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2022/08/26

🇱🇨膝靱帯損傷

膝関節の左右、前後へのぶれを防いでいる靱帯が損傷した状態

膝靭帯(しつじんたい)損傷とは、膝(ひざ)関節の内側、外側、中心に存在している合計4本の靱帯に大きな外力が作用して損傷、断裂した状態。

膝関節の内側には内側側副(ないそくそくふく)靭帯、外側には外側(がいそく)側副靭帯、中心には前(ぜん)十字靭帯と後(こう)十字靭帯がクロスして存在し、関節が不安定にならないように制動作用を果たしています。

膝靭帯損傷は通常単独で起こりますが、非常に大きな外力が作用すると複数の靭帯が同時に損傷、断裂する複合靱帯損傷となる場合もあります。靭帯別にみると、損傷頻度は内側側副靭帯と前十字靭帯が高く、後十字靭帯は時にみられ、外側側副靭帯が損傷することは非常にまれです。

靱帯の受傷の状況としては、スポーツ活動で人や物が直接、膝にぶつかって発症する接触損傷、ジャンプ、着地、ストップなどの動作で膝に加速力、減速力が働くことによって起こる非接触損傷、スキー板などの先端が引っ掛かって、膝に損傷が加わる介達損傷の3型があります。

接触損傷はラグビー、アメリカンフットボール、柔道、非接触損傷はバスケットボール、バドミントン、サッカー、介達損傷はスキーなどにより発症することが多く、スポーツ以外では交通事故による接触損傷が多くみられます。

側副靱帯損傷

側副靱帯損傷とは、膝の内側と外側にあって、関節の横ぶれを防ぐ役目をしている側副靱帯が損傷、断裂した状態。側副靱帯はすじ状の繊維性結合組織で、大腿骨(だいたいこつ)と下腿骨(かたいこつ)の脛骨(けいこつ)および腓骨(ひこつ)とを連結しています。

スキーやサッカーなどのスポーツで急激な反転、方向転換をした時に、下腿が無理に内側や外側へ曲げられて起こります。この側副靱帯の損傷は、内側に多く、外側の受傷は比較的まれです。

損傷を受けると、階段を降りる時や歩行などの時に膝がグラグラして、安定しなくなります。断裂すると、断裂部の圧痛と腫脹(しゅちょう)、膝を軽く屈曲した位置で側方へ動揺する不安定性をみます。

整形外科医の診断では、膝の不安定性を検査します。この場合、麻酔下で、痛みのために起こる筋肉の防御的緊張を取り除いた状態で行うと、はっきりします。不安定性の程度によって、痛みのみで不安定性はない1度、膝を伸ばした状態、伸展位で不安定性はないが、30度ほど屈曲すると認められる2度、伸展位で不安定性を認める3度に分類されています。

側副靱帯単独の損傷のことが多いのですが、3度の不安定性がある場合は、前十字靭帯損傷を合併している可能性があります。そのほか、X線撮影、関節造影、MRI、関節鏡などの所見を総合的に判断して、診断します。

内側の側副靱帯の損傷の場合、損傷の程度により2週間から4週間、弾性包帯、ギプス、固定装具による安静固定を行います。痛みや炎症の強い時期は、冷湿布などで冷やします。

内側の側副靱帯の単独損傷では、しっかりした固定とリハビリによって、回復することも多くみられます。しかし、しっかりした固定をしないと、痛めた靱帯が伸びた状態で修復され、膝関節が不安定な状態となり、痛みや腫(は)れも慢性化するケースがあります。慢性化した場合は、サポーターなどによる固定をしたり大腿四頭筋の強化訓練をして、膝関節がグラグラしないように安定させる必要があります。

また、完全に靱帯が断裂している重症のケースでは、膝関節の不安定性が大きくなるために手術を要することもあり、靱帯縫合術、靱帯再建術を行います。前十字靱帯の損傷と合併している場合も、その不安定性が大きく、スポーツや重作業に復帰するには手術をしたほうが予後も良好のようです。

外側の側副靱帯の損傷の場合も、損傷の程度により2週間から4週間、ギプスなどによる安静固定を行います。炎症や痛みの強い時期は、冷湿布などで冷やします。

スポーツや事故による損傷では、外側の側副靱帯の単独損傷を発生するケースはほとんどみられず、十字靱帯損傷や、膝裏の筋肉である膝窩(しっか)筋損傷、膝関節の中の軟骨である半月板損傷に合併して生ずることが多いため、固定期間や安静期間は、専門医の判断に委ねるべきです。

単独損傷では、後遺症として関節の不安定性が起こる場合は少なく、また不安定性を起こしても内側の側副靱帯と比較して、その動揺の程度は小さく回復も良好ですが、複合靱帯損傷では、多くが強固な靭帯修復術が必要になります。

十字靱帯損傷

十字靱帯損傷とは、膝関節の前方へのぶれを防ぐ役目をしている前十字靱帯、膝関節の後方へのぶれを防ぐ役目をしている後十字靱帯が損傷、断裂した状態。

激しいスポーツが盛んになるに連れて、この十字靱帯の損傷が増加しており、膝が過伸展されたり、ひねられたりした際に生じます。多くは前十字靱帯に起こりますが、単独で生じることは少なく、多くは半月板や側副靱帯の損傷を合併しています。

男性ではサッカーやフットボール、格闘技などでの接触による受傷が多いのに対して、女性では非接触性の受傷が多く、特にバスケットボールによって生じることが多いとされています。バスケットボールでは、膝の向きと足の向きが違っているようなピボット(軸足)動作や、下腿と大腿骨のひねり動作時に生じています。

症状としては、急性期には損傷や関節内血腫による痛みが主体ですが、数日で痛みはかなり改善します。その後は、膝関節が前後方向へ動揺しやすくなって、歩行時や階段昇降時に膝の不安定感や膝崩れを自覚し、走行時や走行停止時に膝の不安定感を持つようになります。

膝の痛みが数週間も続くようであれば、半月板や軟骨などの合併損傷を考慮する必要があります。

整形外科医による診断では、麻酔下に膝関節の不安定性の検査を行い、さらにX線撮影、CT、MRI、関節造影、関節鏡検査などが行われます。関節内血腫は、穿刺(せんし)して排除されます。

前十字靭帯は関節内にあるため、部分断裂を除いて、いったん切れてしまうと自然につながることはほとんどなく、縫合しても効果のないことが確認されており、基本的には靱帯再建術が勧められています。再建術では、体の他の部分から靭帯の代わりになる組織を移植し、靭帯を作り直します。よく使われる組織としては、膝の裏側の腱(けん)であるハムストリングと、腱反射を見る時にたたく腱である膝蓋(しつがい)腱があります。半月板損傷を合併している場合は、靭帯再建術と同時に半月板の縫合、または切除が行われます。

後十字靭帯も自然に治癒することは少ないものの、前十字靭帯よりも不安定性を来すことが少ないため、単独損傷であれば弾力包帯、またはギプスで固定し、後に大腿四頭筋などを強化訓練することで、日常生活を送るには特に不便を感じなくなります。半月板損傷などを合併していたり、激しいスポーツを続けたい場合は、靱帯再建術を行ったほうがよいこともあります。

🇬🇫尺骨神経管症候群

手のひらの小指球にある尺骨神経管で神経が圧迫されて、引き起こされる疾患群

尺骨(しゃくこつ)神経管症候群とは、手のひらの小指球にある尺骨神経管(ギヨン管)の中を通る尺骨神経が圧迫され、引き起こされる疾患群。ギヨン管症候群とも呼ばれます。

手のひらの肉の盛り上がりである小指球の手根部にある尺骨神経管は、周囲を屈筋支帯と尺側手根屈筋で囲まれるトンネル構造になっており、首からの神経がわきの下を通り肘(ひじ)の内側から指に通じている尺骨神経と尺骨動静脈が通り、さまざまな原因で圧迫や引き延ばしが加わることで、尺骨神経まひが発生します。

原因として多いのは、尺骨神経管周辺組織の退行変性(老化)、尺骨神経管を囲む靭帯(じんたい)などの軟部組織の肥厚、尺骨神経管内外にできたガングリオン(結節腫〔しゅ〕)、外傷、骨折。ペンチなどの工具を握る動作やドリルの長時間の使用、タイル張りなどの長時間の床仕事、長時間の自転車走行、繰り返す腕立て伏せなどで小指側の手のひらを圧迫することによって、症状が現れることもあります。

職種としては、大工、プロゴルファー、プロ野球選手、ロードレースや競輪などの自転車選手がかかりやすいとされています。

発症当初は、手首の手のひら側から小指、薬指の小指側にしびれ、痛みが生じます。肘関節部で尺骨神経が圧迫され、引き起こされる肘部管(ちゅうぶかん)症候群と異なり、小指の背側のしびれはありません。

手関節を手の甲側に反らせる背屈と、手関節を手の平側に曲げる掌屈(しょうくつ)でしびれ、痛みが増強します。しびれ、痛みなど感覚の障害がないのに、手指の小さな筋肉が利かなくなってしまうこともあります。尺骨神経管の中で尺骨神経は浅枝(知覚枝)と深枝(運動枝)に分枝するため、傷害される部位によって特徴ある症状を示すことがあるためです。

進行ととともに、尺骨神経が支配する筋肉の委縮が始まり、握力の低下、はしを使うなどの細かい動きがうまくできない巧緻(こうち)運動障害、親指と人差し指でのつまみ運動障害、親指と小指の対立運動不全を引き起こします。顔を洗うために手で水をすくったりする動作も、難しくなってきます。 筋肉が固まって小指が曲がったままになる鉤爪(かぎづめ)変形(鷲手〔わして〕変形)と呼ばれる現象も起こります。

この尺骨神経管症候群の自己診断はとてもむずかしく、専門家でもきちんと電気生理学的な検査を含んだ精密な神経の診察をしないと、診断は容易ではありません。しびれも重要な症状ですが、手の筋肉のやせも重大な症状ですので、放置せずに、すぐに整形外科、神経内科の医師の診察を受けるようにしましょう。

尺骨神経管症候群の検査と診断と治療

整形外科、神経内科の医師による診断では、手の筋肉の委縮や鉤爪変形、親指と人差し指で紙をつまみ、医師が紙を引く時に親指の第1関節が曲がるフローマンサインがあれば、診断がつきます。

感覚の障害がある時は、皮膚の感覚障害が尺骨神経の支配に一致していて、チネルサインがあれば、傷害部位が確定できます。チネルサインとは、破損した末梢(まっしょう)神経を確かめる検査で、障害部分をたたくと障害部位の支配領域に放散痛が生じます。尺骨神経管症候群では、豆状骨と有鈎(ゆうこう)骨の間をたたくと、手首の手のひら側から小指、薬指の小指側に放散痛が広がります。

