2022/08/02

🇨🇦鼠径リンパ肉芽腫

鼠径(そけい)リンパ肉芽腫(にくげしゅ)とは、クラミジアの一種を病原体とする性感染症で、鼠径リンパ節のはれを特徴とします。別名、第四性病。

1935年ごろ、海外から日本に持ち込まれて、一時期流行しましたが、今日ではほとんどみられない疾患となりました。

性交によって感染して、3日~2週間ほどの潜伏期の後、病原体の侵入した男女の外陰部に、小さなおできや水膨れができます。その後1週間くらいして、太ももの付け根の鼠径リンパ節がいくつもはれて、硬くなり、やがて固まって鶏卵大に。39度くらいまで発熱し、リンパ節は破れて、分泌物が出て止まらず、数カ月も治りません。

治療では、テトラサイクリン系の抗生物質などが有効です。

🇺🇸ソトス症候群

遺伝子の機能異常により、大頭、過成長、特徴的な顔付き、発達の遅れなどを示す症候群

ソトス症候群とは、さまざまな身体的異常を引き起こす先天異常症候群。脳性巨人症とも呼ばれます。

1964年に、ソトスらが最初の症例を報告しました。日本では、新生児の14000人に1人程度の罹患(りかん)率と見なされていますが、軽度の症状の場合は見過ごされている可能性があり、実際には5000人に1人に近い罹患率と考えられています。

常染色体優性遺伝性疾患であり、5番染色体にあるNSD1遺伝子の異常によって起こります。

症状には幅があり、幼少期から小児期にかけての大頭症、過成長、骨年齢の促進、特徴的な顔付き、精神発達遅滞などを示します。

出生時から身長が大きく、体重もあり、手足も大きく、骨の成熟も促進しています。顔付きも特徴的で、額の大きな大頭で、下顎(したあご)の突出、口の中の上部がへこんでいる状態の高口蓋(こうこうがい)、眼瞼(がんけん)裂斜下、両眼隔離が見られ、全身の筋肉の緊張が低下して全身の筋肉の力が弱くなっています。身長や頭囲の過成長は、乳幼児期から学童期まで続きます。

また、けいれん、心疾患、腎(じん)疾患、尿路異常、外反偏平足、脊椎(せきつい)側湾、てんかん発作などを合併することもあります。

ソトス症候群の検査と診断と治療

小児科、ないし遺伝子診療科の医師による診断では、大頭症、過成長、骨年齢の促進、特徴的な外見を認め、原因遺伝子のNSD1遺伝子などに点変異を認めるか、NSD1を含む5番染色体長腕に欠失を認める場合に、ソトス症候群と確定します。

遺伝子の変異や染色体の欠失を認めない場合は、大頭症、過成長、特徴的な外見、精神発達遅滞のすべてを満たす場合に、ソトス症候群と確定します。

小児科、ないし遺伝子診療科の医師による治療では、現在のところ根治療法はないため、対症療法として、てんかん、腎疾患に対しては必要に応じて薬物療法、心疾患に対しては必要に応じて手術や薬物療法、精神発達遅滞に対しては療育的支援を行います。

主に、心疾患、腎疾患、難治性てんかんが生命予後に影響を与えます。

🇺🇸そばかす(雀卵斑)

目の回り、ほおに小さな色素斑が群がっている症状

そばかすとは、目の回り、ほおなどに小さな斑点(はんてん)が群がっている症状。その淡褐色、ないし黒褐色の斑点がスズメの卵の殻(から)の模様に似ているので、雀卵(じゃくらん)斑とも呼ばれています。

首や肩、前腕の外側、手の甲にできるものもあります。生まれた時から存在している場合もありますが、だいたい5~6歳ころに目立ち始めて、思春期をピークに減少へと向かう場合が多く、 年齢を重ねると共にだんだんと目立たなくなっていきます。しばしば家族に同じ症状がみられるため、原因としては遺伝的要素が強いといわれています。また、紫外線の影響、生活の乱れ、ストレスによっても発生します。

遺伝的要素が強いそばかすは、完全に消すことは難しいものながら、ファンデーションなどでカバーできるくらい薄くできることもあります。その他の原因によるソバカスは、皮膚の生まれ変わり(ターンオーバー)がうまくできていないと、メラニンが増えて濃くなってしまいます。

