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2022/08/26

🇧🇧脂肪腫

皮膚のすぐ下に脂肪組織が蓄積して発生した腫瘍

脂肪腫(しゅ)とは、皮膚のすぐ下に脂肪組織が蓄積して発生した腫瘍(しゅよう)。良性腫瘍で、皮下に発生する軟部組織の腫瘍の中では最も多くみられるものです。

脂肪腫は繊維質の薄い膜に包まれてできていることが一般的で、皮下脂肪と同じような黄色い色をしています。顕微鏡で組織を検査した場合、正常な脂肪組織と同じように見えるものの、脂肪細胞は多少大きさ、形状に不同があり、正常よりやや大きいとされます。

発生時期は幼少時と考えられていますが、緩やかに発育するため発見は遅く、20歳以下にはまれで、40~50歳代に多く発見されます。男女比は報告により一定しませんが、女性に多いとされ、また、肥満者に多いとも見なされています。

体の各部に発生しますが、背部、肩、頸(けい)部などに多く、次いで上腕、臀(でん)部、大腿(だいたい)部などの体に近いほうの四肢に多くみられます。顔面、頭皮、下腿、足などは比較的まれです。

皮膚と筋肉の間の皮下組織に発生することが多く、これ以外に筋肉の中、筋肉と筋肉の間、骨の表面や骨の中など比較的体の深い部位にも発生します。筋肉の中に発生するものは、大腿部で多く認められます。皮下組織に発生するものは浅在性脂肪腫と、比較的体の深い部位に発生するものは深在性脂肪腫と呼ばれます。

大部分は単発性ですが、複数の脂肪腫が同時に発生することもまれにあります。複数の脂肪腫が発生するのは、男性に多く認められます。

脂肪腫が発生する詳しい原因は、不明です。腫瘍の組織を分子生物学的に調べてみると、染色体の異常が見付かっており、ある程度の遺伝性は認められます。また、外傷などが切っ掛けとなって発生するケースも認められます。

通常、痛み、かゆみなどの症状はなく、皮膚が1~3センチ大のドーム状に盛り上がり、軟らかいしこりとして触れます。深在性脂肪腫を除いて、ほとんどを占める浅在性脂肪腫は簡単に動かせるものです。

通常、大きさは長期間にわたって変わりませんが、徐々に発育して大きくなることもあります。5センチ以上の比較的大きなものも数多くみられ、10センチ以上に及ぶものもあります。

残念ながら、一度発生すると自然に消えることはまずありません。最も気になる症状は、大きくなった場合に、目立つ部位にあると気になるということです。

脂肪腫の受診科は、皮膚科、皮膚泌尿器科、整形外科、形成外科です。

脂肪腫の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、整形外科、形成外科の医師による診断では、ほとんどの場合は皮膚症状だけで判断できます。触診で疑問があったり、変わった部位に発生している場合は、そのほかの種類の腫瘍である疑いも出てきますので、超音波(エコー)検査、CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査を行います。

それでもはっきりしない場合は、確定診断のために、局所麻酔をしてから腫瘍の一部を切り取り、顕微鏡で調べる検査である生検を行います。画像検査では、悪性腫瘍に分類される脂肪肉腫と区別が困難なこともあり、生検を行ったほうがよいこともあります。

皮膚科、皮膚泌尿器科、整形外科、形成外科の医師による治療では、比較的小さく、痛みなどの症状がない場合、ほとんどは経過観察します。

化膿(かのう)した場合、関節の部位に発生して普通の動きを妨げる場合、部位的に接触することが多くて痛みを感じる場合、大きくなってきた場合、体の比較的目立つ部位に発生し見掛けが気になる場合は、手術によって脂肪腫を摘出します。

手術では局所麻酔をした上、腫瘍の直上をほぼ腫瘍の直径に一致するように切開し、被膜を破らないように周囲組織からはがして、摘出します。摘出後は、血がたまる血腫を予防するため十分に止血し、縫合処置を施します。

必要に応じて、ドレーン(誘導管)という合成樹脂性のゴムを挿入し、貯留する血液や浸出液を体外へ排出する処置を施し、切開部を圧迫、固定する縫合処置を施すこともあります。ドレーンは2日後に取り除き、1週間後に抜糸します。

このようにして摘出した脂肪腫の再発は、まれです。

巨大な脂肪腫では脂肪吸引法も適応となることもありますが、一般的ではありません。

🇧🇧しみ(肝斑)

30歳以後の女性の顔にできやすい、薄い褐色の色素斑

しみにもいろいろな種類がありますが、肝斑(かんぱん)とは30歳以後の女性の顔にできやすい、薄い褐色の色素斑。肝臓の疾患とは関係がありません。

日本人女性の皮膚には肝斑ができやすく、皮膚の色が浅黒い人ほどできやすいといわれています。30歳代、40歳代の女性に多くみられますが、50歳代後半で新たに発症する人はほとんどみられません。逆に、60歳代からは症状が治まることも多いともいわれています。 日本男性に肝斑ができることは、めったにありません。

肝斑の症状は、特に額、ほお骨の辺り、口の回りに左右対称に広がるように、淡褐色のしみが生じます。目の周囲にはできず、色が抜けたように見える点が特徴的です。

原因の一つとして、女性ホルモン、特に卵胞ホルモンと黄体ホルモンとの関連が指摘されています。ホルモンバランスの乱れる妊娠時、更年期、婦人科の疾患にかかった時、ピル(経口避妊薬)内服中も、できやすいといわれています。

妊娠時に現れる場合は、妊娠2~3カ月ころからできることが多く、次第に色が濃くなります。出産後には少しずつ消えていく場合もありますが、長期に持続する場合もあります。

また、原因の一つとして、紫外線が重要であると考えられています。紫外線に当たりやすい個所に症状が現れやすく、実際に紫外線を浴びることが症状の悪化と関連している場合が多いのです。

紫外線が皮膚に当たると、皮膚はダメージを受けることになります。そのダメージから皮膚を守るために働くのがメラニン色素で、表皮にあるメラノサイトという細胞が作り出すメラニン色素は、少しずつ皮膚の表面に浮かび上がって皮膚を守ろうとします。役目が終わると、皮膚の新陳代謝とともにメラニン色素ははがれ落ちますが、年齢を重ねるごとに新陳代謝が鈍くなる結果、メラニン色素が皮膚の表面に長期的に滞留し、肝斑となっていきます。

原因として、ストレスも関係しているともいわれています。そもそも、メラノサイトは紫外線やホルモンの影響を受けて、メラニン色素を作り出します。そのホルモンの分泌に大きく関わってくるのが、ストレスを始めとする不規則な生活、睡眠不足などです。

初めにかゆみや皮膚の赤みがあって、後に褐色の色が付いてくるものや、顔以外の個所にできるものは、肝斑とは違うほかの疾患が考えられます。

また、肝斑と思っても、時には化粧品による接触皮膚炎か薬疹(やくしん)、エリテマトーデス、老人性色素斑(日光性黒子)などの場合もあります。

しみ(肝斑)の検査と診断と治療

肝斑には、内服剤によって体の内側から働きかける治療が最も効果的といわれています。内服剤の場合、その有効成分は血流に乗って皮膚の隅々まで届けられ、表皮の深い所にあるメラノサイトに、より効果を発揮します。内服するものとしては、色素沈着抑制効果を持つトラネキサム酸、ビタミンC、ビタミンEなどがあります。

外用療法としては、コケモモの抽出成分であるアルブチン、甘草の油性抽出エキス(コラージュホワイトニングクリーム)、1パーセントのコウジ酸クリーム(ビオナチュール、フェスモ)などの美白剤の塗布が効果的とされています。皮膚には角層などのバリア機能があるため、美白剤はバリアを通過してメラノサイトに到達します。

外科的療法としては、光治療、皮膚のターンオーバーを促進させてメラニンの排出を促すケミカルピーリング、ビタミンC誘導体イオン導入、メラニンを含む細胞を破壊する高周波での焼灼(しょうしゃく)、液体窒素による冷凍凝固などが、必要に応じて用いられます。ただし、いずれも即効性があるわけではなく、時間がかかることが多いようです。また、高周波での焼灼は、悪化の原因となる可能性を否定できないので、注意が必要です。

日常生活では、外出に際して帽子や日傘を活用して紫外線をできるだけ避けたり、皮膚をケアするだけでなく、生活リズムを整えること、うまくリラックスすること、睡眠時間を十分に取ることなど、ストレスや疲労をためないようにする工夫も重要です。

皮膚のケアでは、刺激を与えないことが大切で、合わない化粧品を使わないことです。最近では、気になる皮膚のトラブルをケアするさまざまな化粧品が登場していますが、使った時に少しでも違和感があるなら、使うのをやめます。ピリピリとした刺激によって、肝斑が増えることもあります。例えばファンデーションの場合、伸びをよくし、水に強く、化粧持ちをよくするため、原料に防腐剤や界面活性剤などが含まれているものもあります。こうした物質や油分の酸化が、皮膚への刺激となって、肝斑が増えることもあります。

また、こすってメイクを落とし、その後ゴシゴシと洗顔したり、クリームを使って強い力でマッサージを行うことも、皮膚にかなりの刺激を与え、結果的に肝斑を増やす原因になることも少なくありません。

🇸🇷若年性黒色腫

一般に子供の顔面に多く発現し、急速に大きくなる良性の腫瘍

若年性黒色腫(こくしょくしゅ)とは、特に顔面に、また小児に多く発現する腫瘍(しゅよう)のこと。最初の報告者の名前をとってスピッツ母斑、あるいは若年性良性黒色腫、紡錘細胞性母斑などとも呼ばれます。

