2022/08/03

🇪🇪軟骨石灰化症(偽痛風)

高齢者に多発性の関節痛を起こし、痛風とよく似た疾患

軟骨石灰化症とは、多発性の関節痛を起こし、痛風とよく似た疾患。偽(ぎ)痛風とも呼ばれます。

高齢者では、特に風邪などの切っ掛けもなく、急にあちこちの関節が痛み出すことを比較的よく経験します。血液検査でも関節リウマチや痛風の反応は異常がなく、医師が診断に苦しむことがあります。このような疾患の中に、軟骨石灰化症があります。

この軟骨石灰化症は、関節液中にピロリン酸カルシウム(CPPD)結晶という結晶が沈殿することによって起こります。よく似た痛風は、血中の尿酸が増加して高尿酸血症となり、関節液内に尿酸ナトリウム結晶が生じることによって起こります。

ピロリン酸カルシウムの結晶ができる原因としては、軟骨変性が重要です。軟骨内の結晶は関節破壊により関節腔(くう)内へ脱落し、関節腔内では白血球、単球などがこの結晶をきれいに掃除しようとします。その時に、細胞からはさまざまな化学物質が放出されて、炎症はいよいよ強くなります。痛風発作でも同様に、白血球などが尿酸の結晶を掃除しようとして炎症が起こります。

軟骨石灰化症の発症年齢は、痛風に比べて60~80歳の高齢者での発症が多いと見なされています。痛みの起こりやすい部位は膝(ひざ)の関節が最も多く、次いで手、足、股(また)、肘(ひじ)、肩の関節など比較的大きな関節で、男女差はありません。痛風が男性に圧倒的に多くみられ、痛みの部位も足首や足の親指の付け根に起こりやすいのと対照的。

軟骨石灰化症の発作は数日、ないしそれ以上持続し、1カ所から数箇所の関節炎が特徴です。痛風発作のように突然出現して自然に軽快しますが、痛風より痛みは軽度。急性発作時には、関節腫脹(しゅちょう)、局所発熱、痛みがあり、関節の動きが悪くなります。腕や足の関節に慢性の痛みやこわばりが長引くこともあり、関節リウマチと混同されることもあります。

軟骨石灰化症の検査と診断と治療

医師による診断では、膝関節痛などに多発性関節炎の所見がみられ、X線検査で軟骨石灰化症の存在が認められ、関節腔内に針を刺し関節液を吸引してピロリン酸カルシウム結晶を調べることにより、総合的に判断されます。軟骨石灰化症(偽痛風)では、血液中の尿酸値は基準範囲内ですが、痛風でも発作時の尿酸値は正常のことが多くあります。

軟骨石灰化症のほかにも、多発性関節炎は慢性関節リウマチ、リウマチ性筋痛症、膠原(こうげん)病、乾癬(かんせん)性関節炎、サルコイド関節炎、悪性腫瘍(しゅよう)に伴う関節炎、再発性多発軟骨炎、感染症に伴う関節炎、変形性関節症などいろいろな疾患で起こり、診断が困難なことも多くあります。長期間の経過観察により診断が明らかになる場合が多いのですが、それでも診断ができないケースもあります。

治療法はほとんどが対症療法で、完治につながるような決定的な治療法はありません。炎症をコントロールすることで痛みを抑えるために、ステロイド剤や非ステロイド系抗炎症剤などが用いられます。治療により急性発作を止めて、次の発作を予防することが可能ですが、関節へのダメージを防ぐことはできません。

ステロイド剤などで痛みが抑えられない場合は、内視鏡で関節内を洗浄する手術も考慮されます。

発作のない時には、通常の変形性関節症のような病像をとりますが、多くの発症者では膝の変形と慢性的な運動痛、動作の開始時の痛みで特徴とされる変形性関節症に移行します。

日常での注意点としては、関節への負担をかけないように、体重を増やさないことが基本で、 適度な運動をして筋肉をつけることも大切です。太ももの筋肉を鍛えるなら、膝を伸ばしたまま足を上げたり、片足立ちしたりするなど、家の中でも簡単にできます。