そばかすの検査と診断と治療

そばかすには、根治させるためのよい治療法はありません。むしろ、悪化させないように日焼け止めクリームを塗り、帽子や日傘を活用して、紫外線をできるだけ避けるようにします。そばかすがある状態で紫外線を浴びてしまうと、数が増えるだけでなく、 既存のそばかすも色が濃くなってしまいます。

また、そばかすの症状を改善させるためには、 ビタミンCやトラネキサム酸の摂取が有効だといわれています。 ビタミンCは、美白作用が高く抗酸化作用も優れています。一般的には止血剤として用いられているトラネキサム酸は、 美白作用があるのでそばかすやしみの治療にもよく使われています。

ほかにも、皮膚科や美容外科での専門治療として、レーザー治療や光治療のフォトセラピーなどがあります。これらの治療にはすべて施術後の紫外線対策などが重要です。

レーザー治療でそばかすを治療した直後は、施術した部分にテープなどを張る必要があるため、仕事をしながら治療したいという人にとっては難しい場合があるようです。赤みや色素沈着などが出る場合もあり、施術後の回復にも時間がかかります。フォトセラピーは、そばかすのメラニンを治療するだけでなく、コラーゲンを増やして皮膚に張りを与える効果があります。レーザー治療よりも、皮膚へのダメージが少ないといわれています。

そばかすを消す薬も、市販されています。化粧水タイプの薬品、顆粒タイプの飲み薬があり、用途に合わせて選ぶことができます。除去することが難しいそばかすの対処法として、化粧品によって隠す方法もあります。そのようなメイクで特に使用されているのは、コンシ―ラという顔料を高濃度に固めたものです。最近では、コンシーラやファンデーションそのものに、美白成分などが入っているものもあります。ファンデーションには、紫外線や化学物質から皮膚を保護するという役割もあります。

日常的な対策として、生活習慣を見直し、皮膚の再生が行われる22時~24時には寝ているようにするのも効果的です。

🇦🇫先天性膀胱憩室

先天的に弱い膀胱の壁の部分が、尿が通過する際に膨らんで袋状の憩室ができ、外側に突出する疾患

先天性膀胱憩室(ぼうこうけいしつ)とは、先天的な発育障害のために膀胱の内腔(ないくう)の壁の一部に弱い部分があり、排尿に際して膀胱内の圧力が高まった時に、壁の一部が膨らんで袋状の憩室ができ、外側に突出する疾患。

膀胱から尿道口までの下部尿路に、何らかの通過障害が来す基礎疾患を伴うために憩室ができるものは、後天性膀胱憩室であり、先天性膀胱憩室に含みません。

先天性膀胱憩室は男児に多くみられ、約半数が5歳までに、繰り返す尿路感染症の検査の際に発見されています。

先天性膀胱憩室では、平滑な膀胱壁に1、2個の憩室ができることが多く、尿管が膀胱壁を通過する部分や、膀胱頸部(けいぶ)に好発します。

無症状で、合併症を伴わないこともあります。しかし、増大して中程度以上の憩室になると、尿が出にくくなり、残尿量が増加します。

憩室内部には尿がたまりやすいので、尿路感染症を起こしやすく、排尿困難、尿閉、膿(のう)尿、血尿、頻尿、排尿痛、膀胱尿管逆流現象、水腎(すいじん)症などの上部尿路通過障害などを起こすこともあります。

発熱したり、膀胱や腎臓がはれて、拡張することもあります。

先天性膀胱憩室の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、超音波検査、排せつ性尿路造影、膀胱造影などを行います。

排せつ性尿路造影では、膀胱頸部以下の尿道通過障害や憩室の拡大の程度、膀胱尿管逆流現象の有無などを知ることができます。膀胱造影では、前後方向に加えて斜め方向から撮影することで、憩室の位置と大きさをより正確に知ることができます。