黒色腫といっても、ほくろのがんと呼ばれることもある悪性黒色腫(メラノーマ)とは違い、良性の腫瘍です。青壮年にできることもありますが、主に3~13歳の幼児や小児にでき、突如として顔面に現れると、急速に1センチ程度まで大きくなるという特徴があります。

一見すると、ほくろのように思えることもありますが、色がやや淡い淡紅色から淡紅褐色のことが多いことや、円形や楕円(だえん)形に盛り上がった部位の表面が滑らかで、光沢があるという特徴を持っています。また、病変の周囲が赤みを帯びることもあります。傷付いたり、出血しやすく、黒褐色の色素沈着を伴うこともあります。

顔面だけではなく、ほかの部位にできることもありますし、皮膚のすべての部位にできる褐色から青黒色、あるいは黒色の色素性母斑の病変内に、若年性黒色腫ができることもあります。

原因は、色素性母斑と同じとされていて、メラニンを作る機能を持っているメラノサイトが病変に集中してしまうことが挙げられています。

若年性黒色腫で悪性化することはありませんが、悪性黒色腫との区別が難しいともいわれているので、見極めが重要になってきます。ただし、この見極めは素人には困難だとされているので、皮膚科や皮膚泌尿器科、形成外科で検査してもらい、慎重な対応をしていくことがポイントになります。

若年性黒色腫の検査と診断と治療

医師による若年性黒色腫の診断では、見た目だけでは迷うことが多く、最終的には切除した組織の病理検査で確定診断します。組織学的には、著しく色素沈着した真皮表皮接合部に、深部へと広がる多核巨大細胞、類上皮細胞様細胞、紡錘状細胞など混在する細胞が認められます。

鑑別すべき他の疾患として、悪性黒色腫のほか、化膿(かのう)性肉芽腫、偽リンパ腫があります。

医師による治療では、外科的切除が一般的です。切除した組織の病理検査が必要になるケースが多いため、ほとんどの組織が焼き消えてしまうレーザー治療は通常、行われません。

🇦🇷雀卵斑

目の回り、ほおに小さな色素斑が群がっている症状

雀卵斑(じゃくらんはん)とは、目の回り、ほおなどに小さな斑点が群がっている症状。そばかすとも呼ばれます。

その顔に群がる淡褐色、ないし黒褐色の小さな斑点は、スズメの卵の殻(から)の模様に似ています。首や肩、前腕の外側、手の甲にできるものもあります。

生まれた時から存在している場合もありますが、だいたい5~6歳ころに目立ち始めて、思春期をピークに減少へと向かう場合が多く、年齢を重ねるとともにだんだんと目立たなくなっていきます。しばしば家族に同じ症状がみられるため、原因としては遺伝的要素が強いといわれています。また、紫外線の影響、生活の乱れ、ストレスによっても発生します。

遺伝的要素が強い雀卵斑は、完全に消すことは難しいものながら、ファンデーションなどでカバーできるくらい薄くできることもあります。その他の原因による雀卵斑は、皮膚の生まれ変わり(ターンオーバー)がうまくできていないと、メラニンが増えて濃くなってしまいます。

雀卵斑の検査と診断と治療

雀卵斑(そばかす)には、根治させるためのよい治療法はありません。むしろ、悪化させないように日焼け止めクリームを塗り、帽子や日傘を活用して、紫外線をできるだけ避けるようにします。雀卵斑がある状態で紫外線を浴びてしまうと、数が増えるだけでなく、 既存の雀卵斑も色が濃くなってしまいます。

また、雀卵斑の症状を改善させるためには、 ビタミンCやトラネキサム酸の摂取が有効だといわれています。ビタミンCは、美白作用が高く抗酸化作用も優れています。一般的には止血剤として用いられているトラネキサム酸は、美白作用があるので雀卵斑や肝斑(しみ)の治療にもよく使われています。

ほかにも、皮膚科や美容外科での専門治療として、レーザー治療や光治療のフォトセラピーなどがあります。これらの治療にはすべて施術後の紫外線対策などが重要です。

レーザー治療で雀卵斑を治療した直後は、施術した部分にテープなどを張る必要があるため、仕事をしながら治療したいという人にとっては難しい場合があるようです。赤みや色素沈着などが出る場合もあり、施術後の回復にも時間がかかります。フォトセラピーは、雀卵斑のメラニンを治療するだけでなく、コラーゲンを増やして皮膚に張りを与える効果があります。レーザー治療よりも、皮膚へのダメージが少ないといわれています。

雀卵斑を消す薬も、市販されています。化粧水タイプの薬品、顆粒タイプの飲み薬があり、用途に合わせて選ぶことができます。

除去することが難しい雀卵斑の対処法として、化粧品によって隠す方法もあります。そのようなメイクで特に使用されているのは、コンシ―ラという顔料を高濃度に固めたものです。最近では、コンシーラやファンデーションそのものに、美白成分などが入っているものもあります。ファンデーションには、紫外線や化学物質から皮膚を保護するという役割もあります。

日常的な対策として、生活習慣を見直し、皮膚の再生が行われる22時~24時には寝ているようにするのも効果的です。

🇺🇾シャンバーグ病

向こうずねに点状の紫斑ができ、慢性化して褐色調の色素斑ができる皮膚疾患

シャンバーグ病とは、点状の紫斑(しはん)が主に下腿(かたい)前面の向こうずねにたくさんでき、慢性化するうち、次第に褐色調の色素斑をみるようになる皮膚疾患。慢性色素性紫斑という疾患群の一つに分類され、その中で最も頻度の高い疾患です。

40歳以降の中年にみられることが多く、主に両脚の向こうずねの皮膚表面に症状が現れます。内出血による点状の紫斑から始まり、徐々に色素沈着や毛細血管拡張を伴って、褐色調の斑点が周囲に拡大していきます。病変部の境目は比較的はっきりしており、褐色調の色素斑の形状は不規則で、人によってさまざまです。色素斑と色素斑の間に、拡張した静脈あるいは静脈瘤(りゅう)の存在が認められることもあります。

軽度のかゆみを伴う場合もありますが、多くは自覚症状に乏しいまま慢性に経過し、数カ月から数年で軽快する場合が多いようです。皮膚に内出血がみられるものの血液学的に異常はなく、内臓などの全身臓器からの出血はありません。良性の疾患で、予後も心配ありません。

真の原因は不明で、うっ血による静脈内圧の高進や毛細血管壁の弱さが関係するものと考えられています。また、何らかの遅延型過敏反応であるという説もあり、衣類の接触、扁桃(へんとう)炎などからの病巣感染、ある種の薬剤の関与などを指摘する報告があります。

このシャンバーグ病以外にも、環状の色素斑ができる血管拡張性環状紫斑(マヨッキー紫斑)、丘疹(きゅうしん)状の皮疹をみる色素性紫斑性苔癬(たいせん)様皮膚炎(グージュロー・ブルム病)、かゆみの強い瘙痒(そうよう)などが慢性色素性紫斑に分類されています。いずれも下肢、特に下腿(かたい)の裏側が好発部位で、おおかたは両脚に発症します。

血液の疾患や血管の疾患で、慢性色素性紫斑と似たような症状が出ることもあります。シャンバーグ病の症状に気付いたら、疾患を正しく把握するためにも、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科の医師に相談してみることが勧められます。

シャンバーグ病の検査と診断と治療

皮膚科、ないし皮膚泌尿器科の医師による診断では、出血傾向の一般検査を行ない、血液学的に異常をみないことを確認します。組織を病理検査すると、慢性的な出血性の炎症がみられます。病変部は明らかな色素の沈着を残すので、診断は比較的容易です。

症状の程度によって、ビタミンCなどの血管強化剤、止血剤、抗炎症薬などが使用されます。病因を絶つ根本治療ではなく、対症的治療にとどまります。副腎(ふくじん)皮質ホルモン剤(ステロイド剤)の外用が有効なことがあります。静脈瘤を伴う例には、弾力(弾性)ストッキング、弾力包帯を使用します。

慢性かつ進行性で一進一退を繰り返しますが、自然軽快もあり得ます。

衣類の接触とともに、使用中の薬剤などが疾患を悪化させているかどうかを観察し、日常生活の中で関係していると思われるものがあれば、それを避けるようにします。下肢の血液の循環に負担をかけないように、安静を心掛けることが大切で、枕の上に足先を挙げなど下肢を少し高くして寝ることもいいでしょう。長時間の歩行、立ち仕事などは控えるようにします。

🇨🇱臭汗症

汗くさいというものではなく、刺激のある特有の臭気を発する症状

臭汗症とは、汗に不快な臭(にお)いがある状態を指す症状。

腋(わき)の下、外陰部、臍(へそ)の周囲、乳輪などにはアポクリン汗腺(かんせん)がたくさんありますが、性ホルモンの影響を受けているため、思春期ごろから発汗が盛んになります。アポクリン汗腺から分泌された直後の汗には臭いはありませんが、汗には脂肪酸が含まれているため、皮膚の表面についている細菌により分解されることにより、刺激のある特有な臭いを発するようになります。

この臭汗症には、腋臭(わきが、腋臭〔えきしゅう〕症)のほか、足臭症、すそ腋臭(陰部臭汗症)などがあります 。

アポクリン汗腺は、特に腋の下に多く集まっているほか、瞼(まぶた)や鼻、外耳道、肛門(こうもん)周囲などにも分布しています。

ちなみに、人が一生を通じて出す汗のほとんどは、アポクリン汗腺以外のもう一つの汗腺であるエクリン汗腺から出る水分を主成分とする分泌物で、アポクリン汗腺からの分泌物とは異なります。このエクリン汗腺からの分泌物そのものには、ほとんど臭いはありません。しかし、エクリン汗腺も、アポクリン汗腺の臭いの発散にかかわっています。

