2022/08/08

🇹🇿腱黄色腫

外力の加わりやすい皮膚表面に近い腱が肥厚する状態

腱黄色腫(けんおうしょくしゅ)とは、筋肉を骨に結び付けている強い組織である腱のうち、皮膚表面に近い腱がはれて、厚くなる状態。

腱黄色腫の本体は、血漿(けっしょう)中のリポ蛋白(たんぱく)質という脂肪と蛋白質の結合物を取り込んで、脂肪分をためたマクロファージ由来の泡沫(ほうまつ)細胞が集合して、腱に浸潤したものです。

このため、生活習慣病や遺伝要素、体質などによる高脂血症(高リポ蛋白血症、脂質異常症)の人に出現することが多いのですが、高脂血症と関係なく出現する場合もあります。

外力の加わりやすいアキレス腱、手指伸筋腱、肘(ひじ)の腱、膝(ひざ)の腱に好発します。 特に、アキレス腱のはれ上がりとして認められることが多く、アキレス腱の厚みが1センチ以上あって血中コレステロール値の高い場合は、家族性高コレステロール血症である可能性が高いと考えられます。家族性III型高脂血症でも典型的な場合は、腱黄色腫ができます。

痛みやかゆみなどの自覚症状は通常ないものの、時に痛みを伴うこともあります。通常は、皮膚表面が黄ばみを帯びた柔らかな膨らみとして見えたり、はれ上がっていたりします。太った人では、肌触りが少しほかの部分と違って柔らかいと感じる程度の膨らみとして見えます。

腱黄色腫が原因でアキレス腱周囲炎を示す場合には、安静にしていても徐々に腱が肥大して、踵(かかと)の上が痛みを伴ってはれる傾向があります。

腱黄色腫に気付いたら、皮膚科、ないし形成外科、内科を受診します。高脂血症の人の場合は、四肢の腱だけではなく、皮膚、まぶたや全身のいろいろな臓器に黄色腫がみられ、虚血性心疾患や心筋梗塞(こうそく)の可能性もありますので、循環器内科を受診することが勧められます。

腱黄色腫の検査と診断と治療

皮膚科、ないし形成外科、内科、循環器内科の医師による診断では、皮膚所見の視診、皮下の触診、肥厚の部位と成育経過で判断します。

アキレス腱の場合は、腱黄色腫として出現する前に腱の幅が増し、簡単に触知することができます。X線(レントゲン)軟線撮影を行って、正確に肥厚度を測定し、その最大幅が9ミリ以上であれば、アキレス腱の肥厚が存在すると判断します。MRI(磁気共鳴画像撮影)検査を行うと、腱が膨らんでいるのがよくわかり、変性の程度などの詳細もわかります。

確実な診断には、黄色腫の一部を切除して組織検査を行い泡沫細胞の存在を証明することが必要ですが、通常は生検を行うケースはあまりありません。高脂血症(脂質異常症)の検査で、高脂血症に伴うものかどうかを区別します。動脈硬化性疾患の合併も調べます。

皮膚科、ないし形成外科、内科、循環器内科の医師による治療では、血液中のコレステロール値が高い人に対しては、まず第一に高脂血症の治療として、食餌(しょくじ)療法と薬物療法を行ないます。

食餌療法では、高脂血症のタイプに従って、欧米風の高カロリー食品やコレステロール値の高い食品、脂分の多いファーストフードの過剰な摂取を制限します。そして、野菜や果物、魚といった低カロリー食や低脂肪食、低炭水化物食を中心とした食生活に切り替えます。

薬物治療では、抗高脂血症剤のプロブコール(シンレスタール、ロレルコ)などを内服して、黄色腫の退縮を図ります。高脂血症が正常化されると黄色腫は生育がゆっくりとなり、または多少縮小する場合があります。

