2022/08/10

🇪🇭はやり目

感染してから1~2週間で発症し、結膜の充血や、上下のまぶたの裏側を覆っている眼瞼(がんけん)結膜に細かいブツブツができて、目がゴロゴロするような異物感が生じます。目やにも多くなります。

10日~2週間程度で、症状は治まります。時には、黒目の角膜に斑点(はんてん)ができることもありますが、だいたい2週間前後で消失します。

医師による治療では、結膜炎の段階での有効な薬剤がないため、対症療法的に抗炎症剤の点眼を行い、細菌による混合感染を防ぐために抗菌剤の点眼を行います。さらに、角膜炎の症状が認められる際は、ステロイド剤の点眼を行います。

はやり目、すなわち流行性角結膜炎は感染力が強いため、早めに治療を行い、周囲の人に感染させないように注意しましょう。特に、新生児や乳幼児では、細菌の混合感染で角膜穿孔(せんこう)を起こすことがあるので、注意が必要です。

>感染を予防するには、感染者本人は手をよく洗い、手で目をこすったり、顔に触れたりしないことです。周囲の人も手洗いをしっかりと行い、感染者のタオルを共有しないなど、清潔にするよう心掛けましょう。

🇲🇷原田病

眼球を覆っている、ぶどう膜が炎症を起こす疾患の一つ

原田病とは、眼球を覆っている、ぶどう膜の一部あるいは、すべてが炎症を起こす疾患。ぶどう膜とは、虹彩(こうさい)、毛様体、脈絡膜の総称です。

ぶどう膜は、眼球の外膜と内膜に挟まれた中間の層です。この層の膜は外から見えませんが、ぶどうの色をしていて、形も果物のぶどうによく似ており、虹彩、毛様体、脈絡膜の三つの部分で構成されています。

虹彩は、瞳孔(どうこう)の周囲にある色の付いた環状の部分で、いわゆる茶目に相当する部分です。カメラレンズの絞りのように開いたり閉じたりして、眼内に入る光の量を調整します。

虹彩に続く毛様体は、いくつかの筋肉が集まった部分で、目のピント合わせをします。毛様体が収縮すると、水晶体が厚くなって近くの物に焦点を合わせることができ、毛様体が緩むと、水晶体が薄くなって遠くにある物に焦点を合わせることができます。同時に、毛様体で作られる房水は、目の内圧を一定に保つのに重要な働きをしています。

>脈絡膜は、毛様体の縁から眼球後部の視神経のところまで広がっている部分。最も血管に富んで色素の多い組織で、網膜を裏打ちして目に栄養を与え、暗室効果を作って目を保護する役割を果たしています。

このぶどう膜の一部、あるいは全体が炎症を起こすのが本症ですが、炎症がぶどう膜の一部に限定されている場合は、その場所によって前部ぶどう膜炎、中間部ぶどう膜炎、後部ぶどう膜炎と呼ばれます。ぶどう膜全体に及ぶ炎症は、びまん性ぶどう膜炎、もしくは全ぶどう膜炎と呼ばれています。

また、ぶどう膜炎は、炎症を起こしている部位によって虹彩炎、脈絡膜炎、網膜脈絡膜炎と呼ばれることもあります。網膜脈絡膜炎は、脈絡膜とその上の網膜の両方に及ぶ炎症です。普通、片側の目だけに炎症が出ますが、両目に出ることもあります。

ぶどう膜に対する過剰な自己免疫反応や、細菌、ウイルス、真菌(かび)などによる感染が原因となることがありますが、原因を特定できないこともしばしばで、特発性ぶどう膜炎と呼ばれます。

原田病は頻度の高いぶどう膜炎として、ベーチェット病、サルコイドーシスとともに三大ぶどう膜炎に挙げられています。三大ぶどう膜炎はいずれも、目ばかりでなく、それぞれの疾患に特徴的な全身症状が認められます。原田病とサルコイドーシスは自己免疫系の異常が原因で発症し、ベーチェット病は原因不明で、ウイルス説、アレルギー説、自己免疫説などが考えられています。