臭汗症が軽い場合、発汗の少ない季節にはほとんど臭気を発しませんが、汗をかいたり、精神的に興奮すると、現れることがあります。汗をかいたままほうっておくと、臭いは強くなります。腋臭では、衣服の腋の下の部分が、黄色く変色します。

汗の臭いが気になるという人と、臭いより汗の量が多く、服に染みができて困るという人がいます。狭義では、前者を腋臭(腋臭症)と呼び、後者は多汗症といって区別します。

腋臭に気付いたら、腋の下を清潔に保つことが大切です。汗をかいた後はシャワーや入浴で汗をよく洗い流し、清潔な下着にこまめに取り替えます。制汗剤の外用も、ある程度効果があります。また、腋毛があると汗が付着して細菌が繁殖しやすくなるので、腋の下の毛を切ったり脱毛すると、臭いを減らす効果があります。

このアポクリン汗腺の汗が臭う体質は、遺伝します。世界的に腋臭体質者の割合を見ると、日本人では10人に1人、中国人では30人に1人、白人では10人に8人、黒人では10人すべてとされています。

このように日本人では腋臭を持つ者が少数派という事情と、日本人が清潔好きという理由があいまって、自分の腋臭の症状が気になり、仕事や勉強に集中できない、臭いを嗅(か)がれるのが怖くて他人と交流できないなど、悩みを持つ人の中には、専門の医師による手術を希望するケースも多々あるようです。

しかし、腋臭は生命を左右するような疾患ではないため、たとえ腋の下の汗が多くて臭いが強いからといって、必ず手術しなければいけないものでもありません。本人が気にしなければ、臭いが強くても治療の対象にはならないということです。

家族や親しい人から臭いを注意される場合は、皮膚科などを受診して相談することを考えてみてもよいのではないかと思われます。

臭汗症の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、あるいは形成外科、美容外科の医師による診断では、臭汗症で最も多い腋臭(腋臭症)の場合、腋の下の汗をガーゼなどでぬぐい、臭いを嗅ぐことにより確定できます。

皮膚科、皮膚泌尿器科、あるいは形成外科、美容外科の医師による治療としては、外用治療、ボトックス注入、スマートリポ、医療レーザー脱毛、手術療法などがあります。

外用治療では、何より清潔にすることが大切で、殺菌作用のあるせっけんでよく洗い、制汗剤をつけます。制汗剤としては、塩化ベンザルコニウム液や塩化アルミニウム液が用いられます。汗をかいた時は、汗ふきシートのようなものを塗ります。

ボトックスは顔のしわの治療で知られますが、腋の下に注入することで、汗腺の活動を抑制し、汗の分泌を抑えます。注入後3~7日間で効果が現れ、約3、4カ月~半年の間は、汗の量を抑えることが可能です。

スマートリポでは、腋臭の原因となる腋の下のアポクリン汗腺とエクリン汗腺に、スマートリポレーザーを照射し、汗腺を燃焼させます。メスを使用せず、直径1ミリの針状のレーザーを毛根部に差し込んで、汗腺を直接照射するので、傷跡が残る心配もありません。治療時間が約30分と短く、治療後すぐに帰宅が可能です。

医療レーザー脱毛では、高い出力レベルに設定したレーザーで、毛穴に沿って存在しているアポクリン汗腺を毛穴ごと破壊してしまうことで、臭いを軽減します。ただし、この治療法で腋臭を治療する場合、3 回程度の照射を必要とするなど、症状の適応に限界があります。1回の治療は5分ほどで、日常生活に制限はありません。腋毛の脱毛も、同時に可能です。

手術療法には、剪除(せんじょ)法(皮弁法)、吸引法、皮下組織削除法 、切除法がありますが、現在、保険適応で行われているのはほとんどが剪除法(皮弁法)です。腋の下の皮膚のしわに合わせ、3センチから4センチほどの切開を1本ないし2本入れ、指で皮膚を裏返し、目で確認しながらハサミでアポクリン汗腺を切り取っていきます。後は、切開した部分を縫い合わせるだけです。

🇵🇪帯状疱疹

■水ぼうそうウイルスが再活動

私たちが子供の頃によくかかる病気の一つに、水ぼうそう(水痘)があります。ウイルス性の病気である水ぼうそうは、一度発症して治ってしまうと一生感染しません。

ところが、その時のウイルスは死んでしまったのでなく、長い間、体の中の神経節に潜り込んでいたのです。このウイルスが、病気などで抵抗力が弱くなった時や疲れた時、あるいは年を取ったことにより再び活動を始めることがあります。これが、皮膚の病気「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」です。

ただし、子供の頃に水ぼうそうにかかったといっても、必ずしも帯状疱疹になるわけではありません。10人に1〜2人の確率とされています。

■体の片側に出る帯状の水ぶくれ

帯状疱疹は神経の通っている部分に、それも体の左右どちらかに帯のように現れます。

初めはピリピリ、チクチクした痛みから始まり、しばらくするとその部分が帯状に赤くなり、やがて水ぶくれになって神経痛のような激しい痛みを伴います。

一番、多いのは、肋間(ろっかん)神経のある胸から背中にかけてです。顔面にある三叉(さんさ)神経に沿って現れる場合は、失明や顔面神経麻痺を伴うこともあるので、特に注意が必要です。この他、下腹部、腕、足、おしりの下などにも現れます。

痛みが始まってから水ぶくれが治るまでの期間は、通常、約3週間〜1カ月です。痛みは水ぶくれが治る頃に消えますが、治った後も長期間にわたって、しつこく痛むことがあります。こちらは「帯状疱疹後神経痛」と呼ばれ、高齢者に多いものです。

帯状疱疹の自覚症状は非常にわかりやすいものですから、帯状疱疹後神経痛にまで進行する前に、できるだけ早く皮膚科で診てもらうようにしましょう。

■体力が低下した時が要注意

加齢、病気、疲労、ストレスなどで体の抵抗力が落ち、おとなしかったウイルスが活動し始めることで、帯状疱疹は起こります。

完全に帯状疱疹を予防する方法はありませんが、日ごろから栄養と睡眠を十分にとり、適度に運動を行うなど、心身の健康に気を配って体力を低下させないことが、最も大切な予防法です。

■できるだけ初期に治療を

どんな病気でも同じですが、帯状疱疹にかかった場合も、できるだけ初期に治療を始めたほうが早く治ります。

帯状疱疹後神経痛は、ウイルスによって神経が破壊されることが原因と考えられています。従って、治癒に時間がかかるほど、また発症時の痛みが強いほど、帯状疱疹後神経痛に進みやすくなります。

帯状疱疹の治療では、原因療法として抗ウイルス剤、対症療法として消炎鎮痛剤が処方されています。

抗ウイルス剤は、ウイルスの増殖を阻止して治癒を早めます。神経がまだ破壊されていない初期の段階で使用すれば、帯状疱疹後神経痛の予防が期待できます。

また、痛みがひどい場合は、神経ブロックを行って痛みを止める治療法が有効です。

神経ブロックとは、局所麻酔剤を用いて、神経の流れを一時的に遮断する治療法です。この治療法によって血液循環がよくなるとともに、神経の緊張が和らぎ、その神経が支配している領域の痛みを止めることができるのです。

🇨🇴重症熱性血小板減少症候群

野外のマダニが媒介する新しいウイルス性感染症

重症熱性血小板減少症候群とは、ブニヤウイルス科フレボウイルス属に分類されるSFTSウイルスを保有する野外のマダニが媒介して、引き起こされる新しいウイルス性感染症。SFTS (Severe fever with thrombocytopenia syndrome)とも呼ばれます。

2013年1月に日本で初めて山口県で確認され、5月現在も西日本を中心に広がっています。

重症熱性血小板減少症候群を媒介するマダニは、フタトゲチマダニやオウシマダニなどのマダニで、固い外皮に覆われた体長3~4ミリと比較的大型の種類。食品などに発生するコナダニや、衣類や寝具に発生するヒョウヒダニなど、家庭内に生息するイエダニとでは種類が異なります。広くアジアやオセアニアに分布し、日本国内でも青森県以南の主に森林や草地などの屋外に生息しており、市街地周辺でも見られます。

このマダニにかまれることで、重症熱性血小板減少症候群は主に感染し、6日から2週間とされる潜伏期間を経て、発症します。

発症すると、発熱や、食欲低下、吐き気、嘔吐(おうと)、下痢、腹痛といった消化器症状が現れます。時に、頭痛、筋肉痛や、意識障害、けいれん、昏睡(こんすい)といった神経症状、リンパ節腫脹(しゅちょう)、せきといった呼吸器症状、紫斑(しはん)、下血といった出血症状を起こします。

重症の場合は、血液中の血小板が減少して出血が止まらなくなったり、腎臓(じんぞう)の機能が低下したりして死亡することもあります。

致死率は約10〜30パーセントで、感染者の血液、体液を介して、人から人に接触感染することもあるとみられています。

厚生労働省が情報収集を始めた2013年1月以降、5月初旬までの国内での感染者は13人で、うち死亡が確認されたのは8人。8人の内訳は山口県の女性2人、鹿児島県の女性1人と、広島県、愛媛県、長崎県、佐賀県、宮崎県の各男性1人です。

感染者は2005年から2013年に発症しており、発症時期はマダニの活動が活発になる4月中旬から11月下旬の春から晩秋にかけて。

重症熱性血小板減少症候群は、2009年3月から7月中旬にかけて、中国中央部の湖北省および河南省の山岳地域で、原因不明の疾患が集団発生したことで存在が明らかとなり、2011年に原因ウイルスであるSFTSウイルスが確認され、現在は7省で発生が確認されています。アメリカでも2009年、ミズーリ州において2人の発症者が確認されています。

日本の発症者の血液などから検出されたSFTSウイルスは、中国のSFTSウイルスとは遺伝子配列の一部が異なっていることから、以前から国内に広がっていた可能性があるとされます。