🇱🇹軟骨肉腫

比較的ゆっくり大きくなる骨のがん

軟骨肉腫(にくしゅ)とは、軟骨を作る細胞から生じる悪性腫瘍(しゅよう)、すなわち、がん。骨肉腫についで多い骨のがんに相当します。

 骨肉腫やユーイング肉腫に比べると、かかりやすい年齢は高く、30歳以降の中高年に発症します。原因は不明です。

悪性度の高いものから低いものまであり、低いものでは骨の良性腫瘍である軟骨腫との区別が付かないこともあります。大きくなる速度は比較的ゆっくりで、腫瘍の性格はおとなしいものです。

最初から悪性腫瘍として軟骨肉腫が発生するほか、以前からあった軟骨腫や骨軟骨腫などが、悪性に変化して、軟骨肉腫となることもあります。好発部位は、大腿(だいたい)骨、脛(けい)骨のほか、上腕骨、骨盤、肋骨(ろっこつ)、肩甲骨。

腫瘍が小さい時には痛みを伴わず、比較的ゆっくりとした速度で大きくなるために、痛みを覚えるようになると次第に痛みが増して、鎮痛剤が必要になってきます。以前からあった腫瘤(しゅりゅう)が急速に大きくなり、痛みを伴うようになることもあります。このような時は、良性の骨軟骨腫が悪性に変化した可能性があります。

また、軟骨肉腫では、腫瘍のために骨の強度が弱まり、小さな力で骨折する病的骨折を起こして、急に激痛を感じることもあります。腫瘍が非常に大きくなると、関節の動きが障害されます。

このような症状が現れた際には、がんなどの専門医を直ちに訪れる必要があります。

医師による軟骨肉腫の診断は、単純X線像、骨シンチグラフィー(アイソトープによる画像で腫瘍を見付ける検査)、CT、MRIなどの画像検査と、最終的には、腫瘍の小片を採取して顕微鏡で組織を調べる生検によって診断します。

軟骨肉腫の治療は、手術が主要な治療法となります。普通の軟骨肉腫は比較的悪性の程度が低く、肺などの遠い臓器に遠隔転移することはまれですが、腫瘍が非常に大きくなると、遠隔転移が起こることがあるため、化学療法、放射線療法などは効果が期待できません。

軟骨肉腫の手術には、腫瘍の部分を完全に切除して、人工関節などに置き換える方法、腫瘍のできた骨を腫瘍ごといったん取り出した後に、オートクレーブ(高圧蒸気滅菌器)で処理をして元に戻す方法、自分の骨を移植する方法などがあります。このようなさまざな方法による再建術を用いて、腕や脚を失わないですむような患肢温存手術が行われます。

腫瘍が巨大で、部分的な切除が不可能な場合には、やむを得ず手足の即断術、腕や脚の関節からの離断術が行われます。

悪性度の高い未分化型、特殊型の軟骨肉腫では、手術だけでは転移を防ぎきれない可能性があるので、補助的に、抗がん剤などによる化学治療が行われます。

手術による5年生存率は、60パーセントを超えています。また、軟骨肉腫の治療を開始した時に遠隔転移がない場合には、5年生存率は70パーセント以上となっています。

🇱🇻軟骨無形成症

遺伝子の突然変異で軟骨の形成が不十分になり、低身長を生じる先天性疾患

軟骨無形成症とは、遺伝子の突然変異によって起こる先天性の骨の疾患。難病に認定されています。

手足が短いために背が大きくならない四肢短縮型小人症の一つに数えられ、その中で最も頻度が高く、発症者は1万人から2万5000人に1人といわれています。

代表的症状としては、軟骨の形成が不十分なために、外見的に低身長であることが挙げられます。手や足の長い管状の骨である長管骨において、その成長軟骨の発達が悪いために、成人男子の平均身長が130cm、女性で124cmにしかなりません。