原田病では、色素細胞に対する自己免疫反応が起こることが原因と考えられ、目のぶどう膜だけでなく、色素細胞がある脳、皮膚、毛髪、内耳などの組織も侵されるため、ぶどう膜・髄膜炎症候群とも呼ばれています。

なぜ色素細胞に対する自己免疫反応が起こるのかは、不明。遺伝的素因が関係しているといわれており、白血球の血液型に当たる組織適合抗原(HLA)の中の特定の型(DR4やDR53)が深く関わっているといわれています。

発熱、のどの痛みなどの風邪のような症状、耳鳴り、難聴、めまい、頭痛などが、目の症状に先立って現れることもあります。時に、頭皮にピリピリするなどの違和感が出てきます。目の症状は、まぶしい、目の奥のほうが痛い、物が見えにくいなどが、通常、両目に現れます。 網膜と脈絡膜の間に水がたまり、滲出(しんしゅつ)性網膜剥離(はくり)を伴います。

原田病は、日本人を含め、アジア系の人種に多くみられます。

原田病の検査と診断と治療

治療が遅れると炎症が慢性化しやすいので、早めに眼科を受診します。

医師が眼底検査を行うと、網膜剥離を伴う特徴的な炎症像がみられます。この滲出性網膜剥離は炎症に伴って起こるもので、通常の網膜に裂孔ができて起こる網膜剥離と違って、手術の必要はありません。炎症を鎮めることによって治ります。

造影剤を注射して蛍光眼底造影検査を行うと、網膜剥離に相当するところで造影剤が漏出するなどの特有の所見が得られます。髄液検査や聴力検査なども必要です。

原田病の治療は、目に永久的な障害が出るのを防ぐため、早期に開始する必要があります。治療の中心は、炎症を鎮めるための副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)の大量点滴投与です。

ホルモンの一種でるステロイド剤を大量に投与すると、血栓の形成、高血圧、血糖上昇などの重い副作用が出る危険性もあるので、入院が必要です。超大量のステロイド剤を短期間に集中して投与する、いわゆるパルス療法が行われることもあります。

前部ぶどう膜炎を併発することも多く、局所的な治療として、消炎のためのステロイド剤の点眼や、虹彩と水晶体の癒着防止のための散瞳(さんどう)剤の点眼も行われます。

多くの場合、発症後2カ月くらいで回復期に入り、網膜剥離の消失に伴って視力も戻ってきます。回復後、眼底は色素脱失により、いわゆる夕焼け状眼底と呼ばれる特徴的な状態になります。色素細胞の損傷によって、皮膚や頭髪、まゆ毛などの一部が白くなることもあります。

目の炎症は一度治ってから再発することもあり、注意が必要です。特に、過労やストレスが再発の誘引になることがありますので、日ごろから規則正しい生活を心掛け、心身ともに十分な休養を取ることが大切です。

万一、原田病と診断された時は、症状の経過や治療内容をよく書き留めておき、転居などで通院する医療機関が変わった場合でも、スムースに治療を引き継げるようにしておくことが望ましいといえます。

🇲🇷パラノイア

不自然でない妄想を抱く精神疾患の一つ

パラノイアとは、脳および心の機能的、器質的障害によって引き起こされる精神疾患の1つ。偏執病、妄想症、妄想性障害、妄想性パーソナリティ障害とも呼ばれます。

1つ以上の奇異ではない内容の妄想、すなわち誤った思い込みが、少なくとも1カ月間持続するのが特徴です。

パラノイアにおける妄想は、理にかなっていて、不自然な内容のものではありません。例えば、パラノイアでは「友人はスパイで、自分は隠しカメラで監視されている」、「隣人はスパイで、犬を毒殺しようと企てている」などという妄想を抱くのに対し、統合失調症(精神分裂病)では「友人が小さくなって、自分の耳の中に入っている」、「隣人が蚊に変装し、窓の外を舞っている」などという明らかに不自然な妄想を抱きます。

