2022/08/12

🇺🇿外傷後ストレス障害(PTSD)

衝撃的な体験によって生じる精神障害

外傷後ストレス障害とは、衝撃的な出来事を体験することによって心の傷が生じ、さまざまなストレス障害を引き起こす疾患。心的外傷後ストレス障害、PTSD(Post-traumatic stress disorder)とも呼ばれます。

その出来事をありありと思い出すフラッシュバックや、苦痛を伴う悪夢が、特徴的です。心の傷は、心的外傷またはトラウマと呼ばれます。トラウマは本来、単に外傷を意味しますが、日本では心的外傷として使用される場合がほとんどです。

心的外傷を生じ得る出来事としては、地震、津波、洪水、火山の噴火といった大きな自然災害、原発事故、航空機事故、列車事故、自動車事故、火災、戦争といった人工災害、殺人事件、テロ、監禁、虐待、強姦〈ごうかん〉といった犯罪が挙げられます。

通常は衝撃的な出来事を体験しても、時間の経過とともに心身の反応は落ち着き、記憶は薄れていきます。しかし、あまりにもショックが大きすぎる時、個人のストレスに対する過敏性が強い時、小児のように自我が未発達な段階では、大きな障害を残すことがあるのです。とりわけ、幼少期などの成長過程で心的外傷が起きると、脳の発育にダメージを受け、海馬の不発達や委縮などを起こすこともあります。

外傷後ストレス障害(PTSD)の主要症状は、再体験、回避、過覚醒(かかくせい)の3つです。

1)再体験

原因となった外傷的な体験の記憶が、再体験されることをいいます。その形式として、次のいずれかをとります。

*誘因なく思い出される。

*悪夢にみる。

*フラッシュバック、体験に関する錯覚や幻覚。

*外傷に関連した刺激による主観的な苦痛。

*外傷に関連した刺激による自律神経症状を示す。

2)回避

苦痛な体験を思い出すような状況や場面を、意識的あるいは無意識的に避け続けるという症状、および感情や感覚などの反応性の麻痺(まひ)という症状を指しています。次のような症状があります。

*慢性的な無力感、無価値感が生じ、周りの人間とは違う世界に住んでいると感じる。

*感情や関心が狭くなり、人を愛したり喜ぶことができない。

*外傷記憶の部分的な健忘。

*外傷に関連した刺激を避けようとする。

3)過覚醒

常に危険が続いているかのような張り詰めた状態をいいます。交感神経系が緊張し、ささいな物音などにも反応し、パニックとなりやすくなります。次のような症状があります。

*入眠困難。

*いらだち。

*集中力の低下。

*張り詰めた警戒心。

*ささいなことでの過剰な驚愕(きょうがく)。

医学的には、上記の症状の6項目以上が外傷的な体験の後、1カ月以上持続し、自覚的な苦悩か社会的機能の低下が明らかな場合に、外傷後ストレス障害(PTSD)と診断されます。大半のケースでは、心的外傷を受けてから6カ月以内に発症しますが、6カ月以上遅れて発症する遅延型も存在します。

なお、症状が1カ月以上持続している場合に外傷後ストレス障害(PTSD)と診断するのに対して、1カ月未満の場合には急性ストレス障害(ASD:Acute Stress Disorder)と診断します。

衝撃的な出来事に遭遇した直後の1カ月以内に、重症の反応を生じるのが急性ストレス障害(ASD)で、外傷後ストレス障害(PTSD)にみられる再体験、回避、過覚醒の3大症状だけでなく、解離性症状と呼ばれる健忘や現実感の喪失、感覚や感情の麻痺などが強く現れます。

一般的なケアと専門的な治療

外傷後ストレス障害(PTSD)の症状自体は、衝撃的な出来事に対する正常な反応です。多くの人はショックな出来事を経験しても、時間の経過とともに心身の安定を取り戻していきますが、大きな心身の障害を残す場合には治療が必要となります。

対応としては、一般的なケアと専門的な治療に分けられます。一般的なケアとしては、安全、安心、安眠の確保に努め、二次的な心的外傷(トラウマ)を未然に防ぎ、自然の回復を促進します。疾患ついての心理的な教育も有効です。

