2022/08/04

🇦🇷腎臓がん

細胞にできる腎細胞がんと、尿の通路にできる腎盂がん

腎臓(じんぞう)がんとは、血液から不要物をこし取って尿を作る器官である腎臓に発生するがん。

成人にも幼小児にも腎臓のがんはできますが、幼小児にできる腎臓のがんはウイルムス腫瘍(しゅよう)といい、成人の腎臓がんと全く違う性質のものです。

成人の腎臓にできるがんには、腎臓の細胞にできる腎細胞がんと、腎臓の尿の通路にできる腎盂がんの2つがあります。

がん全体の中で、腎臓がんが占める割合は1パーセント以下です。腎臓がんの中で、腎細胞がんが占める割合は90パーセント、腎盂がんが占める割合は残りの10パーセントです。

【腎細胞がん】

腎細胞がんとは、腎臓の細胞にできるがん。腎臓に発生するがんの約90パーセントを占めることから、単に腎がんとも呼ばれます。

がんは、腎臓の実質で、尿を作る腎尿細管上皮細胞から発生します。年間発生者数は1万〜1万2000人と推定され、発症年齢は50〜60歳代が最も多く、男女比はほぼ2〜3対1の割合です。

原因は不明ですが、発症の危険因子として、たばこや鎮痛解熱剤の大量摂取、ホルモン薬の常用、肥満、高血圧、糖尿病、心筋梗塞(こうそく)の既往がいわれています。また、腎不全により長期間血液透析を受けている人における腎細胞がんの発生頻度は、一般の人に比べて100倍ぐらい高いといわれています。これは血液中の尿毒症物質が原因と考えられています。

初期は、無症状です。近年は画像診断の普及により、人間ドックや他の疾患で医療機関を受診した際に偶然、無症状の小さな腎細胞がんが発見されることが多くなりました。

サイズの大きい腫瘍(しゅよう)においては、出たり止まったりの肉眼でわかる血尿、腎臓の疼痛(とうつう)、側腹部の腫瘤(しゅりゅう)が認められます。また、全身的症状として倦怠(けんたい)感、発熱、体重減少、食欲不振、貧血などを来す場合は、進行が速いといわれています。

腫瘍が静脈内に進展した場合は、下大静脈という腹部で一番大きな静脈が閉塞(へいそく)し、血液が他の静脈を通って心臓に戻るため、腹部体表の静脈が目立ったり、男性の陰嚢(いんのう)内の静脈が目立つ現象が起こることもあります。

腎細胞がんの転移しやすい臓器は肺と骨で、肺転移の多くは自覚症状に乏しく、骨に転移すると痛みを伴います。

まれに、腎細胞がんが産生するサイトカインという物質によって、赤血球増多症や高血圧、高カルシウム血症などが引き起こされることがあります。

【腎盂がん】

腎盂(じんう)がんとは、腎臓で作られた尿の最初の通路である腎盂にできるがん。

腎盂がんは尿の流れてくる通路の表面のところにできますので、何ら特別の自覚症状もないのに突然、無症候性の血尿が約5人に4人の割合で出ます。この血尿は、血が膀胱よりも上のほうから流れてくるわけですから、尿の全部が真っ赤になります。

その他の症状としては、がんからの出血により、たまたま尿の流れが阻害されると腎臓がはれるために、腹部に痛みが出ることもあります。しかし、腎盂がんそのもので痛むということはなく、血尿が唯一の症状といえるものです。

40歳以降の男性、特に60〜70歳代に多くみられます。男女比はほぼ3対1の割合です。

漏斗状の腎盂の周辺には、長さ25〜30センチ、内腔(ないくう)約5ミリの尿管などの臓器が隣接しているため、腎盂がんがみられた場合には、いろいろな部位にもがんが発生していることもあります。