統合失調症が健康な状態と明らかに一線が画される重度の精神疾患であるのに対して、パラノイアでは人格は保たれ、感情や行動の異常はみられません。このパラノイアは、しばしば統合失調症、器質性精神疾患、妄想性人格障害、うつ病のような他の障害と同時に起こります。発症する年代は一般的に、成人期中期から後期にかけてです。パラノイアの亜型も、いくつか知られています。

すべてのパラノイアの本質的な特徴は、偵察される、だまされる、陰謀を企てられる、追跡される、毒を盛られる、感染させられる、わざと中傷される、嫌がらせを受ける、配偶者や恋人に裏切られるなどという被迫害信念のような妄想システムで、実生活でも起こり得るような状況を含んでいます。

一般的に、怒り、恨み、そして時折の暴力は、これら誤った被迫害信念に付随したもの。疑い深さも共通しており、誰(だれ)にでも向けられるか、または一人あるいは複数の人に向けられます。

パラノイアの病型として、色情型、誇大型、嫉妬(しっと)型、被害型、身体型、混合型、特定不能型の7タイプが認められています。

色情型では、他の誰か、通常は社会的地位の高い人が自分と恋愛関係にあるというのが、妄想の中心的なテーマになります。電話、手紙、メール、さらには監視やストーカー行為などで、妄想の対象と接触を図ろうとすることもあり、この妄想から出た行動が法律に触れることもあります。

誇大型では、肥大した価値、権力、知識、身分、あるいは神や有名な人物との特別なつながりに関するものが、妄想の中心的なテーマになります。例えば、自分には偉大な才能があるとか、重要な発見をしたなどと思い込みます。

嫉妬型では、自分の性的パートナーが不誠実であるというのが、妄想の中心的なテーマになります。あいまいな証拠から誤った推測をして、配偶者や恋人が浮気をしているなどと思い込みます。このような状況では、傷害事件に発展する恐れもあります。

被害型では、自分、もしくは身近な誰かが何らかの方法で悪意をもって扱われているというのが、妄想の中心的なテーマになります。陰謀をたくらまれている、見張られている、中傷されている、嫌がらせをされているなどと思い込み、裁判所など行政機関に訴えて、繰り返し正当性を主張しようとすることもあります。まれに、害を及ぼそうとしている想像上の迫害者に報復しようとして、暴力的な手段に訴えることがあります。この被害型は、犯罪行動、特に暴力的な犯罪行動と最も関連がある病型なのです。

身体型では、自分に何か身体的欠陥がある、あるいは自分が一般的な身体疾患にかかっているというのが、妄想の中心的なテーマになります。体に異常があるとか体臭がするなど、体の機能や特性に捕らわれ、寄生虫感染といった想像上の身体疾患の形を取る場合もあります。

混合型では、妄想が上記の病型の2つ以上によって特徴付けられますが、どのテーマも優性ではありません。特定不能型では、妄想のテーマが特定できません。

パラノイアの検査と診断と治療

パラノイア(妄想性障害)は、もともと妄想性人格障害がある人に発症します。その妄想性人格障害の人は成人期初期より、他人の行動や行動理由に対して全般的な不信と疑い深さを示します。発症初期には、人に利用されていると感じる、友人の誠実さや信頼に執着する、悪意のない言葉や出来事の中に自分を脅す意味が隠されていると読む、恨みを抱き続ける、軽視されていると感じるとすぐに反応するなどの症状がみられます。

精神科、神経科、心療内科の医師による診断では、妄想を伴う統合失調症などの他の精神疾患のほか、薬物乱用や投薬、一般的な身体疾患による直接的な生理的作用がないことが確認されれば、本人の病歴に基づいてパラノイアと判断されます。