高脂血症のない人に対しては、腱黄色腫は通常痛みがないため、治療として切除することはほとんどなく、薬物治療を行ないます。

🇰🇪肩甲上神経損傷

肩の使いすぎなどにより、肩の筋肉を支配している肩甲上神経が損傷する疾患

肩甲上神経損傷とは、野球のピッチャーなどの投球動作による肩の使いすぎにより、肩の筋肉を支配している神経が損傷する疾患。

この肩甲上神経損傷は、利き腕の上腕を肩より上に上げてボールなどを投げたり、打ったりするオーバーヘッドスローイング動作を行うスポーツ全般で生じる傾向にあり、野球のピッチャー、キャッチャーのほか、バレーボールのアタッカー、アメリカンフットボールのクォーターバック、あるいはサーブやスマッシュを行うテニス、ハンドボール、陸上競技のやり投げ、水泳のクロールとバタフライなどでも生じます。

肩甲上神経は、首の付け根から出て、肩甲骨の上のほうにある肩甲切痕(せっこん)という骨の溝を擦り抜けるようにして、肩の筋肉である棘上筋(きょくじょうきん)、棘下筋(きょくかきん)へつながっている末梢(まっしょう)神経です。棘上筋と棘下筋の動きを支配しており、腕を上げるのに必要とされています。

元来、肩甲切痕の部分の肩甲上神経の走行に無理があるため、野球のピッチャー、バレーボールのアタッカーなどのように腕を上げる動作を繰り返すと、肩甲上神経が引っ張られ、なおかつ周囲の組織によって圧迫を受けるので、肩甲上神経損傷を生じることがあります。

また、骨のとげである骨棘(こっきょく)やガングリオン(結節腫〔(しゅ〕)が肩関節にできることによって圧迫されて、肩甲上神経損傷を生じることもあります。

結果として、腕を上げる動作や腕を外に広げる動作がしづらい、肩が重い、肩が疲れる、肩に力が入らない、肩が痛い、肩がしびれるなどの症状が出ます。

また、棘上筋にある肩甲切痕の部分で肩甲上神経が圧迫を受けると、棘上筋と棘下筋の筋肉がやせてきます。一方、棘下筋にある肩甲切痕の部分で肩甲上神経が圧迫を受けると、棘下筋だけがやせてきます。

腕が上がらない、肩の周囲の筋肉がやせてきているといった症状が出たら、整形外科を受診することが勧められます。

肩甲上神経損傷の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、症状や電気生理学的検査などにより判断します。神経伝導検査と筋電図検査を行うことで、肩甲上神経の障害の程度や正確な障害部位を確認します。また、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査を行うことで、肩周辺部の骨棘やガングリオンなどの肩甲上神経を圧迫している病変を確認します。

鑑別すべき疾患には、いわゆる四十肩、五十肩といわれる肩関節周囲炎や頸椎(けいつい)疾患、腱板(けんばん)損傷があります。

整形外科の医師による治療では、筋委縮が軽度の場合は、オーバーヘッドスローイング動作をしばらく中止し、委縮した棘上筋、棘下筋などを強化していくようにします。同時に、肩周辺筋力のバランス強化を行います。副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモンの注入や、肩甲切痕を広げて神経の圧迫を取り除く手術を行うこともあります。

痛みがひどく、筋委縮が重度の場合は、肩甲上神経を圧迫している骨棘やガングリオンなどを摘出する手術を行います。ガングリオンでは、太めの針の注射器で腫瘍中のゼリー状の内容物を穿刺(せんし)吸引する方法もありますが、再発しやすいのが欠点です。

🇰🇪空気嚥下症

唾液とともに空気を飲み込む量が増え、げっぷや腹部膨満感が現れる状態

空気嚥下(えんげ)症とは、唾液(だえき)とともに空気を飲み込む量が増え、げっぷや腹部膨満感が現れる状態。呑気(どんき)症とも呼ばれます。

頻度はそれほど多くありませんが、ほとんどは精神的な要因によって生じ、治療が難しいこともあります。

また、空気嚥下症に加えて、無意識のうちに奥歯を噛(か)みしめる動作による緊張が首や肩に波及し、肩凝り、側頭部痛、頭痛、あごや目の痛み、腕のしびれなどをもたらすことがあり、これを噛みしめ呑気症候群と呼びます。