外見的には、頭囲が大きく鼻の部分が低いという共通の特徴があります。また、背骨の湾曲が大きく、尻(しり)の部分が出るというような姿勢になります。指も短く、手の指を伸展すると中指と薬指、または中指と人差し指との間に透き間ができる三尖手(さんせんしゅ)も生じます。

そのほか、腰痛や関節痛などの障害、睡眠時無呼吸や中耳炎などを含む呼吸器関連の合併症、水頭症を始めとする脳神経に関する合併症、腰椎の狭窄(きょうさく)による歩行困難や排泄(はいせつ)障害なども起こります。

新生児、乳幼児においては、筋力が弱い場合が多いために健常者に比べて約半年から1年、首の座りや歩行などの遅れが生じています。小さいうちは関節が軟らかく筋力が弱いため、全体的にグニャグニャした感じでしっかり座ることができません。

この軟骨無形成症によって、直接に知能的な問題が生じるということはありません。ただし、合併症の中耳炎により耳の聞こえが悪くなって、言語能力が遅れる場合があります。鼻の周辺やあごの部分が狭いために睡眠時無呼吸症になりやすく、注意力が散漫になったり、知的な遅れが生じる場合もあります。

青年期以降には、ほとんどに関節痛や腰痛が生じ、時には腰椎の手術が必要となることがあります。あごの骨の発達が悪く、歯並びに影響する場合もあります。

原因は長い間不明とされていましたが、近年、第4染色体に存在する線維芽細胞増殖因子受容体3(FGFR3)という軟骨を形成する遺伝子の異常であることがわかりました。FGFR3は成長軟骨細胞の細胞膜にあり、主に骨が縦に伸びようとする作用を抑制することから、四肢短縮のアンバランスな体形になります。

遺伝様式は常染色体優性遺伝で、この軟骨無形成症を持つ人とそれ以外の人との間では2分の1の確率で、この軟骨無形成症を持つ人同士の場合は4分の3の確率で、子供に遺伝すると見なされています。しかし、約80パーセント以上は健常な両親から生まれており、FGFR3の突然変異が原因となっています。

医師による軟骨無形成症の診断は、多くの場合、特徴的な身体所見やレントゲン検査で確定できます。胎児の段階で見付かることも、まれではありません。胎児が確定診断をするのに小さすぎたり、非典型的な場合には、FGFR3遺伝子を調べることで確認できます。

疾患の原因は明らかになってきましたが、原因となるFGFR3遺伝子を対象とした根本的な治療は、まだ行われる段階には至っておりません。現在行われている治療は、それぞれの年齢段階に応じた問題に対処するための、対症的なものが主流となっています。治療の方法としては、骨延長術や成長ホルモン治療などの方法があります。

骨延長術は、手術で骨切りをして骨折状態を作った上で創外固定器で連結し、骨を作ろうとする自然治癒力を利用して骨を伸ばしていく方法です。成長ホルモン治療は、成長ホルモンを毎日、数年間、自宅で注射する方法です。

一方、重篤な合併症が生じていない場合には、この疾患を受容し、生活の質の向上(QOL)を考えていこうという立場の医師もいます。

🇫🇮軟性下疳

軟性下疳(げかん)は、軟性下疳菌という細菌が起こす性感染症で、生殖器に痛みのある潰瘍(かいよう)ができます。

世界中でよくみられますが、日本では第二次世界大戦の後、非常に少なくなり、今日ではほとんどみられない疾患となりました。

2~7日の潜伏期間の後、性器や肛門(こうもん)付近の皮膚に、紅色で米粒大のはれたおできができ、中に膿(うみ)がたまって破れると、痛みのある潰瘍になります。単発または多発で、容易に出血します。潰瘍が広がって合体することもあります。