症状が重い急性期には、あれこれと聞き出すことはよくありません。一時期、このような対応がデブリーフィングという名前で行われていましたが、現在では否定されています。心理的な配慮を持たない事情聴取や現場検証が、ストレスとなることに注意します。

専門的な治療としては、薬物療法と精神療法が有効です。不安、過敏症状、睡眠障害には抗不安薬、抑うつ症状には抗うつ薬が用いられ、最近ではSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が第1選択薬として用いられています。

精神療法としては、支持的なカウンセリングが中心ですが、恐怖体験の言語化と不安反応のコントロールを目指した認知行動療法、最近の新しい治療法であるEMDR(眼球運動による脱感作と再処理)があります。EMDRは、問題の記憶場面を思い浮かべながらリズミカルに目を動かすという方法で、外傷的記憶を処理するという効果があります。

また、発症者は外傷的記憶を思い出したくないために、あまり口に出さず、ただ我慢しているケースが多く、周囲からなかなか理解を得られないことがありますので、相談ができて心理的に支えてもらえる態勢を作るソーシャル・サポートの意義が重要です。特に、自我が未発達な幼小児には、早期から対応する必要があります。

🇰🇿外傷性鼓膜裂傷

何らかの外力により鼓膜が破れたり、穴が開く症状

外傷性鼓膜裂傷とは、何らかの外的な力が加わって、耳の奥にある薄い膜である鼓膜が破れたり、穴が開く状態。鼓膜裂傷、外傷性鼓膜穿孔(せんこう)とも呼ばれます。

鼓膜は、耳に入ってくる音を振動に変換し、耳小骨経由で内耳に伝える働きのほか、外耳と中耳を境界する役目をしている器官です。その構造は、直径約9ミリ、厚さ0・1ミリの薄い膜状で、耳の入り口から約3センチのところに位置しており、外耳道のほうに向かって開いたパラボラアンテナのような形態をしています。

体の中には、いくつかの膜状構造物がありますが、鼓膜は常に外界に交通しているため、外力に弱い器官といえるでしょう。外傷性鼓膜裂傷が発生するのは、鼓膜に対する外からの力の伝わり方によって、直達性外力によるものと介達性外力によるものとに分類されます。

直達性外力による外傷性鼓膜裂傷は、鼓膜に直接力が加わった場合、例えば耳かき、マッチ棒、異物などを誤って奥に入れてしまったりすると起こります。この直達性の鼓膜裂傷は鼓膜を破ってしまうだけでなく、耳小骨、顔面神経管、骨迷路に達してしまう危険があり、内耳性難聴、顔面神経まひを合併することがあります。

介達性外力による外傷性鼓膜裂傷は、耳に何かがぶつかることによって外耳道の急激な圧上昇が起こり、鼓膜がその圧変化に耐えられなくなり穴が開きます。具体的には、耳介部の平手打ちや、スポーツ中にボールが耳に当たったりすると起こります。また、爆発、爆風などによる外耳道の急激な圧上昇などの間接的な外力でも起こります。

頭部外傷によっても介達性の鼓膜裂傷を起こしますが、内耳振盪(しんとう)症、耳小骨連鎖障害、髄液漏が合併することが多く、一般に重症になります。

外傷性鼓膜裂傷の症状としては、直達性にせよ介達性にせよ、最初耳に痛みがあり、少し出血しますが、徐々に治まります。しかし、難聴、耳鳴り、耳閉感が残ります。

外傷性鼓膜裂傷の検査と診断と治療

耳鼻咽喉(いんこう)科の医師による診断では、鼓膜の視診と聴力検査を行います。鼓膜の視診では、耳鏡を使って裂傷の程度などを観察します。聴力検査では、音を聴神経へ伝える外耳・中耳・鼓膜に障害が生じたために起こる伝音性難聴か、音を感じる内耳から聴覚中枢路にかけて障害が生じたために起こる感音性難聴かを調べて、症状の進行状況を把握します。