正常な人でも、食事の際に食べ物と一緒に多少の空気を飲み込みますが、空気嚥下症の人では、食べ物の摂取とは無関係に無意識に大量の空気を嚥下します。

精神的に不安定な状態である抑うつ、神経症(神経症性障害)、ヒステリーなどの時に、起こりやすくなります。そのほかには、呼吸不全、心不全などを起こした時に現れることもあります。原因については、ほかの機能性疾患に比べて明らかにされているとはいいにくいのが現状です。

異常に大量の空気を繰り返し飲み込むことによって、げっぷや腹部の膨満感、上腹部の不快感、腹鳴、吐き気などの症状を起こします。上腹部の不快感を紛らわすために空気の飲み込みを繰り返すことが多く、食道や胃に飲み込んだ空気を繰り返しげっぷとして吐き出す習慣があります。げっぷをしても、必ずしも腹部の膨満感が軽減するわけではありません。

同様の症状が食道や胃腸などの消化器官の疾患でも起こることがあるので、まず消化器科を受診することが勧められます。消化器官に器質的疾患がないことが判明したら、まず心配はありません。どうしても気になる場合は、心療内科や精神科を受診することが勧められます。

噛みしめ呑気症候群の場合は、口腔(こうくう)外科、歯科を受診するとよいでしょう。

空気嚥下症の検査と診断と治療

消化器科、あるいは心療内科、精神科の医師による診断では、まず腹部X線(レントゲン)検査、胃X線造影(胃バリウム)検査あるいは内視鏡検査、腹部超音波(エコー)検査、腹部CT(コンピュータ断層撮影)検査などを行い、食道や胃腸などの消化器官に器質的な疾患がないことを確認します。

消化器科、あるいは心療内科、精神科の医師による治療では、原因が未解明で特有の改善方法がないため、症状の理解、空気を嚥下する習慣や食生活の改善、不安や緊張の緩和などを図ります。食事はゆっくりとよく噛んで食べるようにすること、ビール、炭酸飲料、甘い物、脂の多い物、香辛料などは避けるようにすることを勧めます。

薬物療法としては、比較的症状の軽い場合には消泡薬、消化酵素薬、消化管機能改善薬などを使用し、重い症状の場合には抗うつ剤や抗不安剤などの向精神剤を使用します。

噛みしめ呑気症候群では、マウスピース(スプリント)の装着によって症状が改善する場合があります。

🇸🇴櫛状胃炎

胃の粘膜の表面だけに炎症が起こっている疾患

櫛状(くしじょう)胃炎とは、胃の粘膜の表面に慢性の炎症が起こっている疾患。表層性胃炎とも呼ばれます。

慢性胃炎の初期症状ともいえる状態で、胃腺(せん)の委縮はあまり目立たず、胃の出口近くの粘膜の表面に、櫛で引っかいたような線状の発赤や、斑状(まだらじょう)の発赤、むくみなどの症状がみられるのが特徴です。

飲酒やたばこ、香辛料の摂取、熱い飲食物の刺激、薬物による刺激が原因になるほか、感染したピロリ菌に対して、人体の免疫が反応している状態であるために炎症が起こっているのが原因の場合もあります。また、櫛状胃炎は不安やストレスなどの精神的な状態との関連もあるようです。

胃の粘膜の表面のみの炎症ですから、それほど症状は強くなく、自然と改善していく場合もあります。しかし、そのまま進行して長期化してくると、胃粘膜は次第に委縮し、胃液(胃酸)や粘液を分泌しない状態になり、委縮性胃炎になってしまう恐れがあります。