医師の側は、発症者の危険性がどの程度か評価する必要があります。とりわけ、本人がどの程度妄想に捕らわれていて、自分の妄想に基づいてどのような行動をするつもりなのかを評価することが、犯罪行動を防ぐ意味からも重要です。

パラノイアから重度の障害に至ることは、まずありません。しかし、次第に妄想に深くのめり込むようになることがあります。大抵の場合、仕事を続けることができます。

医師と発症者の良好な関係が、奇異ではない内容の妄想、すなわち誤った思い込みの治療に役立ちます。危険な病態だと判断されるケースには、入院治療が必要となります。一般に、抗精神病薬は用いられませんが、場合によっては症状を抑える効果があります。長期治療の目標は本人の関心を妄想からもっと建設的で満足感のあるものへ移すこととされますが、かなり難しい目標です。

🇬🇲バルトリン腺炎

膣の入り口付近に位置する左右一対のバルトリン腺に、細菌が侵入して炎症が起こる疾患

バルトリン腺炎(せんえん)とは、膣(ちつ)の入り口付近に位置する左右一対の分泌腺に、細菌が侵入し、その細菌に感染することが原因で炎症が起こる疾患。

バルトリン腺は、大前庭(だいぜんてい)腺とも呼ばれ、女性が性的興奮を起こした時に、性行為を滑らかにする薄い乳白色の粘液を分泌する働きがあります。男性のカウパー腺、あるいはクーパー腺、尿道球腺とも呼ばれる分泌線に相当します。

バルトリン腺の存在について最初に記述されたのは17世紀で、デンマークの解剖学者キャスパー・バルトリン(1655年〜1738年)によります。

その粘液の排出管であるバルトリン腺は、長さ約2センチのスポイトのような袋で、腟の入り口の横、小陰唇の下端にある腟前庭に開口しています。

エンドウ豆ほどの大きさのバルトリン腺の開口部から、ブドウ球菌、淋菌(りんきん)、クラミジア・トラコマーティス、あるいは腸内細菌のバクテロイデスや大腸菌などが侵入し、それらの細菌に感染すると、急性期には排出管に炎症が起こり、開口部が発赤して、はれ、痛み、違和感が現れます。時には、小陰唇の外側、大陰唇にまで、発赤、はれ、痛みが現れます。

バルトリン腺炎による炎症が治まった後に、開口部の閉鎖が起こると、本来は外に分泌される粘液が排出管内部にたまり、拡大して嚢胞(のうほう)を形成します。嚢胞は液体を満たした袋を意味し、これをバルトリン腺嚢胞といいます。

多くはバルトリン腺の片側だけに形成され、小さい際には気が付かないこともあります。次第に大きくなって、嚢胞がクルミ大ないし鶏卵大などさまざまな大きさになると、膣の入り口付近の時計に例えると5時または7時の位置に、紙でふいた際に丸いものが手に触れるようになってきます。

歩行時や性交時に軽い痛みが生じることもありますが、細菌感染を伴っていなければ無痛性のことも多く、また自然に開口部が再び開いて、排出管内部にたまった粘液が流れ出して、嚢胞が縮小してしまうこともあります。

一方、バルトリン腺嚢胞内に細菌感染が起きると、うみが排出管内部にたまって、膿瘍(のうよう)を形成します。膿瘍はうみの塊を意味し、バルトリン腺膿瘍といいます。

発赤、はれ、痛みがはっきりしてきて、膿瘍全体に押すと痛む圧痛を認めます。

さらにひどくなると、大陰唇も膨張して熱感を伴う腫瘤(しゅりゅう)を形成し、歩行時や性交時に痛みが生じたり、何もしていないのに感じる自発痛が生じたりします。ひどい痛みによって、歩行困難に陥ることもあります。

