側の肩や腕にも出現することがあります。

通常、母斑は大きさや状態が変化せず持続して存在し、自然に消えることはありませんが、悪性化を心配することもありません。

本人が特に気にしなければ、治療の必要はありません。気にするようなら、皮膚科、皮膚泌尿器科、ないし形成外科を受診することが勧められます。

三角筋肩峰部褐青色母斑の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による診断では、部位や母斑の様子から視診で判断します。皮膚をほんの少し切り取って病理組織検査を行うと、真皮上層に色素含有メラノサイトが認められます。

また、蒙古(もうこ)斑が手足や顔、腹部、背中の上部、胸などに現れる異所性蒙古斑や、通常のほくろよりも全体に青色が強く、青色から黒色調に見えるタイプのあざである青色母斑などの皮膚疾患と鑑別します。

皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による治療では、悪性化の心配はないため、見た目の問題で気になるならQスイッチレーザー治療により、母斑を除去します。

Qスイッチレーザー治療は、レーザー光線を皮膚に当てるもので、皮膚の表面にはダメージを与えず、その下の真皮上層にあるメラノサイトを選択的に焼灼(しょうしゃく)することができます。ルビーレーザー、アレキサンドライトレーザー、ヤグレーザーなどがあり、レーザーの種類により多少の効果や経過の違いがみられます。

いずれのQスイッチレーザー治療も痛みを伴うため、麻酔シール、注射などを使用して痛みの緩和を行い、およそ3カ月の間隔で、少なくとも5~6回の照射を行います。まれに軽い色素沈着を残したり色素脱出を来すこともありますが、治療はほぼ100パーセントうまくいきます。

治療時期は何歳からでも可能ですが、小児の場合は乳幼児期からの早期治療が有効です。成人の場合でも、完全に母斑を除去することが可能です。

🇱🇦三叉神経痛

顔面の片側に発作的な激しい痛みが起こる神経痛

三叉(さんさ)神経痛とは、顔面の片側に発作的な激しい痛みが起こる神経痛。

一般には顔面神経痛とも呼ばれますが、正式な呼称ではありません。顔面神経は顔面にある筋肉を動かす運動神経であり、三叉神経が痛さ熱さなどを感じる知覚神経であるため、厳密には、顔面神経痛という疾患は存在しないのが実態です。

三叉神経痛は、中年以後から認められ始め、女性にやや多い傾向があります。

脳から出て顔の左右に広がるのが知覚神経である三叉神経で、顔面の感覚を脳に伝えるほか、物をかむ際に使う筋肉をコントロールしています。名前のとおり、三本の枝に分かれていて、第一枝の眼神経は前頭部から目、第二枝の上顎(じょうがく)神経は頬(ほお)から上顎(あご)、第三枝の下顎(かがく)神経は下顎にかけて分布しています。

この分布に沿って、ズキンとする激しい痛みが、あくび、会話、歯磨き、咀嚼(そしゃく)、洗面などの刺激で起こり、時には冷たい風に当たるだけで起こります。

普通は頬と顎に痛みがよく起こり、顔の片側全部に痛みが及ぶケースもあります。一回の痛みは数秒から数分と瞬間的ながら、痛みの発作が短い時は数時間、長い場合には数週から数カ月も繰り返し起こるのが特徴。痛みの発作のない間欠期には、神経症状は全くみられず無症状です。

原因がよくわからず、特発性三叉神経痛といわれるものが大部分ですが、近年の研究においては、動脈硬化などで蛇行した血管が三叉神経を圧迫して、痛みを誘発していると考えられています。

また、症候性三叉神経痛といわれるものもあり、こちらは頭部の腫瘍(しゅよう)や動脈瘤(りゅう)、三叉神経の近くにある歯や耳、目、鼻などの疾患、多発性硬化症や帯状疱疹(たいじょうほうしん)などによって引き起こされますが、強い発作性の痛みはないのが特徴です。

三叉神経痛による悩み、不安を感じている場合、神経内科、脳外科、麻酔科(ペインクリニック)を受診することが勧められます。

三叉神経痛の検査と診断と治療

神経内科、脳外科、麻酔科(ペインクリニック)の医師による診断では、MRI(磁気共鳴画像)検査を行って三叉神経のそばに血管を確認できれば、通常、その血管が神経を圧迫していると判断します。