耳鼻咽喉科の医師による治療では、外耳道に付着した血液や耳垢(みみあか)を取り除いてきれいにし、抗生物質や消炎薬を服用します。鼓膜に開いている穴が小さい場合は、通常、数日で鼓膜の穴はふさがります。

鼓膜は外耳道側から上皮層、固有層、粘膜層からなる3層構造をしており、いったん鼓膜が破れると、生体の修復機構が働き、まず上皮層の増殖が開始されます。次に固有層と粘膜層の修復が開始されていきます。この際に、上皮層が内側に入り込んでしまい、固有層、粘膜層の再生のじゃまをしてしまうことがあります。こうなると鼓膜に開いた穴はふさがらなくなってしまいます。

上皮層が内側に入り込んでいる状態が、耳鏡での観察で確認された場合は、穴の縁を薬や針を使って取り除きます。さらに、滅菌された薄い紙、被覆保護材料のキチン膜、植皮手術の時に使用する皮膚被覆用のシリコン付きコラーゲン膜などで、鼓膜表面を被い、鼓膜の再生を促進します。

自然治癒傾向が強く、ほとんどが2カ月以内に治癒しますが、鼓膜の穴が完全にふさがるかどうかは、2次的に起こった細菌感染の期間と穴の大きさに左右されます。

2カ月以上経過しても穴がふさがらない場合、鼓膜形成術が必要になります。フィブリン糊(のり)を使用した鼓膜形成術であれば、日帰り手術が可能な場合もあります。

外傷性鼓膜裂傷になった場合、鼓膜に穴が開いている状態なので、鼻を強くかまないように注意し、風呂(ふろ)に入る際は耳に水が入らないように注意しなければなりません。防水耳栓もあります。

🇺🇿外傷性視神経症

視神経管への打撃によって、視機能がさまざまに障害される疾患

外傷性視神経症とは、視神経管への打撃による視神経の損傷や、視神経管の骨折による視神経症。外傷の原因としては、前額部の強打、オートバイや自転車、自動車などによる交通事故、墜落事故などが挙げられます。

外傷性視神経症を起こすと、視神経線維そのものに対する一次障害と、組織への循環障害や浮腫(ふしゅ)、血腫による二次障害とが複合し、多彩な視機能障害が生じます。視神経は視覚情報を伝える100万本以上の神経線維を含んでいて、網膜に映った物の形や色、光などの情報を脳神経細胞に伝達するという役割を担っていますので、視神経線維が障害を受けると、物を見る働きも部分的にまたは完全に損なわれてしまうわけです。

大多数は、眉毛(まゆげ)部外側への打撃が視神経管部に到達した際の、浮腫や循環障害が原因となります。 視神経管は視束管ともいい、視神経が眼底から頭蓋(とうがい)内に入っていく際に通るトンネルのような細い骨の穴です。まれに、視神経管内の血腫による圧迫や、視神経管の骨折による視神経線維の直接損傷が原因になります。視神経管のほか、眼窩(がんか)内や、視神経が眼底より出る乳頭部位での傷害例もあります。

外傷性視神経症の視機能障害は、数分から数時間で急速に進むこともあれば、2~7日かけて徐々に進行することもあります。多くは中心視力が低下しますが、視野狭窄(きょうさく)のみで視力は低下しないこともあります。視野異常も中心が見えにくくなる中心暗点から、耳側もしくは鼻側半分が見えにくくなる半盲性障害までさまざまです。視機能障害が片目に生じるか両目に生じるかは、原因によって異なります。鼻出血を伴うこともあります。

ただし、受傷直後でまぶたがはれて目がふさがっていたり、意識障害のために、症状を自覚できない場合もあります。重症の場合では、明暗を識別する光覚を失うこともあるため、緊急に眼科専門医による検査、診断および治療が必要になります。

外傷性視神経症の検査と診断と治療

眉毛部に強い打撃を受けた際は、まず見え方の左右差を比較することが大切です。視力、視野に異常を感じたら、早急に眼科専門医の診察を受けます。まぶたがはれて目が開かない、または意識がない際でも、眼科医による瞳孔(どうこう)検査は最低限受けておきます。