バルトリン腺炎が悪化して、バルトリン腺膿瘍になる前に症状に気付き、婦人科、産婦人科を受診することが勧められます。

バルトリン腺炎の検査と診断と治療

婦人科、産婦人科の医師による診断では、嚢胞のある位置や、圧痛のある膿瘍の位置で判断し、排出管内部にたまっている粘液やうみを培養して原因となっている菌を特定します。

婦人科、産婦人科の医師による治療では、急性期では、抗生物質(抗生剤、抗菌剤)の全身投与、局所の湿布を行います。バルトリン腺炎の段階では、多くが抗生物質の投与で治ります。

慢性化して嚢胞を形成した場合は、排出口をつくる手術を行うこともあります。膿瘍を形成し、痛みが強い場合は、切開してうみを出す手術を行います。再発を繰り返す場合や、嚢胞や膿瘍が大きい場合は、嚢胞や膿瘍を摘出する手術を行います。

予防法は、膣や外陰部の清潔を保ち、バルトリン腺内への細菌の侵入を防ぐ以外にありません。特に、大小便の排出の時や性交渉の時に清潔を心掛けることです。

🇬🇲バレット食道

食道炎が慢性に経過して、障害された食道粘膜がなくなり、胃の粘膜に似た別の粘膜で覆われる状態

バレット食道とは、胃と接している食道の部分に炎症が起こり、食道の粘膜が胃や腸の粘膜に似た別の粘膜に変質した状態。食道バレット上皮とも呼ばれます。

食道は、体表の皮膚に似た扁平上皮(へんぺいじょうひ)という粘膜で覆われています。一方、胃や腸は、円柱上皮(えんちゅうじょうひ)という別の粘膜で覆われています。その食道本来の扁平上皮の粘膜が、胃や腸の粘膜に似た円柱上皮の粘膜に置き換わった状態です。

さらに、置き換わった粘膜の80パーセントは、食道がんの発生に関係する腸上化生(ちょうじょうかせい)上皮を含んでいて、がんに対するリスクが高くなります。

欧米では、食道がんの約半数はバレット食道から発生する腺(せん)がんであり、食道本来の扁平上皮から発生する扁平上皮がんと同程度となっています。日本では、食道がんの90パーセント以上は扁平上皮から発生するがんで、バレット食道から発生する腺がんはまれです。しかし、ライフスタイルの欧米化、肥満の増加、高齢者の増加などとともに、将来的にバレット食道から発生する腺がんの増加が危ぶまれています。

バレット食道の原因については明らかではないものの、後天的なもので、食道への胃酸の逆流が関係するといわれています。例えば、食道へ胃液が逆流して胸焼けなどの症状が現れる逆流性食道炎、あるいは胃食道逆流症が長期的に続くことで、障害された食道の扁平上皮がなくなり、円柱上皮で覆われると考えられています。

このバレット食道は、本来の食道壁と胃壁の境界部である食道胃接合部から食道側への円柱上皮のはい上がりが3センチ未満のショートバレット食道と、円柱上皮のはい上がりが3セント以上のロングバレット食道とに大きく分けられます。

欧米ではロングバレット食道が多くなっていますが、日本ではほとんどがショートバレット食道で、ロングバレット食道まで進行するケースは少数です。その理由は、現在のところ明らかではないものの、一因としてヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の胃内での感染率の差が関係するといわれています。

つまり、日本ではヘリコバクター・ピロリの感染率が高いことが影響して、委縮性胃炎の頻度が高く、胃酸分泌領域が減少し食後の胃酸分泌量の絶対量も少なくなります。一方、欧米ではヘリコバクター・ピロリの感染率が低いことが影響して、委縮性胃炎のケースは少ない傾向にあります。

しかし、ヘリコバクター・ピロリを薬で除菌すると、胃酸分泌量が増えるために、逆流性食道炎を含む胃食道逆流症になりやすくなり、逆流性食道炎が長期的に続くとバレ ット食道になリやすくなります。