神経内科、脳外科、麻酔科(ペインクリニック)の医師による治療では、薬物療法、神経ブロック、手術、ガンマナイフなどを行います。 

薬物療法においては、痛みの発作を予防する働きを持っている抗てんかん剤のテグレトールと呼ばれる薬の内服が有効です。痛みがきれいになくなるという大変有効な薬ですが、注意が必要な面もあります。量が多いとふらつきなどの副作用が出たり、まれに白血球が減る副作用も確認されています。

薬物療法を行っても、期待される効果がみられない場合、神経ブロックを行うこともあります。痛みのある部分に麻酔薬を注射したり、電気凝固して痛みを緩和する方法ですが、原因を治しているわけではないので、根本治療ではありません。仮に症状が軽くなっても、完全に治るわけではないのです。

根本から治すには、手術療法を行います。手術では、三叉神経を直接圧迫している血管を見付け出し、三叉神経と血管の間に筋肉片あるいは綿などを入れて、神経に対する圧迫を除きます。

ガンマナイフは、三叉神経根の部分に放射線を集中照射することで、痛みを緩和するものです。しかし、2013年時点で、保険適応外治療となるので、実費の負担が必要です。

日常生活では、体の過労と精神的ストレスを避けて、規則正しい生活をすることが大切。痛みが始まったら、部屋をやや暗くして刺激を避けるようにします。

🇯🇴三次喫煙

たばこの煙がカーテンや衣服、髪などに吸着して残った有害物資を吸い込むこと

三次喫煙とは、たばこの煙が室内の壁などに吸着して有害物質が残り、たばこを吸わない人が有害物資を吸い込むこと。残留受動喫煙、サードハンドスモークとも呼ばれます。

この三次喫煙は、喫煙者が体内に主流煙を吸い込む能動喫煙(ファーストハンドスモーク)や、非喫煙者が喫煙者と同じ空間にいることで、自分の意思とは関係なく、たばこから出る副流煙を吸い込む二次喫煙(受動喫煙、間接喫煙、セカンドハンドスモーク)とは異なります。

たばこの煙が消失した後も、喫煙者の髪や衣服、部屋の壁紙やカーテン、クッション、カーペット、床、家具などの表面に吸着して残っている有害物質が徐々に揮発し、これを非喫煙者が吸い込むことで健康被害が生じる恐れがある受動喫煙を指します。

とりわけ、たばこの煙に含まれるニコチンは、壁紙などの表面に付着して凝結し何カ月も残存することが可能で、空気中の亜硝酸と反応して発がん性物質のニトロソアミンが生成され、健康被害が生じる可能性が指摘されています。

乳幼児の場合、床や家具に顔が近く、部屋の中の物を手や口で触ったりするため、大人以上に有害物質を吸い込みやすいとされます。

たばこが燃えている時に窓を開けたり、扇風機を回して換気しても、三次喫煙の危険性がなくなるわけではありません。また、屋外で吸うことは屋内での喫煙よりはましですが、たばこの煙の残留物は喫煙者の髪や肌、衣服に付着して屋内に持ち込まれ、広く拡散するとされます。オフィス内で喫煙室が仕事場と別にあっても、仕事場がたばこ臭かったりするのは、そのためです。

たばこの煙については、たばこの先の火のついた部分から立ち上る副流煙のほうが、喫煙者が直接口から吸い込む主流煙よりも、血管収縮作用のあるニコチンや、発がん物質のタール、学習・運動能力が低下する一酸化炭素を始め、非常に発がん性の高いベンツピレン、ベンゼン、トルエン、アンモニアなど200種以上の有害物質を多く含むことがわかっています。

しかし、三次喫煙に関連する有害物質の濃度は極めて低いため、現時点では正確な測定は難しく、健康への影響を判断するのは困難とされています。

二次喫煙による害には、のどの痛み、心拍数の増加、血圧上昇などがあります。また、肺がんや虚血性心疾患、呼吸器疾患などにかかりやすくなります。とりわけ、子供は大人以上に影響を受けやすくなり、家庭内の喫煙によって、気管支炎、喘息(ぜんそく)などを起こす率が高くなったり、乳幼児突然死症候群が増加することも明らかになっています。

アメリカや日本の有識者らは、「子供がいるなら、家庭内は完全禁煙を」と呼び掛けています。三次喫煙(サードハンドスモー ク)の認識があるアメリカの家庭では、完全禁煙にしている割合が高くなっています。