確定診断には、電気生理検査を行います。 また、神経伝導速度を測定し、尺骨神経の伝導速度に遅れが認められると、尺骨神経管症候群と確定されます。

また、頸椎(けいつい)症による首の第7頸椎椎間板の障害でも、小指のしびれや痛み、手の筋肉の委縮、手指の変形が起こりますので、鑑別が必要になります。

整形外科、神経内科の医師による治療では、局所の安静、ビタミン剤の服用、少量のステロイド剤の注射、温浴療法、電気刺激療法、超音波療法などを行います。急性発症例で明らかな誘因がある場合には、手首を酷使するなどの生活習慣の改善と局所の安静で、自然に軽快することが多い傾向にあります。

筋委縮を起こしている場合や、骨折やガングリオンなどよって手関節に変形を起こしている場合では、手術が必要になります。神経損傷のあるものでは、神経剥離(はくり)、神経縫合、神経移植などの手術が行われます。神経の手術で回復の望みの少ないものは、ほかの筋肉で動かすようにする腱(けん)移行手術が行われます。

🇬🇫尺骨神経まひ

肘の皮膚の表面近くを通る尺骨神経が損傷して、手指のしびれや感覚障害、運動障害が起こる疾患

尺骨(しゃくこつ)神経まひとは、肘(ひじ)の皮膚の表面近くを通る尺骨神経が損傷して、まひを生じ、手指のしびれや感覚障害、運動障害が起こる疾患。

尺骨神経の働きは、手首の屈曲、小指と薬指の屈曲、親指を人差し指の根元にピッタリつける内転、親指以外の4本の指を外に開く外転、4本の指を互いにくっつける内転です。 知覚神経は、小指、薬指の小指側半分、手のひらの小指側半分を支配します。

尺骨神経には2カ所、圧迫を受けやすい部位があります。最も多いのは肘関節部で、机の上で肘をついていて手がビリビリした経験は多くの人が持っているはずですが、その部位を長時間に渡って圧迫したり、無理に肘を曲げる姿勢をとることで症状が現れ、肘部管(ちゅうぶかん)症候群と呼ばれます。

リウマチや肘の骨折、腫瘍(しゅよう)、腫瘤(しゅりゅう)などで肘関節に変形のある場合には、特に誘因がなくても圧迫症状が起こり得ます。

次に多い圧迫部位は小指側の手のひらで、長距離自転車選手、繰り返す腕立て伏せ、タイル張りなど長時間の床仕事などで、手のひらを圧迫することにより症状が現れ、ギヨン管症候群(尺骨神経管症候群)と呼ばれます。

尺骨神経が侵されると、親指の付け根の母指球筋以外の手内筋がまひし、細かい動きがうまくできない巧緻(こうち)運動障害が生じます。また、小指と薬指が伸びにくくなったり、親指以外の4本の指での内外転と、親指の内転ができなくなります。

日常生活で気付くことには、小指の内転困難によってポケットに手を入れようとすると小指が引っ掛かってしまうこと、親指の内転困難によって親指と人差し指で新聞紙などを挟む力が弱くなることなどがあります。また、小指と薬指にしびれや感覚障害を起こします。

重症で慢性の尺骨神経まひでは、親指の付け根の母指球筋以外の手内筋の筋委縮が生じ、筋肉が固まって指が曲がったままになる鉤(かぎ)爪変形(鷲手〔わして〕変形)と呼ばれる現象が起こります。

尺骨神経まひの検査と診断と治療

整形外科、神経内科の医師による診断では、損傷した神経の位置の特定するために、神経伝導試験を行います。親指の付け根の母指球筋以外の手内筋の筋委縮や鉤爪変形、両手の親指と人差し指で紙をつまみ、紙を引く時に親指の第1関節が曲がるフローマンサインがあれば、診断がつきます。

感覚の障害がある時は、皮膚の感覚障害が尺骨神経の支配に一致していて、チネルサインがあれば、傷害部位が確定できます。チネルサインとは、破損した末梢(まっしょう)神経を確かめる検査で、障害部分をたたくと障害部位の支配領域に放散痛が生じます。確定診断には、筋電図検査、X線(レントゲン)検査、MRI検査、超音波検査など必要に応じて行われます。

整形外科、神経内科の医師による治療は通常、筋肉の硬直を防ぐために理学療法で治療します。肘の圧迫や長時間の肘の屈曲など、明らかな誘因がある場合には、生活習慣の改善と局所の安静で軽快することが多い傾向にあります。ビタミン剤の内服も有効と考えられます。

筋委縮を起こしている場合や、骨折や腫瘤などよって肘関節に変形を起こしている場合では、手術が必要になります。神経損傷のあるものでは、神経剥離(はくり)、神経縫合、神経移植などの手術が行われます。神経の手術で回復の望みの少ないものは、ほかの筋肉で動かすようにする腱(けん)移行手術が行われます。

🇬🇾若年性特発性関節炎

16歳以下の小児期に発症する慢性関節炎

若年性特発性関節炎とは、16歳以下の小児期に発症する原因不明の慢性関節炎。以前は、若年性関節リウマチと呼ばれていました。

膠原(こうげん)病の一つである大人の関節リウマチが小児期に発症したものと考えられ、関節の内側にある滑膜という個所で炎症が起こり、徐々に軟骨や骨が破壊されるため、関節が動かしにくくなり、最終的には骨と骨がくっついて動かなくなってしまいます。

小児期の慢性関節炎の中で最も頻度の高い疾患で、有病率は10万人当たり10人、発症率は年間10万人当たり1人と推定され、日本全国で約1万人の子供がかかっているといわれています。男子より女子に多い傾向があります。

この若年性特発性関節炎は、単一の疾患ではありません。いくつかの病型に分けられ、その病型により症状、経過、治療方法、予後が違います。まず全身型、関節型という二つの病型に分けられ、全身に炎症が生じる全身型と、炎症の主病変が関節である関節型とでは病因、病態が異なると考えられています。さらに、乾癬(かんせん)、潰瘍(かいよう)性大腸炎などに併発して、二次的に慢性関節炎を呈する症候性慢性関節炎に分けられます。

全身型の若年性特発性関節炎は、発症年齢に3歳と8歳に二つのピークがあり、男女比はほぼ半々です。関節型の若年性特発性関節炎のほうは、10歳以降の女児に多くみられます。

どの病型であっても、免疫の異常、何らかのウイルス感染、遺伝的因子により発症すると考えられており、家族の中に同じ疾患になる人がいることがよくあります。しかし、詳しい原因は不明です。

全身型の若年性特発性関節炎の主な症状は、弛張(しちょう)熱、リウマトイド疹(しん)、関節炎の三つです。関節症状はあまり目立たず、全身症状が強く出現します。多くの症状がありますが、その中で弛張熱は特徴的な熱型で、1日のうちで平熱になったり高熱が出たりして、体温の差が大きい発熱が続きます。

リウマトイド疹も比較的多くみられる症状で、直径数ミリから1セントの鮮紅色の紅斑(こうはん)が発熱とともに手足や体に出現し、解熱時に消失することもあります。胸膜炎、心膜炎、肝・脾腫(ひしゅ)を伴うこともあります。

この全身型では、マクロファージ活性化症候群と呼ばれる重大な合併症を起こし、コントロール不能な発熱、リンパ節の腫(は)れ、肝・脾腫などを伴う可能性があるので、注意が必要です。

関節型の若年性特発性関節炎は一般的に、少関節型(持続型、進展型)、多関節型とに分類されます。主な症状は、6週間以上持続する関節炎です。関節炎には、関節腫脹と圧痛、可動域の減少、運動時痛および熱感の4つがみられます。年少者では明らかな関節痛を訴えないこともありますが、朝起きた時に関節がこわばって動かないのは関節炎の存在を示唆する重要な症状の一つです。朝のこわばりは個人差や病状により程度の差はありますが、時間の経過に伴って次第に動きがよくなります。

関節型の中の多関節型では、 大人の関節リウマチに似た経過をたどり、指などの小さな関節を含めて5カ所以上の関節に炎症がみられます。左右で同じ関節が侵されることが多く、発熱は微熱程度です。

関節型の中の少関節型では、関節炎は4カ所以下で、膝(ひざ)や足首などの大きな関節が侵されることが多く、4~5歳の女児に多い傾向があります。関節炎は他の型に比べると軽く、多くは数年でよくなります。虹彩(こうさい)毛様体炎という目の病気を合併することがあるので、眼科の定期受診が必要です。虹彩毛様体炎の症状として、霧がかかったように見える霧視や、まぶしがる羞明(しゅうめい)が認められます。

病型によって異なりますが、若年性特発性関節炎は経過が長く、いったんよくなっても再発し、これを繰り返します。10年ぐらいたつと、多くは関節症状を残さずによくなりますが、中にはそのまま大人の関節リウマチに移るものもあります。

若年性特発性関節炎の検査と診断と治療

小児科、リウマチ科、整形外科の医師による検査では、白血球や血小板が増えたり、炎症反応が強まります。しかし、これらはほかの疾患でも異常を示し、診断の決め手にはなりません。大人の関節リウマチで陽性になるリウマトイド因子も、多関節型の一部で陽性になることがある程度です。

全身型では血液疾患、感染症、他の膠原病と区別する必要があるために、さまざまな検査を行います。画像検査では、MRIや関節超音波検査が関節病変の評価に有用です。関節炎の診断は、関節腫脹と圧痛、可動域の減少、運動時痛および熱感の4つの症状のうち2つ以上あれば診断ができます。

原因が不明のため、根本的な治療ができないのが現状です。関節機能の温存が、治療の最大の目的です。

病型により、治療法が若干異なります。全身型はまず、非ステロイド性消炎鎮痛剤を使います。効果のない場合や心膜炎など重症な合併症がある場合は、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)を使用します。内服の副腎皮質ホルモンの効果が乏しい場合には、副腎皮質ホルモンを点滴で大量に投与するパルス療法と呼ばれる方法や、免疫抑制薬の併用療法を選択することがあります。

多関節型は、非ステロイド性消炎鎮痛剤だけで症状が治まることもあります。しかし、関節症状が強い場合や、リウマトイド因子が陽性の場合には、早期から免疫抑制薬で治療します。副腎皮質ホルモンを併用する場合もあります。

