2022/08/03

🇦🇩パンナー病(上腕骨小頭骨端症)

5歳~10歳代前半にみられ、肘の軽度の痛みと可動域の制限を起こす疾患

パンナー病とは、肘(ひじ)の軽度の痛みと可動域の制限を起こす疾患。上腕骨小頭骨端(こったん)症とも呼ばれます。

1927年に、パンナーが初めて報告しました。5歳ころ~10歳代前半に発症しますが、非常に珍しい疾患です。男子に圧倒的に多く、少年野球をしている子供では右側に発生することが多いことから、スポーツによる使いすぎや外傷も関係するものと考えられています。

障害が起こるのは、肘の外側にある上腕骨小頭と呼ばれる部位で、その部位の成長軟骨の中心部に当たる骨端核が損傷されます。小児の旺盛(おうせい)な修復能力が期待できる骨端症の一つで、骨の両端にある成長軟骨が損傷する骨端症は経過良好な心配のない疾患です。パンナー病の場合も、骨端核の損傷が一定のところまで進むと途中で修復に転じて、1~3年の経過でほぼ障害なく自然治癒します。

整形外科の医師による診断では、骨端核が次第に損傷されていく特徴的なX線像が認められます。損傷が進んでいる際には肘の痛みが強いこともありますが、局所の安静などの対症療法で改善します。

パンナー病は経過良好で心配のない疾患ですが、肘の離断性骨軟骨炎などの疾患と区別することが大切になります。肘の離断性骨軟骨炎は、上腕骨小頭の骨軟骨が壊死(えし)する疾患で、特に小児期、野球のピッチャーなどが肘を酷使すると発生するため、野球肘とも呼ばれています。壊死を起こした骨軟骨片が肘の関節面から遊離して関節遊離体となると、関節炎を引き起こしたり、関節運動障害の原因となります。

この離断性骨軟骨炎はパンナー病と異なり、必ず治るとは限りません。局所の安静でも改善しない場合には、遊離しかかっている骨片を固定したり、摘出したりする手術的治療が必要となり、医師による正確な診断と対処が必要になります。

🇲🇨晩発月経

一般的な年齢より遅く、15歳以上18歳未満で初めての月経を迎える状態

晩発(ばんぱつ)月経とは、一般的な開始年齢より遅れて、15歳以上18歳未満で初めての月経である初潮を迎える状態。遅発(ちぱつ)月経とも呼ばれます。

月経は、ホルモン分泌の調整をする脳の視床下部と脳下垂体が卵巣を刺激し、それによって卵巣から分泌される女性ホルモンが子宮に働き掛けて起こる出血です。

女児が初めての月経である初潮を迎える時期にはそれぞれ個人差がありますが、一般的には、12歳が平均的な年齢とされ、14歳までにはほとんどの女児が月経を経験しています。

しかし、晩発月経の場合は、その平均的な年齢よりも遅れて月経が始まることになります。そして、18歳になっても月経が始まらない場合は、原発性無月経と呼ばれます。

15歳以上になっても初潮が起きないという場合は、乳房の発育に加えて恥毛や腋毛(えきもう)の発毛など、思春期に起こるほかの二次性徴も遅いのが普通です。12〜13歳になっても乳房の発育が始まらない、14歳になっても恥毛が発毛しない、そして晩発月経であるという場合は、遅発思春期(思春期遅発症)と呼ばれます。

晩発月経の原因には、さまざまなものが考えられます。体質が関係しているために、明白な原因がなく、ただ初潮が遅れているだけというような場合は、特に大きな問題はないといえるでしょう。

治療が必要になる原因には、視床下部や脳下垂体など中枢性の異常があり、性腺(せん)刺激ホルモンの分泌が弱く、卵巣からの女性ホルモンの分泌が年齢に応じて増加しないために、月経が起こりません。