泌尿器科の医師による治療では、憩室が小さくて自覚症状もなく、合併症を伴わない場合、経過観察することもあります。

中程度以上の憩室の場合、できるだけ早期に手術で憩室を切除し、膀胱壁の再建を行います。さらに、膀胱尿管逆流現象や上部尿路通過障害がある場合、手術で尿管口を形成することもあります。

🇦🇫先天性溶血性貧血

赤血球の寿命が短くなり、骨髄が赤血球を作る造血機能が追い付かずに現れる先天性の貧血

先天性溶血性貧血とは、先天的に起きる溶血性貧血の総称。

溶血性貧血とは、全身に酸素を運ぶ役割を持つ赤血球そのものの寿命が短く、正常の約120日の寿命より早く消失してしまい、骨髄の造血機能が追い付けなくなって貧血を起こす疾患で、その原因が赤血球自体にあるものと、赤血球以外にあるものとがあります。原因が赤血球自体にあるもののほとんどは、先天性あるいは遺伝性の赤血球異常による溶血性貧血で、日本人には比較的まれな疾患です。

先天性溶血性貧血には、赤血球自体に異常がある遺伝性球状赤血球症や遺伝性楕円(だえん)赤血球症(卵形赤血球症)、酵素に異常がある赤血球酵素異常症、ヘモグロビン異常症、サラセミアなどがあります。日本で発見される先天性溶血性貧血の中では、遺伝性球状赤血球症が約70%、遺伝性楕円赤血球症が約2%、赤血球酵素異常症が約5%、ヘモグロビン異常症が約5%を占めます。

先天性溶血性貧血の代表的な疾患である遺伝性球状赤血球症は、血液を構成する細胞のうち、各臓器や組織への酸素運搬を担う赤血球細胞の遺伝的な異常によって、形状が球状に変形して本来の機能が低下し、壊れやすくなる疾患。慢性家族性黄疸(おうだん)、先天性溶血性黄疸、家族性球状赤血球症、球状赤血球性貧血とも呼ばれます。

常染色体優勢遺伝という形式で遺伝することが多いものの、常染色体劣性遺伝という形式で遺伝することもあり、突然変異による弧発例も存在します。

日本で発見される先天性溶血性貧血の中で最も頻度が高い疾患で、人口5〜10万人に1人の頻度とされています。主要な症状は貧血、黄疸、脾臓(ひぞう)のはれですが、症状の程度は個人差が大変強く、新生児期に重篤な症状を起こす場合もあれば、成人してから検査結果の異常で偶然発見される場合もあります。

赤血球は体内で狭い血管をも通過できるように、正常では中央部分がへこんだ円盤状の形をしています。この形態によって、狭い部分を通過する際に細胞が折り畳まれることで細胞を傷付けずにより先に流れていくことができます。

遺伝性球状赤血球症では、この特殊な形を保つための細胞骨格を作り上げる蛋白(たんぱく)質の遺伝子異常があるため、赤血球が通常通り変形することができず、細い血管や脾臓を通過するたびにその抵抗により細胞膜がどんどん削り取られてゆきます。細胞膜の面積が減っても細胞の中身の量は変わらないため、同じ表面積で最も体積を多くできる球状に赤血球が近付いてゆきます。それでも最終的には、細胞膜が薄くなることで形を保てずに赤血球が壊れてしまい、血色素(ヘモグロビン)が多量に赤血球外に出される溶血という現象が発生します。

細胞骨格にかかわる蛋白質には多くの種類があり、どの蛋白質にどのような異常が出るかによっても疾患の深刻さは異なってきます。

最重症の場合は、胎児期に高度の貧血のため、胎児水腫(すいしゅ)という状態を起こし得ます。新生児期に症状が出る場合の多くは、溶血のために血液中にビリルビン(胆汁色素)が増え新生児黄疸を起こして発見されます。黄疸の程度がひどい場合は、脳へのビリルビンの沈着とそれによる発達障害を起こすこともありますが、貧血による症状が深刻なことはまれです。新生児期をすぎると、皮膚の黄疸が問題となることは少なくなります。