外傷性視神経症の検査としては、ベッドサイドや救急外来でも可能な瞳孔反応検査が有用です。両目の瞳孔に交互に光を当てて対光反応の左右差をみるもので、左右差が明らかな場合は視神経障害の可能性が高くなります。この検査は、意識障害がある場合でも行うことができます。

瞳孔反応検査で陽性の場合は、視力、視野、眼底などの眼科的検査が行われます。画像診断として、視神経管(視束管)撮影、眼窩部CT検査が行われ、骨折や血腫の有無が確認されます。

画像診断で明らかな骨折が認められた場合は、脳外科医による視神経管開放手術が行われます。手術後は、薬物療法も併用されます。なお、薬物治療に反応していったん回復した視機能が再び悪化する場合は、血腫の存在が疑われるため、視神経管減圧手術が行われることがあります。

画像診断で明らかな骨折が認められなかった場合は、全身状態に問題がなければ、視神経管内の視神経線維の浮腫を軽減させる目的で、高張浸透圧薬の点滴と、副腎(ふくじん)皮質ステロイド剤の点滴が行われます。同時に、視神経保護作用のあるビタミンB12製剤や循環改善薬の内服が行われます。

ただし、受傷直後から明暗を識別する光覚の消失が持続するような重症の場合は、いずれの治療法においても視力予後は不良です。

🇫🇮疥癬(かいせん)

ヒゼンダニによって起こる皮膚疾患

疥癬(かいせん)とは、0.2〜0.4ミリ程度の体長のヒゼンダニ(疥癬虫)というダニの一種が寄生して、皮膚に起こる感染症。俗に、ひぜんと呼ばれています。

通常、疥癬は密な人間同士の接触により人肌を介して移るため、性行為に伴う感染が多く、性行為感染症(準性病)に含められています。しかし、衣類、タオルやシーツなどのリネン類、布団やベッドなどの大型寝具から感染することも少なくなく、家族内感染や、老人ホーム、病院、宿舎といった施設内感染もあります。近年は、寝たきりの高齢者などの介護行為を介して感染し、流行することで、問題になっています。

逆上れば、栄養摂取や衛生状態の悪かった第二次世界大戦後非常に流行しましたが、その後、疥癬は全く消滅しました。しかし、海外旅行が急激に増えた1970年代になって再び流行が始まり、なお続いています。ヒゼンダニに特効的な殺虫剤であるDDTやBHCが、人に対する毒性も強いために1971年に失効となって以降、それらに代わるものがまだないことにもよります。

ヒゼンダニに寄生されると、約1カ月の潜伏期間を経て、手指の間、陰部、腹部、わきの周囲など、顔と頭を除いた全身にかゆく、赤いブツブツした発疹(ほっしん)が現れます。特徴的なのは、疥癬トンネルと呼ばれる、細くて灰白色で長さ5ミリ~1センチくらいの発疹が手首や手指の間にできることです。疥癬トンネの中では、雌のヒゼンダニが産卵します。近年流行している疥癬では、この疥癬トンネルが認められるものが少なくなっています。

とてもかゆいのが症状の特徴で、入浴の後や運動の後など血行のよい時は、耐えられないほどのかゆみを伴うことがあります。一般的には、かゆみは夜間に最も強くなり、布団に入って体が温まると、激しいかゆみを覚えて不眠を来すこともあります。1度治って、2回目、3回目の再感染の場合には、比較的短期間で、かゆみを自覚することもあります。

まれに、基礎疾患があったりして全身状態のよくない場合には、ヒゼンダニが極めて多数増殖し、全身が赤くなったり、手足などの角質層に厚いガサガサした肌荒れのような発疹がみられます。これをノルウェー疥癬、ないし重症型疥癬と呼び、感染力が極めて強くなります。角質層の中には多数の虫体と虫卵(ちゅうらん)が含まれていて、ひどい時には100万~200万匹のヒゼンダニが寄生することになります。

そのヒゼンダニは、数千年も前からいる虫で、メソポタミア南部に栄えた古代バビロニアの時代から知られています。ナポレオン時代の戦争で疥癬の流行がフランス軍の戦意を失わせたのは有名な話で、現在もヒゼンダニは世界各国に散らばっています。