少関節型は、非ステロイド性消炎鎮痛剤単独での治療が可能です。虹彩炎がある場合は、眼科で治療を受ける必要があります。

前記のような治療を行っても改善がみられない時には、リウマチ専門医指導のもと、生物学的製剤の治療を行う場合があります。生物学的製剤とは、体の炎症を抑える抗体を治療薬としたもので、欧米では広く使われていて、日本でも徐々に使用が認められてきており、近い将来には標準的治療法となると考えられています。

症状に合った関節の運動をする理学療法も大切で、急性期は局所の安静を保ちつつ、関節の拘縮(こうしゅく)、筋肉の委縮を予防することが重要です。強い曲げ伸ばし運動や、負荷のかけすぎは痛みも強く、避けるべきです。

慢性期は、筋力増強、関節の変形・拘縮の予防が中心です。前もって関節や筋肉を十分に温めて、筋肉の血行をよくしておき、関節や筋肉に過度の負担をかけないように、ゆっくりとリハビリテーションを行います。温水プールを利用したリハビリテーションは効果的です。

日常生活や学校生活が普通に送れるよう、その人その人の生活パターンを考えてリハビリテーション計画を立てます。 家族全員でリハビリテーションの指導を受け、家庭で継続したリハビリテーションができるようにするのが理想で、必要に応じて装具も使用します。

なお、風邪などの感染には十分に注意し、予防や早期治療を心掛けることが大切です。

🇵🇾ジャンパー膝

膝の皿に相当する膝蓋骨の下にある膝蓋靭帯に、使いすぎで痛みが生じる障害

ジャンパー膝(ひざ)とは、膝(ひざ)の皿に相当する膝蓋(しつがい)骨の下にある膝蓋靭帯(じんたい)に痛みが生じる障害。膝蓋靭帯炎、膝蓋腱(けん)炎とも呼ばれます。

使いすぎ(オーバーユース)に起因する膝のスポーツ障害で、バスケットボール、バレーボール、ハンドボール、バドミントン、陸上競技の高跳びや幅跳びなどでジャンプ動作や着地動作、方向転換動作を頻繁に行ったり、サッカーでキック動作やダッシュなどの走る動作、方向転換動作を繰り返し行ったりすることで生じます。

膝関節の屈伸動作を頻繁に、かつ長時間にわたって行うと、太ももの筋肉である大腿四頭筋(だいたいしとうきん)の収縮筋力が膝蓋骨と膝蓋靭帯(膝蓋腱)の接合部に繰り返しかかることで、靱帯の微小断裂や変性が起き、膝蓋骨のすぐ下に痛みが生じます。痛みは、膝蓋骨と大腿四頭筋靱帯の接合部にもしばし生じ、膝蓋靭帯と脛骨(けいこつ)結節の接合部にもまれに生じることもあります。

好発年齢は12〜20歳で、多くは骨の末端部分のいわゆる成長軟骨である骨端線が閉鎖する15歳以降に生じ、特に男性に多く生じます。成長期に好発するのは、骨の成長に筋肉の成長が追い付かず、大腿四頭筋が相対的筋短縮の状態になり、筋肉の柔軟性が低下しているためです。

ジャンパー膝が進行すると、膝蓋靭帯の部分断裂や壊死(えし)を生じることがあり、まれに膝蓋靱帯の完全断裂を生じることもあります。

このジャンパー膝の症状は、4期に分類されます。1期では、スポーツ開始直後に膝蓋骨のすぐ下かすぐ上に痛みが生じます。多くは、スポーツをするのに支障はありません。

そのままスポーツを続けると2期となり、運動開始時と運動終了後に痛みが生じ、運動中は一時的に痛みが軽快、消失します。さらに進行して3期になると、痛みのためにスポーツの継続が困難となります。

4期では、膝蓋靱帯の断裂が生じます。痛みは、特にジャンプ動作やダッシュ動作で強く、ジャンプ動作では着地時の症状が強くなる傾向があります。

時に、膝蓋骨の下に、はれや熱感を伴います。通常は片側の膝にジャンパー膝が起きますが、両側の膝に起きることもあります。

ジャンパー膝は急性外傷ではないために、大半の発症者は1期、2期に医療機関を受診していません。治療を受けないと慢性化の原因にもなりますので、整形外科を受診することが勧められます。

ジャンパー膝の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、膝蓋骨の直下、もしくは直上に圧痛があり、時にはれや熱感を伴う症状から判断します。

X線(レントゲン)検査を行うと、膝蓋骨の下に石灰化による白い影が見られ、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査を行うと、膝蓋靱帯の断裂部分や肥厚が見られますが、初期の段階で異常が認められることは少なく、正確な診断を難しくしています。

整形外科の医師による治療では、症状を悪化させないよう、スポーツなどは極力休止して安静を保った上で、テーピングやサポーターで膝を固定する装具療法、消炎鎮痛剤の塗布・投与やヒアルロン酸の注射などで炎症や痛みを抑える薬物療法、温熱などの理学療法、大腿四頭筋のストレッチによって膝の筋肉の緊張をほぐし柔軟性を上げる運動療法などを、症状に応じ組み合わせて行います。

症状が軽い場合には、ストレッチ、アイシング、サポーター装着の併用でスポーツ活動の継続は可能ですが、2期以上に進行している場合には、ジャンプ動作の制限やスポーツの休止を行います。

症状が強く難治性の場合には、膝蓋靱帯の変性部分の切除や、断裂部分の縫合などを行う手術を実施します。

🇧🇴周期性四肢まひ

四肢の筋肉がまひを起こして、全く力が入らない発作が起こる疾患

周期性四肢まひとは、両手、両足の筋肉がまひを起こして、筋肉の脱力や運動不能を生じる疾患。この疾患には、いくつかのタイプがあります。

優性に遺伝する疾患ですが、遺伝がなくても起こることがあります。過労、過飲、過食が誘因となって、手足に全く力が入らないまひ発作が急に起こるのが特徴です。発作中は、通常の神経刺激はもちろん、人工的な電気刺激にさえも筋肉は反応しません。しかし、発症者は覚醒(かくせい)し、意識もはっきりしています。

発作は、短い場合は数時間、長い場合には数日から1週間続きます。発作が消失すれば、全く普通に動けます。

血液中のカリウム濃度と密接な関係があることがわかっており、血中カリウム濃度が低くなることによって起こる低カリウム血性周期性四肢まひ、血中カリウム濃度が高くなることによって起こる高カリウム血性周期性四肢まひ、まれに血中カリウム濃度が正常でも起こる正カリウム血性周期性四肢まひの3種類に分類されています。

実際には、甲状腺(せん)機能高進症(バセドウ病)に伴う低カリウム血性周期性四肢まひが多くなっています。そのほかも、副腎(ふくじん)異常の原発性アルドステロン症、褐色細胞腫(しゅ)、尿細管性アシドーシス、薬剤や下痢などでカリウムイオンの摂取低下や排出増加があると起こります。いずれも発作時の血清カリウムの低下がみられるので、低カリウム血性周期性四肢まひと呼ばれます。

低カリウム血性周期性四肢まひは、通常は16歳までに起こることが多いものの、20歳代で発症することもあり、30歳までには発症します。発作は2〜3日と長く続くこともあり、症状も重度です。

多くの場合、炭水化物を多く含んだ食事を取った後に発作を起こします。発作は食後数時間で起こることもあれば、翌日に起こることもあります。運動も発作を誘発します。炭水化物を摂取した後に、激しい運動を行ってエネルギーを消費すると、カリウムが糖と一緒に細胞に取り込まれる結果、血液中のカリウム濃度が低下して起こります。

一方、高カリウム血性周期性四肢まひは、しばしば10歳までに発作を起こします。発作は15分〜1時間続きます。空腹時、激しい運動時、寒冷にさらされた時などに発作が起こります。

低カリウム血性周期性四肢まひでも、高カリウム血性周期性四肢まひでも、周期性四肢まひがある人は、起床直後に激しい運動をすると筋力の低下を生じ、手や足のまひを起こします。筋力低下は1〜2日続きます。

周期性四肢まひの検査と診断と治療

神経内科、ないし内科の医師による診断では、発作時の血液中のカリウム値の測定を行います。従って、この周期性四肢まひが疑われる場合は、発作誘発試験が行われることがあります。低カリウム血性周期性四肢まひでは、腹いっぱい食べる飽食試験やインシュリンと糖液の点滴が行われ、高カリウム血性周期性四肢まひでは、カリウム液の使用が行われます。

正確に診断できるのは、遺伝子診断です。低カリウム血性周期性四肢まひでは、1番染色体にある細胞のカルシウムチャンネルの遺伝子の異常、高カリウム性周期性四肢まひでは、17番染色体にあるナトリウムチャンネルの遺伝子の異常で起こることが判明しています。しかし、日本ではまだ、遺伝子診断は行われていません。

神経内科、ないし内科の医師による治療では、低カリウム血性周期性四肢まひには、糖を含まない輸液に塩化カリウムを加えたものを点滴します。これで症状は1時間以内にかなり回復します。また、炭水化物を多く含む食事や激しい運動を控えます。

高カリウム血性周期性四肢まひには、炭酸脱水酵素阻害薬のダイアモックス(一般名:アセタゾラミド)が有効です。ダイアモックスは、腎臓に存在する炭酸脱水酵素の働きを阻害して、塩分とともに水分を尿に排出します。また、カリウムが少なく炭水化物を多く含む食事を取ることで発作を予防できます。

甲状腺機能高進症などに伴う周期性四肢まひは、原因となった疾患を治すのが第一です。

発作の予防には、過労、過飲、過食を避け、塩化カリウムと抗アルドステロン剤を内服するのがよく、ダイアモックスを使用すると、すべてのタイプの周期性四肢まひの発作が予防できます。

🇪🇨十字靱帯損傷

膝関節の前方、後方へのぶれを防ぐ靱帯が損傷、断裂した状態

十字靱帯(じんたい)損傷とは、膝(ひざ)関節の前方へのぶれを防ぐ役目をしている前(ぜん)十字靱帯、膝関節の後方へのぶれを防ぐ役目をしている後(こう)十字靱帯が損傷、断裂した状態。

激しいスポーツが盛んになるに連れて、この十字靱帯の損傷が増加しており、膝が過伸展されたり、ひねられたりした際に生じます。多くは前十字靱帯に起こりますが、単独で生じることは少なく、多くは半月板(はんげつばん)や側副(そくふく)靱帯の損傷を合併しています。

男性ではサッカーやフットボール、格闘技などでの接触による受傷が多いのに対して、女性では非接触性の受傷が多く、特にバスケットボールによって生じることが多いとされています。バスケットボールでは、膝の向きと足の向きが違っているようなピボット(軸足)動作や、下腿(かたい)と大腿骨(だいたいこつ)のひねり動作時に生じています。