マダニにかまれることでかかる感染症には、重症熱性血小板減少症候群のほかにも、日本紅斑(こうはん)熱があり、ダニの一種であるツツガムシにかまれることでかかるツツガムシ病もあるので、山野などに出掛けた後、発熱や消化器症状などの症状が出た場合は、速やかに医療機関を受診することが必要です。

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の検査と診断と治療

内科、感染症内科、皮膚科の医師による診断では、血小板減少(10 万/mm3未満)、白血球減少、血清電解質異常(低Na血症、低Ca血症)、血清酵素異常(AST、ALT、LDH、CK上昇)、尿検査異常(タンパク尿、血尿)などの検査所見がみられます。

確定診断には、血液などのサンプルからのSFTSウイルスの分離・同定、RTーPCR(逆転写酵素-ポリメラーゼ連鎖反応法)によるSFTSウイルス遺伝子の検出、急性期および回復期におけるSFTSウイルスに対する血清中IgM(免疫グロブリンM)抗体価、中和抗体価の有意な上昇の確認といったウイルス学的検査が必要であり、現在、国立感染症研究所ウイルス第一部で実施可能です。

なお、発症者がマダニにかまれたことに気が付いていなかったり、刺し口が見付からなかったりする場合も多くあります。

内科、感染症内科、皮膚科の医師による治療では、有効な抗ウイルス薬などの特異的な治療法はないため、対症療法が主体になります。中国では、多数のウイルスに効果を示す抗ウイルス薬のリバビリンが使用されていますが、効果は確認されていません。ブニヤウイルス科のウイルスは酸や熱に弱く、消毒用アルコールなどの一般的な消毒剤や台所用洗剤、紫外線照射などで急速に失活します。

重症熱性血小板減少症候群の予防ワクチンはないため、マダニに刺されないことが、唯一の感染予防法です。

ポイントは、レジャーや農作業などで、草むらややぶなどマダニが多く生息する場所に入る時は、肌をできるだけ出さないように、長袖(ながそで)、長ズボン、手袋、足を完全に覆う靴などを着用すること。また、肌が出る部分には、人用の防虫スプレーを噴霧し、地面に直接寝転んだり、腰を下ろしたりしないように、敷物を敷くこと。帰宅後は衣類を家の外で脱ぎ、すぐに入浴し体をよく洗って、新しい服に着替えることです。

万が一マダニにかまれた時は、マダニをつぶしたり、無理に引き抜こうとせず、できるだけ病院で処置してもらうことが大切です。マダニの多くは、人や動物に取り付くと、皮膚にしっかりと口器を突き刺し、数日から長いもので10日間、吸血します。無理に引き抜こうとするとマダニの一部が皮膚内に残ってしまうことがあるので、吸血中のマダニに気が付いた時は、病院で処置してもらって下さい。

2022/08/25

🇬🇹酒さ

顔の中央部が脂ぎって赤くなり、血管の拡張が目立つ疾患

酒さとは、鼻を中心に、ほお、額、口囲などの皮膚が脂ぎって赤くなり、次第に毛細血管の拡張が目立ってくる疾患。俗に、赤鼻、赤ら顔といわれることもあります。

皮膚表面のすぐ下に拡張した毛細血管が見えるようになるのは、皮膚が薄く、もろくなるためです。症状が悪化してくると、にきびのような小さく赤い吹き出物や、膿胞(のうほう)ができます。さらに悪化すると、鼻から毛細血管が広がって、脂肪の分泌が活発になって皮膚が分厚くなり、鼻全体が暗赤色にブヨブヨとはれてきます。鼻こぶが発生して、だんご鼻のように見えるため、鼻瘤(びりゅう)、酒さ鼻と呼ばれます。顔以外にも胴体、腕、脚に、症状が出ることもあります。

初期では、かゆみなどの自覚症状はほとんどありません。悪化すると、かゆみ、ほてりが生じます。

中年以上の人にみられることが多いもので、大人のにきびとも呼ばれます。実際、酒さの症状が軽い場合には、にきびとの区別がつきません。短期間で赤くはれるところが似ていますが、にきびは過剰な皮脂分泌によって、毛穴に皮脂が詰まることで引き起こされ、酒さは毛細血管の拡張によって引き起こされるという違いがあります。しかし、にきびと酒さが同時に発生するケースもあります。

原因は、よくわかっていません。酒好きな人に多くみられることから酒さといわれているのですが、胃腸障害、ビタミンB複合体の欠乏、香辛料やコーヒーなどの取り過ぎ、日光などが誘因と考えられています。体質、自律神経異常、更年期障害なども関係しているともいわれています。最近では、寄生虫の感染が原因とする説も発表されています。

化粧品やシャンプー、リンスでかぶれを起こし、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)が入った市販のかぶれ止めの薬を常用して、酒さ様皮膚炎を引き起こすケースもあります。

酒さの検査と診断と治療

酒さは、にきびやその他の皮膚病のように見えることもあります。酒さの疑いを感じたら、皮膚科や形成外科クリニックで診断してもらうようにします。医師が診れば、簡単に診断がつきます。

酒さの症状が軽ければ、抗生物質を経口で服用すると和らぎます。テトラサイクリンは最も効果があり、副作用が最も少ない薬です。メトロニダゾール、クリンダマイシン、エリスロマイシンといった抗生物質を皮膚に塗っても、効き目があります。イソトレチノインは、経口で服用しても皮膚に塗っても効果があります。ケトコナゾール、テルビナフィンといった抗真菌クリームを使うこともありますが、非常にまれです。ビタミンB2を経口で服用することもあります。

酒さの症状が重度の場合、内服剤や外用剤による治療は困難なため、レーザー治療や手術が必要になってきます。毛細血管拡張が強い時は、皮膚乱切法、電気乾固法などの手術が行われますが、それでも完全には治りません。鼻全体が暗赤色にブヨブヨとはれる鼻瘤、酒さ鼻の時は、切除術を行います。

注意したい点は、酒さを湿疹(しっしん)と間違えて、赤みを除こうとして副腎皮質ホルモン(ステロイド剤)軟こうの外用をする人が多いことです。ホルモン軟こうは、血管収縮作用があるために、外用時は肌が一時的に白くきれいに見えますが、長い間使用していると、毛細血管拡張と、にきび様の皮疹が増悪し、酒さ様皮膚炎になってしまうケースが時にあります。まず、副腎皮質ホルモン(ステロイド剤)軟こうの外用をやめることです。

また、皮膚内の毛細血管を広げる働きのある食品は、避けなくてはなりません。具体的には、香辛料の効いた食品、アルコール飲料、コーヒーなどのカフェイン入り飲料などです。化粧をする人は、腕に試してみるパッチテストをしてから使うように心掛けます。

🇬🇹酒さ様皮膚炎(口囲皮膚炎)

副腎皮質ホルモン外用剤の副作用で、赤ら顔になる皮膚病

酒さ様皮膚炎とは、鼻を中心として両ほおが赤くなる酒さに似た症状が現れる疾患。口の周囲にのみ症状が現れる場合は、口囲皮膚炎と呼ばれます。

比較的長期間に渡って、顔に副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド)外用剤を使用したことによる副作用が主な原因で、20歳ぐらいから中年にかけての女性の顔面に多くみられます。

毛細血管が拡張して赤ら顔になるほか、にきびのような小さく赤い吹き出物や、膿胞(のうほう)ができます。火照りやぴりぴり感を伴い、中にはかゆみを感じる人もいます。副腎皮質ホルモン(ステロイド)外用剤の使用をやめると、一時的にさらに症状が悪化するために、中止することができないと、ますます悪化していきます。

この酒さ様皮膚炎は、顔以外の皮膚ではあまりみられません。強力な副腎皮質ホルモン剤、特に構造式でフッ素を含有する副腎皮質ホルモン軟こうを外用した時に起こるとされますが、それ以外の副腎皮質ホルモン軟こうでも起こることがあります。化粧品を始め、シャンプーやリンスでかぶれた際に、市販の副腎皮質ホルモン剤が入ったかぶれ止めの薬を顔に長期間、連用するなどは、注意したほうがよいでしょう。

アトピー性皮膚炎の発症者で、顔の湿疹(しっしん)に連用して起こる場合もあります。副腎皮質ホルモン軟こうには、血管収縮作用があるために、外用時は赤みが除かれ肌が一時的に白くきれいに見えますが、長い間使用していると、酒さ様皮膚炎になりかねません。女性が化粧品の下地クリームとして長期間、連用して起こる場合もあります。

酒さ様皮膚炎の検査と診断と治療

症状を自覚した時は、皮膚科を受診します。アトピー性皮膚炎や脂漏性皮膚炎を治療するために、副腎皮質ホルモン(ステロイド)軟こうを用いて発症した場合は、掛かっている医師に相談します。

治療の基本は、副腎皮質ホルモン軟こうの外用を中止すればよいのですが、実際には難しさがあります。外用を中止すると、数日後から顔面の赤み、はれがますます強くなり、火照り感が強く、我慢できなくなるほどに悪化します。この状態がひどい時は、3週間から2カ月くらい続くこともあり、その後は次第に症状が消えていきます。

問題はこの悪化する時期をどう治療するかで、外出もできないと訴える発症者もいます。精神的苦痛や不安を伴うので、入院するのも選択肢に入ります。徐々に効果の弱い副腎皮質ホルモン軟こうに変えていくとか、全身的に副腎皮質ホルモンの内服を行って炎症を抑え、徐々にその量を減らす方法もありますが、この方法では軽快するまでに、かなり長期間を要することがあります。

軽いケースでは、テトラサイクリンなどの抗生物質とビタミンB2の内服で、症状が改善されます。アトピー性皮膚炎がある場合は、副腎皮質ホルモン軟こうの代わりに、タクロリムスという免疫抑制剤の軟こうを用いたりします。