大変小さな虫のため、肉眼ではほとんど確認できません。ヒゼンダニの雌は、皮膚に取り付くと10~40分で角質層内に潜り込み、疥癬トンネルを作って1日2~3個の卵を産み続け、4~6週間で寿命を終えます。卵は3〜4日で孵化(ふか)して幼虫、若虫を経て約2週間で成虫になります。成虫の雄は、雌を探し求めて雌よりも活発に動き回ります。皮膚内で交尾後、雄は間もなく死にますが、雌はなお卵を産み続けるわけです。

成虫が人肌を離れた場合、25℃・湿度90%で3日間、25℃・湿度30%で2日間、12℃・高湿度で14日間生存可能ですが、50℃では湿度に関係なく約10分間程度で死にます。

疥癬の検査と診断と治療

皮膚症状から疥癬が疑われた場合、市販薬などで自己治療せず、皮膚科を受診して治療を受けてください。市販のかゆみ止めでは治りません。また、生活を共にしている家族や同僚などに、同じかゆみ、発疹、発赤の症状が出ていないかどうか確認し、感染の拡大を防ぐことが重要です。

医師が診断する方法は、皮膚に出ている症状です。疥癬トンネルなどを見付けて、疥癬だと診断します。また、皮膚の一部をメスやピンセットで削り顕微鏡で調べることで、ヒゼンダニの虫体、虫卵が見付かれば診断確定です。

標準的治療では、硫黄製剤の軟膏(なんこう)を1日1回、あるいはオイラックス軟膏を1日2回、全身に塗る方法が主に行われます。軟膏を首から下の全身に満遍なく、塗り残しなく、発疹部だけでなく全体に塗ることが、大事です。1回の薬剤使用料は、20グラムを限度とされます。

硫黄の入浴剤を併用する方法もあります。角質軟化作用のある10~20パーセント尿素軟膏の併用も効果的です。ただし、湿疹様変化を生じても、虫体や虫卵が生存している内はステロイド入り軟膏は使用しません。長期間ステロイド軟膏による治療を続けた場合、重症型のノルウェー疥癬となり得るからです。かゆみが激しい時は、抗ヒスタミン剤を内服します。

近年、疥癬に対する特効的な内服薬として欧米で使用されていたイベルメクチン(商品名:ストロメクトール)が、日本でも使用可能となりました。1回内服、経過により1週間後に再度内服することにより、ヒゼンダニは死滅するといわれています。

ノルウェー疥癬の重症例では、発症者は隔離入院しなければならず、家族は面会を自粛するように求められます。重症例では、安息香酸(あんそくこうさん)ベンジルやγ–BHC(ガンマ–ベンゼンヘキサクロリド)を全身に塗ることがあります。

普通の疥癬の多くは1カ月ほどで症状が軽快しますが、できればその後さらに1カ月程度治療を継続したほうがよいでしょう。皮膚をかくことや、硫黄製剤などによる皮膚への刺激のため、2次的に湿疹を伴ってくることもありますので、その治療も適宜必要になってきます。

硫黄製剤の使用のため皮膚があまりにガサガサして、かゆい時は、一時使用を中断し、白色ワセリンなどで皮膚を休ませます。ただし、硫黄製剤を使う以上は、ある程度のガサガサは覚悟しなければなりません。角質がはがれ落ちて、ヒゼンダニが早く落ちることも、治癒を早くするための一法です。

この他、日常生活で体を清潔にし、こまめな洗濯や熱湯消毒をすることなども、医師から指示されることになります。体は風呂に入って、石けんで良く洗い、洗髪もします。硫黄の入浴剤が効果を表しますが、効果を期待しすぎて濃度が過ぎると硫黄かぶれを起こすために、かゆみが出ることもありますので、注意が必要です。風呂の後、ヒゼンダニを殺虫できる軟膏を全身に塗ります。