症状としては、急性期には損傷や関節内血腫(けっしゅ)による痛みが主体ですが、数日で痛みはかなり改善します。その後は、膝関節が前後方向へ動揺しやすくなって、歩行時や階段昇降時に膝の不安定感や膝崩れを自覚し、走行時や走行停止時に膝の不安定感を持つようになります。

膝の痛みが数週間も続くようであれば、半月板や軟骨などの合併損傷を考慮する必要があります。

整形外科医による診断では、麻酔下に膝関節の不安定性の検査を行い、さらにX線撮影、CT、MRI、関節造影、関節鏡検査などが行われます。関節内血腫は、穿刺(せんし)して排除されます。

前十字靭帯は関節内にあるため、部分断裂を除いて、いったん切れてしまうと自然につながることはほとんどなく、縫合しても効果のないことが確認されており、基本的には靱帯再建術が勧められています。再建術では、体の他の部分から靭帯の代わりになる組織を移植し、靭帯を作り直します。よく使われる組織としては、膝の裏側の腱(けん)であるハムストリングと、腱反射を見る時にたたく腱である膝蓋(しつがい)腱があります。半月板損傷を合併している場合は、靭帯再建術と同時に半月板の縫合、または切除が行われます。

後十字靭帯も自然に治癒することは少ないものの、前十字靭帯よりも不安定性を来すことが少ないため、単独損傷であれば弾力包帯、またはギプスで固定し、後に大腿四頭筋などを強化訓練することで、日常生活を送るには特に不便を感じなくなります。半月板損傷などを合併していたり、激しいスポーツを続けたい場合は、靱帯再建術を行ったほうがよいこともあります。

🇨🇴重症筋無力症

神経の命令が筋肉に十分伝わらないために起こる疾患

重症筋無力症とは、運動神経の命令が筋肉に十分伝わらなくなるために起こってくる疾患。 筋肉が疲れやすくなり、筋力も低下してくるのを特徴とします。

筋肉を動かす時は、脳から末梢(まっしょう)神経に伝わった指令は、神経と筋肉の接ぎ目に当たる神経筋接合部を通って、筋肉へ伝えられ、初めて収縮運動が起こります。この伝達は、神経の末端からアセチルコリンという神経伝達物質が分泌され、これを筋肉側に存在するアセチルコリン受容体で受け取ることで、成り立っています。このアセチルコリン受容体が自己抗体によって障害を受けると、神経の命令が筋肉に円滑に伝わらなくなり、重症筋無力症を生じます。

原因は不明です。しかし、約70パーセントの発症者において胸腺(きょうせん)の腫瘍(しゅよう)や肥大などの異常があることから、胸腺を中心とした自己免疫疾患説が有力です。

症状としては、手足の力がうまく入らず、使っているうちに力が弱ってきますが、休むと再び力が出てくるのが特徴です。また、まぶたが次第に下がる眼瞼(がんけん)下垂、物が二重に見える複視が現れ、話しているうちに声が出なくなったりすることもよくみられます。

少し進むと、物をかんでいるうちにうまくかめなくなる咀嚼(そしゃく)障害、物を飲み込みにくくなる嚥下(えんげ)障害が現れます。また、眼瞼下垂や手足の筋力も、一般に朝はよく、午後になると悪くなります。

さらに進むと、顔を動かす顔面筋や嚥下筋、舌筋が侵され、次いで首、肩、上腕の筋肉に脱力が起こり、腰から下肢へと広がります。急に悪化すると呼吸筋までまひして、生命にかかわることもあります。

発症は新生児から老人まで、どの年齢にも起こりますが、女性にやや多い傾向があります。現在、日本全国の発症者数は1万人を超えていると考えられています。

重症筋無力症の検査と診断と治療

発症年齢、重症度、胸腺異常の有無により治療法が選択されますが、薬物療法と、胸腺に対する治療が中心となります。

薬物療法としては、免疫抑制剤と抗コリンエステラーゼ剤を適量与え、日常生活に支障がないように症状を抑えます。胸腺への治療としては、胸腺腫瘍が見付かれば、手術で切除するのが原則です。重症例には、血漿(けっしょう)中の自己抗体を除去する目的で、血漿交換療法が用いられます。

昔は多くの人が重症筋無力症で亡くなっていましたが、治療法の進んだ現在では亡くなる人はごくまれになりました。社会復帰状況をみますと、約50パーセントの発症者は発症前と同じ状況にまで回復しますが、仕事ができなかったり、身の回りのことに介助が必要になるケースも約10パーセントの発症者でみられます。

生活上の注意としては、風邪を引いたり、発熱があると急に悪くなるので、早めに風邪薬や抗生物質を飲んだ上、急いで主治医に相談するか、入院する安全策です。

また、予防注射が誘因となって急に症状が悪くなることもあるので、避けます。妊娠、出産も症状を悪化させるので、避けたほうがよいでしょう。

2022/08/25

🇻🇪舟状骨骨折

転んで手のひらを強く突いた際などに、手首と親指の間にある楕円形の小さな骨に生じる骨折

舟状骨(しゅうじょうこつ)骨折とは、手首と親指の間にある楕円(だえん)形の小さな骨に生じる骨折。見逃されやすい骨折、また癒合しにくい骨折として知られています。

舟状骨は、手首の関節面を構成している8つの手根骨の1つで親指側にあり、手根骨の中でも一番大きく、手首の動きの中心をなしている重要なものです。船底のような湾曲をしているため、船のような格好の骨ということで舟状骨といいます。

この舟状骨骨折は、直接もしくは間接的に外力が働き生じます。スポーツや交通事故、日常生活の中などで転び、手首を背屈して手のひらを地面や床面に強く突いた時によく生じます。小さい負荷が繰り返し長期間かかり続ける疲労骨折として、生じることもあります。

骨折を生じると、急性期では手首に近い親指の付け根の部分にはれ、痛みが出たり、その部位を押すと痛みが出ます。具体的には、親指を反らせた時に浮き上がる手首のくぼみで、長母指伸筋腱(けん)と短母指伸筋腱に囲まれた部位、また鼻から吸い込む嗅(か)ぎタバコの粉末状の葉を置く部分に相当することから、解剖学的嗅ぎタバコ入れ(スナッフボックス)とも呼ばれる部位にはれ、痛みが出ます。

しかし、舟状骨骨折は一般に、はれがそれほど強くなく、骨折による骨の位置のずれ(転位)が小さい場合は、痛みもあまり強く出ません。骨折しているとは思わず、捻挫(ねんざ)したと思ったまま放置することが、しばしば見受けられます。放置すると、骨折部の血流が悪いために骨がくっつかないまま、関節ではないのに関節のように動くようになる偽関節になることがあります。

偽関節になると、親指を動かしたり、握手をするとか物を握るなどの動作をすると、手首に痛みが生じて、力が入らなくなり、また手首の動きが制限され動かしにくくなります。

同じ舟状骨骨折でもいろいろな部分の骨折がありますが、偽関節になりやすいのは舟状骨の腰部(中央部)と呼ばれるくびれた部分に生じる骨折。腰部に骨折を生じると、指先の側から手首に向かう中枢側の血行不全が生じやすくなるためです。

舟状骨骨折が疑われ、解剖学的嗅ぎタバコ入れに圧痛がある場合は、放置することなく、三角巾などで手首を固定する応急処置した上で、氷などで冷やしながら整形外科を受診することが勧められます。

舟状骨骨折の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、まずX線(レントゲン)検査を行います。ただし、舟状骨がほかの手根骨の横に並ぶ列とは45度傾いて親指の列にあるという構造上の位置関係から、普通に正面や横から撮影しただけでは骨折が判別できず、いろいろな角度からX線写真を数枚撮影します。中には、どの角度から撮影しても骨折線が見えないものの、数日後に再びX線検査を行うと骨折線が見えるケースもあります。

より正確に診断するためには、CT(コンピュータ断層撮影)検査やMRI(磁気共鳴画像撮影)検査を行い、X線検査単独では見逃されやすい骨折を判別します。

整形外科の医師による治療では、早期に発見されて、骨の位置のずれ(転位)が少ない場合には、親指から手関節、肘(ひじ)の近くまでのギプス固定で治療することもあります。しかし、舟状骨は血行が悪いため、骨がつきづらく、ギプス固定が長期になります。骨折部の状態にもよりますが、ギプス固定は約6週間前後行います。比較的骨がつきやすいとされる舟状骨の結節部の骨折であっても、ギプス固定は4~6週間くらいを要します。

骨の位置のずれ(転位)が大きかったり、受傷して時間がたっている場合には、特殊なネジによって骨折部を固定する手術も行われます。手術をすることにより、しっかりとした骨折部を固定でき、ギプス固定の期間が短くなることから、仕事やスポーツに復帰するに当たり有利になります。

偽関節になった場合には、放置すると手首全体が悪くなってくることが多いため、手術を行います。手術の方法は、偽関節となった骨折部の骨を一部削り、ほかの部分から骨を移植してネジで固定します。

🇻🇪舟状骨疲労骨折

ランニングなどによる前足部着地、けり出しで負荷が繰り返しかかることにより、足部の舟状骨に生じる疲労骨折

舟状骨(しゅうじょうこつ)疲労骨折とは、ランニングなどによる前足部(フォアフット)着地、けり出しで負荷が繰り返しかかることにより、足部の舟状骨に生じる疲労骨折。

正常な骨では、かなり大きな負荷がかからないと骨折しませんが、正常な骨に小さい負荷がかかる場合でも、ランニングやジャンプなどのスポーツ活動を行うことにより、同じ部位に繰り返し長期間かかり続けて、骨にヒビが入る微細な骨折を生じたり、ヒビが進んで完全な骨折に至る状態が疲労骨折です。

足部の舟状骨は、船底のような湾曲をしているため、船のような格好の骨ということで舟状骨といいます。足部の内側縦アーチ(土踏まず)の頂点に位置し、また距骨(きょこつ)と踵骨(しょうこつ)との間で距踵舟関節、内側楔状骨(きつじょうこつ)と中間楔状骨と外側楔状骨との間で楔舟関節を形成しており、体重を支えたり、足のけり出しの際などに重要な骨です。

マラソン、中長距離走、サッカーなどで激しいトレーニングを行い、足の内側に荷重がかかることによって舟状骨は繰り返し、長期間にわたって負荷を受け、舟状骨疲労骨折を発症します。

