2022/08/12

🇮🇸急性腸炎

細菌感染による急性腸炎に注意

急性腸炎とは、消化管である腸管が炎症を起こした状態をいい、その経過が急性のものを指します。多くは、まず急性胃炎に始まり、次いで小腸、大腸に炎症が波及します。

この急性腸炎は、感染性のものと非感染性のものに分けられます。病気の程度は、寝冷えをしておなかを壊した、風邪を引いて下痢をしたなどという軽症のものから、コレラや赤痢などという重症のものまで、原因によってさまざまです。

原因もさまざまでな中で、細菌感染によるものが多くみられます。細菌感染では食中毒の原因となる細菌がよく知られていて、腸炎ビブリオ菌、サルモネラ菌、黄色ブドウ球菌、カンピロバクター菌、ウェルシュ菌、病原性大腸菌O-157などが挙げられます。

いわゆる伝染病を引き起こす細菌では、赤痢菌、腸チフス菌、パラチフス菌、コレラ菌などが挙げられます。

細菌感染以外に、ウイルス、真菌、原虫、寄生虫などの感染も原因になりますが、ウイルスを除けば多いものではありません。ウイルスが感染して起こる急性腸炎には、流行する傾向があります。腸管ウイルスのエンテロウイルスによるもの、乳児下痢症の原因となるロタウイルスによるものが多くみられます。

非感染性の急性腸炎では、暴飲暴食など飲食の不摂生、特定の食べ物に対するアレルギー、抗生物質などの薬剤、風邪や寝冷え、暑さなどによる一時的な体調不良によるものなどが挙げられます。また、鉛、水銀、砒(ひ)素などの化学物質中毒、有毒魚介類中毒、有毒キノコ中毒によるものもあります。

下痢が主症状で、高齢者や子供は脱水症に注意

非感染性の急性腸炎では、多くは軽症であり、普通は下痢が主な症状で、せいぜい吐き気、嘔吐(おうと)、腹痛、おなかがゴロゴロする腹鳴(ふくめい)を伴うくらいです。高熱が出ることはほとんどなく、症状は大抵2~3日で治まります。ただし、薬剤に起因する急性腸炎の中で抗生物質が原因のものは、適切な治療を行わないと重症化するケースがあります。

感染性の急性腸炎では、主に下痢、腹痛が起こり、しばしば急性胃炎を合併するために胃の重苦しさ、胃痛、吐き気、嘔吐を生じることがあり、一般に高熱も出ます。非感染性の急性腸炎よりも症状が激しく、症状の出方も原因、年齢によって異なるので、注意が必要です。

下痢は、炎症が大腸や直腸に広がるほど強くなり、1日2~3回から20回以上になることがあります。便は、水様便のほか、大腸が侵されると粘液が多量に混じり、時に血便のこともあります。

また、食べた物が小腸でほとんど消化されずに、消化不良便になっていることもあります。腸内からできるだけ早く、病原菌やウイルス、毒素などを体外に出してしまおうとする生理的な働きによるものです。

腹痛は、へその辺りに重苦しい痛みが出たり、鈍痛や、数分ごとに痛くなったり、軽くなったりを繰り返す場合もあります。

合併症としては、激しい下痢により体内の水分や、ナトリウム、カリウムなどの電解質が失われ、体液が不足して起こる脱水症が重要です。口が渇き、全身の脱力感が強くなります。

高齢者の場合は、発熱、腹痛などの症状が出にくくなる反面、脱水症にはなりやすいという特徴があります。口が渇き、舌が乾燥していたら、脱水症の危険があります。また、体力的に余裕のない子供の場合も、脱水症になりやすいので、下痢をして元気がなくなってきたら要注意です。

感染性の急性腸炎では、治療を怠れば長時間、症状が持続します。時には、激しい中毒症状から発熱、うわ言などの脳症状を合併して、死亡することもあります。家庭で対処はできませんので、医師による治療が必要です。