🇲🇳Ⅲ型高リポ蛋白血症

遺伝子異常が原因で、高リポ蛋白血症を発症する疾患

Ⅲ型高リポ蛋白(たんぱく)血症とは、遺伝によって、血液に含まれるコレステロールとトリグリセライド(中性脂肪)が高くなる高リポ蛋白血症(高脂血症)の一つ。家族性Ⅲ型高脂血症、アポリポ蛋白質E欠乏症、アポリポ蛋白質E欠損症、ブロードβ病とも呼ばれます。

まれな疾患で、1万人に2〜3人くらいと発症する頻度は低いものの、女性よりも男性に発症する傾向があり、男性は比較的若い年代に発症します。

常染色体劣性遺伝によりⅢ型高リポ蛋白血症を受け継いだ人は、生活習慣とは関係なく、高リポ蛋白血症になりやすいと考えられています。高リポ蛋白血症に伴って、若年期にアテローム性動脈硬化症を発症するリスクが高くなります。

一般に、20歳以下では症状が起こらないとされるものの、若年で冠状動脈硬化症や末梢(まっしょう)動脈硬化症を発症しやすく、進行すると狭心症や心筋梗塞(こうそく)、脳梗塞、下肢の動脈が狭くなる末梢血管疾患、間欠性跛行(はこう)、下肢の壊疽(えそ)に対するリスクも高くなります。そのほか、肥満、糖尿病を合併するリスクも高くなります。

肘(ひじ)や膝(ひざ)、手の甲、手首、尻(しり)などの皮膚に、黄色腫(おうしょくしゅ)と呼ばれる黄色いいぼ状の塊が見られることもあります。黄色腫は、血液中の脂質成分と蛋白の結合物であるリポ蛋白を取り込んで、脂肪分をためたマクロファージ由来の泡沫(ほうまつ)細胞が集合したものです。

両親のうちのどちらかにⅢ型高リポ蛋白血症がある場合、子供に50パーセントの確率で遺伝します。両親ともⅢ型高リポ蛋白血症を持っている場合、子供には75パーセントの確率で遺伝します。ただし、Ⅲ型高リポ蛋白血症を持つすべての人が、親が同じ問題を持っているとわかっている訳ではありません。狭心症、心筋梗塞などの冠状動脈疾患の家族歴があるとだけ考えている可能性があります。

コレステロールもトリグリセライド(中性脂肪)も水に溶けないので、特殊な蛋白質であるアポ蛋白に付着して血液中を運ばれています。このコレステロールやトリグリセライド(中性脂肪)とアポ蛋白の結合物をリポ蛋白といいます。

リポ蛋白にはいくつかの種類があり、比重によりカイロミクロン(キロミクロン)、VLDL(超低比重リポ蛋白)、IDL(中間比重リポ蛋白)、LDL(低比重リポ蛋白)、HDL(高比重リポ蛋白)、VHDL(超高比重リポ蛋白)などがあります。

Ⅲ型高リポ蛋白血症は、肝臓の受容体への結合能を欠くアポ蛋白E2の遺伝子を両親から受け継いでいることを基盤として、まれにアポ蛋白Eの欠損によって発症します。

肝臓へのカイロミクロン(キロミクロン)やVLDL(超低比重リポ蛋白)、IDL(中間比重リポ蛋白)の取り込みが阻害された結果、血液中を流れ続ける状態が継続します。カイロミクロンやVLDL(超低比重リポ蛋白)などに含まれるトリグリセライド(中性脂肪)は、血液中を流れ続けている内に、脂肪組織や筋肉の毛細血管内皮細胞表面に存在するリポ蛋白リパーゼにより分解され、粒子サイズが小さくなってレムナントリポ蛋白の蓄積が起こり、高レムナントリポ蛋白血症を発症します。また、高IDL血症を発症します。

Ⅲ型高リポ蛋白血症の検査と診断と治療

内科、内分泌・代謝科の医師による診断では、血液検査で血中のコレステロール、トリグリセライド(中性脂肪)の値を測定します。朝食前の空腹時に採血します。

トリグリセライド(中性脂肪)、 総コレステロールの両方が高値にかかわらず、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が低値、かつRLPコレステロール(レムナント様リポ蛋白コレステロール)が異常高値であることを確認すると、Ⅲ型高リポ蛋白血症(家族性III型高脂血症)が疑われます。また、リポ蛋白の電気泳動で、VLDL(超低比重リポ蛋白)からLDL(低比重リポ蛋白)への連続性のブロードβパターンを示すことを確認し、アポ蛋白の等電点電気泳動で、アポ蛋白Eの異常、アポ蛋白Eの欠損などを確認することで、Ⅲ型高リポ蛋白血症と確定します。