少し遅れて、太ももの付け根の鼠径(そけい)リンパ節がはれて大きくなり、皮膚も赤くはれ上がります。痛みが強いので、有痛性横痃(おうげん、よこね)といいます。

軟性下疳には、数種類の抗生物質が有効です。潰瘍には、抗生物質の入った軟こうを用います。

🇸🇪軟性線維腫

摩擦を受ける皮膚に生じる小型の良性腫瘍

軟性線維腫(なんせいせんいしゅ)とは、皮膚に生じる直径1センチ程度の小型の良性腫瘍(しゅよう)。線維性軟疣(なんゆう)とも呼ばれます。

皮膚と同じ肌色、あるいは少し濃い褐色をした、半球状から有茎性の軟らかいはれ物で、あまり目立たないこともあります。わきの下やまぶた、首、胸、鼠径(そけい)部、しり、外陰部などにできやすく、痛みやかゆみは伴いません。かゆみがある場合も軽度です。

この軟性線維腫がさらに巨大になり、皮膚面から垂れ下がるようになったものは懸垂性線維腫です。

わきの下や首、鼠径部など皮膚と皮膚、あるいは衣類やアクセサリーと皮膚がこすれて摩擦を受ける個所で、皮膚の角質が増殖して少し飛び出すために、線維や脂肪や血管で構成された軟性線維腫や懸垂性線維腫ができます。

感染性はなく、皮膚の老化や体質でできるもので、中年以降に多く発生し加齢とともに増えてきますが、早ければ思春期のころから認められます。特に更年期をすぎた女性や、肥満者に好発します。

がん化するなど特に心配な疾患ではありませんが、衣類やアクセサリーでこすれて炎症を起こすことがあります。

目立って外見が悪い、衣類の脱着時に引っ掛かって赤みを帯びヒリヒリとした痛みが生じるという場合は、皮膚科、皮膚泌尿器科、あるいは形成外科、美容外科の医師を受診することが勧められます。ただし、まぶたにできた場合は、眼科を受診したほうがいいでしょう。

軟性線維腫の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、あるいは形成外科、美容外科の医師による診断では、特に検査は行わず、視診を中心に確定します。

ごくまれに、皮膚がんが軟性線維腫のように見えたり、ホルモン障害の予兆として軟性線維腫が生じることもあり、組織の一部を採取して顕微鏡で調べる生検を行うこともあります。

皮膚科、皮膚泌尿器科、あるいは形成外科、美容外科の医師による診断では、塗り薬や食生活の改善で完治させるのは難しいため、一般的には、取り除くための処置を行います。

取り除くための方法はいくつかあり、麻酔シートを張ってから電気メスで焼灼(しょうしゃく)する、-200℃近い超低温の液体窒素で冷凍凝固して小さくした後に電気メスで焼灼する、ハサミやメスなどの道具を使って切除するといった方法が一般的です。軟性線維腫の数が多い場合は、液体窒素療法を何度か繰り返します。

処置に要する時間は場合によりますが、短時間ですむことがほとんどです。処置した場合、1~2週間後に、かさぶたになります。かさぶたはかなり色が濃く、治療後はかなり目立つこともありますが、自然に脱落し、半年くらいすると赤みもひいて、きれいになります。

なお、完ぺきに取り除いたとしても、再発したり別の個所に生じることもあり得ます。

🇳🇴難聴

正常な場合よりも聴力が低下した状態

難聴とは、正常な場合よりも聴力が低下した状態。

難聴は、伝音(でんおん)難聴(伝音性難聴)、感音(かんおん)難聴(感音性難聴)、混合難聴(混合性難聴)の3つに大きく分けられます。

伝音難聴は、音を聴神経へ伝える外耳、中耳、鼓膜に障害がhttps://tn3691.hatenablog.jp/生じたために起こります。空気の振動として耳に入ってくる音が外耳の一部である外耳道や、外耳と中耳の境目にある鼓膜、中耳内にある耳小骨を震わせて振動を伝えていく部分に、障害が生じたために起こります。音が十分に伝わっていかないため、音が鳴っていること自体を把握することが難しい性質を持っています。