薬物療法と食事療法による治療

医師の側では、便の検査を最も重視し、細菌は培養して確定診断をします。

ごく軽い急性腸炎は、医師がほとんど治療をしなくても、自然に治ることもあります。一般には、安静にし、腹部を温め、有害物質が腸内に残存すると思われる場合には、初期に下剤を服用して一掃します。

また、細菌感染によるものは、サルファ剤や抗生物質を使用しますが、治療はすべて医師の指示のもとに行います。自己判断は耐性菌を作って経過を悪くしたり、長引かせたりするので避けてください。

初期の食事はついては、口の渇きに応じて番茶、果汁、薄いスープくらいを摂取します。下痢が激しい時には、医師によって適切な点滴が行われます。

急性症状の回復に伴って、重湯、くず湯、脂肪の少ないスープなどの流動食から、おかゆ、うどん、トースト、ビスケットなど半流動食や半熟卵、脂肪の少ない魚肉、煮野菜などを摂取します。牛乳は1、2日は使用せず、その後から飲用します。

果汁はよいのですが、生の果物は控えます。サイダー、酒、香辛料も避けましょう。熱すぎるものや、冷たすぎるものもよくありません。

🇮🇸急性滴状乾癬

扁桃炎などに引き続いて、水滴くらいに小さい発疹が急速に現れる皮膚疾患

急性滴状乾癬(てきじょうかんせん)とは、扁桃(へんとう)炎や風邪などに引き続いて、1センチほどの水滴状の赤い発疹(はっしん)が急速に現れる皮膚疾患。急性滴状類乾癬とも呼ばれます。

急性滴状乾癬は多くの場合、突然、発症します。扁桃炎や風邪などウイルスまたは溶連菌の上気道感染の1週間から3週間後に、腹部や背中、尻(しり)などの体幹や大腿(だいたい)部に水滴くらいから1センチ大くらいの赤い発疹が現れます。

この小さな赤い発疹は、体の狭い部分に限定して現れる場合もあれば、一度に多発して体中に広まって現れる場合もあります。

一見、乾癬という皮膚疾患、すなわち表皮の細胞の新陳代謝が異常に早くなり、皮膚の細胞が垢(あか)になる角化が早く進む皮膚疾患に、よく似ていることから乾癬の一種とされていますが、症状は比較的軽く、かゆみや痛みを感じることはほとんどありません。

乾癬との大きな違いは、発疹部に集まって血管に炎症を起こしている白血球のタイプの違いで、発疹を表面から見ただけではなかなか区別はつきません。

やがて、小さな赤い発疹の表面は、垢(あか)のような銀白色の鱗屑(りんせつ)となり、その一部がポロポロとはがれ落ちます。

いったん急性滴状乾癬を発症すると、再発を繰り返し慢性化しやすいのですが、一度出た一つ一つの小さな赤い発疹はそう長続きせず、すぐに治る傾向にあります。再発を繰り返すと、新しい発疹と古い発疹が皮膚に混在し、古い発疹は色素沈着や、皮膚の一部の色が白く抜け落ちる白斑(はくはん)を残すことがあります。

再発を繰り返す傾向がある一方、扁桃炎や風邪がよくなると症状も改善し、自然に治癒することもあります。しかし、時には、滴状乾癬から移行して、乾癬を発症することもあります。

急性滴状乾癬は、男女を問わず子供から30歳未満の成人に、比較的多くみられる傾向が強いのが特徴です。

自然に治癒することもありますが、もちろん治療を受けたほうが早く治るため、急性滴状乾癬の症状に気が付いたら早めに皮膚科、ないし皮膚泌尿器科を受診したほうがよいでしょう。

急性滴状乾癬の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断は、乾癬の場合と同じように、特徴的な発疹とその分布、経過から判断します。細菌検査をすると、溶連菌、インフルエンザ菌などが検出されることがあります。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、軽い場合は、炎症を抑制するステロイド(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)の外用剤を用います。多くは1カ月から3カ月で治癒します。