また、生まれ付きの遺伝的なものとして、形態異常や染色体異常があると、月経が起こりません。

このうち形態異常には、膣(ちつ)閉鎖または処女膜閉鎖があります。膣や膣の入り口が閉鎖しているために、実際には月経があるのに、外へ流れ出てこないために、晩発月経と思われているものです。この場合は、脳下垂体や卵巣機能は正常のことが多く、女性ホルモン分泌は正常で二次性徴も認められて乳房などは発達しており、周期的な下腹部痛が繰り返されるのが特徴です。

そのほか、卵巣や子宮が先天的になかったり、発育が不完全の場合には、月経が起こりません。

染色体異常としては、ターナー症候群、精巣性女性化症候群、副腎(ふくじん)性器症候群などがあり、甲状腺機能低下症などの疾患が原因のこともあります。

卵巣形成障害や染色体異常が原因の場合は、乳房の発育、恥毛や腋毛の発毛など、思春期に起こる二次性徴の出現がみられないことが特徴的です。

そのほか、無理なダイエットによるホルモンバランスの乱れ、激しいスポーツによるホルモンバランスの乱れが原因のこともあります。

晩発月経の場合は、結局18歳までに初潮を迎えることがなく、18歳を超えても月経の経験がない原発性無月経へと移行してしまうということが、少なくありません。そのために、晩発月経になる原因は、必然的に原発性無月経の原因と同じになります。

いずれにしても、15歳過ぎても初潮がない場合は、原発性無月経になる可能性がありますから、早めに婦人科、産婦人科、思春期外来を受診することが勧められます。

晩発月経の検査と診断と治療

婦人科、産婦人科、思春期外来の医師による診断では、まずは問診によって、無月経や遺伝的疾患の家族歴、内科的疾患の有無、薬剤服用の有無を確認します。また、基礎体温を測り、排卵の有無も確認します。

問診、視診、内診などで、子宮や腟の存在の有無、二次性徴の発現の有無を調べた後、血液検査、超音波(エコー)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査、腹腔(ふくくう)鏡検査、場合により染色体検査や慢性疾患の検査などを行い、遅発月経の原因を探ります。

婦人科、産婦人科、思春期外来の医師による治療では、原因が体質による単なる遅れだという診断がなされた場合、経過観察のみで特に治療は行いません。

染色体の異常や卵巣の異常が原因の場合は、性ホルモン補充療法により二次性徴の促進と維持を図ります。染色体に異常がない場合は、排卵誘発剤の投与などを行います。

また、膣や処女膜などの閉鎖が原因の場合は、手術療法で閉鎖部の切開を行います。内科的疾患が原因の場合は、その改善を図ります。ダイエットなどが原因の場合は、食生活の見直しやカウンセリングなどを行います。

🇲🇨晩発閉経

一般的な停止年齢より遅れて、55歳以降になって閉経する状態

晩発(ばんぱつ)閉経とは、女性が55歳以降になって閉経する状態。遅発(ちぱつ)閉経とも呼ばれます。

閉経の年齢は個人によって異なりますが、一般的には45~56歳くらい、平均では2012年度で52・2歳、遅い人でも60歳前には閉経に至るといわれています。かつては平均閉経年齢は50歳といわれていましたが、平均寿命や健康寿命が延びているように、平均閉経年齢も延長しています。

そもそも閉経とは、女性が性成熟期の終わりに達し、更年期になって卵巣の活動性が次第に消失し、卵巣における卵胞の消失によって月経が永久に停止することをいい、その時期を閉経期といいます。

女性によっては、一度月経が停止したのに半年後に再開するケースもあるため、無月経になってから1年以上経過したことを目安に閉経と見なされます。

晩発閉経で、55歳以降になって月経が続いているということは、ほかの女性よりも長く女性ホルモンを分泌できる恩恵を受けられるということで、骨粗鬆(こつそしょう)症などになる可能性は低く、一見QOL(生活の質)はよいように思われます。