疥癬は夫婦、親子間などで移りますので、念のため、シーツ、下着、洋服は毎日、取り替えます。ヒゼンダニは熱に弱いので、50℃のお湯に10分間つけてから、洗濯することが望まれます。熱風乾燥機も効き目がありますので、10分以上かけます。部屋については、こたつ、カーペットに特に注意し、毎日ていねいに電気掃除機をかけます。掃除機のパックは毎日、取り換えるようにします。

🇰🇷回旋筋腱板損傷

スポーツ障害や老化で、肩関節の回旋筋腱板に損傷が起こった状態

回旋筋腱板(けんばん)損傷とは、肩関節で上腕を保持している回旋筋腱板という筋肉と腱の複合体に、スポーツ障害や老化が原因で損傷が起こった状態。回旋筋腱板の略が腱板で、肩腱板損傷とも呼ばれます。

回旋筋腱板損傷には、挫傷(ざしょう)、炎症、一部分が切れる不全断裂(部分断裂)、全部が切れる完全断裂などがあります。

水泳肩、テニス肩、野球肩の原因に回旋筋腱板損傷が多くを占め、肩インピンジメント症候群などとも呼ばれています。肩峰下滑液包炎も回旋筋腱板に隣接する部位の炎症で、原因については同様と考えられます。

肩関節は一般的に、肩甲上腕関節(第一肩関節)のことを指します。この肩関節は肩甲骨と上腕骨との間の関節で、受け皿である肩甲骨の浅い関節窩(か)の上に、大きなボールである上腕骨頭が乗っているような構造をしており、人間の体の中で最も関節可動域が広く、ある程度の緩みがあるため、スポーツなどによって強い外力が加わると簡単に脱臼(だっきゅう)するのが特徴です。

肩関節の中には、上腕骨頭が肩関節の中でブラブラしないように肩甲骨に押し付ける役割の4つの小さな筋肉、すなわち前方から肩甲下筋、棘上(きょくじょう)筋、棘下筋、小円筋があります。これらの筋肉が上腕骨頭に付く部分の腱は、それぞれ境目がわからないように板状に付着しているために回旋筋腱板と呼ばれます。

回旋筋腱板は肩関節のさまざまな運動により圧迫、牽引(けんいん)、摩擦、回旋などの刺激を受けており、加齢とともに変性し、40歳ごろから強度の低下による損傷の危険性が高まります。重い物を持ったり、転倒による肩の打撲など軽微な外力が加わって損傷する場合もありますし、若年者ではスポーツ障害としてみられることもあります。

特に、肩峰および上腕骨頭に挟まれた棘上筋の腱は、肩関節の挙上時には肩峰と烏口(うこう)肩峰靭帯(じんたい)によって圧迫を受けています。これらの要因により退行変性を起こしやすく、回旋筋腱板の中では最も損傷を起こしやすいところです。

スポーツ障害としての回旋筋腱板損傷は、野球の投球、ウエートリフティング、ラケットでボールをサーブするテニス、自由形、バタフライ、背泳ぎといった水泳など、腕を頭よりも高く上げる動作を繰り返し行うスポーツが原因で起こります。腕を頭より高く上げる動作を繰り返すと、上腕骨の上端が肩の関節や腱の一部と擦れ合うため、腱の線維に微小な断裂を生じます。痛みがあってもその動作を続ければ、腱が断裂してしまったり、腱の付着部位の骨がはがれてしまうことがあります。

腕を頭より高く上げる動作や背中から回す動作を繰り返すと、上腕骨の上端が肩関節の反対側の骨である肩甲骨と擦れ合い、炎症を起こします。スポーツ選手では、激しい動きの際に肩を安定化させるインナーマッスルの機能が低下していると、回旋筋腱板損傷が発生します。

加齢により肩甲骨の動きが悪くなることも一因で、明らかな外傷によるものは半数で、残りははっきりとした原因がなく、日常生活動作の中で損傷が起きます。40歳以上の男性の右肩に多いことから、回旋筋腱板の老化と肩の使いすぎが原因となっていることが推測されます。

回旋筋腱板損傷の症状としては、肩が痛む、肩が上がらない、肩を上げる際に力が入らない、肩を上げる際に肩の前上面でジョリジョリという軋轢(あつれき)音がする、ある角度で痛みがあるなど、自然軽快しにくい特徴があります。肩の痛みは当初、腕を頭よりも高く上げたり、そこから前へ強く振り出す動作の際にだけ生じます。後になると、握手のため腕を前へ動かしただけでも痛むようになります。