発疹の範囲が広くて目立つ場合は、内服剤を用いたり、紫外線治療を行います。

内服剤には、かゆみに有効な抗アレルギー剤から、炎症を抑制するステロイド剤や免役抑制剤まで、多くの選択肢があります。急性滴状乾癬の原因が感染症であった場合、内服剤の服用によって感染が終息すれば、多くは数週間で治癒します。

紫外線治療には、波長や使用する薬の違いにより、PUVA(プーバ)療法、UVB療法、ナローバンドUVB療法などがあります。

🇮🇸急性熱性好中球性皮膚症

発熱とともに、痛みを伴う隆起性の紅斑が急に発生する疾患

急性熱性好中球性皮膚症とは、急な発熱、痛みを伴う隆起性の紅斑(こうはん)、血液中での好中球の増加を特徴とする炎症性の疾患。難治性の皮膚疾患で、スウィート病とも呼ばれます。

1964年、イギリスの皮膚科医であるスウィート氏が初めて報告しました。原因は、細菌などに対して、白血球の一種である好中球の機能が高まって生じる過敏反応と考えられます。

約20パーセントのケースで、血液疾患や悪性腫瘍(しゅよう)を伴います。特に白血病や骨髄異形成症候群などの血液疾患を伴うことが多く、関節リウマチや膠原(こうげん)病を始めとする自己免疫性疾患を伴うこともあります。内臓病変と関係する皮膚変化を意味するデルマドロームの一つと考えられています。

上気道感染、いわゆる風邪に似た症状が先行して現れ、数日から数週間で39度前後の発熱とともに顔、首、四肢に、境界がはっきりした、周囲から隆起した紅斑、または毛穴の炎症である毛嚢(もうのう)炎に似た丘疹(きゅうしん)が多発します。

紅斑の大きさは1センチから3センチで、しばしば痛みや圧痛がみられます。紅斑の上に、水膨れや、膿(うみ)を持った水膨れである膿疱(のうほう)を伴うこともあります。

色調は鮮紅色ですが、経過とともに暗紅色ないし紫紅色に変わります。治療をしないと、高熱が続き、紅斑が小さくなったり大きくなったりを繰り返します.

急性熱性好中球性皮膚症の症状に気付いた場合、できれば入院可能な病院の皮膚科を受診することが勧められます。急性熱性好中球性皮膚症が治った後に、白血病や骨髄異形成症候群などの血液疾患が発症することがあり、注意が必要です。

急性熱性好中球性皮膚症の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、病変部の皮膚を数ミリ切り取って調べる病理組織検査である皮膚生検を行い、真皮に好中球やその核の破片が密に浸潤していること、血管炎がないことを確かめます。

血液検査を行うと、好中球を主体とする白血球数の増加、赤沈(血沈)やCRPなどの炎症反応の高進が認められます。CRPは蛋白( たんぱく)質の一種で、体内に炎症が起きたり組織の一部が壊れたりした場合に、血液中に現れます。

時に、原因不明の膠原病類縁疾患であるベーチェット病などとの区別が難しいことがあります。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、軽症の場合、非ステロイド系消炎鎮痛剤などの内服を行います。一般的には、副腎(ふくじん)皮質ステロイド剤の点滴注射、または内服を行います。ヨウ素を補給するヨードカリや、皮膚の組織を守るDDS(レクチゾール)も、多くの症例で有効です。

🇫🇮急性肺血栓塞栓症

飛行機内などの座席で長時間、同じ姿勢を取り続けて発症する血栓症

急性肺血栓塞栓(そくせん)症とは、飛行機内などで長時間、同じ座席で同じ姿勢を取り続けることにより、静脈内に生じた血栓が血液の流れに乗って肺動脈まで達し、突然に肺動脈を閉塞する疾患。エコノミークラス症候群、ロングフライト症候群、ロングフライト血栓症、旅行者血栓症、静脈血栓塞栓(そくせん)症、深部静脈血栓症とも呼ばれます。

飛行機のエコノミークラス以外の座席、飛行機以外の列車、バス、自動車などの交通機関や施設の座席でも、発症することがあります。また、病の床に長期間就いている人や、手術前後で血管の中に点滴や輸血をするための管を長期間入れて床に就いている人にも、発症することがあります。