一方、生殖機能にかかわる女性ホルモンには、乳がんの増殖を促す作用があり、分泌期間が長いと発症しやすくなります。子宮体がんや卵巣がんを発症するリスクも、高まるといわれています。

月経の経血量が多いタイプの女性が、閉経が遅い傾向にあります。特に、子宮の筋肉にできる良性腫瘍(しゅよう)である子宮筋腫(きんしゅ)が原因で経血量が多い女性は、卵巣から出る女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量が多い傾向があり、閉経時期が50歳代半ば以降になることもあります。

子宮筋腫があると、それまで月経トラブルがなかった女性でも、更年期に経血量が増えたり、突然大量出血することもあります。

子宮筋腫などで貧血を伴う場合は、婦人科、産婦人科を受診することが勧められます。単なる晩発閉経の場合は、特に治療の必要はないものの、乳がん、子宮体がん、卵巣がんの危険因子として挙げられているので、少なくとも年1回程度の定期検診は欠かさず受けることが勧められます。

晩発閉経の検査と診断と治療

婦人科、産婦人科の医師による診断では、子宮筋腫が疑われる場合、触診に続いて、超音波(エコー)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査を行って、子宮内部の様子を外から観察し、確定します。

婦人科、産婦人科の医師による治療では、単なる晩発閉経の場合、経過を観察します。

子宮筋腫によって貧血がある場合、薬物療法と摘出手術という2つの方法がありますが、根本的な治療は手術になります。

薬物療法は、ホルモン剤によって、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌を一時的に停止させる方法です。Gn-RH製剤と呼ばれる薬が使われ、月1回注射を打つ方法、1日に2~3回、鼻に噴霧する方法などがあります。これによって、子宮筋腫の重さを半分から3分の2くらいまで縮小させることができます。

しかしながら、この方法では人工的に閉経したのと同じような状態を作るため、更年期障害が現れ、骨粗鬆症のリスクも高めることになります。Gn-RH製剤を使うのは、半年が限度とされています。その後、半年治療を中断すれば、骨も元に戻り、骨粗鬆症のリスクも低下しますが、子宮筋腫もまた元の大きさ近くに戻りますので、根本的な治療にはなりません。最近は、閉経が間近な女性などに対して、補助的な意味合いで使われることも多いようです。

また、子宮に栄養を供給する子宮動脈を人工的に詰まらせ、子宮筋腫を栄養不足にすることで小さくする、子宮動脈塞栓(そくせん)術という治療法があります。X線でモニターしながら、大腿(だいたい)部の動脈から子宮動脈まで細い管を挿入し、詰め物で血管に栓をします。まだ一般的な治療ではなく、一部の施設で試みられている段階です。

手術で子宮筋腫を摘出する場合は、子宮筋腫のみを摘出して子宮を残す方法と、子宮ごと子宮筋腫を摘出する方法とがあります。どの方法を選ぶかは、筋腫の状態、症状の程度などによって決定されます。

手術の方法も、おなかにメスを入れる開腹手術だけではなく、腟(ちつ)から子宮を取る手術や、腹腔(ふくくう)鏡など内視鏡によって開腹せずに行う手術もあります。

🇳🇱反復性肩関節脱臼

外傷性の脱臼に続発して、肩関節の脱臼を繰り返す状態

反復性肩関節脱臼(だっきゅう)とは、初回の脱臼が明らかな外傷であり、再び同じような外傷が起こることによって、肩関節の脱臼を繰り返す状態。

いわゆる肩が外れた状態のことを一般に脱臼と呼びますが、肩関節は肩甲骨と上腕骨との間の関節で、人間の体の中で最も可動域が広く、ある程度の緩みがあるため反復性脱臼が最も多くみられるのが特徴です。

外傷による肩関節の脱臼は、ラグビー、アメリカンフットボール、柔道、相撲、レスリングなどのコンタクトスポーツ時の激しい接触などにより引き起こされることが多く、前下方脱臼がほとんどです。肩関節は一度脱臼を起こすと、その後は脱臼しやすくなり、前下方脱臼では、外転位、外旋位を強制されることによって起こります。