通常は、物を前方へ押す動作をすると痛みますが、物を体の方に引き寄せる動作では痛みはありません。炎症を起こした肩は、特に夜間などに痛むことがあり、眠りが妨げられます。また、腕を肩よりも高く上げた状態で肩峰を抑えると、痛みます。

手が後ろに回らなくなる、いわゆる四十肩、五十肩と診断され、長い間治らない人の中に、回旋筋腱板損傷が見逃されていることがあります。

回旋筋腱板損傷の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、MRI(磁気共鳴画像)検査が有用で、上腕骨頭の上方の回旋筋腱板部に断裂の所見がみられたりします。また、いくつかの方向に腕を動かしてみて、特定の動きや、特に腕を肩よりも高く上げる動作で痛みやピリピリ感を伴うことで、回旋筋腱板損傷と確定されます。

スポーツなどによる疲労性のものでは、肩の痛み、特に運動時痛を伴います。広範囲断裂では、布団の上げ下ろしや洗濯物を干す際の挙上障害などがあります。転倒などの急性外傷によるものでは、受傷時に突然肩の挙上が不能となり、同時に肩関節痛を感じます。断裂が小さいと、挙上は除々に可能となる場合もあります。

整形外科の医師による治療では、断裂などの損傷を生じた肩関節の回旋筋腱板を使わずに休め、肩の筋肉を強化します。回旋筋腱板のすべてが断裂することは少ないので、残っている回旋筋腱板の機能を賦活させる肩の筋肉強化は有効です。

安静時や夜間の痛みが強い場合には、内服や外用の消炎鎮痛剤、関節内注射により和らげます。水溶性副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)の局所注射も、炎症を抑えるのに用います。物を前方へ押しやる動作や、肘(ひじ)を肩より高く上げる動作を伴う運動はすべて避けます。

肩の筋肉強化では、ゴムチューブによるカフ(回旋筋腱板)エクササイズを行い、インナーマッスルを鍛え、肩の回旋筋腱板のバランスを回復させます。カフエクササイズは肩関節の疾患において一般的な訓練となっており、ゴムチューブによる軽い抵抗、もしくは徒手による無抵抗にて、外旋や肩甲骨面上の外転などを行って、回旋筋腱板の筋活動を向上させます。強すぎる抵抗は大胸筋や三角筋に力が入ってしまい、軽い抵抗に反応する回旋筋腱板の働きを阻害してしまうので、十分注意する必要があります。

カフエクササイズでは、腕を体側に付けて、前腕を床と平行にしてゴムバンドを持ちます。肘を支点としてゴムバンドを引きながら、この腕を前方向、後ろ方向、横方向(手が体から離れる向きと、腕を胸の前に引き寄せる向き)に動かします。この運動は、肩の回旋筋腱板のバランスを回復させ、腕を頭よりも高く上げる動きを含む動作中に回旋筋腱板がぶつからないようにする働きがあります。

断裂が特に重度な場合は手術も行われ、回旋筋腱板が完全に断裂していたり、1年たっても完治しない場合が対象となります。手術には、関節鏡視下手術と通常の直視下手術があります。

関節鏡視下手術のほうが体に負担がかからず、手術後の痛みが少ないために普及してきていますが、大きな断裂では、縫合が難しいために直視下手術を選択するほうが無難です。

手術では回旋筋腱板がぶつからずに動かせるように、肩の骨から余分な部分を切除します。同時に、回旋筋腱板の修復も行います。手術後は、約4週間の固定と2~3カ月の機能訓練が必要です。

🇵🇹蟹足腫

皮膚の傷が治る過程で、本来は傷を埋めるための組織が増殖して、しこりになったもの

蟹足腫(かいそくしゅ)とは、傷が治る過程において、本来は傷を埋めるための組織が過剰に増殖し、皮膚が赤く盛り上がってしこりになったもの。ケロイドとも呼ばれます。

蟹足腫の症状は肥厚性瘢痕(はんこん)に似ていますが、組織の過剰増殖が一時的で、傷の範囲内に限られるものを肥厚性瘢痕といい、ゆっくりしながらも持続的、進行性で傷の範囲を超えて周囲に拡大するものが蟹足腫に相当します。