酒さ様皮膚炎を予防するためには、顔にはなるべく副腎皮質ホルモン含有軟こうを使用しないことです。かぶれやアトピー性皮膚炎で炎症症状が強く、どうしても顔にこの軟こうを使わなければならない時は、できるだけ短期間に抑え、症状が軽快すれば、早めに副腎皮質ホルモンを含まない軟こうに変えます。そのためには、外用剤でも必ず皮膚科専門医の指示に従って、使用する必要があります。

日常生活では、皮膚内の毛細血管を広げる働きのある食品は、避けなくてはなりません。具体的には、香辛料の効いた食品、アルコール飲料、コーヒーなどのカフェイン入り飲料などです。化粧をする人は、腕に試してみるパッチテストをしてから使うように心掛けます。

🇵🇦手掌多汗症

手のひらに汗が異常に分泌する症状

手掌(しゅしょう)多汗症とは、手のひらに日常生活をする上でいろいろな障害をもたらすほど発汗する症状。多汗症の一種で、手汗とも呼ばれます。

多汗症は、体温の調節に必要な範囲を超えて、汗が異常に分泌する症状。全身性の多汗症と、手のひら、足の裏、腋(わき)の下、頭、鼻の頭などにみられる局所性の多汗症があります。

人間は意外と多くの場面で汗をかいており、発汗は体温調節の役割を担う大切な生理機能の一つでもあります。そのため、どのくらいの汗の量で多汗症と呼べるのか分類は難しいのですが、多汗症の場合は気温の変化や運動などとは関係なしに汗をかくことが多いので、心当たりがある人は少し振り返ってみるといいでしょう。特に疾患と考える必要はないにしろ、汗をかくということは日常の生活と密接に関係していることですので、さまざまな悩みや問題を抱えている人が多いのも事実です。

局所性の多汗症は、汗をかきやすいという体質に、生活環境や精神的な影響が加わったものが大部分です。肥満、過度なダイエット、生活リズムの乱れ、性格的に神経質だったり、緊張しがちなタイプだったりと、ストレスをためやすい状況下に身を置いていることが原因となっています。

これらの原因の背後には、交感神経の働きが大きく関係しています。交感神経とは、副交感神経とうまくバランスを取り合いながら、人間が日々健康で過ごせるように作用しているものです。この交感神経がストレスなどさまざまな原因により過敏になってしまうと、体温上昇とは無関係に汗を大量にかくようになり、汗をかくことでさらなるストレスを作り出す悪循環に陥ってしまいます。

全身性の多汗症も、多くは体質的なものです。比較的急激に生じた場合には、代謝機能や自律神経などが障害される、いろいろな疾患が潜んでいる可能性があります。

局所性の多汗症の一種である手掌多汗症が起こる原因は、汗をかきやすいという体質に、生活環境や精神的な影響が加わり、発汗を促す交感神経が通常よりも過敏になって起こるものが大部分です。

本人には意識できない幼少期から発症することが多いものの、10歳代から30歳代になって治療を受け始める人が多く認められます。多くの場合、足の裏に異常なほど大量の汗をかく足蹠(そくせき)多汗症(足底多汗症)も伴います。発症に男女差は認められていません。

同じ手掌多汗症でも、人によって汗の出る量が異なります。同じ人でも、汗の出る量は時間帯やその日の気温、緊張の度合いによっても違いますが、汗の出る量(発汗量)によってレベルが3段階に分けられています。

レベル1は、手が湿っている程度。見た目にはわかりにくいものの、触ると汗ばんでいることがわかります。光を反射して汗がキラキラと光ります。

レベルは2は、手に水滴ができてぬれており、見た目でも汗をかいていることがわかります。

レベル3は、盛んに水滴ができ、汗が滴り落ちます。

手のひらから汗が滴り落ちるように出る場合は、「手を動かすと汗が飛び散る」「教科書やノート、書類がぬれてしまう」「握手ができない」「手が滑って物を落としやすい」など、さまざまな支障が生じます。

本人にとっては非常につらい状態なので親や周囲の人に相談するのですが、汗っかきの体質ということで片付けられてしまい、治療を受けることなく悩みながら成長していくケースが多いようです。

そのため、性格が消極的になる、集中力が低下するなどの精神的な負担も背負い込むことになります。その結果、学業成績の低下やいじめの原因となり、不登校や引きこもりに至るケースも認められます。

手掌多汗症でによる支障が改善しない場合は、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科を受診し、自分に合った治療を受けることをお勧めします。

手掌多汗症の治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、皮膚に塗ると汗腺をふさいで一時的に汗を抑える効果がある局所制汗剤として、20パーセントの塩化アルミニウム液や、5パーセントのホルマリン・アルコール液を足裏の汗が多い部分に塗布します。1日1〜2回塗り、乾いてからパウダーを振り掛けておきます。

精神的な緊張が強くて汗をかくような場合には、精神安定剤を内服することも有効です。

イオン浸透療法(イオントフォレーシス療法)を行うこともあります。水道水に浸した手のひらの部位に、弱い電流を20分ほど流して発汗を抑制するもので、個人差がありますが効果が出るまで数週間の集中的な治療が必要です。治療をやめると再発の可能性が高く、副作用として湿疹(しっしん)、かゆみ、皮むけ、水疱(すいほう)などが生じることがあります。

このイオン浸透療法は皮膚科、皮膚泌尿器科で行う治療法ですが、同様の療法が行えるドライオニックと呼ばれる家庭用機器もあります。

局所制汗剤の外用、イオン浸透療法で十分な効果が得られなかった場合は、必要に応じてボトックス注射を行うこともあります。発汗は交感神経の末端から放出されるアセチルコリンという神経伝達物質により、汗腺が刺激されることで促されるため、汗が出やすい部分にボツリヌス注射を打つと、このアセチルコリンの放出が阻害されるため、汗を減らすことができます。

1回の注射による効果は、約半年間持続するとされています。ただし、副作用などのリスクもあります。

交感神経ブロック手術を行って、胸の辺りにある汗の分泌を調節する交感神経を切除することもあります。手術は基本的に、まず片方の交感神経を切除し、その後の体調の経過をみてから、もう一方の交感神経も切除するかどうかを決定します。

手術のメリットは成功率が高く効果に永続性があるということ、デメリットは交感神経を一度切除してしまうと元には戻らないということと、副作用として代償性発汗になる場合がほとんどであることです。代償性発汗とは、手のひらから汗が出なくなった代わりに、背中や下半身などこれまでと違った部位から大量の発汗が起こるものです。

近年では、内視鏡手術(ETS手術)を行うこともあります。腋の下の皮膚を2~4ミリほど切って、小さなカメラを胸腔(きょうくう)に入れ、モニター画面で胸の中を見ながら、胸の辺りにある汗の分泌を調節する交感神経を見付けて切断します。左右両方の交感神経切断が必要です。

🇧🇿主婦湿疹(手湿疹)

水をよく使う主婦などの手に発症する皮膚炎

主婦湿疹(しっしん)とは、主婦など水をよく使う人の手に起こる皮膚病。手湿疹、進行性指掌(ししょう)角皮症とも呼ばれます。

主婦だけに限らず、調理師、美容師、理容師など毎日、水仕事をする男女にもみられます。そのほかに、紙を頻繁に扱う仕事を行っている人にもみられます。

原因は、水やお湯、洗剤やせっけん、食物の残りかすなどの物理的、化学的な刺激によって、手の表面を覆っている皮脂膜の脂が落ちることにあります。皮脂膜の脂は皮膚表面を刺激や乾燥から守る脂であり、これが落ちると角質の表面の水分保有力が低下し、外的刺激に体する抵抗力が弱くなるために、皮膚炎が生じます。

しかし、同じ程度の水仕事をしていても全く症状の出ない人もおり、皮膚表面の角質の水分保有能力の悪い体質の人、生まれ付きの過敏症であるアトピー性体質の人に生じやすいと考えられています。

主婦湿疹には、湿潤型と乾燥型という2つのタイプがあります。湿潤型は、小さな赤い発疹や水膨れできるのが特徴です。多少じくじくし、かゆみを伴います。指の腹や手のひらから発症することが多く、手の甲にも症状がみられます。

乾燥型は、皮膚がカサカサして皮がむけ、ひどくなるとひび割れが生じます。指紋が消える、皮膚が硬くなるなどの症状もみられます。かゆみよりも、ヒリヒリした痛みを伴います。個人差はありますが、利き手の親指、人さし指、中指などよく使う指先から症状が始まり、次第に手のひら全体に広がっていくこともあります。

一般には、空気が乾燥した冬に悪くなり、暖かい夏には軽くなりますが、なかなか治らず、通年で悩まされる人も少なくないようです。

主婦湿疹の検査と診断と治療

主婦湿疹の治療では、皮膚表面の皮脂膜が食べ物で補えないため、手指の休息と保護が最も大切です。

湿潤型と乾燥型では、治療法が異なります。湿潤型や、特に症状が強い部位には、市販のステロイド外用剤を使用します。乾燥型は、市販の保湿剤による治療がベースとなります。刺激物が入っていないワセリンか、保湿に優れている尿素やヘパリン類似物質などを、皮膚の症状に合わせて使用します。また、保湿成分の入った化粧品や入浴剤を合わせて使うと、より効果的です。

湿潤型と乾燥型が混在している場合には、保湿剤を塗った上に、炎症症状がある部位にのみステロイド外用剤を使うようにします。保湿剤は一日に何度使ってもよいので、水仕事の後に繰り返し塗り、刺激や乾燥から手を守ります。ステロイド外用剤は1日2回、朝と入浴後に塗ります。用法をきちんと守れば、ステロイド外用剤は安全に使える薬です。