バレ ット食道の主な自覚症状は、胸がチリチリ焼けるように感じる胸焼けや、胸の痛み、口が酸っぱくなるように感じる呑酸(どんさん)感。全く無症状の場合も少なからずあり、胃の内視鏡検査でたまたま発見されるのが一般的です。

バレット食道が出現した場合には、内科、あるいは気管食道科を年1〜2回、定期的に受診して内視鏡検査を受けることが勧められます。バレット食道にも段階があり、定期的な検査を受けることで早期の治療が可能になります。

バレット食道の検査と診断と治療

内科、気管食道科の医師による診断では、内視鏡検査で、食道と胃の接合部から口の方向へ向かって観察します。食道の扁平上皮に比べて、赤っぽい円柱上皮が発見されたら、組織を採取して腸上化生上皮を含んでいるかどうかを調べる必要があります。また、染色液を使って扁平上皮と円柱上皮の区別をして、病巣範囲を把握したり、食道がんに関連する腸上化生上皮の有無を調べることができます。

内科、気管食道科に医師による治療では、日本における腺がん発生の頻度が少ないことから、無治療、あるいは胃酸の逆流による食道粘膜の障害を減らすために、胃酸の分泌を抑える薬を使うだけで、経過をみます。

しかし、バレット食道がなくなることはありません。欧米では、バレット食道自体の治療として、変質した粘膜を内視鏡を使って焼き、食道本来の粘膜の再生を誘導するいくつかの方法が行われていますが、日本ではほとんど行われていません。

粘膜が変質した範囲が3センチ以上になるロングバレット食道の場合、腺がんが発生するリスクが通常より高率に上昇するため、年1〜2回、定期的な内視鏡検査が必要です。一方、粘膜が変質した範囲が3センチ未満のショートバレット食道の場合、リスクは低くなりますので、定期的な内視鏡検査の間隔を長めにできると考えられています。

バレット食道に腺がんが発生した場合には、現在のところ食道の扁平上皮がんに対する対応と同じです。内視鏡治療、手術、放射線治療、化学療法を主に、レーザー療法、電気凝固療法、温熱療法、免疫療法など、いくつかの治療法を適切に組み合わせて行われます。

💅バロニキア

爪の周囲の皮膚が赤くはれる状態

バロニキアとは、爪(つめ)の周囲の皮膚が赤くはれ、うみが出ることもある状態。爪甲(そうこう)周囲炎、爪囲炎とも呼ばれています。

これには、化膿(かのう)性のバロニキアと、カンジダ性のバロニキアのほか、学齢期に発症しやすい稽留(けいりゅう)性肢端(したん)皮膚炎などがあります。

化膿性のバロニキアは、黄色ブドウ球菌、連鎖球菌などの化膿菌が入って急性の炎症を起こすものです。爪囲部のささくれ、小さな切り傷、足では爪切りの際の傷や爪が皮膚に食い込んでいるところなどから感染が起こり、爪囲が赤くはれ上がり、自発痛、圧痛が強くなります。

この化膿性のバロニキアは、ひょうそ、ひょうそうとも呼ばれます。ひょうそという疾患名は、指趾(しし)の化膿性炎症全体に付けられるもので、化膿性のバロニキアから、さらに炎症症状が真皮深層、脂肪織にまで拡大した指の蜂窩織(ほうかしき)炎、あるいは骨、関節部の化膿性炎症が真皮にまで波及した時にも付けられます。

従って、ひょうそという時には、指先全体が赤紫色に強くはれ、痛みが強い状況で、うみが出たり、皮膚が破れ、潰瘍(かいよう)になることもあります。

カンジダ性のバロニキアは、水仕事の機会の多い中年女性や糖尿病などの人に起こりやすいものです。主に、爪の周囲が赤くはれ上がり、押すと圧痛があり、爪と皮膚の間から、うみが出ることがあります。非常に治りにくく、次第に爪も黄白色に濁り、厚くなってきます。これはカンジダ菌という真菌、いわゆるカビの一種が爪と皮膚の間で増殖し、爪にも入っているからです。この疾患は、指間びらん症と合併することもあります。