発症すると、足関節前方に違和感を自覚することが多くなり、足部の内側へ荷重をかけて走ると、足の甲に痛みを生じます。一般の骨折のように、皮下出血や著しいはれを伴うことはありませんが、局所は軽度のはれを伴い、押さえると痛みを生じます。

足部の外側に荷重をかけて痛みをかばいながら走ることができるため、発見が遅れることがあるので注意が必要です。

舟状骨疲労骨折の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、明らかな外傷がなく、運動時に足関節前方に痛みを感じる場合は、スポーツ活動の種類も考慮して、舟状骨疲労骨折を疑います。

骨折の初期の段階では、X線(レントゲン)検査を行ってもほとんど異常を示さず判断が難しいこともありますが、CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査、骨シンチグラフィー検査を行うと、骨折の初期の段階の病変でも判断することが可能です。

足部内側の舟状骨を内外側から握って圧迫すると、痛みが誘発されることも、判断に有用です。

整形外科の医師による治療では、一般的には保存療法を行います。8週間程度の安静と、足関節のギプス固定によって、骨癒合を図ります。

固定による安静期間の間に、筋力の低下や骨委縮が起こるので、徐々にリハビリを開始します。まずは、日常生活だけのリハビリを行い、続いて、痛みが生じない範囲に制限してスポーツ活動を再開します。疲労骨折の場合、同じ部位が再骨折する可能性が高いため、完全復帰にはある程度の期間が必要です。

骨折によって骨の位置がずれる転位があるものや、関節部ではないのに関節のように動くようになる偽関節があるものでは、経皮的骨接合術や内固定術などの骨接合術を検討します。

治療後にマラソン、中長距離走、サッカーサなどのスポーツを続ける人には、内側縦アーチを守るため、足底板をシューズに入れることを勧めることもあります。アーチを支える構造になってる足底板は、内側縦アーチにかかる負荷を小さくすることができます。

🇸🇻種子骨炎

第一中足骨の骨頭下部にある種子骨の周囲に炎症が起き、足の親指の裏側に痛みが生じる疾患

種子骨(しゅしこつ)炎とは、足の甲にある第一中足(ちゅうそく)骨の骨頭下部にある種子骨の周囲に炎症が起き、足の親指の裏側に痛みが生じる疾患。母趾(ぼし)種子骨炎とも呼ばれます。

種子骨は、足や手の関節の付近の靱帯(じんたい)や腱(けん)の中にあるアサガオの種のような形の小さい骨。隣接の骨とともに関節を構成し、滑車のような役目をして靱帯や腱の滑りを助けたり、これらが骨の面から脱臼(だっきゅう)するのを防いでいます。人体では、足の裏に2~5個、手のひらに5個の種子骨があります。

足の裏の第一中足骨の骨頭下部にある種子骨は、内側と外側に1個ずつあります。内側の骨は脛側(けいそく)種子骨、外側の骨は腓側(ひそく)種子骨に相当し、靱帯や腱の滑りを助けたり、足の裏に体重の負荷がかかる時にクッションの役割を果たしていますが、そのいずれかに圧力がかかることで炎症が生じ、痛みが生じます。

種子骨炎の症状としては、軽いうちは長く歩いた時、ハイヒールなど特定の靴を履いた時に、足裏の親指の付け根の部分が痛みます。重症になると、常に痛くなります。

触ってみると、5ミリから10ミリの種子骨が皮膚の下に触れ、痛みます。時に炎症のために軽度の熱感を生じたり、内側に広がる発赤を引き起こすことがあり、はれることもあります。たこや魚の目が足裏にできることもあり、この場合、たこや魚の目を削っても一時的になくなるだけで再発します。

足の親指の付け根が外側を向き、親指の骨頭が内側に向いた状態になる外反母趾のために、種子骨炎が起こることが最も多くみられます。また、足裏に過度の負荷がかかるランナーやダンサー、サッカー選手、ハイヒールをよく履く人に多く起こっている傾向があります。靴を変えた際に今まで以上に足に負荷がかかって起こったり、直接的な外傷、骨折などで種子骨の位置が変化して起こることもあります。

生まれ付き内側と外側の種子骨の大きさに違いがあったり、種子骨が分裂していることもあり、これらの場合には片方の種子骨に体重が集中して起こることもあります。

種子骨炎の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、症状や問診で種子骨炎と確定できます。足部と母指を背屈させた状態で中足骨骨頭部を調べ、種子骨を触診することもあります。圧痛は、種子骨、それも通常は脛側種子骨に限局化されます。

炎症によりはれを生じている場合、痛風や感染性関節炎と区別するために関節穿刺(せんし)を行うこともあります。

骨折、変形性関節症、骨折による転位が疑われる場合は、X線(レントゲン)検査を行い、種子骨の形状や位置関係、分裂の有無などを確認します。X線検査ではっきりしない場合は、MRI検査を行うこともあります。

整形外科の医師による治療では、痛みを生じる靴やスポーツシューズを単に履かないことを勧め、それで十分であることもあります。痛みが持続する場合には、厚底の靴や矯正装具を処方し、種子骨への圧迫を減らします。炎症がみられる場合は、治療には保存的な処置に加えて、コルチコステロイド麻酔薬の局所注射を行うと、症状の軽減に有効です。

転位のない骨折がある場合、保存療法で十分であり、平らな硬性矯正靴を用いて関節の固定化をすることもあります。歩けないほど強い痛みが持続する場合、種子骨を取り除く手術が有効であることもありますが、足部の生体力学や歩行運動を侵害する可能性があるため、医師により意見の分かれるところです。一般的には、運動選手やプロ・ダンサーなどに対して、保存療法ではよくならない時だけ手術を行います。

🇸🇻手指伸筋腱損傷

手指を伸ばすための伸筋腱が断裂し、手指を伸ばすことができなくなる障害

手指伸筋腱(けん)損傷とは、通常、親指と中指と薬指に1本ずつ、人差し指と小指に2本ずつある屈筋腱が断裂し、手指を伸ばすことができなくなる障害。

伸筋腱が断裂すると、前腕にある手指を伸ばす筋肉が収縮しても、その力は手指の骨に伝達されないので、手指を伸ばすことができなくなります。手指や手の甲、手首の辺りの切創や挫創(ざそう)による開放性損傷と、創傷がなくて生じる閉鎖性損傷があり、閉鎖性損傷は皮下断裂が相当します。

皮下断裂には、突き指などの外力によって生じるものと、骨の突出による摩擦や病的滑膜による侵食などによって弱くなった伸筋腱が切れる病的断裂があります。病的断裂の原因には、関節リウマチ、キーンベック病、橈骨(とうこつ)下端骨折などがあります。

関節リウマチは、関節ならびに関節の周囲の骨、筋肉など、体を支え動かす器官が炎症を起こして痛む疾患全般。キーンベック病は、手首を構成する8個の骨の一つである月状骨(げつじょうこつ)に、血流障害による壊死(えし)が起こる疾患。橈骨下端骨折は、前腕を形成する2本の骨のうち親指側を形成する骨である橈骨が、手を突いて転倒した際などに手関節のすぐそばで骨折する障害。

開放性損傷や閉鎖性損傷によって、手指にある屈筋腱が断裂すると、手指の関節が伸ばせなくなり、書字、洗顔、パソコンの操作などに支障を来します。どの関節が伸ばせなくなるかは、伸筋腱が断裂した部位によって異なります。骨折と異なり、強い痛みを伴うことはありません。

皮下断裂により、極めて複雑な構造をしている手指の先端のDIP関節(第1関節)背側、手指の中央のPIP関節(第2関節)背側で伸筋腱が断裂した場合、これを放置すると伸筋腱のバランスが崩れ、それぞれスワンネック変形、ボタンホール変形という手指の変形を生じることがあります。

開放性損傷により、手の甲で伸筋腱が断裂した場合、指の付け根のMP関節での手指の伸展が悪くなります。しかし、手の甲の伸筋腱は、腱間結合という組織で隣の伸筋腱と連結しているため、完全に伸展できなくても、ある程度までの伸展が可能です。

手指伸筋腱を断裂した場合には早期の治療が必要なので、整形外科医、ないし手の外科を受診することが勧められます。

手指伸筋腱損傷の検査と診断と治療

整形外科、ないし手の外科の医師による診断では、創傷の存在、受傷歴の有無、手指のDIP関節、PIP関節、MP関節の伸展が可能かどうかなどで、容易に判断できます。

整形外科、ないし手の外科の医師による治療では、開放性損傷の場合、できるだけ早期に創傷を開いて、短縮している伸筋腱の断端を引き寄せて縫合する手術である腱縫合術を行います。

DIP関節背側、PIP関節背側での皮下断裂は、一般的に保存療法で治療します。装具やアルミの板を用いて、手指を伸ばした状態で4週間以上固定します。この間、固定を外さないようにする必要があります。

手関節背側で生じた皮下断裂は、多くが病的断裂であり、手術を行います。断裂した伸筋腱の断端同士を縫合することができない場合が多いので、残っている腱に縫い付ける腱移行術や、前腕にある長掌(ちょうしょう)筋腱などの腱を採取して移植する腱移植術などを行います。

🇸🇻手指の変形性関節症

手指の関節軟骨が擦り減って、周囲の骨が変形する疾患

手指の変形性関節症とは、手の指の関節軟骨が擦り減って、周囲の骨が変形する疾患。指曲がり症とも呼ばれます。

手指の先端の第1関節(DIP関節)に生じる変形性関節症はへバーデン結節と呼ばれ、手指の中央の第2関節(PIP関節)に生じる変形性関節症はブシャール結節、親指の付け根の第1手根中手骨(しゅこんちゅうしゅこつ)関節(母指CM関節、MP関節)に生じる変形性関節症は母指CM関節症です。

一番多いのがヘバーデン結節で、指が節くれ立って、しかも第1関節のところで曲がってくる疾患。約200年前に、英国の医師ヘバーデンが初めて報p>告しました。

かつては珍しい疾患でしたが、最近は日本でも患者が増えています。しばしばリウマチと間違われますが、実体は変形性関節症です。

程度の差こそあれ、親指から小指にかけてどの指も、第1関節の部分が節くれ立ちます。また、その関節で変形し、横に曲がります。変形の型は屈曲変形、側方への曲がりと多様で、変形の程度もいろいろです。

痛みを伴うこともあり、第1関節の動きも悪くなります。また、痛みのために強く握ることが困難になりますが、ある時期になると、痛みがなくなります。

同時に、第1関節の背側に骨の変形によってできる盛り上がりである結節ができ、時に柔らかいはれを伴うことがあります。それぞれ骨棘(こっきょく)、粘液のう胞(ミューカスシスト)とも呼ばれています。