再度の脱臼から反復性肩関節脱臼に移行し、脱臼の回数を増すごとに軽微な外力で起こるようになり、スポーツ活動ばかりでなく、寝返りのような日常動作でも脱臼が起こりやすくなります。

脱臼すると上腕はバネ様固定となり、前下方脱臼では前下方に上腕骨骨頭を触れます。簡単に自分の力で整復できることもあります。

反復性肩関節脱臼の時の症状は、肩関節の痛み、変形、可動域制限が主な症状で、初回の脱臼の症状と同じです。

脱臼する方向によるものの、前下方に脱臼する反復性肩関節脱臼では、気を付けの姿勢から下げた腕を横に上げる外転動作や、下げた腕を外側に回す外旋動作に不安感を持ち、肩関節前方の不安定感があり、同部に圧痛があることが多くみられます。

初回の肩関節脱臼の年齢が若いと、反復性脱臼に移行しやすいとされています。10歳代に初回脱臼したケースでは80~90パーセントが再発するのに対して、20歳以上では60パーセント、40歳以上では10〜15パーセントが再発しています。

若年者は肩関節を包む関節包や関節唇といった軟部組織に柔軟性があるため、次第に関節が硬くなってくる中高年者に比べると、どうしても脱臼を再発しやすくなるのです。また、肩関節が脱臼すると多くの場合、軟部組織がはがれたり切れたりして、安静にしていてもうまく治らないのに、若年者は活動性が高く、初回の脱臼後も切っ掛けとなったスポーツを継続する傾向があり、その過程において繰り返し脱臼するリスクが高いことも原因の一つです。

反復性肩関節脱臼の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、脱臼時には上腕がばね様固定となっており、関節を無理に動かそうとすると痛みと抵抗があります。前下方脱臼時には、前下方に上腕骨骨頭を触れます。X線(レントゲン)検査を行い、脱臼していることと骨折のないことを確認します。

脱臼していない亜脱臼の時には、脱臼の既往があり、前下方に脱臼する反復性肩関節脱臼では、外転する動作、外旋する動作で不安感が増したり、肩関節前方の不安定感や圧痛があることで診断可能です。X線検査では、肩の2方向撮影に加えて、内旋位前後方向撮影などで上腕骨骨頭のへこんだ状態などをみたり、関節造影検査(アルトログラフィー)やCT(コンピューター断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像)検査で関節唇などの損傷の程度を診断します。

整形外科の医師による治療では、脱臼した骨を素手で元の位置に戻す徒手整復を行うと、とりあえずは普通に使えるようになります。しかし、その後もスポーツ活動あるいは日常生活において脱臼を繰り返し、そのために活動が制限されるようならば、手術が必要です。

手術には、関節鏡視下手術と通常の直視下手術があります。関節鏡視下手術のほうが体に負担がかからず、手術後の痛みが少ないために普及してきています。

いずれの手術でも、はがれたり切れたりした関節包や関節唇などの軟部組織を元の位置に縫い付ける方法や、骨や腱(けん)で補強する方法などがあります。

手術後は、関節や筋肉の運動などの運動療法(リハビリテーション)が大切ですが、手術後約3カ月までは、再脱臼を来すような動作は日常生活でも避けることが必要で、肩甲骨の線よりも後ろで手を使わないことです。物を取る際は、体を回して体の前で取るようにします。後ろに手をついて起き上がったり、ブラジャーのホックを後ろでかけたりしないようにします。

ラグビー、柔道などのコンタクトスポーツへの復帰までには、約6カ月が必要です。

🇬🇱反復性耳下腺炎

耳の下にある耳下腺がはれて、痛みが起こることを繰り返す疾患

反復性耳下腺(じかせん)炎とは、唾液(だえき)腺の一つで、耳の下にある耳下腺がはれて、痛みが起こる疾患。おたふく風邪とも呼ばれる流行性耳下腺炎とは異なり、耳下腺が繰り返しはれます。