通常、伝音難聴による聴力の低下は70デシベルを超えることはなく、これだけで高度難聴になることはありません。例えば、耳栓をしても大きな音は聞こえてしまいますし、どんなに耳に蓋(ふた)をしても全く外部の音が聞こえなくなることはありません。

これは通常の外耳から内耳を通じる経路ではなく、大きな音が直接頭蓋骨(ずがいこつ)を振動させることによって、内耳のリンパ液が振動して有毛細胞という感覚細胞が興奮し、音を知覚することになるからです。

中耳炎などを患った場合に、伝音難聴になりやすいことが知られています。原因となる疾患には、急性中耳炎や慢性中耳炎を始めとする各種の中耳炎や、耳垢栓塞(じこうせんそく)、外耳道閉鎖症、耳管狭窄(きょうさく)症、鼓膜裂傷、耳硬化症、耳の腫瘍(しゅよう)などがあります。

伝音難聴は、音を感じる内耳から聴覚中枢路には異常がなく、聞こえのゆがみなどは起こらないため、原因となる疾患に応じた医学的な治療を受けることにより、聴力を回復させることができます。

もし回復しない場合でも、耳に入る音を大きくできれば聞こえがよくなるため、補聴器の効果が期待できるタイプの難聴です。

一方、感音難聴は、音を感じる内耳から聴覚中枢路にかけての異常による難聴。近年、増加の傾向にあります。

原因不明が約50パーセント。その多くは両耳が同時に障害され、遺伝が関係しているのではないかと考えられています。

原因の明らかな難聴の場合も、その原因はさまざま。ストレプトマイシン、カナマイシン、アスピリン、キニーネなどの薬剤中毒、ダイナマイト、鉄砲、花火などの強く衝撃的な音響、工場、鉱山、ボイラー、電話交換室などでの持続的な機械の騒音、打撲、骨折、むち打ちなどでの頭部外傷、家族性、先天聾(ろう)などの遺伝、老化が原因として挙げられます。

そのほか、内耳炎、おたふく風邪(流行性耳下腺〔せん〕炎)、ヘルペス、はしか(麻疹〔ましん〕)、糖尿病、妊娠、出産なども原因となります。突発性難聴やメニエール病による難聴も、感音難聴に入ります。

感音難聴で困るのは、そのほとんどに適切な治療法がないことです。難聴の程度も強く、補聴器もあまり役立ちません。たとえ音は聞こえても、言葉がはっきり聞こえないので、日常生活に不自由します。しばしば、頑固な耳鳴りに悩まされます。

さらに、混合難聴は、伝音難聴と感音難聴の両方の特徴を併せ持った難聴。多くの老人性難聴は混合難聴ですが、どちらの度合が強いかは個人差が大きいといえます。

また、難聴の度合は一般的に、平均聴力レベルが20デシベルまでを、ささやき声もよく聞こえる正常聴力として、40デシベルまでを、小声が聞きにくい軽度難聴、70デシベルまでを、普通の声が聞きにくい中度難聴、70デシベル以上を、大きな声でも聞きにくい高度難聴、90デシベル以上を、耳元での大きな声でも聞こえない重度難聴、100デシベル以上を、通常の音は聞こえない聾(ろう)に分けます。

難聴の検査と診断と治療

耳鼻咽喉(いんこう)科の医師による診断では、一般的に鼓膜の観察や聴力検査を行ったり、耳管の通り具合を調べます。

例えば、急性中耳炎では、鼓膜を検査し、その色、はれ具合から簡単に診断がつきます。外耳道炎を併発し、外耳道がはれて見えにくい時は、診断がやや難しいことがあります。慢性中耳炎では、鼓膜の穿孔(せんこう)、耳垂れの有無を調べるため、耳垂れの細菌検査、CTを含む耳のX線検査、聴力検査を行います。

耳鼻咽喉科の医師による伝音難聴の治療では、難聴を起こす原因となる疾患に応じた治療を行います。
 例えば、急性中耳炎では、全例にアモキシシリンなどの抗生物質による治療を行います。自然に治癒するか、悪化するかどうかを予測するのが、難しいためです。