原因は不明です。一般に40歳代以降の女性、特に更年期後の女性に多く発症します。男女比は1対10と圧倒的に女性に多く、男性には発症の平均年齢が高くなる傾向があります。

手をよく使う人には、なりやすい傾向があります。遺伝性は証明されてはいませんが、母や祖母、姉妹がヘバーデン結節になっている人は、体質が似ていることを考慮して、指先に負担をかけないように注意する必要があります。

全身の関節に変化が起きることがあるリウマチと違って、ヘバーデン結節がほかの部分の関節に波及することはありません。

手指の中央の関節である第2関節に生じる類似の変形性関節症がブシャール結節で、はれ、痛み、こわばり、変形などの症状が現れます。

長年の指の使用や繰り返される過度の負担のために、加齢に伴って第2関節の軟骨が擦り減って、周囲の骨が変形するために、ブシャール結節を発症します。

進行すると、手指の曲げ伸ばしができなくなったり、手指が横に曲がった状態で固まってしまったりします。同時に、指関節の背側の一部がこぶのように盛り上がってしまうことがあります。ぞうきんを絞ることができなかったり、字を書くことが不便になったりすることもあります。

通常、ブシャール結節は一つの手指から始まり、次第に両側の手指の第2関節に広がっていく特徴があります。

中高年、特に女性に多く発症します。また、手指の第1関節に現れるへバーデン結節の20パーセント程度に合併して、ブシャール結節が現れます。

手指の第2関節のはれ、痛み、こわばり、変形が続く場合には、関節リウマチやほかの膠原(こうげん)病の可能性もあるため、整形外科を受診し、関節リウマチなどと見分けた上で、対処することが勧められます。

さらに、親指の付け根の第1手根中手骨関節に生じる変形性関節症が母指CM関節症で、関節軟骨が擦り減り、骨同士が直接ぶつかり合うことで痛みを覚える疾患。

第1手根中手骨関節は、手指の手前の甲の骨である第1中手骨と、手首の小さい骨である大菱形骨(だいりょうけいこつ)の間にある関節で、親指が他の指と向き合って、物をつまんだり、握ったりなどの動作をする上で、大きな働きを担っています。

そのぶん使いすぎや老化に伴って、関節軟骨の摩耗が起きやすく、進行すると関節がはれ、第1中手骨の基部が外側に亜脱臼(あだっきゅう)してきて、親指が変形してきます。

母指CM関節症を発症すると、物をつまむ時や瓶のふたを開ける時など親指に力を必要とする動作で、親指の付け根付近に痛みが出ます。進行すると、この付近が膨らんできて、親指が横に開きにくくなります。また、親指の指先の関節が曲がり、手前の関節が反った白鳥の首と呼ばれる変形を示してきます。

ひどくなると安静時にも痛かったり、変形が気になるようになってきます。

中高年女性に多く見られ、手芸や園芸など手をよく使う趣味を持つ人だけでなく、特に何もしていない人でも発症します。近年は高齢化により、発症者数は急増しています。

手指の変形性関節症の検査と診断と治療

整形外科の医師による手指の変形性関節症の一つであるヘバーデン結節の診断では、手指の第1関節の変形、突出、痛みがあり、X線(レントゲン)写真で関節の透き間が狭くなったり、関節を形成する軟骨が壊れたり、骨棘があることが認められれば、へバーデン結節と確定できます。

整形外科の医師によるヘバーデン結節の治療では、保存的療法として局所の安静や固定、投薬、局所のテーピング、温熱療法、運動療法などが行われます。急性期では、局所の固定、非ステロイド消炎鎮痛剤の投与、軟こう塗布、少量のステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)の関節内注射などが行われます。

保存的療法で痛みが改善しない時や、変形がひどくなったり関節の動揺性がひどくなって日常生活に支障を来す場合は、第1関節を固定する手術、骨棘と粘液のう胞を切除する手術が行われることもあります。

対処法としては、第1関節が痛む時は安静を心掛けます。痛くても使わなくてはならない時は、テーピングがお勧めです。ふだんでも、指先に過度な負担が生じることを避けます。

整形外科の医師による手指の変形性関節症の一つであるブシャール結節の診断では、手指の第2関節のはれ、痛み、こわばり、変形、盛り上がりがあり、X線(レントゲン)検査で関節の透き間が狭くなったり、関節を形成する軟骨が擦り減ったり、骨棘があることが認められれば、ブシャール結節と確定できます。

関節リウマチやほかの膠原病との鑑別のために、血液検査を行う場合もあります。関節リウマチでは、手指の第2関節のほか、手首、肘(ひじ)など全身の関節に症状が現れます。

整形外科の医師によるブシャール結節の治療では、ヘバーデン結節の治療と同じく、保存的療法として局所の安静や固定、投薬、局所のテーピング、温熱療法、運動療法などが行われます。急性期では、局所の固定、非ステロイド消炎鎮痛剤の投与、軟こう塗布、少量のステロイド剤(副腎皮質ホルモン)の関節内注射などが行われます。

保存的療法で痛みが改善しない時や、変形がひどくなったり関節の動揺性がひどくなって日常生活に支障を来す場合は、手術療法として、第2関節の固定をする関節固定術や、骨棘を切除して関節を整える関節形成術などを行うこともあります。

対処法としては、第2関節が痛む時は指を動かさないように安静を心掛けます。痛くても使わなくてはならない時は、テーピングがお勧めです。ふだんでも、指先に過度な負担が生じることを避けます。

整形外科の医師による手指の変形性関節症の一つである母指CM関節症の診断では、X線(レントゲン)検査を行います。X線写真で、第1手根中手骨関節の透き間が狭く、関節軟骨が擦り減って骨が直接ぶつかり合った部位に、小さな突起である骨棘があったり、時に亜脱臼が認められると、確定できます。

区別しなければならない疾患には、手首の親指側の腱鞘(けんしょう)炎であるドケルバン病や、リウマチによる関節炎があります。

整形外科の医師による母指CM関節症の治療では、痛みが軽いうちは消炎鎮痛剤入りの湿布剤などの外用薬を用います。関節保護用の軟性装具を着けるか、固めの包帯を親指から手首にかけて8の字型に巻いて動きを制限することもあります。

それでも不十分な際は、消炎鎮痛剤の内服、ステロイド剤(副腎皮質ホルモン)の関節内注射を行います。

痛みが強く、亜脱臼を伴う高度な関節の変形や親指の白鳥の首変形が見られる際には、大菱形骨の一部を取り除いて関節を作り直す関節形成術、関節を動かないように固定する関節固定術、人工関節を使う人工関節置換術などの手術を行うこともあります。

🇭🇳ジョーンズ骨折

足の甲の部分に位置する第5中足骨の足首に近い基部に起こる骨折

ジョーンズ骨折とは、足の第5趾(し)(小指)の根元、足の甲の部分に位置する長い骨である第5中足骨(ちゅうそくこつ)の足首に近い基部に起こる骨折。第5中足骨基部骨折、第五中足骨疲労骨折とも呼ばれます。

第5中足骨基部はよく骨折を起こす部分で、骨折しても歩けることも多く、足首をひねった捻挫(ねんざ)と同じ形で受傷するので捻挫と思われがちですが、痛みのある部分や、はれのある部分が違いますので、よく観察すると区別が付きます。

発見者の名前に由来して称されるジョーンズ骨折による症状は、足の甲の外側や小指の付け根の痛み、はれ、押すと痛む圧痛、歩行障害です。急性期には激しい痛みとはれがありますが、慢性期には痛みがそれほど強く出ず、はれもあまりない場合もあります。

前足部でみられる骨折の中でも難治性であるといわれており、サッカーやラグビー、バスケットなど、カットプレーやステップターン、サイドステップやスワーブなどを行うスポーツをする人によくみられます。

つま先立ちの姿勢で足をひねり、一回の外力でこのジョーンズ骨折が生じる場合もありますが、一般には疲労骨折であると考えられています。カットプレーやステップターンなどで足の外側に体重がかかり、それを繰り返すことによって、第5中足骨基部にストレスがかかり、折れてしまうと考えられています。

中足骨は真っすぐな骨ではなく、丸くアーチ状になっていて、第5中足骨基部には体重が掛かったり、筋肉の作用に引っ張られたりと3方向のストレスが常にかかります。最も足の外側にあるために地面からの力を直接受けやすいという条件下にあり、ストップ動作、ダッシュ動作などを行う時、アーチがたわみ、ストレスがさらにかかり、針金が何度も曲げられると折れてしまうように、骨が疲労骨折してしまいます。

偏平足の人や内反足の人、アキレス腱の硬い人などがジョーンズ骨折を生じやすいといわれていますが、擦り減ったシューズを長年使用していたり、床が硬いところでプレーを続けることでも生じます。

疲労骨折は症状が急激に現れるのではなく、少しずつ痛みが慢性化していき、発生当初はレントゲンにも映らないため、痛みがあるままスポーツを続ける人も多くなってしまいます。

痛みがあるままプレーをすることで、疲労骨折が完全骨折になってしまったり、関節部ではないのに関節のようになる偽関節になってしまうこともあるので、痛みが続く場合は原因となるスポーツをしばらく休むことが必要です。

また、疲労骨折の場合は癒合に時間がかかる上、ジョーンズ骨折が生じる部分は血行が他の部分に比べて少ないので、骨が癒合しにくく、治りにくくなります。

ジョーンズ骨折の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、第5趾の中足骨の根元に明らかな圧痛を認め、内反ストレス(内返し)を加えると激痛を生じます。レントゲン検査の前後像と斜位像の2方向撮影で、確定診断されます。

しかし、骨折部のずれ(転位)がないケースでは、受傷した足部の状態を再現したストレスレントゲン撮影を行わないと、骨折が発見できないことがあります。従って、自覚症状と診察所見でジョーンズ骨折が疑われる場合は、必ずストレスレントゲン撮影を行うことが大切です。

整形外科の医師による治療では、一回の外力でジョーンズ骨折が生じた場合、ギプス装着などによる保存療法が選択されます。ギプス装着の期間は1~4週間と状態によって異なり、また、取り外しができる足部だけの簡単なシーネなどで固定することもあります。一般的には、痛みがほぼなくなるには約1カ月、はれがなくなるには2~3カ月を要します。

疲労骨折でジョーンズ骨折が生じた場合も、一般的には保存療法が行われ、骨の癒合がしにくい部位であるために治りにくいケースでは、手術療法が行われます。通常の疲労骨折は休めば治癒し、このジョーンズ骨折も保存療法で2~3カ月安静して休めば、骨折線が消えてきて治癒したかにみえます。しかし、サッカーなどのスポーツを再開すると、同じ部位に骨折線が再び現れてきて、再骨折をしてしまうこともあります。