腎臓がんの検査と診断と治療

【腎細胞がん】

肉眼的血尿に気付いたら、泌尿器科、腎臓内科の専門医を受診します。人間ドックや検診などで腎細胞がんが疑われた場合は、すぐに泌尿器科の専門医を受診します。

医師による診断では、まず尿検査と腎臓の画像診断を行います。尿の検査では、血液の出血の有無、がん細胞の有無を調べます。画像診断では、超音波検査、CT検査(コンピューター断層撮影)、静脈性腎盂造影や腎動脈造影で、腎臓の形の変化や動脈の分布状態を調べます。これらの検査で腎静脈や下大静脈の腫瘍による閉塞が疑われる場合には、MRI検査により進展範囲を診断します。

肺転移の有無は、胸部X線写真や肺CTによって検索します。骨転移の有無は、骨シンチグラフィを行って確認します。

医師による治療では、腎臓を摘出する手術が最善の方法です。薬物療法、放射線療法もありますが、これらはあくまでも手術の補助療法です。

手術は従来、開腹手術による腎臓の摘出だけでしたが、近年は開腹手術よりも術後が楽な腹腔鏡下の手術が開発され、この方法で周囲脂肪組織も含めた腎臓の摘出も行われています。リンパ節切除も腹腔鏡下で行われます。

各種画像診断の普及から発見される機会が増加している、腫瘍サイズが3〜4センチと小さい腎細胞がんに対しては、腎臓を全部摘出せず、腫瘍とともに腎臓の一部のみを摘出する手術が行われています。このような手術を受けた場合でも、腎臓を全部摘出する手術を受けた場合でも、再発率、生存率については大差がないといわれています。

腎臓が摘出ができない症例に対しては、動脈塞栓(そくせん)術や凍結術が有効なこともあります。動脈塞栓術は、腎動脈を人工的に閉塞させ、がんに血液が流れ込まないようにする方法で、大きな腫瘍を摘出する手術に先立って行われることもあります。

薬物療法については、抗がん剤はほとんど無効ですが、インターフェロンやインターロイキンが有効なこともあります。

肺や骨などへの転移に対しては、自己の免疫力を高める免疫療法や分子標的治療を行うことが一般的です。転移巣が少数で、腫瘍の大きさや数が変わらない場合、経過観察後あるいは免疫療法後に、手術による転移部位の摘出が行われることがあります。肺の転移巣に対する外科療法では、長期生存も期待されます。さらに骨転移、脳転移などに対しても、外科療法や放射線療法が行われることがあります。

腫瘍サイズが3〜4センチと小さい腎細胞がんは、90パーセント以上が治癒しています。5〜6センチの腫瘍では20〜30パーセント、7〜8センチの腫瘍では、30〜40パーセントで再発を認めるといわれています。10センチ以上の大きな腫瘍や、転移のある腫瘍では、治癒率はより劣ります。発熱、体重減少、貧血などの症状のある腎細胞がんの予後は、無症状のがんより明らかに不良です。

【腎盂がん】

痛くない血尿が出たら腎盂がんを疑い、すぐに泌尿器科を受診します。

医師による診断では、まず尿検査と腎臓、腎盂の画像診断を行います。尿の検査では、血液の出血の有無、がん細胞の有無を調べます。画像診断では、超音波検査、CT検査(コンピューター断層撮影)、静脈性腎盂造影や腎動脈造影で、腎臓の形の変化や動脈の分布状態を調べます。近年は、超音波検査やCT検査で発見率が向上してきました。

また、専用の内視鏡で直接がんを確認する方法もあり、内視鏡を利用してがんと思われる組織の一部を採取して、診断を確実なものにすることもあります。

治療法としては、腎盂や尿管、あるいは腎臓の摘出と、膀胱部分を切除する手術を行います。通常、がんが発生した腎盂のみを摘出するという方法は、行われません。周辺の臓器にもがんが発生している可能性も高いため、同時に摘出、切除手術を行います。腎盂のみを摘出した場合では、残った尿管や腎臓にがんが発生する可能性が出てきます。

しかし、がんがまだ小さい場合では、大掛かりな摘出、切除手術を行わず、内視鏡を使って病巣のみを切除する方法が行われることもあります。

補助療法として手術後に、放射線療法を行うこともあります。さらに、がんが転移していた場合には、化学療法として、マイトマイシン、メソトレキセート、シスプラチン、アドリアマイシンなどの抗がん剤を併用して治療を行います。