遺伝性球状赤血球症の発症者では、赤血球が壊れずに体内を循環できる期間が疾患のない人と比べて少ないため、常に骨髄が活性化して多めに赤血球を作り続けている状態です。そのため、俗にリンゴ病と呼ばれる伝染性紅斑(こうはん)の原因になるヒトパルボウイルスB19型というウイルス感染への感染、赤血球を作る際に必要なビタミンB12や葉酸の不足など、骨髄の活動を抑制するような出来事があると急激に貧血が進行して症状を起こす可能性が高くなります。

また、皮膚の黄疸を起こすほどではないにしろ、溶血によって赤血球からビリルビンが漏れ出続けているため肝臓がそれを処理し切れずに、ビリルビンが胆石を作りそれによる胆石疝痛(せんつう)発作を起こす可能性が高くなります。

先天性溶血性貧血の検査と診断と治療

小児科、ないし血液内科の医師による溶血性貧血の診断では、血液の検査が最も重要です。これによって、貧血とともに、ビリルビンや乳酸脱水素酵素(LDH)といわれる物質の上昇が認められれば、溶血が強く疑われます。

身内に溶血性貧血の人がいる場合、先天性溶血性貧血の可能性があり、遺伝子や蛋白の異常を生化学的に検査していきます。

先天性溶血性貧血の代表的な疾患である遺伝性球状赤血球症の診断では、足の裏などから末梢(まっしょう)血を採取して、赤血球の形態観察で球状赤血球や小型球状赤血球の増加、赤血球の浸透圧抵抗の低下、血液中の間接型ビリルビン値の上昇、脾臓のはれなどを総合して診断します。可能であれば、赤血球膜の蛋白質を電気泳動で解析し、遺伝的異常を同定します。

なお、新生児期には赤血球の形態、赤血球の浸透圧抵抗ともに典型的な所見を示さないことも多いため、診断が難しいことがあります。

小児科、ないし血液内科の医師による遺伝性球状赤血球症の治療では、疾患の原因が遺伝的な蛋白質の異常であるため、ほかの先天性溶血性貧血と同様に根本的な治療法はありません。

対症療法として、正常より多くの量が必要となる葉酸を経口で補充します。まれに新生児期から貧血による症状が出る場合は、成熟に伴って骨髄が赤血球の消費を補えるだけ新たに赤血球を生産できるようになるまで、赤血球輸血や、エリスロポエチンという赤血球の生産を増やすホルモンの投与などを行います。

また、溶血や貧血に伴う症状が高度な場合や、これらの症状が軽度でも胆石が認められる場合などでは、赤血球を主に壊している脾臓を外科手術、あるいは腹腔(ふくくう)鏡下手術によって取り除く脾摘が治療法となります。元々の症状の程度によってどの程度の改善がみられるか個人差はありますが、軽症の場合はビリルビンなどの検査値がほぼ正常範囲になり、重症の場合でも輸血を必要とする頻度がかなり改善するなど大きな効果が見込めます。

しかし、脾臓という臓器が肺炎球菌など一部の細菌感染に対抗する上で重要な役割を持っているため、脾摘後はこれらの感染症に対して抵抗力が弱くなってしまいます。そのため脾摘の前にワクチン接種を受けることが推奨されます。また、脾摘を受けた発症者は脾摘を受けない遺伝性球状赤血球症の発症者と比べて、動脈/静脈塞栓(そくせん)の危険性が上がるという報告もあるため、元々の危険性が高い発症者では注意が必要になります。

特に乳幼児期は脾摘後に重症細菌感染症にかかりやすくなるため、重症の場合でも6歳になるまで脾摘は待つほうが安全とされます。軽症の場合は、青年期まで待機可能なこともあります。

そのほかの疾患の治療のため骨髄移植を行った場合には、骨髄の細胞が根本的に入れ替わるため遺伝性球状赤血球症も改善しますが、この疾患単独に対する治療としては治療に伴う合併症のリスクが高すぎるため通常は行われません。

🇮🇪先天性緑内障(牛眼)