飛行中の機内では乾燥した環境のため、長時間のフライトでは体の水分が失われ、血液が濃縮して固まりやすい状態にあります。さらに、狭い座席に同じ姿勢でずっと座り続けていることで、下肢や腰が圧迫され静脈血の心臓への巡りが徐々に悪くなり、体の深い組織内にある下腿(かたい)静脈や、大腿(だいたい)静脈、あるいは骨盤内の深部静脈内に、血の固まりである血栓ができやすくなります。

そして、およそ6時間を超える長時間のフライトを経験した時には、血栓ができる傾向があります。

血栓が左右両側の下肢の深部静脈内に同時にできることは極めてまれで、左右どちらかの膨らはぎなどの内部に不快感、鈍い痛み、はれなどを起こします。一般的には4対1の割合で、左側の下肢に発生します。

軽症の血栓が、さらに血液の流れに沿って心臓側に徐々に延び、成長していって、大腿部あるいは骨盤内の深部静脈までふさいでしまい、片方の下肢に強い痛みやむくみが出たり、チアノーゼを起こして青紫色に変色したりします。

中等症の血栓が、座席から立ち上がった際や飛行機を降りて歩き始めた際などに血管壁からはがれ、血流に乗って大静脈を上行していったん心臓に入り、次いで、酸素を取り入れる器官でもあり、血液のフィルターでもある肺動脈に詰まると、急性肺血栓塞栓症となります。

肺動脈が詰まると、その先の肺胞には血液が流れずガス交換ができなくなる結果、換気血流に不均衡が生じ、動脈血中の酸素分圧が急激に低下し、呼吸困難を起こします。また、肺の血管抵抗が上昇して、全身の血液循環に支障を来し、脈の増加、失神などを起こします。

軽度であれば胸焼けや発熱程度で治まりますが、最悪の場合は死亡に至ることもあります。

血栓が心臓を経て肺動脈に詰まる重症例は、10時間以上の長時間のフライトで発症する傾向にあります。男性よりも女性にやや多く、40歳代後半から50歳代に発症しやすいと見なされています。

とりわけ、下肢に静脈瘤(りゅう)のある人、下肢の手術をした人、血液の凝固能に異常のある人、経口避妊薬を服用している人、妊娠中や出産後の人などは、発症しやすいので注意が必要とされます。

従来、発症者の数は日本では非常に少ないと考えられてきましたが、近年の調査によると、急性肺血栓塞栓症と診断された人の数は急に増加しており、年間の発症者数は10万人当たり約3人程度と報告されています。

この急性肺血栓塞栓症は、急性期に適切な治療がなされないと、慢性期に静脈血栓後症候群に悩まされることとなります。静脈高血圧のために、皮膚の浅い部分にある皮(ひ)静脈(表在性静脈)に静脈瘤ができたり、下肢の倦怠(けんたい)感、むくみが生じたり、栄養不足のために色素が沈着したり、皮膚炎や湿疹(しっしん)を起こしやすくなったり、治りにくい潰瘍(かいよう)ができたりすることもあります。

急性肺血栓塞栓症の検査と診断と治療

循環器科、呼吸器科などの医師による診断では、皮膚の浅い部分にある皮(ひ)静脈(表在性静脈)に起こる血栓性静脈炎などの紛らわしい疾患と区別するため、静脈造影、超音波ドプラー法、造影CT、MRA(核磁気共鳴検査)、血流シンチなどを行います。また、原因となる血液凝固異常の有無や、血栓を生じたことを確認するために、血液検査も行われます。

循環器科、呼吸器科などの医師による治療では、軽度であれば血栓の遊離による肺塞栓を予防するため、下肢のむくみや痛みが軽減するまで安静を保ち、下肢を高く上げておくことが必要です。