普通、片方の耳下腺だけがはれ、もう片方の耳下腺や顎下(がくか)腺、舌下(ぜっか)腺など、ほかの唾液腺がはれることはありません。発熱はなく、はれは2~3日でひいてきます。痛みはそれほど強くありません。まれに、両方の耳下腺がはれたり、顎(あご)の下にある顎下腺がはれることもあります。

5~10歳の男子に多くみられ、数カ月から数年置きに耳下腺が繰り返しはれ、回数は一定していません。

反復性耳下腺炎の原因は、現在のところはっきりとはわかっていません。耳下腺の先天性異常、耳下腺の中で作られた唾液の停滞、アレルギー反応、ウイルス感染が関与していると推定されています。 まれに、自己免疫の異常によって発症する自己免疫疾患であるシェーグレン症候群などと関係していることもあります。

耳下腺がはれる疾患としては流行性耳下腺炎が最も多いのですが、2番目に反復性耳下腺炎が多く、初めて発症して片方のみの耳下腺がはれた場合には、流行性耳下腺炎と区別ができないことが往々にしてあります。

ほかの人に移ることはありませんので登校禁止にはなりませんが、初回は流行性耳下腺炎と見分けが付かないめ、学校は休んで様子をみることになります。初回以降に生じた時は血液検査をして、流行性耳下腺炎の抗体があることがわかれば、次から学校を休む必要はありません。

何度も反復性耳下腺炎を繰り返す場合は、耳鼻咽喉(いんこう)科、ないし小児科、内科を受診するとよいでしょう。

反復性耳下腺炎の検査と診断と治療

耳鼻咽喉科、小児科、内科の医師による診断では、問診や視診で、耳下のはれなど特有の症状がないか確認します。しかし、流行性耳下腺炎と症状が非常に似ているため、初診では判断できない場合も多く、血液検査が非常に有効になります。

血液検査では、血沈、CRP(C反応性蛋白〔たんぱく〕)、アミラーゼ、LDH(乳酸脱水素酵素)などの値を調べることで、ほかの同様の症状が現れる疾患との区別ができます。

耳鼻咽喉科、小児科、内科の医師による治療では、反復性耳下腺炎に特別有効な治療法がないため、痛みが強い場合は痛み止めを用います。発熱がある場合、はれに熱感がある場合には、細菌感染合併を考えて抗生剤(抗生物質)を投与することがあります。

数年間にわたり何回も繰り返しますが、ほとんどが学童期で自然に治癒します。

家庭での注意としては、唾液分泌を促す酸っぱい食品は痛みの原因になるので避け、硬い食品、塩辛い食品も避けます。入浴はかまいません。

🇷🇸膿疱性乾癬

乾癬の一種で、皮膚の表面に膿を持ち、発熱などの症状も現れる皮膚疾患

膿疱性乾癬(のうほうせいかんせん)とは、乾癬と呼ばれる皮膚疾患の中で、膿疱(膿〔うみ〕)が数多く皮膚の表面に現れる疾患。

膿疱性乾癬には、症状が手足などの体の一部に限定して現れるものや、症状が全身に現れるものがあります。後者は、汎発(はんぱつ)性膿疱性乾癬と呼ばれ、多くは重症化します。

汎発性膿疱性乾癬は、厚生労働省が認める特定疾患に認定されています。まれな疾患で、日本での発症者は推定で約1500人。

膿疱性乾癬は、感染症などが関係して発症すると考えられていますが、原因の詳細はわかっていません。発症者の中には扁桃(へんとう)炎を合併する人がおり、その扁桃を切除すると症状が改善されるので、細菌感染と関係があると考えられていますが、まだはっきりとしてはいません。

また、長い間ステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン剤)を使用してきた乾癬の発症者が、急に使用をやめることにより膿疱性乾癬の症状が出て悪化する場合があるため、ステロイド剤の中止が誘因と考えられる場合もあります。