早期のうちに治療を行うことができ、がんをすべて切除することができれば、予後はよくなっています。手術後も定期的な検査は受け、他の臓器への転移がないかどうか調べておいたほうがよいでしょう。

腎盂がんの5年生存率は、40〜60パーセントです。

🇬🇱腎臓くるみ割り症候群

左側の腎臓の静脈が動脈に圧迫されることが原因となって、目で見て赤い尿が出る疾患

腎臓(じんぞう)くるみ割り症候群とは、左側の腎臓からの出血のために、目で見て明らかに赤い尿が出る疾患。ナットクラッカー症候群、ナッツクラッカー症候群、くるみ割り症候群、左翼腎静脈わな症候群、左腎静脈捕捉(ほそく)症候群などとも呼ばれます。

まれな疾患で、その多くは小児から思春期前後に発症します。成人では、やせた人によくみられるともいわれています。

右側の腎臓の静脈は下大静脈にすぐに合流しますが、左側の腎臓の静脈は下大静脈に合流する途中で、上腸間膜動脈と腹部大動脈の間を通り、くるみ割りの器具(ナットクラッカー)に挟まったような状態になっています。この静脈が2つの動脈に挟まった部位で、動脈圧が高く静脈圧が低いために静脈が押しつぶされると、静脈内圧が上がって静脈の血液の流れが悪くなるために、左側の腎臓の毛細血管がうっ血や出血を来し、排尿時に赤い尿が出ます。

身体的には無症状で、目で見て赤い肉眼的血尿のみが認められる場合が多く、一定の時を置いて起こる間欠的な血尿が認められます。血尿は、ピンク色から鮮紅色で、コーラのように色の濃いこともあります。

尿の中に混ざる赤血球の程度によって、多ければ目で見て明らかに赤い肉眼的血尿となり、少なければ見た目は正常な尿の色でも赤血球が混ざっているいわゆる尿潜血、または顕微鏡的血尿の状態になります。腎臓くるみ割り症候群でも、検診などによって尿潜血を認めることによって発見されるケースが多くみられます。

症状が重いケースでは、血尿のほかに、片腹部痛、腰痛、貧血、精巣静脈瘤(りゅう)、卵巣静脈瘤、起立性蛋白(たんぱく)尿がみられることもあります。精巣静脈瘤、卵巣静脈瘤があると、不妊の原因になることもあります。

こうした一部のケースを除き、腎臓くるみ割り症候群の予後は良好で、多くは時間の経過とともに、他の静脈への側副血行路といわれる血液の別ルートが発達しますので、自然に治ることがほとんどです。

腎臓くるみ割り症候群の検査と診断と治療

泌尿器科、腎臓内科の医師による診断では、出血の部位が左側の腎臓であることを膀胱(ぼうこう)鏡で確認後、造影剤を静脈注射して撮影する造影CT(コンピューター断層撮影)検査、腹部超音波(エコー)検査などを行います。

腹部超音波検査の際には、左側の腎臓静脈、卵巣静脈、副腎をよく観察し、それぞれの拡張や、腎臓静脈の周囲の循環系による圧迫、狭窄(きょうさく)がないかどうかに注意します。超音波検査法の一種である超音波ドップラー法という検査を行い、腎臓静脈を観察し、狭窄部位から下大静脈への血流速度の計測をすることもあります。

泌尿器科、腎臓内科の医師による治療は、基本的には不要で、側副血行路が発達し自然に治ることが多いものの、薬物療法として、抗プラスミン薬などの止血薬を使用して、血尿を止めます。

貧血が進行するほどの肉眼的血尿が持続する場合には、尿管カテーテルを用いて、1~3パーセントの硝酸銀を腎盂(じんう)内へ注入して、出血している静脈を凝固させる治療を行うこともあります。