櫛状胃炎はどちらかといえば若い人に多く、胃に不快感があり、胃もたれを起こしたり、食後に腹痛を起こすことがあります。場合によっては、胃潰瘍(かいよう)と同様に空腹になると胃に痛みを感じたり、重苦しさが起こってくることがあります。食事をすると軽減されますが、げっぷや胸焼けなどを伴うこともあります。

胃の炎症症状の強い時には、食欲不振に陥ることもありますし、吐き気を覚えることもあります。このような症状は、1〜2年に及ぶこともあります。

櫛状胃炎の検査と診断と治療

消化器科、内科の医師による診断では、胃内視鏡検査を行うと、胃の出口近くの粘膜に多数の発赤や、むくみが観察されます。正確な診断には、組織の一部を採取して調べる生検による病理学的検索が必要です。組織を調べると、原因となるピロリ菌がいるかどうかを診断することもできます。

消化器科、内科の医師による治療では、症状がみられるようであれば、胃液の分泌を抑える制酸剤や抗コリン剤(自律神経遮断薬)を使用します。食後に胃のもたれが起こるようであれば、消化剤を使用することも有効で、症状に合わせて、傷みを和らげる鎮痛剤も使用します。

薬の効果によって一時的に回復しますが、炎症が治まっていなければ、薬の服用をやめれば再発することも考えられます。薬の服用が必要だと判断された場合では、医師の指示を守り正しく服用することが必要です。

日常生活では、できるだけ胃に負担をかけない食生活を心掛けることが大切です。1日3食を規則正しく摂取するようにして、脂っこいものなど消化の悪いものや、酒や香辛料など刺激の強いものは控えめにします。

可能ならば禁煙し、ストレスを改善する方法も見付けましょう。

🇸🇴クッシング症候群

副腎皮質から分泌されるグルココルチコイドの過剰分泌によって、引き起こされる疾患

クッシング症候群とは、副腎(ふくじん)皮質から分泌されるホルモンのうち、グルココルチコイド(糖質コルチコイド)の過剰分泌によって起こる疾患。アメリカの脳神経外科医ハーヴェイ・ウィリアムス・クッシングによって、初めて報告されました。

下垂体(脳下垂体)に腫瘍(しゅよう)ができ、そこから副腎皮質刺激ホルモンがたくさん出るために起こる場合と、副腎皮質に腫瘍ができて起こる場合が主なものです。前者はクッシング病とも呼ばれます。

クッシング症候群の原因としては、クッシング病が約35パーセント、副腎腫瘍が約50パーセントを占めるほか、時には、肺や膵(すい)臓、消化管にできた腫瘍から副腎皮質刺激ホルモンが多量に分泌され、副腎に働いてグルココルチコイドが過剰に分泌される場合もあります。女性に多くみられます。

近年、ステロイド剤(副腎皮質ホルモン)がネフローゼや白血病などの治療に、大量に用いられるようになったために人工的な副腎皮質ホルモン過剰が起こり、同じ症状を起こすことがあります。

クッシング症候群の症状としては、顔が丸くなり、にきびができやすくなります。肥満してきますが、手足はあまり太くならず、胴体が太いのが特徴です。また。肩や尻(しり)、太ももの筋肉が薄くなり、階段の上りなどがつらくなります。

そして、腹や太ももなどに皮膚伸展線である赤紫色のすじがみられ、皮膚が薄くなって、ちょっとしたことで青あざができやすくなります。高血圧、糖尿病が起こることもあります。骨が薄くなって背骨の圧迫骨折を起こし、身長が低くなったり、背部痛が起こることもあります。