痛みに対しては非ステロイド抗炎症薬を使い、血栓の治療と予防には抗凝固剤や血栓溶解剤を使います。下肢のチアノーゼがひどい場合や、症状が重く急を要する場合には、カテーテル治療や血栓摘除術によって直接、肺動脈の血栓を除去します。経皮的心肺補助循環装置(PCPS)を用いて、弱った心肺機能を代行させることもあります。将来、再発を繰り返したり、静脈血栓後症候群が生じる危険もあり、治療には十分な注意が必要とされます。

肺動脈に詰まった血栓の治療と同時に、下肢の静脈にまだ血栓が残っているか否かの検査も行い、残っている血栓によって再発し致命的な病状に陥る可能性がある場合は、下大静脈という腹部の大きな静脈にフィルターを入れて、血栓が肺動脈まで達する前に捕捉(ほそく)する治療を行うこともあります。

なお、急性肺血栓塞栓症の予防には、血液が固まりにくいようにミネラルウオーターやお茶などで水分を補給したり、長時間に渡って同じ姿勢を取らないようにし、2~3時間ごとに通路を歩いたり、下肢の屈伸運動などをしたり、着席中にも足を少しでも動かしたり、ふくらはぎを軽くもむなどして、下肢の血液循環をよくすることが有効です。

🇫🇮急性白血病

急激な経過をたどる白血病

急性白血病とは、血液のがんともいわれる白血病が急激な経過をたどる疾患。白血病とは、未熟な細胞である白血病細胞が骨髄の中で異常に増殖するため、正常な血液細胞の増殖が抑えられてしまう疾患で、血液が白く見えます。

急性白血病は、その増殖している白血病細胞の種類が骨髄系の細胞か、リンパ球系の細胞かによって、急性骨髄性白血病(AML)と急性リンパ性白血病(ALL)に分類されます。

白血病全体のうち、急性白血病が約4分の3を占め、残り4分の1のほとんどが慢性骨髄性白血病です。急性白血病のうち、急性骨髄性白血病(AML)は成人に多く、急性リンパ性白血病(ALL)は小児に多い傾向があります。白血病の原因は不明ですが、放射線被曝(ひばく)やある種の染色体異常、免疫不全症がある場合に、発症頻度が高いことが知られています。

急性白血病は、ある日突然、それまで健康であった人に発症してきます。症状には個人差があって多彩ですが、典型的な例は発熱、全身のだるさ、皮下や歯根などの出血傾向、貧血、骨痛、関節痛など。風邪と同じような症状が続き、出血傾向があり、発熱が通常の風邪薬でなかなかよくならないと訴えて、医療機関を受診するケースもよくみられます。

高年齢者の場合、典型的な症状を欠くことがあり、出血傾向や貧血だけが現れることが少なくありません。

急性白血病の検査と診断と治療

急性白血病の大部分は、血液検査で確定診断ができます。まず、採取した血液から、赤血球、白血球、血小板の数の異常を調べます。急性白血病であれば、赤血球の数が減少して貧血の症状があるほか、血小板の数も減少して出血の原因となっています。一方、白血球の数は著しく増加しており、染色してみると白血病細胞が大部分を占めているのがわかります。

血液検査のほか、骨髄を調べて同様に白血病細胞の異常な増殖を認めれば、診断が確実となります。

急性白血病の治療では、全身の血液中に白血病細胞が流れているため、手術などの局所療法は不可能です。従って、抗がん剤による強力な全身的化学療法が行われます。

小児に多い急性リンパ性白血病(ALL)では、あらゆるがんの中で、化学療法が最も効果があります。抗がん剤を投与すると、90パーセント以上の症例で、血液や骨髄の中から白血病細胞が消失し、正常な血液や骨髄と違わない状態になります。これを寛解(かんかい)と呼びます。

成人に多い急性骨髄性白血病(AML)では、急性リンパ性白血病(ALL)に比較して、治療は困難です。その理由の第1は、薬の有効性が劣ることです。

第2には、合併症が発生しやすいことです。寛解にするためには、一時的に血液、骨髄中から、正常な細胞をも含めて白血病細胞を一掃し、骨髄から正常な細胞が作り出されるのを待ちます。成人の場合、この回復に2〜3週間が必要で、この期間中に感染や出血などの合併症が起こると、危険な状態に陥ることがあるのです。とりわけ、60歳以上の人では回復力が弱いため、重い合併症がしばしば発生します。