それでもうまく出血のコントロールができない場合には、左側の腎臓静脈の狭窄部位に、血管の中で拡張して適切な太さに保つステントと呼ばれる機器を挿入する手術を行うこともあります。あるいは、左側の腎臓静脈が下大静脈に合流する部位を切り離し、上腸間膜動脈と腹部大動脈の間の距離が広い下側につなぎ直す、左腎静脈転位術という手術を行うこともあります。

🇮🇸シンディング・ラーセン・ヨハンソン病

成長期の子供にみられ、膝の皿に相当する膝蓋骨の下端に、炎症や石灰化、剥離骨折などを生じる障害

シンディング・ラーセン・ヨハンソン病とは、膝(ひざ)の皿に相当する膝蓋骨(しつがいこつ)の下端に、炎症や石灰化、部分的に骨がはがれる剥離(はくり)骨折などを生じる障害。発育が盛んな時期の子供、特に10~13歳くらいの発育期の男子に好発します。

1921年にシンディング、ラーセン、ヨハンソンの各医師がそれぞれ発表したため、この名称が付いています。

足を頻繁に使うスポーツなどで症状が誘発されることもあるため、スポーツ障害の一つとしても考えられています。また、成長期の子供の軟骨に障害が起き、痛みを伴う骨端(こったん)症の一つにも数えられています。

成長期の子供では、膝の皿に相当する膝蓋骨の骨形成が成長過程にあり、膝蓋靭帯(じんたい)とも呼ばれる膝蓋腱(けん)よりも膝蓋骨の強度が弱いために、走る、ジャンプする、ボールをける、しゃがむなどの繰り返し動作で、骨形成に必要な骨端軟骨という軟骨組織が上下に引っ張られて、炎症や石灰化、部分的な剥離骨折などを生じます。

シンディング・ラーセン・ヨハンソン病を生じると、膝蓋骨の下端の圧痛、その周囲のはれ、運動時の痛み、階段を上り下りする時の痛み、膝をついて体重をかける時の痛みなどを覚えます。

成長とともに治る場合も多いのですが、できれば整形外科を受診し、症状によってはスポーツ活動を中断して回復を待ったほうがよいこともあります。とりわけ、骨端軟骨が部分的な剥離骨折を起こした場合、その後の膝蓋骨の成長に異常を来す場合があります。

シンディング・ラーセン・ヨハンソン病の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、発育期の10〜13歳くらいで発症することと、X線(レントゲン)検査の撮影画像で膝蓋骨の下端に石灰化像が見られることで、判断します。ただし、発症初期などでは撮影画像で異常が見られない場合もあり、ジャンパー膝(膝蓋靱帯障害)と診断されることもあります。

整形外科の医師による治療では、走ったり、ジャンプできないなどの強い痛みがある場合や、安静にしていても痛い場合は、スポーツ活動を一時中断して、安静にします。安静期間は、運動時にかなり強い痛みを伴うような場合は3~6カ月程度、軽度な痛みの場合は3~4週程度です。

その間は、テーピングを施したり、サポーターを装着し、電気治療、超音波治療やストレッチなどを行い、痛みを和らげます。

スポーツ活動の継続を強く希望する場合は、テーピングなどの補強で可能な場合もありますが、運動終了後のアイシングや固定などのケアも合わせて行うことが必要です。

予後は良好で、成長とともに体が完成し、膝蓋骨の形成が完成されれば再発も起こりません。

🇮🇪心的外傷後ストレス障害(PTSD)

衝撃的な体験によって生じる精神障害

心的外傷後ストレス障害(別名、外傷後ストレス障害:PTSD:Post-traumatic stress disorder)とは、衝撃的な出来事を体験することによって心の傷が生じ、さまざまなストレス障害を引き起こす疾患。その出来事をありありと思い出すフラッシュバックや、苦痛を伴う悪夢が、特徴的です。

心の傷は、心的外傷またはトラウマと呼ばれます。トラウマは本来、単に外傷を意味しますが、日本では心的外傷として使用される場合がほとんどです。

心的外傷を生じ得る出来事としては、地震、洪水、火山の噴火といった大きな自然災害、原発事故、航空機事故、列車事故、自動車事故、火災、戦争といった人工災害、殺人事件、テロ、監禁、虐待、強姦〈ごうかん〉といった犯罪が挙げられます。