また、水仕事をする時には、薄い木綿の手袋をした上からゴム手袋をするとよいでしょう。木綿の手袋は、ゴムの刺激から皮膚を守ります。

通気性がよく、皮膚を保護してくれる木綿の手袋をさまざまな場面で活用すれば、症状の改善を助けることになります。水仕事以外の家事で、洗濯物を干したり、布団の上げ下げをしたり、掃除機をかける時でも、木綿の手袋をします。夜寝る時には、保湿剤をたっぷり塗って木綿の手袋をすれば、保湿剤の浸透がよくなる上、寝ているうちに無意識にかいて炎症を悪化させるのも予防できます。肌寒い日や乾燥している日は、手袋をして外出します。

皮膚の負担を軽くするために、洗剤やシャンプー、ボディーソープ、せっけん、ハンドソープなどは、低刺激性のものを選ぶようにします。食器洗浄機などの機器を利用したり、症状が強い時は上手に手を抜いたり、家族に手伝ってもらうことも大事です。

薬物療法と生活改善によって主婦湿疹が治っても、根本原因である刺激や乾燥を減らさなければ再発します。手の皮膚を保護する生活を習慣にし、炎症が起こり始めたら早めに治療を行います。

🇦🇱蜂窩織炎、丹毒

細菌の感染によって起こる皮膚の化膿性炎症

蜂窩織(ほうかしき)炎とは、皮膚の真皮の深いところから皮下脂肪組織にかけて、細菌の感染によって起こる化膿(かのう)性炎症です。蜂巣炎とも呼ばれます。

丹毒とは、皮膚の真皮の浅いところに、連鎖球菌の感染によって起こる化膿性炎症です。皮膚の浅いところに生じた蜂窩織炎ともいえます。

蜂窩織炎では、毛穴や汗の出る管を通じて細菌が真皮内に増殖する場合と、直接に表皮の間を通過して細菌が侵入する場合とが考えられます。

原因菌は主としてブドウ球菌によりますが、連鎖球菌など他の細菌によって生じることもあります。感染を受けた皮膚は全体に赤くはれ、皮下に硬い板状のしこりができます。周囲の正常な皮膚との境界は不鮮明で、圧痛、自発痛が強く、時には膿汁(のうじゅう)が出ることもあります。周囲のリンパ腺(せん)は、はれ上がり、発熱を伴うこともあります。

また、せつ、いわゆるおできから悪化する場合もありますが、足指の間の水虫を放置しておいて、そこからブドウ球菌が侵入し、足の甲が赤くはれ上がるケースが最も多くみられます。

丹毒では、原因菌は蜂窩織炎と異なり、連鎖球菌が主です。連鎖球菌は皮膚の表面から真皮内に入り炎症を生じますが、他の部位から血液を介して連鎖球菌が真皮に達し生じることもあります。

突然、38度以上の発熱、悪寒、全身の倦怠(けんたい)感を伴って、皮膚に境界のはっきりした鮮やかな赤い色のはれが現れ、急速に周囲に広がります。表面は皮膚が張って硬く光沢があり、その部分は熱感があり、圧痛、自発痛もありますが、皮下のしこりはあまりありません。水疱(すいほう)や出血斑(はん)を伴うこともあります。

顔、下肢、上肢、手足に多くみられ、近くのリンパ節がはれて痛みがあるのが普通です。また、一度できると、同じ場所に何回も繰り返し、できることがあります。高齢者や免疫力の低下した人に、多く発症します。

蜂窩織炎、丹毒の検査と診断と治療

蜂窩織炎の血液検査では、白血球が増え、CRPの上昇がみられます。CRPは蛋白(たんぱく)質の一種で、体内に炎症が起きたり組織の一部が壊れたりした場合に、血液中に現れます。丹毒の血液検査では、白血球が増え、CRPの上昇、赤沈の高進がみられます。連鎖球菌に対する抗体が上昇することもあります。

蜂窩織炎と丹毒との区別は、必ずしも簡単ではありません。

蜂窩織炎の治療は、赤く熱感のある局所を安静にして冷やし、適切な抗菌剤の内服または点滴静注をします。

丹毒の治療は、赤く熱感のある局所を安静にして冷やし、発熱などの全身症状が強いために、大量のペニシリン系抗菌剤の内服または点滴静注をします。高熱が下がるまでは、全身的な安静も必要です。

適切な治療により、1週間前後で表面の皮がはがれてきて治りますが、再発予防や合併症も考え、よくなってからも約10日間は抗菌剤を内服します。正しい治療が行われないと、敗血症、髄膜炎、腎(じん)炎などを合併して重篤になることがあります。

予防法としては、蜂窩織炎、丹毒は習慣的に引っかく鼻粘膜の傷や、湿疹(しっしん)、水虫などの小さい傷が原因になることも多いので、小さい傷でも早めに手当てする必要があります。

🇭🇷紡錘細胞性母斑

一般に子供の顔面に多く発現し、急速に大きくなる良性の腫瘍

紡錘細胞性母斑(ぼはん)とは、特に顔面に、また小児に多く発現する腫瘍(しゅよう)のこと。最初の報告者の名前をとってスピッツ母斑、あるいは若年性黒色腫、若年性良性黒色腫とも呼ばれます。

腫瘍といっても、ほくろのがんと呼ばれることもある悪性黒色腫(メラノーマ)とは違って良性です。青壮年にできることもありますが、主に3~13歳の幼児や小児にでき、突如として顔面に現れると、急速に1センチ程度まで大きくなるという特徴があります。

一見すると、ほくろのように思えることもありますが、色がやや淡い淡紅色から淡紅褐色のことが多いことや、円形や楕円(だえん)形に盛り上がった部位の表面が滑らかで、光沢があるという特徴を持っています。また、病変の周囲が赤みを帯びることもあります。傷付いたり、出血しやすく、黒褐色の色素沈着を伴うこともあります。

顔面だけではなく、ほかの部位にできることもありますし、皮膚のすべての部位にできる褐色から青黒色、あるいは黒色の色素性母斑(母斑細胞性母斑)の病変内に、紡錘細胞性母斑ができることもあります。

原因は、色素性母斑と同じとされていて、メラニンを作る機能を持っているメラノサイトが表皮や真皮の境界部で、集中してしまうことが挙げられています。

紡錐細胞性母斑で悪性化することはありませんが、悪性黒色腫との区別が難しいともいわれているので、見極めが重要になってきます。ただし、この見極めは素人には困難だとされているので、皮膚科や皮膚泌尿器科、形成外科で検査してもらい、慎重な対応をしていくことがポイントになります。

紡錘細胞性母斑の検査と診断と治療

医師による紡錐細胞性母斑の診断では、見た目だけでは迷うことが多く、最終的には切除した組織の病理検査で確定診断します。組織学的には、著しく色素沈着した真皮表皮接合部に、深部へと広がる多核巨大細胞、類上皮細胞様細胞、長い紡錘状細胞など混在する細胞が認められます。

鑑別すべき他の疾患として、悪性黒色腫のほか、化膿(かのう)性肉芽腫、偽リンパ腫があります。

医師による治療では、外科的切除が一般的です。切除は、紡錐細胞性母斑を紡錐形(木の葉型)に切り取って縫合をします。目立ちにくい、しわの方向に切除して形成外科的な縫合をするため、傷跡はできるものの、それほど目立たなくなります。

切除した組織の病理検査が必要になるケースが多いため、ほとんどの組織が焼き消えてしまうレーザー治療は通常、行われません。

🇸🇦ボーエン様丘疹症

ヒト乳頭腫ウイルスが感染して、性器にいぼができる疾患

ボーエン様丘疹(きゅうしん)症とは、主にヒト乳頭腫(にゅうとうしゅ)ウイルス(ヒトパピローマウイルス)16型が感染して、性器や肛門(こうもん)周囲などにいぼができる疾患。ボーエン様丘疹症は皮膚科での呼び名で、婦人科では外陰上皮内腫瘍(しゅよう)と呼ばれます。

性行為感染症の1つとされており、一般に20~30歳代の性活動が盛んな年代に多くみられ、ヒト乳頭腫ウイルスがセックスの時などに感染することで起こります。性的パートナーがウイルスを体内に保有しているキャリアならほぼ感染するほど、ヒト乳頭腫ウイルスの感染力は強く、皮膚や粘膜との直接的または間接的な接触により感染し、唾液(だえき)、血液、生殖器からの分泌液などの体液からは感染しません。

感染後3週間から6カ月程度で、性器に2ミリから1センチくらいの黒褐色のいぼ、すなわち丘疹が多発します。個々の丘疹が癒合して、大きな平面状になることもあります。

同じ性行為感染症の1つで、ヒト乳頭腫ウイルス6型と11型が感染して、性器に1ミリから3ミリくらいのカリフラワー状の丘疹を生じる尖圭コンジロームと、区別が付きにくい場合もあります。混合感染して、ボーエン様丘疹症と尖圭コンジロームを一緒に発症することもあります。

また、ボーエン様丘疹症の病変は、病理組織学的にはボーエン病の病変に類似しているとされています。ボーエン病は、境のはっきりした褐色の色素斑(はん)が体幹や四肢に好発する皮膚病で、かなり高い確率で将来がんに移行し得る皮膚がん前駆症の一つです。

しかし、比較的若い人に生じたボーエン様丘疹症が悪性化することは少なく、90パーセントは体内の免疫力で数カ月から3年以内で、ウイルスは自然消滅します。

10パーセントはウイルスが細胞の中に残り、その中の10パーセントから20パーセントは悪性で、さらにその中の10パーセントは子宮頸(けい)がんや口腔(こうくう)がん、舌がん、喉頭(こうとう)がん、肛門がんを発症するリスクがあります。