妊娠を切っ掛けに膿疱を持った地図状の赤い発疹(はっしん)が全身に生じる疱疹状膿痂疹(ほうしんじょうのうかしん)は、膿疱性乾癬の一つのタイプと考えられています。

初期症状として、皮膚がひりひりしたり、焼けるような痛みが発生し、全身の各所に、にきびのような赤い発疹ができます。2~3日のうちに急速に大きくなり、それとともに赤い発疹の回りを囲むように白色または黄色の膿疱が出て、中心は茶褐色の色が付いた状態となっていきます。

発疹とともに高熱を伴い、全身のむくみ、関節痛が起こります。全身がだるく、口の中が荒れ、それらが合わさって食欲が低下するため、低栄養となることもあります。

皮膚に膿疱が多発すると、外部からの病原体から身を守る機能が低下し、全身の水分バランスが崩れ、さまざまな器官に影響を及ぼします。

長期間にわたって皮膚に膿疱が発生すると、高齢の発症者は心臓や腎臓(じんぞう)などに負担がかかり、命にかかわる場合もあります。

症状が現れた際は、速やかに皮膚科、ないし皮膚泌尿器科の専門医がいる医療機関を受診することが勧められます。初めて発症した際は、入院して治療することが望ましいと考えられます。

膿疱性乾癬の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、特徴的な発疹と経過から判断します。診断の確定のために、発疹の一部を切って顕微鏡で調べる組織検査を行います。血液検査により、炎症の程度や内臓に影響があるかどうかを判断します。また、細菌感染による膿疱との区別をするために、細菌検査も行います。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、発症者の年齢やほかの疾患の有無、症状の進行度、使用する薬剤などを総合的に判断して治療法を選択します。

全身管理としては、高熱に対しては解熱剤を投与し、水分バランスを調整するために点滴を行い、皮膚の機能を補うために軟こうを使用します。膿疱が多量に出る場合は、肌を保護するためにガーゼを当て包帯をします。

一種の免疫反応の異常により生じるとされる乾癬そのものに対しては、外用薬、内服薬、光線療法、注射薬などで改善を図ります。

外用薬には、炎症を抑制するステロイド剤が多く用いられています。そのほか、皮膚の細胞が増殖するのを阻害する活性型ビタミンD3外用薬も、ステロイド剤ほどの速効性はありませんが、副作用が軽微なので併せて使用します。

内服薬としては、ビタミンA類似物質であるエトレチナート(チガソン)や、免疫抑制薬であるシクロスポリン(ネオーラル)が用いられ、一定の効果が得られています。

光線療法は、紫外線の増感剤であるメトキサレン(オクソラレン)を皮疹部に塗り、長波長紫外線UVAを当てる治療で、PUVA(プーバ)療法といいます。乾癬が全身にある場合、入院して内服のメトキサレンを使用してPUVA療法を行う場合もあります。紫外線を当てることで、異常な免疫反応が抑制され、効果が得られると考えられています。

近年、PUVA療法に代わる光線療法として、特定の紫外線波長を利用したナローバンドUVB療法も利用されるようになってきています。

注射薬は、生物が作り出す蛋白(たんぱく)質をもとに作られた生物学的製剤という新しいタイプの薬を、皮下注射や点滴で投与し、体の免疫機能などにかかわる物質で、過剰に増えると乾癬の症状を引き起こすサイトカインの働きを弱め、乾癬の皮膚症状の改善を図ります。

現在日本では、腫瘍壊死(しゅようえし)因子αというサイトカインを抑えるインフリキシマブ(レミケード)という生物学的製剤を用いることができます。しかし、生物学的製剤もすべての発症者に必ず効果があるとはいえず、副作用が現れることもあり、長期的に投与した場合の影響については不明です。