内科、内分泌・代謝科の医師による治療では、食餌(しょくじ)療法、運動療法、薬物療法を行ないます。Ⅲ型高リポ蛋白血症は遺伝子異常を背景とし、代謝異常が生涯持続するため、根治療法はなく長期の治療が必要ながら、治療によく反応することから早期診断と早期治療が重要です。

食餌療法では、欧米風の高カロリー食品やコレステロール値の高い食品、脂分の多いファーストフードの過剰な摂取を制限します。そして、野菜や果物、魚といった低カロリー食や低脂肪食、低炭水化物食を中心とした食生活に切り替えます。

運動療法では、積極的にウォーキングや水中歩行などの適度な有酸素運動を行ないます。適切な体重の維持につながるばかりか、適度な運動を行なうことで基礎代謝の向上効果が期待できます。

また、喫煙、ストレス、過労、飲酒、睡眠不足など生活習慣全般の見直しも、改善法として効果的です。

薬物療法では、RLPコレステロール(レムナント様リポ蛋白コレステロール)の低下作用が最も強力なフィブラート系薬剤(中性脂肪合成阻害薬)を第一選択として使用します。スタチン系薬剤やエゼチミブも有効です。

🇲🇦産瘤

新生児の産道通過に際して、先頭で進む部分にできるこぶ

産瘤(さんりゅう)とは、新生児が母体の狭い産道を通過する際に、周囲からの圧迫によって先頭で進む部分の皮下の軟部組織にむくみが起こり、こぶ状に隆起した状態。

むくみは、皮下組織内の静脈やリンパ管など体液の流れが妨げられて、うっ血することで起こるものです。こぶの中身は、血液やリンパ液などの体液です。

多くの新生児は頭を先にして生まれてきますので、頭部に生じることがほとんどですが、まれに顔面に生じることもあります。逆子の場合は足を先にして生まれてきますので、こぶが臀部(でんぶ)や足にできることもあります。

新生児は、産道を通る際、頭の形を変形させながら通過していきます。その際、先頭となる頭、あるいは臀部や足が、子宮口や、ふだんは指2本ほどしか入らないのに新生児の頭の大きさに合わせて10センチまで開く膣襞(ちつへき)を押し広げる時に、周囲から強く圧迫されます。すると、その部分の静脈やリンパ液などの体液の流れが滞って、うっ血が起こり、その体液がたまってむくみとなり、こぶ状に隆起します。< /p>

産道の圧迫が強く、新生児のいる時間が長いほど起こりやすく、また、こぶ状の隆起の程度も大きくなります。そのため、初産の時や難産の時に、長時間産道にいた新生児に起こることがあります。

出生直後からみられ、それほど大きなものではなく、大きいものでも手のひらで包み込める程度の大きさです。産道を通過する際の摩擦により、表面や周囲の皮膚に擦り傷ができることもあります。普通は紫色で、しばしば点状出血を伴い、時には暗赤色のように見えます。

こぶは、触ると粘土にも似た触感がし、指で押すと軟らかく、押した跡にくぼみが残ります。正常な部分の頭皮や皮膚との境目が、あまりはっきりしてはいません。

生まれた直後は頭などの大きなこぶに驚いてしまいますが、産瘤は大抵の場合、生後24時間程度、長くても2、3日ほどで、自然に吸収されて消えます。

何の異常もない正常な出産によってもできるものなので、出産の経過で起こる自然現象の一つともいえます。さらに、産瘤ができたことで新生児に何らかの異常が起こることもありません。特に病的なものではなく、治療の必要はありません。

入浴や授乳なども通常通りに行うことができます。注意点としては、こぶ状の隆起をあまり強く押さえないように気を付けることです。

吸引分娩による吸引痕は、陰圧による点状出血と吸引カップによる圧迫の痕が、産瘤に加わってできます。頭に圧力がかかることで、頭に大きなふくらみができて、頭の形が変わったり頭に血が溜まって血腫ができたりする場合があります。それらは、そのあと自然に消えるので心配はありません。

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