ボーエン様丘疹症の受診科は、泌尿器科、性病科、皮膚科、婦人科(女性)となります。

ボーエン様丘疹症の検査と診断と治療

泌尿器科、性病科、皮膚科、婦人科の医師による診断では、皮膚症状から視診で判断し、似たような尖圭コンジロームや、梅毒でみられる扁平(へんぺい)コンジロームなどのほかの疾患と鑑別します。判断が難しい場合は、いぼの一部を切除して顕微鏡で調べる組織検査で判定することもあります。時には、血液検査で梅毒ではないことを確認することもあります。

泌尿器科、性病科、皮膚科、婦人科の医師による治療では、一緒にできることもある尖圭コンジロームの場合と同じで、いぼが小さくて少数なら、局所免疫調節薬であるイミキモド軟こう、ポドフィリン液、5−FU軟こう、尿素軟こうなどの塗り薬も効果があるといわれています。

一般的には、液体窒素による凍結凝固や、レーザー、電気メスによる焼灼(しょうしゃく)が有効です。改善しない場合や悪性化が疑われる場合は、外科的切除も考慮します。

診断が確定したら、きちんと治るまで性行為は控えるか、コンドームを使用するようにします。また、子宮頸がんなどの発症の可能性があるという観点から、治癒が確認できるまで治療、あるいは経過観察を怠らないようにすべきです。ヒト乳頭腫ウイルス16型に長期間感染していると、子宮頸がんを発症する可能性があると考えられています。

なお、ボーエン様丘疹症を生じた男性の性的パートナーである女性は、子宮頸がんの発症に注意し、検診を定期的に行うことが勧められます。

🇵🇰ボーエン病

かなり高い確率でがんに移行し得る皮膚がん前駆症の一つ

ボーエン病とは、境のはっきりした褐色の色素斑(はん)が体幹や四肢に好発する皮膚病。1912年のジョン・T・ボーエン医師の論文から、命名された疾患です。

このボーエン病は、かなり高い確率で将来がんに移行し得る皮膚がん前駆症の一つであり、狭義には表皮内がんと同じです。表皮内がんというのは、がん細胞が皮膚の浅いところにだけあり、この状態では転移の心配はありません。

しかし、放置していて進行すると、皮膚の深いところである真皮内に、がんが浸潤し体をむしばむ可能性があります。それも広い意味でボーエン病ですが、区別してボーエンがんと呼ぶこともあります。さらに進行すると、リンパ節転移や内臓転移を起こし、ついには死に至ります。

ボーエン病は大人、特に60歳以上の高齢者に発症します。原因は、日光照射、ヒ素中毒、エイズを含む免疫抑制状態、ウイルス感染、皮膚傷害、慢性皮膚炎などです。

典型的な症状は、境界が鮮明で、不整形の褐色の色素斑が現れ、上にかさぶたがつき、皮がめくれたりします。有色民族の場合は褐色ですが、白人の場合は紅斑が現れます。かゆみはないものの、湿疹(しっしん)や乾癬(かんせん)のような皮膚病と間違いやすいものです。

日光の紫外線の影響による場合は、皮膚の露出部に色素斑が現れます。ヒ素やその他の影響による場合は、皮膚の露出部にも現れるとともに、服に覆われている体幹部や下肢、陰部が好発部位となります。

放置すると、症状が不変の場合もありますが、通常は徐々に拡大します。単発の場合もありますが、多発例も10~20パーセント程度あり、ヒ素による場合は、手のひらと足の裏の角化、体の色素沈着と点状白斑、つめの線状色素沈着などの皮膚症状がみられ、皮膚以外にも肝がん、肺がん、膀胱(ぼうこう)がんなどの内臓悪性腫瘍(しゅよう)を合併します。原因が飲料水のヒ素汚染の場合は、地域的に多数発生します。

ボーエン病の検査と診断と治療

かゆみのない褐色の色素斑ができているのに気付いたら、一度、皮膚科専門医を受診します。

専門医が視診すると診断がつくことが多いのですが、湿疹や乾癬など他の皮膚病との鑑別は必ずしも簡単ではありません。確実に診断するためには、病変の一部を切り取って組織検査をすることが必要です。

ボーエン病と診断されれば、合併率が高い内臓悪性腫瘍の検査も同時にする必要があります。多発性ボーエン病では、ヒ素中毒などを除外するための検査も必要です。

ボーエン病の治療としては、初期なら手術で病変を切り取れば、完治することがほとんどです。病変が小さければ切り取った後、傷を直接縫い合わせて閉じることもあります。病変が5センチとか10センチ以上では、切り取った後の皮膚欠損が大きく、複雑な形となり、直接縫合することができないこともあります。そういう場合は、植皮術や皮弁形成術で修復が可能です。

表皮内がんより進行したボーエンがんである場合は、病変の切除と植皮や皮弁で修復することに加え、リンパ節廓清(かくせい)術を組み合わせることがあります。また、状況により放射線療法、抗がん剤の投与、レーザー焼灼(しょうしゃく)、液体窒素による冷凍凝固療法などが行われることがあります。

病変を切り取った後の傷跡に、拘縮(こうしゅく)や外観の問題が生じることがあります。その場合、形成外科的な手法による改善が検討されます。病変の取り残しがないことや再発の有無をみるため、治療後も定期的な経過観察が必要です。

2022/08/24

🇸🇰掌蹠角化症

手のひらや足の裏の皮膚が過度に角化して、分厚くなる皮膚疾患

掌蹠角化(しょうせきかくか)症とは、手のひらや足の裏の皮膚が過度に角化して、はれたように分厚くなる皮膚疾患。

先天性素因によって生じる先天性掌蹠角化症と、後天性掌蹠角化症がありますが、両者を区別することは困難なことが多く、一般には掌蹠角化症という場合は先天性のものを指します。その先天性掌蹠角化症にも多くの病型が存在し、原因遺伝子が判明している型と、まだわかっていない型があります

病型により、その症状もさまざまで、時には、ほかの臓器との合併症を伴って、重篤化することがあります。

主な病型には、ウンナ・トスト型、フェルネル型、メレダ型、先天性爪甲厚硬症(先天性厚硬爪)、パピヨンルフェーブル症候群、点状掌蹠角化症、線状掌蹠角化症、ナクソス病があります。

ウンナ・トスト型は、生後数週間の乳児期に多く認められ、手のひらや足の裏の皮膚表面の角質が肥厚します。時に、手や足の甲まで軽く赤らんできます。また、局所的に多汗症を伴う場合もあります。

フェルネル型は、掌蹠角化症の中で最も多くみられる病型で、手のひらと足の裏だけに赤みを帯びた肥厚が生じ、爪(つめ)の変形や多汗などが生じることもあります。

メレダ型は、重度の角化が生じて手のひらや足の裏だけでなく、手足の甲まで赤みを帯びます。時に、湿疹(しっしん)や多汗も生じます。角質の脱落、硬化などがあるため、以前はハンセン病と間違われることが多くありました。

先天性爪甲厚硬症は、主に1型と2型に分類され、1型は手足の爪の甲の硬化、肥厚を始め、手のひらや足の裏の角化、多汗を生じ、口腔粘膜や舌にも白色角化が及びます。2型は手足の爪の甲の硬化、肥厚、手のひらや足の裏の角化は軽度ですが、毛髪異常などほかの部分に症状が及びます。しかし、口腔粘膜や舌の白色角化は認めません。

パピヨンルフェーブル症候群は、歯肉炎や歯周病を伴います。乳歯が抜け落ちるのはもちろん、その後生える永久歯も抜けやすくなります。乳幼児から発症し、赤みを帯びた皮疹が現れ、汗が多くなることで悪臭が生じます。

点状掌蹠角化症は、点状に小さな丘疹が多発して、丘疹の脱落後に皮膚の一部が陥没します。また、爪に異常を来したり、悪性腫瘍を合併することがあります。主に15歳から30歳の青年期に、多く発症します。

線状掌蹠角化症は、手足の指の腹に線状の丘疹が生じ、脱落します。また、難聴を合併することもあります。主に5歳から20歳の少年期に、発症します。

ナクソス病は、角化症の症状に伴って心肥大、心筋症などの合併症を患い、突然死を来すこともあります。

掌蹠角化症には、歯肉炎や歯周病を伴ったり、心肥大や心筋症などほかの臓器の障害を合併する病型があるので、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科を受診して正しい診断を受け、適切な治療を受けるようにします。

掌蹠角化症の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、症状や問診で、掌蹠角化の範囲、掌蹠の多汗の有無、かゆみや紅斑(こうはん)の有無を確かめ、病型を判断します。

続いて、角化した皮膚を数ミリ切り取って調べる検査である皮膚生検などを行い、確定診断に至ります。例えば、掌蹠角化症の中で最も多くみられるフェルネル型では、特異的な顆粒(かりゅう)変性が観察されます。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、根治的な治療法は現時点では存在しないため、多くの場合は1日2回から3回程度、サリチル酸ワセリンや尿素、活性型ビタミンD3、ステロイド剤などの外用剤を患部に塗ります。重症の場合は、ビタミンA類似物質であるエトレチナート(チガソン)を内服します。

過度の角質肥厚や過度の爪甲肥厚に対しては、はさみやメス、爪切りや爪やすりでできるだけ薄くなるように削ったり、溶かして薄くしたりします。手指の絞扼輪(こうやくりん)や掌蹠の角質肥厚に対しては、外科的治療(植皮)を施すこともあります。