稽留性肢端皮膚炎は、極めてまれに起こるものです。四肢の末端に紅斑(こうはん)や小さな膿疱(のうほう)を突然生じ、徐々に爪にまで炎症が拡大して、爪が変形してしまいます。文字通り、皮膚炎が肢端(四肢末端)に稽留して(とどまって)しまうという訳です。

現在では、膿疱性乾癬(かんせん)の一種と考えられるようになってきました。原因については不明な点が多く、必ず生じる爪の変形についても、そのメカニズムは現在のところ不明なままです。

バロニキアの検査と診断と治療

バロニキア(爪甲周囲炎)の検査では、細菌培養を必ず行います。慢性に経過し症状の軽い場合は、カンジダ性のバロニキアなどを疑ってカビの検査も行います。

治療としては、軽い化膿性のバロニキアの場合は、抗生物質含有軟こうの塗布で十分です。治りが悪い場合には、抗生物質の内服と、局所の安静が必要となります。 カンジダ性のバロニキアの場合は、抗真菌剤を使用します。

また、化膿が強い場合は、切開排膿が必要となります。糖尿病性のものは、血糖コントロールの悪い時にできやすいので、食事や生活の改善が必要です。

予防法としては、バロニキアは水仕事の機会の多い女性や調理人などがかかりやすく、特にささくれ、小さい傷がある時に菌が入りやすくなりますので、指先に小さい傷がある時には、まめに消毒を行い、水などに指先をつける時には、手袋をして直接、触らないように注意する必要があります。

稽留性肢端皮膚炎の診断を確定するためには、皮膚生検を行う場合もあります。ただし、爪のみに症状が現れる爪乾癬との鑑別が難しいといわれています。

治療には、強めのステロイド外用剤を使用することが多いのですが、十分な効果が得られない場合もあります。ほかには、ビタミンA誘導体であるエトレチナートの内服や免疫抑制剤の内服、紫外線療法などが試みられています。生命に影響を及ぼすことはありませんが、再発を繰り返しやすく、非常に治りにくい疾患です。

🇲🇱半陰陽

第一次性徴における男女の性別の判別が難しい状態

半陰陽(はんいんよう)とは、外性器の形態からでは男性か女性かが判断できない状態、あるいは外性器の形態と染色体によって決められる性とが異なっている状態。インターセックス、両性具有などとも呼ばれます。また、この状態を有する人を半陰陽者、インターセクシュアル、両性具有者、あるいは、ふたなりと呼ぶこともあります。

胎児期の性の分化発達の過程で生じた単体奇形の一種で、その過程で細胞分裂がうまくいかなかったり、性を決定する遺伝子に異常が起こったりすると半陰陽が起こると考えられています。

男性の性腺(せいせん)である精巣(睾丸〔こうがん〕)と女性の性腺である卵巣の両方を有する真性半陰陽と、性腺は男女いずれか一方のみしかないものの、外性器の形が染色体による性別と逆になっている仮性半陰陽などがあります。仮性半陰陽には、 染色体による性は男性なのに女性のような外性器を有する男性仮性半陰陽と、逆に染色体による性は女性なのに男性のような外性器を有する女性仮性半陰陽があります。

真性半陰陽は、半陰陽のうちでは最も高度な先天性の形態異常で、まれな疾患です。精巣と卵巣が別々に存在するものと、一つの性腺内に精巣と卵巣の両方の組織が共存するもの(卵精巣)とがあります。外性器は女性的なことも、男性的なこともあり、そのいずれとも決定しにくいこともあります。

思春期になると、精巣、卵巣が働くため、二次性徴の異常が現れてきます。男性では、女性ホルモンが卵巣から分泌され、生理が始まったり、乳房が大きくなったりします。女性では、精巣から分泌される男性ホルモンの作用で、ひげが生えたり、声変わりしたりします。 