近年、大きな進歩があったのは急性前髄球性白血病で、ビタミンAの活性型であるオールトランスレチノン酸により、80パーセント以上の症例で寛解が認められるようになりました。オールトランスレチノン酸という薬剤は、白血病細胞の分化を促進して効果を示します。

白血病は、寛解となっても再発する恐れがあります。これを予防するには、地固め療法あるいは強化療法といわれる化学療法を行います。この時期に骨髄移植を行う研究が近年、進んでいます。2年間、再発しなければ、高率に治癒となります。

小児の場合、治癒の指標である5年生存率が60パーセント以上という報告もあり、治癒可能ながんの代表と見なされます。成人の場合、25パーセント以上の症例が長期生存しています。

🇫🇮急性鼻炎

鼻粘膜の炎症が急激な経過をとる鼻炎

急性鼻炎とは、鼻腔(びくう)の粘膜にさまざまな原因で炎症が生じる鼻炎の中で、急激な経過をとるもの。急性鼻炎の多くは、いわゆる鼻風邪と同じと考えられます。

大部分が、風邪のウイルスによって引き起こされます。代表的なウイルスとして、ライノウイルス、RSウイルス、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、コロナウイルスがあります。ウイルス感染に合併して、細菌感染を生じることもあります。

症状として、まず鼻の中が乾いたような感じがし、次いで、くしゃみ、鼻汁(びじゅう)、鼻詰まりが起こります。鼻汁は初め水性で、それが数日後には黄色く粘性に変わり、細菌感染を合併すると青緑色っぽい膿(のう)性の鼻漏(びろう)になります。

咽頭(いんとう)痛、咳(せき)、たん、しわがれ声、発熱、食欲不振、頭痛、全身倦怠(けんたい)感、筋肉痛などを伴うこともあります。小児では、いびきが大きくなることもあります。

急性鼻炎の検査と診断と治療

風邪に伴って鼻汁や鼻詰まりがなかなか治らない、あるいはいびきが続くなどの症状がある場合は、合併症を起こしている可能性があるので、一度耳鼻咽喉(いんこう)科を受診したほうがよいでしょう。

鼻鏡による鼻やのどの所見で、おおかたの診断がつきます。花粉症と紛らわしいことがありますが、花粉症の場合は目の症状を伴うことが多いため、この有無が診断のポイントになります。鼻汁の細胞診で急性鼻炎の場合は、白血球の一種の好中球や、脱落した鼻粘膜上皮細胞がみられますが、花粉症の場合は白血球の一種の好酸球がみられます。

風邪の治療と同様、対症療法が主体になります。患部に直接、薬の注入、塗布を行います。鼻汁を抑えるために抗ヒスタミン薬を、鼻をかみやすくするために粘液溶解薬を投与します。そのほか、鎮痛剤、解熱剤、抗生物質の処方など、全身的な治療もします。小児は鼻をかめないため、後(こう)鼻漏となって咳の原因となりがちなので、鼻をよく吸引することが大切です。

通常は数日間で治りますが、副鼻腔炎を併発すると膿性の鼻漏がなかなか治りません。また、特に小児は急性中耳炎を起こしやすくなります。

急性鼻炎にかかったら、安静が第一です。鼻やのどに適当な温度、湿度、きれいな空気も必要。特に、室内を乾燥させないように気を付けます。

初期はウイルスが飛び散って伝染するので、感染防止への配慮が必要。マスクは伝染にはたいした効果はありませんが、吸気の清浄化、加温、加湿という面では多少の効果があります。

🇳🇴急性副睾丸炎

睾丸に付着している副睾丸に、急性の炎症が起こる疾患

急性副睾丸(こうがん)炎とは、男性の陰嚢(いんのう)内に左右各1個あって卵形をしている睾丸の上面、および後面に付着している副睾丸に、急性の炎症が起こる疾患。急性精巣上体炎とも呼ばれます。