通常は衝撃的な出来事を体験しても、時間の経過とともに心身の反応は落ち着き、記憶は薄れていきます。しかし、あまりにもショックが大きすぎる時、個人のストレスに対する過敏性が強い時、小児のように自我が未発達な段階では、大きな障害を残すことがあるのです。とりわけ、幼少期などの成長過程で心的外傷が起きると、脳の発育にダメージを受け、海馬の不発達や委縮などを起こすこともあります。

心的外傷後ストレス障害(PTSD)の主要症状は、再体験、回避、過覚醒(かかくせい)の3つです。

1)再体験

原因となった外傷的な体験の記憶が、再体験されることをいいます。その形式として、次のいずれかをとります。

*誘因なく思い出される。

*悪夢にみる。

*フラッシュバック、体験に関する錯覚や幻覚。

*外傷に関連した刺激による主観的な苦痛。

*外傷に関連した刺激による自律神経症状を示す。

2)回避

苦痛な体験を思い出すような状況や場面を、意識的あるいは無意識的に避け続けるという症状、及び感情や感覚などの反応性の麻痺(まひ)という症状を指しています。次のような症状があります。

*慢性的な無力感、無価値感が生じ、周りの人間とは違う世界に住んでいると感じる。

*感情や関心が狭くなり、人を愛したり喜ぶことができない。

*外傷記憶の部分的な健忘。

*外傷に関連した刺激を避けようとする。

3)過覚醒

常に危険が続いているかのような張り詰めた状態をいいます。交感神経系が緊張し、ささいな物音などにも反応し、パニックとなりやすくなります。次のような症状があります。

*入眠困難。

*いらだち。

*集中力の低下。

*張り詰めた警戒心。

*ささいなことでの過剰な驚愕(きょうがく)。

医学的には、上記の症状の6項目以上が心的外傷後、1カ月以上持続し、自覚的な苦悩か社会的機能の低下が明らかな場合に、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断されます。大半のケースでは、心的外傷を受けてから6カ月以内に発症しますが、6カ月以上遅れて発症する遅延型も存在します。

なお、症状が1カ月以上持続している場合に心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断するのに対して、1カ月未満の場合には急性ストレス障害(ASD:Acute Stress Disorder)と診断します。

衝撃的な出来事に遭遇した直後の1カ月以内に、重症の反応を生じるのが急性ストレス障害(ASD)で、心的外傷後ストレス障害(PTSD)にみられる再体験、回避、過覚醒の3大症状だけでなく、解離性症状と呼ばれる健忘や現実感の喪失、感覚や感情の麻痺などが強く現れます。

一般的なケアと専門的な治療

心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状自体は、衝撃的な出来事に対する正常な反応です。多くの人はショックな出来事を経験しても、時間の経過とともに心身の安定を取り戻していきますが、大きな心身の障害を残す場合には治療が必要となります。

対応としては、一般的なケアと専門的な治療に分けられます。一般的なケアとしては、安全、安心、安眠の確保に努め、二次的な心的外傷(トラウマ)を未然に防ぎ、自然の回復を促進します。疾患ついての心理的な教育も有効です。

症状が重い急性期には、あれこれと聞き出すことはよくありません。一時期、このような対応がデブリーフィングという名前で行われていましたが、現在では否定されています。心理的な配慮を持たない事情聴取や現場検証が、ストレスとなることに注意します。

専門的な治療としては、薬物療法と精神療法が有効です。不安、過敏症状、睡眠障害には抗不安薬、抑うつ症状には抗うつ薬が用いられ、最近ではSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が第1選択薬として用いられています。

精神療法としては、支持的なカウンセリングが中心ですが、恐怖体験の言語化と不安反応のコントロールを目指した認知行動療法、最近の新しい治療法であるEMDR(眼球運動による脱感作と再処理)があります。EMDRは、問題の記憶場面を思い浮かべながらリズミカルに目を動かすという方法で、外傷的記憶を処理するという効果があります。