アセトアミノフェンや非ステロイド性抗炎症薬は、痛みを和らげます。フェニレフリンが入ったうっ血除去薬も、効果があります。抗ヒスタミン薬は、アレルギーによる中耳炎の場合は有効ですが、風邪による中耳炎には効果はありません。

痛みや熱が激しかったり、長引く場合、また鼓膜のはれがみられる場合には、鼓膜切開を行って、耳垂れを中耳腔(こう)から排出します。鼓膜を切開しても聴力に影響はなく、切開した穴も普通は自然にふさがります。中耳炎を繰り返し起こす場合は、鼓膜を切開して、耳だれを排出する鼓膜チューブを設置する必要があります。

慢性中耳炎では、抗生物質で炎症を抑え、耳垂れを止めます。しかし、鼓膜の穿孔や破壊された中耳はそのまま残ることが多く、また、真珠腫性中耳炎では普通の治療では治りにくいので、手術が必要です。

鼓膜の穿孔をふさぎ、疾患で破壊された、音を鼓膜から内耳に伝える働きをする耳小骨をつなぎ直せば、聴力は改善できます。これを鼓室形成術といい、細かい手術のため手術用の顕微鏡を使って行います。

伝音難聴の中でも、特に症状がひどく、補聴器を用いてもほとんど聞こえないような慢性穿孔性中耳炎の場合には、人口中耳と呼ばれる高感度の補聴器を中耳に植え込む手術も開発されています。

伝音難聴は感音難聴に比べると治療による効果が出やすく、補聴器を使用することによって聞き取りやすくなる傾向も持っています。補聴器で音を大きくすることで、かなり聞こえるようにもなるので、補聴器を使用すれば生活しやすくなります。

耳鼻咽喉科の医師による感音難聴の治療では、早く発見して、難聴の進行を食い止めることが大切となります。しかしながら、そのための適切な治療法も薬物も、現在ではありません。

早く原因を避けるのが、唯一の対策です。難聴を起こしやすい薬は、できるだけ避けます。使用しなければならない際は、できるだけ少量を聴力検査をしながら用います。抗生物質の1つであるストレプトマイシンのうちでも、ダイハイドロストレプトマイシンは難聴を起こすため、現在は硫酸ストレプトマイシンが用いられますが、めまいの副作用があります。

騒音の強い職場で働く人の場合は、予防用の耳栓をつけます。携帯音楽プレーヤーなどにより、大きい音を長時間、聞くことも危険です。遺伝性素因のある人同士の結婚は控えます。

🇩🇰難病

難病とは、いわゆる「不治の病」に対して、社会通念として用いられてきた言葉です。医学的に、明確に定義された病気の名称ではありません。その時代ごとの医療水準や社会事情によって、難病であるか否かは変化します。

かつて日本人の生活が貧しかった時代においては、赤痢、コレラ、結核などの伝染病は、不治の病でした。当時は有効な治療法もなく、多くの人命が奪われたという点で、赤痢などの疾病は、紛れもなく難病でした。

その後、生活が豊かになり、公衆衛生の向上、医学の進歩および保健・医療の充実とともに、これらの伝染病は治療法が確立され、不治の病ではなくなりました。

しかし、治療がむずかしく、慢性の経過をたどる疾病も、いまだ存在し、難病と呼ばれています。

難病については、昭和47年の難病対策要綱に、(1)原因不明、治療方針未確定であり、かつ、後遺症を残す恐れが少なくない疾病、(2)経過が慢性にわたり、単に経済的な問題のみならず介護等に著しく人手を要するために家族の負担が重く、また精神的にも負担の大きい疾病、と定義されています。

難病のうち、症例が少ないことから、全国的規模での研究が必要な疾患は、「特定疾患」と定義されています。平成20年現在、特定疾患は123疾患あり、うち45疾患の医療費は公費負担助成の対象となっています。

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...