掌蹠の多汗を伴い、悪臭を伴う場合は、多汗症の治療を平行して行います。

🇨🇿掌蹠膿疱症

手のひら、足の裏に小さな水疱、膿疱が多数出現

掌蹠膿疱(しょうせきのうほう)症とは、主に手のひらと足の裏に、小さな水疱(すいほう)と膿疱(のうほう)がたくさんできる皮膚病。

足では、土踏まずの部分を中心に、小さな水疱と膿疱がたくさん集まり、これらが破れてできる、かさぶたと落屑(らくせつ)が混ざり、皮膚が赤く、角化します。ひどくなると、ひび割れになります。痛みが強く、かゆみもあります。

一見すると、足の水虫と似ていますが、水虫のほうは足の裏全体に広がってできる傾向にあり、その症状は水疱が主で、かなり大きな水疱になることもあります。掌蹠膿疱症のほうは、土踏まずを中心に集合しており、その症状は小さな膿疱が中心で、あまり大きな水疱にはならず、かゆみも水虫ほどは強くないところが違っています。

しかし実際には、この二つの症状は、外見ではなかなか区別ができにくいケースが多く、水虫を起こす白癬菌がいるかどうか検査しないと、最終的な判断はできません。掌蹠膿疱症の特徴は、膿疱がたくさんあるのに、化膿菌が全く認められない点です。

掌蹠膿疱症は、非常に治りにくく、5年、10年と繰り返してできる人も多くいます。また、かなり多くの人では、胸骨、鎖骨、肋骨(ろっこつ)が一緒になっている胸の関節部に、関節炎があります。

原因は不明ですが、乾癬や扁桃腺(へんとうせん)炎と関係があるのではないかと考えられています。実際、扁桃腺を手術して切除すると、掌蹠膿疱症がうそのように治る場合もあり、扁桃腺についている化膿菌の菌体成分が原因ではないかとの説もあります。

また、歯科で虫歯を治療して金冠を詰めている人にも、この掌蹠膿疱症が多く、金冠を全部抜いてしまうと治る人もいるので、金冠の金属の一部が溶けて血液中に入り、アレルギー反応の結果、膿疱ができるとの考えもあります。 整形外科の金属性人工骨で、アレルギー反応が起こることもあります。

掌蹠膿疱症の検査と診断と治療

原因が不明ですので、対症療法が主になります。

主な治療薬は副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド)外用剤で、手のひら、足の裏は角質が厚いために、やや効きが弱いのですが、効果の強い軟こうを根気よく塗ったり、テープに薬剤の染み込んでいるものを張ったりして治療します。

重症の場合には、同じホルモン剤、あるいは抗炎症剤の内服療法を行うこともありますが、長期に渡る場合が多く、副作用の問題もあり、避けたほうが安全とされています。漢方薬の内服療法、中長波紫外線療法を行うこともあります。

根治療法としては、扁桃腺に異常のある場合には耳鼻咽喉(いんこう)科での外科的な扁桃腺摘出、胸骨鎖骨肋骨に炎症のある場合には整形外科でのしかるべき外科的方法、歯科用金属および整形外科の金属性人工骨による場合には樹脂製のものと取り替えることが考えられます。

🇲🇹静脈奇形

誕生時から皮膚の下に腫瘤がみられる、先天性の血管形成異常

静脈奇形とは、誕生時から皮膚の下に腫瘤(しゅりゅう)がみられる、先天性の血管形成異常。海綿状血管腫とも呼ばれます。

皮膚の表面は正常な皮膚色や、薄い紫紅色、薄い青色を示し、皮膚の下の腫瘤は内部に血液を含んでいるため、スポンジ状に軟らかくなっています。皮膚の表面に、数珠状に拡張した静脈が観察されることもあります。これは皮膚の深層で、静脈を中心とした奇形性血管が増殖して、塊となっていることが原因で発生します。

腫瘤は手足を始めとして体のどの部位にでも生じ、形は大小さまざま。皮膚の下に発生していることが多いのですが、筋肉や肝臓、腎(じん)臓、脳など深部にまたがって発生していることもあります。非常に広範な病変である場合は、生命にかかわる重篤な症状を示すこともあります。

皮膚の下に発生する多くの静脈奇形は、症状も軽微であり、長期に渡って安定しています。自然に消失することはありませんが、圧痛は認められません。

進行した場合は、血管が徐々に増大して周辺組織を圧迫したり、神経の圧迫による疼痛(とうつう)、血栓形成による疼痛を引き起こすことがあります。血管自体ももろくなるので、外傷によって破裂して大量出血を引き起こしたり、皮膚潰瘍(かいよう)、感染症などを引き起こすことがあります。また、大きな腫瘤では美容上および機能的に問題となります。

腫瘤が筋肉に発生している場合は、小児期よりも少し大きくなってから、痛みなどで気が付くことも多くなります。しかし、痛みがない場合もあり、疾患に全く気が付かないこともあります。

深部の静脈奇形では、静脈石を伴うことがあります。静脈石は局所で凝固系の異常があったり、血流が滞ることにより血栓が石灰化したもので、一度できると消失することはなく、疼痛やまひを引き起こします。小児の場合は、脚の長さに差が出ることがあり、多くは腫瘤のある脚のほうが長くなります。広範な病変がある場合では、体全体の血液凝固の異常が起きることもあります。

静脈奇形は手足に好発するため、基本的な受診科は皮膚科や皮膚泌尿器科、形成外科となるものの、発生した臓器によって受診科は異なります。耳や鼻、口であれば形成外科でも診療されますが、肝臓であれば消化器外科、腎臓なら泌尿器科、脳なら脳神経外科となります。

静脈奇形の検査と診断と治療

皮膚科や形成外科などの医師による診断では、皮膚の色の変化、数珠状に拡張した静脈などでわかることもあります。病変の確認のために、超音波検査、MRI、血管造影検査などの画像検査も行われます。

皮膚の下に発生する多くの静脈奇形は、うんだり、出血したり、疼痛があるといった症状がなければ経過観察で問題ありません。深部の静脈奇形も、ある程度以上は大きくならないので、放置して経過観察をするのが基本となります。

症状を伴う場合は、放射線治療やレーザー治療に効果が認められないため、外科的に血管を切除する方法がとられます。また、近年では、血管内治療である硬化療法、塞栓(そくせん)硬化療法も多く行われるようになっています。硬化療法は、奇形性血管に硬化剤という薬剤を注入して血管を固める方法です。塞栓硬化療法は、まず塞栓子と呼ばれる物質を用いて奇形性血管へ流入する血管を詰め、その後、奇形性血管に硬化剤を注入して血管を固める方法です。

なお、血栓形成による疼痛には非ステロイド性抗炎症薬、血栓予防には抗血小板薬が処方されることがあり、保存的治療にはサポーターなどによる圧迫が用いられことがあります。

病変が広範な場合は、手術が不可能なこともあり、現在でも治療は困難です。

🇬🇷小葉状毛細血管腫

毛細血管を構成する細胞が増殖し、皮膚や粘膜の表面にしこりとして現れる良性腫瘍

小葉(しょうよう)状毛細血管腫(しゅ)とは、最も微細な血管である毛細血管を構成する細胞が増殖し、皮膚や粘膜の表面にしこりとして現れる良性腫瘍(しゅよう)。化膿性肉芽(かのうせいにくげ)腫、血管拡張性肉芽腫、毛細血管拡張性肉芽腫とも呼ばれます。

 悪性腫瘍と誤解されやすいものの、膿(うみ)を持つわけでも、肉の塊が形成されるわけでもありません。通常、皮膚や粘膜の表面から突出して、その基部はくびれています。

微小な外傷が切っ掛けとなり、毛細血管が反応性に急速に増殖し、その周囲の組織がはれたものと考えられています。外傷がなく、突然出現することもあります。妊娠中に発症する傾向が比較的多いことから、性ホルモンが関与している可能性も指摘されています。

性差はなく男女ともに発症し、小児や若年者に多くみられます。体中のどこにでも出現し、好発部位は手、中でも手指と、顔面、特に口唇です。

皮膚や粘膜の比較的表面付近の血管から、鮮紅色または茶色の小さなしこりとして現れ、数週で急速に増大した後、増殖は止まります。皮膚からくびれをもって隆起することが多いのですが、なだらかに隆起する場合もあります。軟らかいしこりで、触れると表面から出血しやすく、かさぶたがついたり、湿っていることも少なくありません。大きさは通常、1〜2センチ以内。

小葉状毛細血管腫に気付いたら、皮膚科、皮膚泌尿器科内科、ないし形成外科を受診して、ほかの悪性の疾患との関与性がないか診断してもらうことが大切です。小葉状毛細血管腫であれば自然に治ることはほとんどなく、長く放置しておくと悪化する可能性もあり、治療が必要です。

小葉状毛細血管腫の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科内科、形成外科の医師による診断では、特別な検査は行わずに、見た目と症状の経過から確定します。腫瘍を切除した場合には、病理検査で確認することができます。顕微鏡で組織を確認すると、複数の毛細血管が連なっているのがわかり、その形は小さい葉のように見えます。

皮膚科、皮膚泌尿器科内科、形成外科の医師による治療では、手術で切除し、縫縮するのが最も確実な方法です。液体窒素によって、腫瘍の凍結、融解を繰り返す凍結療法もあります。この場合、数回の治療が必要になることが多いのですが、麻酔の必要はありません。

そのほか、CO2レーザーを用いて、拡張している毛細血管を根っこから焼いて除去するレーザー療法もあります。この場合には、手術と同様に局所麻酔が必要です。

小さい腫瘍は、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)の軟こうを塗り続けると、退縮することもあります。

🟧アメリカの病院でブタ腎臓移植の男性死亡 手術から2カ月、退院して療養中 

 アメリカで、脳死状態の患者以外では世界で初めて、遺伝子操作を行ったブタの腎臓の移植を受けた60歳代の患者が死亡しました。移植を行った病院は、患者の死亡について移植が原因ではないとみています。  これはアメリカ・ボストンにあるマサチューセッツ総合病院が11日、発表しました。  ...