先天的な眼内液出口の形成異常で生じ、黒目が大きくなる緑内障

先天的緑内障とは、眼内液の出口に生まれ付きの形成異常があることが原因で、眼圧が上昇して眼球が引き伸ばされ、黒目の部分が大きくなる眼疾。牛眼とも呼ばれます。

1万〜1万2500人に1人程度の割合でみられ、やや男子に多く、ほとんどは1〜2歳に発見されます。

眼球には、角膜や強膜でできた壁の内側に、房水という眼内液が入っていて、その壁の弾力と房水の充満状態によって、一定の硬さを保っています。この硬さが眼圧であり、正常眼圧は平均15ミリHgと外気圧より高いことで、眼球の形を保っています。眼内を満たす房水は主に毛様体で作られて後房に分泌され、前房へ流れて水晶体や角膜に酸素や栄養を与え、前房隅角(ぐうかく)より出て静脈に戻ります。

ほとんどの緑内障は、前房隅角に問題があり、房水が流出しにくくなって眼圧が上昇します。先天的緑内障も、前房隅角に生まれ付きの形成異常があるために、前房水を静脈へ流出する機能が悪くなり、眼圧が上昇します。乳児期の目の組織は軟らかいため、眼圧に耐えられずに眼球が引き伸ばされ、特に角膜が大きくなって黒目の部分が大きくなります。ちょうど牛の目のようになるので、牛眼と名付けられています。

新生児で角膜が10.5〜11ミリ以上、6カ月で11.5ミリ以上、1歳で12〜12.5ミリ以上ある場合は、この先天的緑内障が疑われます。

症状としては、黒目が大きく、やや前方に突き出し、時に黒目が白く濁っていることもあります。光が当たっていない場所でも、まぶしがってまばたきが増えたり、涙を流したり、まぶたがけいれんしたりすることもあります。

多くは両目に起こりますが、その程度は左右で違うことが多くみられます。片目にだけ発症した場合は、もう一方の正常な目との比較で、早期に発見されやすいとされています。白目も引き伸ばされて薄くなり、青色を帯びていることもあります。

ちょっとした打撲で眼球が破裂しやすいために、失明することもあります。また、全体に眼球が大きくなるため、多くは近視があります。

3歳を超えると眼球が発達し、ある程度の眼圧に耐えられるようになるため、角膜が拡大することはなくなります。従って、視力低下で見付けることが多く、発見が遅れ予後不良となりやすい傾向があります。放置すれば、視神経の圧迫により失明します。

先天性緑内障の検査と診断と治療

新生児で目付きがおかしい、光を嫌がる、涙が多い、まばたきが多いなどの症状がみられたら、すぐに眼科を受診し、適切な治療を受けます。

医師は、眼圧検査、隅角検査、視神経乳頭陥凹(かんおう)検査、角膜径検査などを行い、診断します。乳幼児の検査では催眠が必要です。

診断が確定すれば、薬物療法のみで眼圧のコントロールができるものは極めて少ないため、原則として手術療法が行われます。手術方法は隅角切開術が代表的で、通常、全身麻酔をして、房水の流出が悪くなっている隅角を切り開いて、房水の流出の改善を図ります。これでも眼圧が下がらない場合は、ほかの手術方法も行われます。

しかし、まだ視機能が十分に育っていない乳幼児に視力の問題があると、手術が成功して眼圧が正常に戻っても、視力がよくならいこともありますので、弱視の治療や予防も大切になります。

🇮🇸先天網膜分離症

網膜中央の黄斑が変性し、時には網膜周辺部の分離を伴う先天性の眼疾

先天網膜分離症とは、眼球内部の網膜中央にある黄斑(おうはん)に進行性の変性がみられ、時には網膜周辺部の外層と内層への分離を伴う先天性の眼疾。若年網膜分離症、X染色体若年網膜分離症とも呼ばれます。

黄斑は、光を感じる神経の膜である網膜の中央に位置し、物を見るために最も敏感な部分であるとともに、色を識別する細胞のほとんどが集まっている部分。網膜の中でひときわ黄色く観察されるため、昔から黄斑と呼ばれてきました。この黄斑に変性がみられると、視力に低下を来します。また、黄斑の中心部には中心窩(か)という部分があり、ここに変性がみられると、視力の低下がさらに深刻になります。