女性では、月経が不順になったり、無月経になったり、毛深くなります。

クッシング症候群の検査と診断と治療

内科、内分泌代謝内科の医師による診断では、副腎からグルココルチコイドが過剰に分泌されていることを確認するために、血液検査や尿検査を行います。

下垂体の腫瘍や肺、膵臓などの腫瘍から副腎皮質刺激ホルモンが出て起こっている場合は、副腎皮質刺激ホルモンが増えています。一方、副腎の腫瘍からグルココルチコイドが出ている場合は、副腎皮質刺激ホルモンはかえって減っています。このどちらであるかを調べて、どこに原因があるかを明らかにします。

下垂体の腫瘍の場合は、頭部のMRIの検査を行います。副腎の腫瘍の場合は、腹部のCTの検査などを行います。

医師による治療としては、腫瘍の場合は下垂体でも副腎でも、手術を行って過剰なホルモンを作っている腫瘍を摘出することが最もよい方法です。

下垂体の腫瘍の場合は、経蝶形骨洞的手術という、鼻の穴から下垂体に達し頭を開けずに、顕微鏡や内視鏡で見ながら腫瘍を摘出する方法によって、以前に比べ楽に手術できるようになっています。手術で摘出し切れない場合や、体力的に手術が困難な人の場合は、注射や内服薬による治療、放射線療法などが行われます。

副腎の腫瘍の場合は、大きくなくて適応できれば、開腹せずに腹部に小さい穴を3カ所くらい開けて内視鏡と手術の道具を通し、副腎を摘出する内視鏡手術が数多く行われています。内視鏡手術の適応ができない時は、開腹や背中を開けて副腎を摘出します。体力的に手術が困難な場合などは、グルココルチコイドを作る副腎の働きを抑える薬を内服します。

🇩🇯くも膜下出血

くも膜下出血とは、脳を覆う軟膜にできた動脈瘤(りゅう)が高血圧などのために破裂して、出血する病気です。

脳は外側から順に硬膜、くも膜、軟膜という3層の膜で覆われており、くも膜とその下の軟膜との間を、くも膜下腔(くう)といい、ここには髄液が満たされています。血管のこぶである動脈瘤が破裂すると、血液がくも膜下腔に一気に流出するため、頭がい内圧(頭がい骨の内部の圧力)が上がって、激しい頭痛が起こります。

バットか金づちで殴られたような、今までに経験したことのないひどい痛みに襲われ、その頭全体に感じる痛みがしばらく続きます。頭がい内圧が急激に上がって脳全体が圧迫されると、意識障害が起こったり、吐いたりします。重症の場合、意識障害から、こん睡状態に進んだまま死亡することもあります。

病院に急行しなくては命にかかわる頭痛の代表が、くも膜下出血による頭痛なのです。発症後、数時間以内に手術など適切な処置を行い、再出血を防ぐことが、非常に大切です。出血は、いったん止まりますが、再び破裂することが多く、再出血を起こすと、死亡率が非常に高くなるからです。

今まで経験したことのない突然の頭痛が起きたら、すぐにCT設備のある病院で受診することです。40~50代で、家族や親類にくも膜下出血を起こした人がいる人は、特に注意してください。

少量の出血を繰り返すタイプのくも膜下出血では、あまり激しくない痛みが反復するために、片頭痛と紛らわしい場合があります。

くも膜下出血の状況は、CT(コンピューター断層撮影法)検査によって判明します。出血量が少ない時は、CTでははっきりしないこともあり、症状からみて、くも膜下出血が疑われる場合は、髄液を採取して検査します。

出血が確認された時は、破裂した動脈瘤を血管撮影によって探し出し、頭がい骨を切開し、こぶの根元をクリップで挟むクリッピング法という手術が行われます。

出血によって髄液の流れが妨げられた急性水頭症の場合は、髄液を外に排出する手術を行うこともあります。また、発作後4日ほど経つと、脳の血管が細くなり、脳梗塞(こうそく)を起こすこともあるので、それを予防する薬が用いられます。