外用薬、内服薬、光線療法、注射薬のいずれの治療法も一長一短があるため、治療により得られる効果と副作用のリスクの兼ね合いを考え、うまく組み合わせて症状をコントロールすることが大切です。

🇦🇹嚢胞性腫瘍(卵巣嚢腫)

卵巣に液体成分の入った袋のようなものができ、はれた状態

嚢胞性腫瘍(のうほうせいしゅよう)とは、卵子や女性ホルモンを作っている卵巣に液体成分の入った袋のようなものができ、卵巣の一部にはれが生じた状態。卵巣嚢腫とも呼ばれます。

この嚢胞性腫瘍の多くは、子宮の左右両側に一つずつある卵巣の片側に発生しますが、両側に発生することもあります。通常は直径2〜3cm程度の大きさの卵巣は、妊娠、受精に必要な卵胞を抱えている臓器で、女性ホルモンを作っているため、多種類の腫瘍ができやすい臓器です。

嚢胞性腫瘍にはいろいろなタイプがあり、大きさもピンポン玉大の小さなものからグレープフルーツ大以上のものまでさまざまです。ほとんどの嚢胞性腫瘍は小さなもので、症状もありません。かなり大きくなってきて初めて、腹部の膨隆、あるいは腹部に腫瘤(しゅりゅう)を触れるようになってきます。また、時には下腹部に圧迫感、強い痛みを感じることもあります。

しかしながら、ほとんどの嚢胞性腫瘍は良性で、がんに代表される悪性腫瘍ではありません。ごくまれに、悪性の卵巣がんであることがあり、嚢腫が茎を持って大きくなる場合には、時として何らかの原因で捻転(ねんてん)を起こすことがあります。このような場合には、激しい痛み、吐き気、嘔吐(おうと)などの強い症状を現したり、種類によっては腹水、胸水を伴うこともあり、そのための全身症状を現します。

そのために、嚢胞性腫瘍が見付かった場合には、まず悪いものではないかどうか、治療が必要なものであるかどうかなどをチェックする必要があります。

嚢胞性腫瘍の主なタイプとして、機能性嚢腫、単純性嚢腫、皮様嚢腫、子宮内膜症性嚢腫があります。

機能性嚢腫は、一時的に排卵日ごろにはれて、自然に消えてなくなるもの。女性なら誰でも、排卵日ごろには卵子を入れる袋である卵胞が大きくなり、卵胞が破裂して卵子が飛び出すことによって、排卵が起こります。まれに、卵胞が大きくなっても卵子が飛び出さず、排卵が起こらないことがあります。大きくなった卵胞がしばらく残っている状態が、この機能性嚢腫です。普通、次の月経のころには小さくなります。消失が遅れる場合でも、1〜3カ月以内には消えてなくなります。

単純性嚢腫は、若い女性に非常によくみられる良性のもの。丸い袋のように見える腫瘍で、内部には隔壁や腫瘍の固まりが全くなく、液体成分だけです。直径5~6cmくらいまでの小さなもので症状がなければ、経過観察をするだけでもかまいません。ただし、この単純性嚢腫のようにみえても非常にまれに悪性部分が隠れている場合があるので、定期的な検査は必要です。

皮様嚢腫は、20〜30歳代によくみられ、内部に皮脂、毛髪、歯、軟骨などを含んだ良性のもの。小さいものなら無症状ですが、大きくなると下腹部痛や不快感などが生じます。普通は次第に大きくなるので、経過観察をしたとしても最終的に手術が必要になることが多い腫瘍です。左右の卵巣にできたり、再発することがよくあり、一部ががん化することもあるので、手術しない場合でも定期的な検診は必要です。

子宮内膜症性嚢腫は、子宮内膜症が原因で卵巣にできるもの。子宮内膜症というのは、子宮の内膜が子宮の内側以外の部分にできる疾患。卵巣に子宮内膜症ができると、月経のたびに卵巣の中でも出血が起こります。そのために、卵巣の中にドロドロの茶褐色の血液がたまるので、別名チョコレート嚢腫(嚢胞)とも呼ばれています。月経は毎月起こるので、チョコレート嚢腫も少しずつ大きくなります。大きくなった嚢腫によって下腹部痛、特に性交時の下腹部痛や月経時の下腹部痛が起こります。