短期間の保存療法では再骨折が防止できないため、骨折部のずれが著明なケースやスポーツレベルが高い人のケースでは、最初から手術療法が選択されることも多くあります。手術療法では、経皮的骨接合術や内固定術などの骨接合術を行い、骨の中にある骨髄にスクリューを入れて固定します。

手術療法ができない場合や受けたくない人の場合には、超音波骨折治療器(LIPUS)を用いて治療すると、難治化のリスクの高い骨折に対しても有効で、早い段階から治療を行えば骨の癒合も早く進む可能性が高いとされています。

骨癒合や症状の状況に応じて、ストレッチング、筋力増強訓練なども行われます。治療後にサッカーなどのスポーツを続ける人には、外側縦アーチを守るため、足底板をシューズに入れることを勧めることもあります。アーチを支える構造になっている足底板は、外側縦アーチにかかるストレスを小さくすることができます。足全体で体重を支えることを目的として、親指側にも足底板を追加することもあります。

🇭🇳ショイエルマン病

脊椎の成長軟骨部の障害によって、姿勢不良や背部痛を生じる疾患

ショイエルマン病とは、何らかの原因で背骨の発育障害が起こる疾患。青年期後湾症とも呼ばれます。

1920年、ショイエルマンによって初めて報告されました。発症しやすい年齢は13~17歳の思春期で、やや男子に多い傾向があります。

脊椎(せきつい)の成長軟骨部の血流障害により、脊椎の前方部が楔(くさび)状に変形して前につぶれたような格好になったり、脊椎の間にあるクッションの役割を持つ椎間板(ついかんばん)が変形して成長を終了することにより、背中が丸く変形します。胸椎部に多くみられ、胸椎部と腰椎部の移行部にみられることもあります。軽度の側湾が認められ、背骨が横に曲がっていることもあります。成長が終了すると、変形の進行も止まります。

主な症状は、姿勢不良や背部痛、腰痛、脊柱の運動制限。背中が丸くなったり、脊椎が硬くなってお辞儀や反り返りができにくくなったり、痛みや疲労感を覚えます。

疾患の原因は確定されていません。症状の出ない軽度のショイエルマン病は、定期健康診断で発見されることがあります。

整形外科の医師による診断では、脊椎のX線検査を行って椎骨の曲がりと変形を見ます。脊椎の上下の辺縁の不整像、椎間板の不整像、脊椎の楔状化、脊椎の後湾椎体の変形が見付かれば、比較的簡単に確定できます。原因を知るために、さらに詳しい検査が行われることもあります。成長終了後は脊椎は硬くなり、前後左右への可動性が減少します。

脊椎カリエス(脊椎結核)との区別をつける必要があります。X線上の特徴的な像と、カリエスが進行性であるかどうかで区別します。

軽度の非進行性のものは、体重負荷のストレスの軽減と激しい運動の回避により治療できます。後湾がより重度で思春期の場合は、さらなる変形の防止と矯正を期待して、特殊な硬性脊椎コルセットを作成して装着し、硬いベッドで寝ることなどを行います。ショイエルマン病は進行するので、医師の指示に従って根気よく治療を続けることが大切で、途中でやめたり、転院したりすると、計画的な治療が受けられなくなります。

成長終了後の腰痛、疲労感に対しては、対症的に薬物投与を行います。変形が高度で筋力低下や、感覚の障害などの神経の障害が現れた場合は、脊椎変形を矯正するための手術が必要になることもあります。

🇵🇱踵骨後部滑液包炎

踵の後ろの部分にある滑液包が炎症を起こし、痛みが生じる疾患

踵骨(しょうこつ)後部滑液包炎とは、踵(かかと)の後ろの部分にある滑液包が炎症を起こし、痛みが生じる疾患。

滑液包は、皮膚と骨や腱(けん)の部分の間にある袋状の軟部組織で、ゼリー状の少量の滑液が含まれています。滑液包の本来の役割は皮膚と骨や腱などが直接こすれ合うのを防止することですが、一定の動きにより摩擦が長期間続くと炎症を起こしていきます。

踵骨後部滑液包は踵の骨である踵骨にアキレス腱が付着する部分にあり、この踵骨後部とアキレス腱の間にあってクッションの役割をする滑液包が炎症を起こすと、踵の後ろの部分がはれて硬く盛り上がり、押すと痛みが生じたり、靴を履いて歩くと痛むようになります。

足の裏のアーチを支えている足底筋膜に炎症が起こる足底筋膜炎と同様、扁平足(へんぺいそく)やハイアーチ(凹足)の人が、踵骨後部滑液包炎を起こしやすいといわれています。扁平足は、土踏まずのくぼんだ部分がなくなって、起立時や歩行時に足の裏のアーチがつぶれ、足の裏全体が地面にくっ付く足です。ハイアーチは、足の甲が極端に高く、起立時や歩行時に土踏まずの部分が地面に接しない足です。

また、踵骨後部滑液包炎は、踵骨後部滑液包が圧迫や摩擦を受けやすいパンプスやハイヒールなど踵の部分が固い靴を履いている人や、足関節の運動に伴うアキレス腱のオーバーユース(使いすぎ)を起こしやすい長距離走のランナーに起こることもあります。

踵骨後部滑液包炎の検査と診断と治療

整形外科、形成外科、ないし足の外科の医師による診断では、踵の後ろの部分に圧痛があれば見当は付きますが、念のためX線(レントゲン)検査や超音波(エコー)検査を行います。超音波検査により、踵骨後部滑液包のはれなどを確認できることがあります。

整形外科、形成外科、ないし足の外科の医師による治療では、原因となった踵の後ろの部分に負担のかかるスポーツ活動があるなら中止し、通常、痛みを和らげる湿布が基本となります。

日常の歩行時に痛む場合は、踵を少し高くするヒールパッド(ヒールウエッジ)を靴に挿入して、靴の踵部分が患部に当たらないようにするか、圧迫や摩擦が少なく踵との適合性が高い靴と交換します。

痛みがひどい場合、再発を繰り返す場合は、患部にステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)と麻酔剤を注射したり、踵骨後部滑液包内を洗浄したりします。

踵や足部の形状に異常があり、慢性化の傾向を示す場合は、滑液包と踵骨の隆起部分を切除する手術を行うこともあります。

2022/08/24

🇵🇱踵骨骨端症

成長途上の軟骨がストレスを受け、踵の痛みが起こる疾患

踵骨骨端(しょうこつこったん)症とは、スポーツを行っている8~12歳くらいの男子に多く見られ、運動時や運動後に踵(かかと)の痛みが起こる疾患。シーバー病とも呼ばれています。

成長期には踵の先端部分に骨端核といわれる軟骨があり、踵骨腱(けん)ともいわれるアキレス腱と、足の土踏まずを形成する硬い膜である足底腱膜がついています。このためジャンプやダッシュ、ストップなど強い力が加わるバスケットボールやサッカーなどのスポーツだけではなく、長時間歩いたりした際の靴による圧迫など、微小な外力の繰り返しによっても刺激が加わり、アキレス腱が付着する部分に炎症を起こしやすくなり、痛みやはれ、熱感を伴います。

踵骨骨端症が発生する原因は、骨端核が存在するような年齢の時に繰り返される踵部分でのストレスです。もともと、軟骨成分の多い子供の骨は衝撃にも弱く、腱による強力な牽引(けんいん)力がかかると、軟骨部分では容易に骨がはがれてしまいます。

踵骨骨端症の症状は、踵のやや後下方から足底に近い辺りを押さえた時の痛みや、走ったり階段を上がったりした時の軽い痛み、踵を浮かせて歩くような重い痛みまでさまざまです。重い痛みをかばって爪先(つまさき)歩きになるために、アキレス腱やふくらはぎにも痛みを感じることがあります。

骨端核は15~16歳で踵骨体部と癒合して骨が完成しますので、症状は2~3年で自然に消失してゆきますが、症状を悪化させないためには、早期診断と治療が重要です。心当たりのある場合には、早めに整形外科の専門医の診察を受けるようにします。

医師による診断では、X線撮影を行うと、踵骨の骨端線が不規則な形に変形しているのがわかります。中には、X線写真で骨端核にひびが入る分節化などを示している症例もあります。

医師による治療法では、踵部へのストレスを減少させるために、フェルトなどの材料を靴底に入れてクッションとして用いたり、足底装具を使用して踵を持ち上げたりします。短期間ギプスで固定することもあります。 また、湿布や消炎鎮痛剤入りの軟こうを使ったり、温熱療法や周囲の筋肉のストレッチなども行います。

痛みの強い時期には運動は原則的に禁止であり、軽くなってからも痛みの起こる動作は避けます。

症状がとれれば、徐々に運動を再開します。この際、運動の前後の準備運動と整理運動で、アキレス腱や足底腱膜のストレッチをしっかり行うようにします。

🇱🇮上前腸骨棘裂離骨折

骨が弱い成長期に発生しやすいスポーツ障害で、骨盤の上前腸骨棘にある骨端線の部分が裂離骨折する障害

上前腸骨棘(じょうぜんちょうこつきょく)裂離骨折とは、骨盤の上前腸骨棘にある骨端線という、骨の端にある成長軟骨が骨に変わってゆく境目の部分が裂離骨折する障害。骨が弱い成長期に発生しやすいスポーツ障害で、骨盤裂離骨折の1つです。

骨盤の中でも、腰ベルトのかかる出っ張り部分にある腸骨の上前腸骨棘には、大腿(だいたい)筋膜張筋と縫工筋が付着しています。

これらの付着している筋肉が、スポーツで生ずる疾走動作やジャンプ動作で収縮することによって、骨盤付着部を急激に牽引(けんいん)するために、成長期の骨盤に残っていて、完成された大人の骨と比べると力学的に弱い骨端線の部分が引きちぎられるように裂離骨折します。

上前腸骨棘裂離骨折は、スポーツの種目では陸上、サッカー、野球の順で多く、短距離走のスタート時やサッカーのダッシュなどの際に全力疾走する動作で、主に縫工筋が急激に収縮するために発生することが多いのが特徴的です。ハードな練習が続いて疲労が蓄積し、付着している筋肉が硬くなっていることも原因の1つになります。

発生すると、多くは股(こ)関節に突然の激痛が出現し、走行不能、歩行困難になり、股関節周囲の圧痛、はれが認められます。

上前腸骨棘裂離骨折は、中学生、高校生である12~18歳に好発し、14~16歳がピーク。女子より強い筋力を持つ男子に圧倒的に多く、ほとんどは右側の骨盤部分に発生しています。