一方、網膜は10層の組織から構成されていて、外側から順に網膜色素上皮層、視細胞層、外境界膜、外顆粒(かりゅう)層、外網状層、内顆粒層、内網状層、神経節細胞層、神経線維(繊維)層、内境界膜となっています。その網膜の層の細胞接着が弱く、内部が神経節細胞層と神経線維層レベル、あるいは外網状層と内顆粒層レベルで2層に分離するのが、網膜分離に相当します。

先天網膜分離症は典型的なX染色体連鎖性劣性遺伝の疾患で、もっぱら男性が発症します。推定有病率は、5000人から2万5000人に1人。原因遺伝子はX染色体の短腕末端に局在するRS1(XLRS1)遺伝子で、網膜の発生、分化時の細胞接着などに関与すると見なされています

出生時に基本な病変がほぼ完成している先天奇形で、1~5歳ころに視力低下によって疾患が見付かります。ほとんどの場合に、両眼に発症します。

黄斑の進行性の変性によって、見ようとする物の中心部分がぼやけたりして視力が徐々に低下してゆき、20歳ころには0・1程度になっているのが一般的で、矯正視力は平均的には0・2~0・4。青壮年以後には、黄斑に緩やかな委縮性変化が加わってきます。

時に網膜の周辺部が外層と内層に分離した場合には、網膜内部の変化に加えて 、硝子体(しょうしたい)との界面にさまざまな変化をみます。網膜の血管が切れてしまう場合には、硝子体出血が起こることもあります。また、網膜がその下にある脈絡膜からはがれる網膜剥離(はくり)を合併することもあります。

硝子体出血、網膜剥離、増殖性硝子体網膜症を合併しなければ、視機能が大幅に低下することはありません。進行は緩やかですが、網膜の周辺部が分離した場合には、網膜の内部で神経細胞の連結が断裂したり、神経接続が悪くなっているので、全体的に視機能は落ちて、視野異常、斜視、眼振、夜盲を伴うこともあります。網膜の中心近くまで分離が進むと、まれに失明も認められます。

先天網膜分離症の検査と診断と治療

眼科の医師による診断では、両眼対称性であること、進行性であること、家族にかかった人がいることなどが重要な手掛かりになります。診断の確定には眼底検査と網膜電図検査も大切で、眼底検査を行うと両眼の黄斑部から周辺部にかけて異常所見を見付けることができます。ほかの疾患と鑑別が困難な場合には、確定診断の目的で遺伝子診断を実施します。

眼科の医師による治療では、通常、経過観察します。網膜の周辺部が2層に分離した場合には、網膜の内部で神経細胞の連結が断裂していますので、機能の回復は望めません。しかし、機能の回復が望めない反面、網膜剥離などを起こさない限り進行は遅いので、積極的に手術をすることはまずありません。手術によって悪化させる場合があるからです。

網膜剥離を合併している場合には、手術により網膜とその下にある脈絡膜を連結します。手術によって、多くの網膜剥離は元の位置に戻す網膜復位が可能ですが、一度の手術で網膜が復位しないために、複数回の手術を必要とすることもあります。

手術後の視力に関しては、網膜剥離が発生から間もない状態であり、はがれている範囲も小さい場合は、手術も比較的簡単で、見え方も元通りに回復する可能性が高いといえます。物を見る中心部分の黄斑がはがれていない場合には、手術前と同程度にまで回復する場合もあります。黄斑がはがれてしまっていた場合には、元通りの視力に戻ることは難しくなります。

硝子体出血を合併している場合、出血が軽いものなら自然に吸収されることもありますが、出血がひどい場合や硝子体に濁りが起こると、視力障害が起こる場合があります。この場合の治療は、止血剤や血管強化剤などの投与が行われたり、レーザー光での凝固術が行われます。レーザー光凝固術は、出血部の網膜を焼き固めて、網膜の血流をスムーズにし、出血の吸収と再出血を防止させるために有効です。

それでも出血の吸収傾向がみられない時には、硝子体切除術を行ない、出血で濁った硝子体を取り除いて、視力回復を試みます。硝子体切除術は、まず角膜の周辺から特殊な器具を挿入し、目の奥にたまっている血液や濁った組織、またゼリーのような硝子体も切除、吸引します。硝子体は眼球の丸みを保つために必要な組織ですから、切除すると同時に、代わりの液体やガスを注入します。

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...