仮性半陰陽は、副腎(ふくじん)皮質機能高進により男性化症状を現す副腎性器症候群、精巣の女性ホルモンの分泌が男性ホルモンよりも優勢になったために女性化が起こる精巣性女性化症候群など、ホルモン異常によるものが多く、ほかに遺伝性のもの、染色体の異常によるもの、あるいは全く原因不明のものなどがあります。

男性仮性半陰陽は、胎児に男性ホルモン(テストステロン)が作用しなかったり、男性を決定付ける遺伝子が作用しなかったりして起こります。男性ホルモン合成障害を来す疾患や男性ホルモンを活性化する酵素の欠損症などが原因になります。

男性仮性半陰陽では、陰茎が小さく、また停留精巣を合併していることが多いので、陰嚢(いんのう)に精巣が触れません。従って、女性の外性器のように見えます。鼠径(そけい)ヘルニアの合併も多い傾向にあります。

女性仮性半陰陽は、胎児の早い時期に大量の男性ホルモンが作用して起こると考えられ、多くは副腎皮質ホルモンを作る酵素に異常のある先天性副腎過形成症(副腎性器症候群)が原因です。このほか、母体から男性ホルモン様作用を受けて起こる、非進行性のものもあります。

女性仮性半陰陽では、あたかも陰茎があるかのように見えます。

半陰陽の多くは、出生直後に医師や看護師によって発見されます。すでに外性器の形態を見ても男女の判別ができない場合には、性別の決定に染色体や性染色体の検査が必要となることがあります。

新生児では、染色体上の性と社会生活上の性とを一致させないほうがよい場合、つまり染色体は男性型であっても女性としたほうが自然な社会生活を送れるであろうと考えられる場合もあるので、子供の性の決定に関しては、外性器や内性器の有無を参考に医師と両親がよく話し合って行います。

出生時に発見することが望ましいのですが、思春期や成人後に半陰陽が発見されることもあります。幼児期から早くも第二次性徴が起こった早発思春期の場合、あるいは思春期になって女の子のはずなのに初経(初潮)がなかったり、陰核の肥大や多毛などの男性化が起こってくる場合、反対に男の子のはずなのに乳房の肥大が認められるなどの場合には、できるだけ早く小児科、あるいは内分泌代謝内科などの専門医の診断を受けるようにします。

半陰陽の検査と診断と治療

小児科、内分泌代謝内科の医師による真性半陰陽の診断では、染色体検査や、ホルモン測定などの検査を行います。最終的には、試験開腹をし、性腺の生検をして精巣、卵巣の両方があることを確認します。

この真性半陰陽の治療で最も大事なことは、育てていく性を決めることです。一般的には、染色体や精巣、卵巣によって将来の性を決めるより、現在の外性器の状態、将来の生活、本人の希望や心理状態をも考慮して、男性か女性かを決めます。性腺は、選択した性に従って男性は精巣を、女性は卵巣を残します。卵精巣は、性のいかんによらず切除します。

半陰陽の子供は陰茎も腟(ちつ)も未熟なことが多いので、男性として生きていく決定をした場合には陰茎形成術を、女性として生きていく決定をした場合には腟形成術を行います。また、選択した性に応じた性ホルモンの補充療法も必要に応じて行います。

小児科、内分泌代謝内科の医師による男性仮性半陰陽、女性仮性半陰陽の診断では、染色体分析検査、性ホルモンの測定、副腎皮質ホルモンの測定や超音波検査、X線造影検査、CTやMRI検査による男性性器、女性性器の存在確認を行います。

女性仮性半陰陽、男性仮性半陰陽の治療は、真性半陰陽の場合と同じです。原因として多い先天性副腎過形成症(副腎性器症候群)の場合には、内服薬によって不足しているホルモンを補充します。

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...