副睾丸、すなわち精巣上体は、睾丸から出た精子を運ぶ精管が睾丸、すなわち精巣のすぐ近くで膨れている部分に相当します。精管はこの副睾丸から、精嚢腺(せいのうせん)と前立腺につながり、そこで分泌された精液と一緒になって尿道に出ていくのが、射精です。炎症の多くは、睾丸の上面に付着している副睾丸に起こります。

尿の中の細菌などが副睾丸に入り込んで、感染を起こすことが原因です。通常、尿には炎症を起こすほどの細菌はいませんが、前立腺肥大症、尿道狭窄(きょうさく)、膀胱(ぼうこう)結石などの疾患があると、尿は汚れて細菌が増殖しますから、急性副睾丸炎を起こしやすくなります。これらは高齢者に多く、大腸菌などの一般的な細菌が原因菌となります。

一方、青年層にみられる場合は、性行為感染症(STD)の1つである尿道炎から引き起こされます。尿道炎の原因であるクラミジアや淋菌(りんきん)が副睾丸に至ることによって、炎症を起こします。

症状は、陰嚢内の副睾丸の一部の軽い痛みで始まります。自覚症状としては、睾丸そのものの痛みのように感じるかもしれません。徐々に陰嚢全体に痛みが広がり、陰嚢が硬くはれ上がり、皮膚が赤みを帯びてきます。

歩行時に激しく痛んだり、はれているところを圧迫すると強い痛みを感じ、38度以上の発熱を伴うことがしばしばあります。さらに悪化すると、陰嚢の中にうみがたまり、破れて出てくることもあります。精管に沿って炎症が広がっていると、大ももの付け根の鼠径(そけい)部や下腹部の痛みを感じることもあります。

普通は、膿尿(のうにょう)、細菌尿を伴って症状が全般的に強いのですが、クラミジアの感染では症状が軽度で膿尿もみられないことがあります。睾丸に炎症が及ぶことはまれで、睾丸にはれ、圧痛は認められません。

急性副睾丸炎の検査と診断と治療

適切な抗生剤を早期に使用することによって比較的治りやすい疾患ですが、悪化すると治療が困難になり慢性化してしまったり、精巣を摘出しなければならないことがあります。早めに泌尿器科の専門医を受診することが大切で、治療中は激しい運動や飲酒は控えます。

医師の側では、尿検査で尿中の白血球や細菌を検出します。クラミジア感染が疑われる場合も、尿で検査できます。細菌については、その種類とどのような抗生剤が効くかを同時に調べますが、細菌が検出されないこともまれではありません。また、全身への影響をみるため、血液検査で炎症反応などをチェックします。精索捻転(ねんてん)症や睾丸腫瘍(しゅよう)との区別が難しい場合もあります。

治療は、局所の安静と冷湿布、抗生剤の経口投与が主体となります。抗生剤は、尿路感染症に有効なユナシンなどのペニシリン系、セフゾンなどのセフェム系、クラビットなどのニューキノロン系が用いられます。また、サポーターなどで陰嚢を持ち上げることで、症状が和らぎます。発熱などの全身症状がみられる場合は、消炎鎮痛剤の投与とともに、入院した上で安静を保ち、抗生剤の点滴による治療が必要になります。

発熱を伴う急性期の炎症は、1〜2週間で治まります。副睾丸のはれや鈍い痛みは、数カ月続く場合が多く、時には副睾丸に硬いしこりが残ってしまうことがあります。初期の治療が不十分だと炎症が悪化してうみがたまり、陰嚢を切開してうみを出さなければならなかったり、睾丸を含めて副睾丸を摘出しなければならないこともあります。

後遺症として、慢性副睾丸炎に移行したり、副睾丸部の精子通過障害をもたらすことがあります。睾丸にも炎症が波及し、両側性であれば男性不妊につながることもあります。

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...