嚢胞性腫瘍の検査と診断と治療

嚢胞性腫瘍(卵巣嚢腫)がほかの婦人科腫瘍と異なるところは、特徴的な初発症状が乏しいことです。早期発見が完全な治療を受けるためには必要なのですが、なかなか症状が出にくく、大量の腹水がたまってから、慌てて婦人科を受診するケースが少なくありません。

従って、何らかの下腹部痛、不正出血、下り物の増加、腹部膨満感など、ふだんとは異なる症状を感じた場合には、この嚢胞性腫瘍を念頭に入れ、早期に婦人科を受診して適切な検査を受けることが必要です。

嚢胞性腫瘍は、産婦人科の通常検査である内診や超音波検査などによって見付かります。詳しく超音波検査をすることによって、腫瘍の位置、腫瘍の大きさ、腫瘍内部が水だけなのか固まり部分があるのか、腫瘍の中が壁で区切られているのか、腫瘍の中に血液や毛髪、軟骨などが入っていそうかどうかなど、かなりのことがわかります。

少しでも悪性腫瘍の疑いがある場合には、血液をとってCA125などいくつかの腫瘍マーカーの値を測定します。ただし、卵巣がんの種類によっては、腫瘍マーカーが高くならないことがあります。逆に、卵巣がんでなくても、CA125などが高くなることもあります。

内診や超音波検査、血液検査だけでは良性か悪性かの判定が難しい場合、さらにCTやMRI検査を行います。実際には、超音波検査で判定が困難な場合は詳しい検査をしても区別が付かないことが多いので、ある程度の大きさがあって全く良性腫瘍とはいい切れない場合には、手術療法を行います。

嚢胞性腫瘍が良性と判断される場合は、一般的に、腹腔(ふくくう)鏡を使って腫瘍部分だけを取り去ることができます。全身麻酔をして、へその下あるいは上に非常に小さな皮膚切開をし、腹の中を観察するための内視鏡カメラを挿入します。1cm以下の切開をさらに数カ所追加して、そこから遠隔操作ができる手術機械を挿入して手術を行います。腹腔鏡を使って手術をした場合には、術後の腹部の傷はほとんど目立ちません。

腹腔鏡手術が困難なタイプの嚢胞性腫瘍、あるいは悪性が疑われる場合は、通常の開腹による手術を行います。

一般的に、嚢胞性腫瘍の手術は、婦人科の手術の中でもかなり簡単な部類に入ります。ただし、子宮内膜症性嚢腫に限っては、その後の妊娠に対する影響がありますので、慎重に対応する必要があります。

ごくまれに、がんのような悪性の経過をたどるものがありますが、がんが卵巣内にとどまっている場合は、がんのできている卵巣と卵管だけを切除するだけでよいこともあります。がんが卵巣外にも及んでいる場合は、両側の卵巣と卵管、子宮、胃の下部から垂れて腸の前面を覆う薄いである大網(だいもう)、リンパ節などを広範に摘出しなければなりません。

大網は最も卵巣がんが転移しやすい部位とされ、早期がんの場合でも切除することがあります。卵巣をすべて摘出してしまうと、女性ホルモンの分泌がなくなるので、ホルモンのバランスが崩れて、自律神経のバランスも崩れ、更年期障害のような症状が現れます。

がんが卵巣外に広く散らばっている場合には、手術の後、抗がん剤による強力な化学療法が必要となります。抗がん剤はがんの種類によってかなり有効で、残ったがんが縮小したり、消失することもあります。この場合は、もう一度手術を行い、残った腫瘍を完全に摘出したり、化学療法を中止する時期を決定します。

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...