また、発症者は外傷的記憶を思い出したくないために、あまり口に出さず、ただ我慢しているケースが多く、周囲からなかなか理解を得られないことがありますので、相談ができて心理的に支えてもらえる態勢を作るソーシャル・サポートの意義が重要です。特に、自我が未発達な幼小児には、早期から対応する必要があります。

🇬🇧腎動脈瘤

腎臓に血液を送る動脈の壁に弱い部分ができ、そこが血液の圧力で膨らむ疾患

腎動脈瘤(じんどうみゃくりゅう)とは、腎臓に血液を送る動脈の壁に弱い部分ができ、そこが血液の圧力で膨らむ疾患。

比較的珍しい疾患で、原因ははっきりしないことが多く、何らかの先天的な要因で、血管の壁が弱くなっている可能性も考えられます。

腎動脈瘤ができると、高血圧になったり側腹部痛、血尿を伴うこともありますが、全く症状がないことも多く見受けられます。

高血圧になるのは、腎動脈瘤ができるのに伴って周囲の血管が狭くなることがあり、その結果、腎臓への血液の流れが悪くなってしまうためです。

血圧が高いままだと、腎動脈瘤がさらに大きくなったり、破裂しやすくなったりします。腎動脈瘤の直径が15ミリから20ミリを超すと、破裂しやすくなるとされています。

腎動脈瘤が破裂した場合は、大量に出血し、生命に危険が及びます。破裂した場合は緊急手術が必要ですが、手術前に80パーセントほどが死亡し、救命し得たとしても腎臓の温存が困難となります。

近年では、健康診断などで受けた超音波(エコー)検査、CT(コンピュータ断層撮影)検査で、腎動脈瘤が見付かるケースが増えています。

腎動脈瘤の検査と診断と治療

泌尿器科、あるいは血管外科、心臓血管外科、循環器科、腎臓科などの医師による診断では、腹部超音波(エコー)検査、腹部CT(コンピュータ断層撮影)検査を行い、腎動脈瘤の有無、正確な直径を確認します。

泌尿器科、あるいは血管外科、心臓血管外科、循環器科、腎臓科などの医師による治療では、血圧が高い場合、腎動脈瘤がさらに大きくなったり、破裂しやすくなったりするので、血圧をコントロールする薬を処方します。

血圧が低く、腎動脈瘤の直径が15ミリに満たない場合、疾患が進行して高血圧になる可能性があるため、自宅で血圧を毎日測り、病院で年に1、2回検査を受けることを勧めます。

腎動脈瘤の直径が15ミリから20ミリを超す場合、動脈瘤の中にカテーテルで運んだ金属製のコイルを詰め、血液が流れ込まないようにします。

>腎動脈瘤を取り除き、動脈の血行を再建する手術を行う場合もあります。妊娠や出産で腹圧が高くなると破裂しやすいため、その可能性や予定がある女性には、手術を勧めます。

🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿シンドロームマリン(悪性症候群)

シンドロームマリンとは、向精神薬の重大な副作用。精神病の人が向精神薬を服用した際や服用量を増量した際に、高熱が続き、意識障害や筋硬直を起こすものです。悪性症候群とも呼ばれます。

麻酔薬の副作用として現れる悪性高熱症と症状が類似していますが、別の疾患です。

シンドロームマリンの原因は、向精神薬が神経に働き掛けるドーパミンの作用を抑えてしまうためと考えられ、ドーパミン作動薬の使用が試みられています。向精神薬の注意書きには、シンドロームマリンのことが初めに書かれています。

症状としては、38℃以上の高熱、振戦(体の振るえ)、発汗、頻脈などの症状を特徴とし、放置すると時に高熱が持続し、意識障害、筋硬直、呼吸困難、循環虚脱、脱水症状、急性腎(じん)不全へと移行し、死に至ることがあります。

また、抗パーキンソン病薬を継続して使用している際の急激な中止や減量でも、シンドロームマリンの症状が起こる場合があります。

頻度はまれですが、発症した場合はすぐに的確な治療が必要となります。治療の基本は、向精神薬の場合は使用を中止すること、抗パーキンソン病薬の場合は使用を再開することです。