🇩🇯クラインフェルター症候群

男性の性染色体にX染色体が1つ以上多いことで生じる先天的な疾患

クラインフェルター症候群とは、男性の性染色体にX染色体が1つ以上多いことで、女性化とみられる特徴を生じる一連の症候群。

1942年に、ハリー・クラインフェルターによって初めて紹介された性染色体異常です。

通常の男性の性染色体XY、通常の女性の性染色体XXに対して、クラインフェルター症候群の男性の性染色体はX染色体が1つ多いXXYとなっています。一般に染色体すべてを総合して、47, XXYと表現されます。また、X染色体が2つ以上多い48, XXXY、49, XXXXYや、48, XXYY、さらに46, XY/47, XXYのモザイク型もあります。

細胞分裂期の性染色体不分離で過剰に生じたX染色体が、クラインフェルター症候群の原因です。過剰に生じたX染色体の由来は、父母半々とされており、高齢出産がその一因とされています。

クラインフェルター症候群の80〜90パーセントを占めるXXY染色体の発生頻度は、新生児の男児1000人から2000人に1人とされ、決して珍しい異常ではありません。

過剰に生じたX染色体が多いほど、障害の傾向も強くなります。しかし、X染色体の数の異常があればクラインフェルター症候群の症状が高確率で出るわけではなく、X染色体が1つ以上多い組み合わせの染色体を持ちながら症状が全く出ないケースのほうが多く認められます。

アンドロゲン不応症と似通っていますが、アンドロゲン不応症は染色体異常ではなく、男性ホルモンの受け皿が働かないために、男性への性分化に障害が生じる先天性の疾患群であり、別の疾患です。

クラインフェルター症候群の男児は、通常の男性器を持って生まれ、幼児期、学童期には特に症状はみられず、ほぼ正常な第二次性徴的変化を認めます。しかしながら、第二次性徴ごろから胴体の成長が止まる一方で、首や手、足などが成長するため、肩幅が狭く高身長で、手足の長い細身の体形になる人が多いとされます。

原発性の性腺(せいせん)機能低下症(高ゴナドトロピン性性腺機能低下症)を示すために、思春期から精巣の発達が進まず、精巣が小さいために無精子症となります。そのため、正常な勃起(ぼっき)能力と射精能力などの完全な性能力を持ちながら、男性不妊となります。

そのほか、ひげや恥毛の発育不全、乳腺(にゅうせん)がいくらか発達した女性化乳房、腹壁脂肪過多、筋力低下、性欲低下、骨密度の低下など多彩な症状を示します。男性乳がんやメタボリック症候群、糖尿病などを成人期に発症しやすい体質も伴います。さらに、男性ホルモン不足による更年期障害や骨粗鬆(こつそしょう)症を中年以降に発症しやすい体質も伴います。

発語の障害、言語の障害の可能性も高く、これが学校や社会での学習障害の原因となります。性自認は大多数が通常男性ですが、性同一性障害を伴う人もいます。

なお、46, XY/47, XXYのモザイク型で正常なXYの染色体が混在するタイプの場合には、少ないながらも精巣内で精子形成も認められ、子供を持つことができる人もいます。

外見上からの診断が難しく、思春期前にクラインフェルター症候群と診断されるのは、10パーセントに満たないともされています。多くは成人となり、男性不妊の原因精査によって診断されています。

クラインフェルター症候群の検査と診断と治療

小児科、ないし内分泌科の医師による診断では、通常、血液を用いた染色体検査を行い、クラインフェルター症候群と確定します。

また、血液検査を行い、男性ホルモンのテストステロンの低値、黄体化ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)高値を確認します。精液検査を行い、無精子症または極乏精子症を確認します。

小児科、内分泌科の医師による治療では、テストステロン補充療法を行います。通常、一生涯継続することになります。思春期に治療開始できた場合、正常な第二次性徴の発達など、良好な効果が期待できます。

男性不妊症に対する治療として、卵細胞質内精子注入法を行うと、健常児の出産も可能になってきています。

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...