同じ年齢層、同じ部位に痛みを来す障害に、上前腸骨棘骨端炎があります。上前腸骨棘裂離骨折が急激な強い力で発生する障害であるのに対して、上前腸骨棘骨端炎は反復する小さな力による障害といえ、上前腸骨棘裂離骨折の前触れとしてみられることがあります。

上前腸骨棘裂離骨折の検査と診断と治療

整形外科、形成外科の医師による診断では、X線(レントゲン)検査を行うと、受傷時はわかりにくいものの、腸骨部に剥離(はくり)した骨折片を認めます。必要に応じてCT(コンピュータ断層撮影)検査を行うと、こちらでも骨折片を確認でき、骨折部のずれの程度を知ることができます。

整形外科、形成外科の医師による治療では、基本的に、骨盤付着部が筋肉に引っ張られないように、股関節を軽度に曲げた肢位での安静による保存的治療を行います。1週間のアイシングを徹底し、1~2週間の安静後に松葉杖(づえ)歩行を行い、歩行時痛がなくなってから可動域訓練と筋力訓練を行います。少しずつ負荷を増やし、8~12週でのスポーツ活動への復帰を目指します。

成長期の障害であるため、骨の癒合は良好で、多少の骨変形が残存しても、骨の癒合が完了して十分な時間が経過すれば、スポーツ活動に支障は少なく、比較的予後は良好です。

骨折片が大きい時、骨折部のずれの大きい時、早期のスポーツ活動への復帰を望む時は、骨折片をスクリューなどで整復固定する手術を行うこともあります。

再発予防のためには、骨盤周囲の筋肉や股関節のストレッチを十分に行うことが重要です。

🇦🇹衝突性外骨腫

サッカー選手に多くみられ、足関節内の骨の増殖変化により骨の棘ができ、足首周辺が痛む疾患

衝突性外骨腫(がいこつしゅ)とは、足関節内の骨の増殖変化により骨の棘(とげ)ができて盛り上がり、足首の前方や後方、内側が痛む疾患。フットボーラーズアンクルとも呼ばれます。

足首を酷使するサッカー選手やラグビー選手に多く起こるスポーツ障害で、バスケットボール、ハンドボールなどのスポーツ選手にもよく起こります。

サッカー、ラグビーでは、足首を反らしたり、伸ばしたり、すなわち足首の背屈と底屈を繰り返すキック動作や、急激なダッシュやストップやターンなどの方向転換動作が、衝突性外骨腫を引き起こします。

一方、バスケットボール、ハンドボール、バレーボール、器械体操などでは、足首の背屈と底屈を繰り返すジャンプ動作や、急激なダッシュやストップやターンなどの方向転換動作が、衝突性外骨腫を引き起こします。

キック動作、ジャンプ動作、方向転換動作が繰り返されることで、足首や踵(かかと)の関節を作る骨と骨がぶつかることが繰り返されると、骨軟骨の損傷を起こし、骨の増殖変化が生じて、足首の骨に本来ないはずの棘ができます。この骨の棘が足関節運動の際の障壁となって可動範囲が制限されたり、骨の棘の刺激によって足首の前方や後方、内側に痛みや炎症を生じます。

サッカーでは、底屈で発生することが多く、アキレス腱(けん)側に痛みが出て足首が十分に底屈できなくなります。バスケットボールなどでは、逆に背屈で発生することが多く、足首の前面に痛みが出て十分に背屈できなくなります。

また、捻挫(ねんざ)を繰り返して足首が緩くなっているサッカー選手などは、足首の関節が不安定で、通常よりも動きが大きく出るために、骨と骨がぶつかりやすくて関節面を傷付け、傷付いた関節面では修復反応により骨が増殖され、やがて骨の棘ができるため、よく衝突性外骨腫を引き起こします。

症状が重い場合は、骨の棘の衝突によって可動域が制限され、足首の背屈や底屈ができなくなることもあります。さらに、骨の棘が骨折した場合は、関節遊離体(関節ねずみ)となって足関節の中をあちらこちらと移動するため、関節の透き間に挟まって激しい痛みを起こしたり、足関節の運動が不能となることもあります。

衝突性外骨腫の検査と診断と治療

整形外科、形成外科、ないし足の外科の医師による診断では、衝突性外骨腫の好発部位を触診すると、骨の棘による盛り上がりを感じることもあります。

骨の棘の位置やサイズを確認するためには、X線(レントゲン)検査やCT(コンピュータ断層撮影)検査を行います。骨の棘の形成は、脛(すね)の骨である脛骨(けいこつ)下端の前面、足首の一番上の骨である距骨頸部(きょこつけいぶ)前面、距骨後方のほか、距骨内外側部、内くるぶし、外くるぶしに見られることがあります。

整形外科、形成外科、ないし足の外科の医師による治療では、痛みの強い急性期は、痛み、はれに対して局所の安静とアイシング、その後ホットパック、超音波、低周波などの物理療法を行います。足関節の可動を制限するためのテーピングやサポーターなどの装具も有効です。

痛みが強い場合は、ヒアルロン酸やステロイド剤の注入も行います。

保存療法で症状が改善しない場合や、骨片が関節遊離体となった場合は、手術で骨の棘や関節遊離体を切除、摘出することがあります。

初期のリハビリテーションは、足関節の非荷重可動域訓練から開始します。次に、チューブによる軽い負荷をかけた足関節の運動を行い、エアロバイク、プール歩行へと徐々に負荷を増していきます。

根気強く治療とリハビリを続ければ、足関節の可動域の制限は残るものの予後は比較的良好で、骨の棘が存在しても日常動作に支障がないことが多く、また運動時においても、サポーターやテーピングで足関節を固定すれば問題がないことがほとんどです。

🇮🇹上腕骨外側上顆炎

テニスのストロークの繰り返し動作などで、利き腕の肘に起こる障害

上腕骨外側上顆(じょうわんこつがいそくじょうか)炎とは、テニスのストロークの繰り返し動作などで慢性的に衝撃がかかることによって、利き腕の肘(ひじ)に炎症や痛みが起こる関節障害。俗に、テニス肘、バックハンドテニス肘とも呼ばれます。

中年以降のテニス愛好家に生じやすいのでテニス肘とも呼ばれ、利き腕の反対側に飛んできたボールをワンバウンドで打つバックハンドストロークで肘の外側を痛めるもので、手首を甲側に曲げる筋肉が骨に付いている上腕骨外側上顆に炎症や痛みが発生します。ボールがラケットに当たる時の衝撃が、手首を動かす筋肉の肘への付着部に繰り返し加わることによって、微小断裂や損傷を来して起こると考えられています。

上腕骨外側上顆炎の発生頻度については、若年層で少なく、30歳代後半から50歳代に多いことがわかっています。

また、テニスに限らずゴルフなど他のスポーツや、長時間のパソコン操作などによる手の使いすぎが原因となって、誰にでも発症する可能性がある関節障害でもあります。

症状としては、バックハンドストロークのたびに肘の外側に、疼痛(とうつう)が現れます。テニス以外の日常生活でも、物をつかんで持ち上げる、タオルを絞る、ドアのノブを回すなどの手首を使う動作のたびに、肘の外側から前腕にかけて疼痛が出現します。多くの場合、安静時の痛みはありません。

この関節障害は、一定の動作を繰り返し行うことで症状を発症するオーバーユース症候群として知られています。しかし、テニスを始めたばかりの初心者であっても、症状を発症する可能性がないわけではありません。むしろ初心者の場合は、筋を痛めたような感覚、もしくは筋肉痛などと思い込み、痛みを抱えたままプレーを続けることで、症状を悪化させてしまうことに注意が必要となります。

男性と比べると筋力の弱い女性や、まだ体が完成していない子供にも、上腕骨外側上顆炎は多く発症する傾向にあります。これは、ゲーム中に強いサーブやボレーを打ちたいという思いから力みが生じて、フォームのバランスを崩し、関節に無理のあるフォームでのラリーが続くことが原因の一つになっています。

そして、スポーツ競技としては比較的長時間のゲームとなるテニス競技では、片手で軽く持てるラケットの重さも徐々にフォームの悪化を招く要因となります。

上腕骨外側上顆炎の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、肘の外側の上腕骨外側上顆を押すと圧痛が認められ、手首を甲側に曲げる動きで肘の外側に運動痛を生じます。

また、抵抗を加えた状態で手首を甲側に曲げてもらうトムセンテスト、肘を伸ばした状態で椅子を持ち上げてもらうチェアーテストなどの疼痛を誘発する検査を行い、肘外側から前腕にかけての痛みが誘発されたら、上腕骨外側上顆炎と確定診断します。

整形外科の医師による治療法は、大きく分けて4つあります。1つは、肘の近くの腕をバンド状のサポーター(テニスバンド)で押さえること。2つ目は、肘を伸ばし手首を曲げて筋肉を伸ばすストレッチング、痛い所を冷やして行う冷マッサージ、超音波を当てるなどのリハビリテーションを行うこと。3つ目は、痛みや炎症を抑える飲み薬や湿布薬を使用する薬物治療を行うこと。4つ目は、炎症を抑えるステロイド剤の痛い部分への注射を行うこと。

同時に日常生活では、強く手を握る動作や、タオルを絞る、かばんを持ち上げるなどの動作をなるべく避けるようにします。物を持つ時には、肘を曲げて手のひらを上にして行うことを心掛けます。

このような治療で、大部分の人が6カ月ほどで治ると考えられます。しかし、痛みがよくならない難治性の上腕骨外側上顆炎では、手術を行う場合もあります。手術方法としては、伸筋腱(けん)起始部解離術、伸筋筋膜切開術、輪状靭帯(じんたい)や関節包の部分切除術、関節内の滑膜切除術などがありますが、成績にはっきりした差は認められていません。

上腕骨外側上顆炎は再発性が極端に高い障害で、一度発症すると数年後、もしくは数カ月後に再発してしまうことも多くみられます。再発予防も含めた予防法としては、ラケットのガットを緩めにするなどのラケットの選択や、フォームの改良、テニスで使用する部位の筋肉強化や手首の筋力強化、前腕のストレッチング、サポーターの活用、テニス後の肘のアイシングなどが挙げられます。

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 酒とエナジードリンクを一緒に飲むとカフェインの過剰摂取による健康被害につながりかねないとして、農林水産省が注意喚起しています。5月8日に問い合わせが相次いだことを受けての対応で、同省は直前に人気ユーチューバーが酒とエナジードリンクを一緒に飲む動画を投稿した影響とみています。 ...