次に、水分と栄養の補給を図ることと、ダントローレンなどの治療薬の投与が必要です。重症な場合には、集中治療室などの利用も必要となります。

🏴󠁧󠁢󠁷󠁬󠁳󠁿心内膜炎

心臓の内側を覆い、血液に接している膜に炎症が発生

心内膜炎とは、心臓の内側を覆う膜であり、血液に接している心内膜に炎症が起きる疾患。この心内膜に対して、心臓の外側を包んでいる膜は心膜です。

心内膜炎は細菌性心内膜炎と非細菌性心内膜炎とに大別されますが、細菌性心内膜炎は近年、感染性心内膜炎と呼ぶことが多くなっています。各種の抗生物質やステロイド剤、免疫抑制剤、抗がん剤などが広く使用されるようになったために、真菌やリケッチアなど細菌以外の感染で、心内膜炎が起こることもあるためです。

感染性心内膜炎(細菌性心内膜炎)は、そのもとに心臓弁膜症や、心室中隔欠損、動脈管開存などの先天性の心臓病があったり、人工弁の手術後のように、心臓自体の構造上に異常がある時に起こりやすい疾患です。

発病の切っ掛けになる原因菌は、緑色連鎖球菌などの弱毒菌から、黄色ブドウ球菌、腸球菌のような毒力の強いもの、あるいは、大腸菌、真菌、緑膿(りょくのう)菌などいろいろです。

これらの心内膜に炎症を起こす原因菌は、抜歯や歯の処置の跡、小さな感染病巣、外科処置の跡、心臓手術や検査の跡、産科や泌尿器科の手術、出産、検査の跡などを侵入経路にして、疾患を引き起こします。

非細菌性心内膜炎は、大部分がリウマチ熱の時に生じ、リウマチ性心内膜炎と呼ばれています。丹毒や猩紅(しょうこう)熱に、非細菌性心内膜炎が誘発されることもあります。

心内膜炎の症状は、原因菌の種類によっていろいろです。一般的には、発病の始まりには微熱が出ますが、突然、高熱が出ることもあります。初期は、全身のだるさ、関節痛、筋肉痛があって風邪と間違われやすく、高熱、寒け、震えを伴うような急性症状の時などは、診断の決め手になる血液培養検査をしないまま、抗生物質を投与されることもあります。

疾患が進むと、炎症によって増殖した付着物のために、心臓弁膜や心内膜が破壊されて変形したり、癒着したり、穴が開いたりします。その結果、弁閉鎖不全を発症します。また、増殖物はもろくて、壊れやすいため、付着物から離れて血管に入り、皮膚、粘膜、脳、腎臓(じんぞう)、脾臓(ひぞう)、肺など体の各部分の血管に詰まって、塞栓(そくせん)を起こします。

心内膜炎の発症者の約半数の人に塞栓が起こると見なされていますし、高齢者では塞栓が動脈硬化性の疾患と間違われることも多くなります。

心内膜炎の検査と診断と治療

心臓弁膜症や先天性の心臓病があって、1週間以上発熱が続いた場合は、心内膜炎を疑う必要があります。

心内膜炎が疑われた場合には、医師側は血液培養検査を行って、原因菌を突き止めなければなりません。血液培養検査を行うに当たっては、抗生物質を使っていると正しい結果が出ないため、服用している人は2〜3日間、薬をやめてから検査を受けます。 血液培養検査のほか、心エコー(超音波)で弁に付いている、いぼ状の増殖物を見付けて診断する場合もあります。

治療では、抗生物質の投与が主体となります。血液培養検査の結果、はっきりした原因菌に対して、最も効果のある抗生物質を選んで使います。

心臓弁膜症や先天性の心臓病、人工弁置換手術を受けた人などでは、抜歯や歯の処置を受ける際、またはカテーテルによる検査を受ける際は特に注意が必要で、この心内膜炎の予防のために抗生物質を使うことが勧められます。

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...