蟹足腫には生まれ付きの体質的な素因も大きく影響するといわれており、本来は体を修復する機能が働いて小さな白い傷で治るはずのものが、その治る途中で組織の過剰な生体反応が起こるために、皮膚の赤く硬い状態が長く続き、徐々に赤みや硬さが強くなっていきます。蟹足腫と呼ばれるように、しばしば皮膚の緊張する方向に蟹(かに)の足のような形状の突起を生じて広がり、大きくなっていきます。

病変部の拡大とともに、中心部はしばしば赤みが少なくなって平らになりますが、元通りの皮膚には戻りません。痛み、かゆみも伴います。

一説には、皮膚の表皮の下にある真皮を作る線維芽細胞が、コラーゲンを過剰に分泌するために蟹足腫を生じると考えられていますが、詳しい原因はよくわかっていません。

帝王切開などの手術の縫合跡や、切り傷、やけどなどの跡のほか、ピアスの穴、にきびの跡、BCG予防接種の跡、本人が気付かないような小さな傷跡から生じます。また、傷跡のないところにもできて大きくなる真性(特発性)の蟹足腫というものもあり、あご、前胸部、肩部、上腕の外側、上背部、恥骨(ちこつ)部など、皮膚が引っ張られる部位によく発生します。同じ人でも、ケロイドを生じやすい部位と生じにくい部位とがあります。

蟹足腫の見た目が気になる場合は、皮膚科、皮膚泌尿器科、あるいは形成外科の医師を受診し、病変部の大きさや時期に適した治療を受けることが勧められます。

蟹足腫の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による診断では、通常、見た目だけで確定できます。ほかの疾患、特に悪性腫瘍(しゅよう)などの可能性を捨て切れない際には、組織の一部を採取して検査します。

皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による治療では、圧迫療法、薬物治療、外科的治療が主となります。

圧迫療法は、スポンジ、シリコンゲルシート・クッションなどを病変部に当て、サポーター、包帯、粘着テープなどで圧迫する方法です。手術後や外傷では、傷が治ったら早いうちに圧迫療法で傷跡のケアをすると、蟹足腫になる率を低く抑えることができます。

薬物治療としては、ステロイド軟こう(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン軟こう)を病変部に塗ったり、ステロイド剤を病変部に直接注射する方法が効果的です。トラニラストという抗アレルギー剤の内服が行われることもあります。

外科的治療は、蟹足腫の厚みがあり大きい場合に有効です。蟹足腫は引っ張られる力により悪化するため、蟹足腫部分を切除し、皮膚をZ字のようにジグザグに縫い合わせると、引っ張られる力を分散させることができます。

切除後は早期から、再発を防ぐための放射線治療を行う必要があります。コラーゲンが異常に増えて再発するのを抑えるため、数日間に分けて放射線の一種、電子線を当てます。医療機関によっては、切除後早期から、ステロイド剤を病変部に直接注射することもあります。

その後、半年から1年間は傷に力が入らないような生活を心掛け、粘着テープを張るなどして皮膚を圧迫します。この方法で8〜9割は治るとされています。しかし、運動や仕事を切っ掛けに再発する例もあり、しばらく安静な生活を送る必要があります。

🇵🇱外側型野球肘

野球のピッチャーに多く発症し、利き腕の肘の外側に炎症や痛みが起こる関節障害

外側(がいそく)型野球肘(ひじ)とは、投球動作による腕や手首の使い過ぎで慢性的な衝撃がかかることによって、利き腕の肘の外側に炎症や痛みが起こる関節障害。

外側型野球肘の代表的なものは、肘の外側にある上腕骨小頭の骨軟骨が壊死(えし)する肘離断性骨軟骨炎で、上腕骨小頭骨軟骨障害とも呼ばれます。特に、小学校高学年から中学校低学年の野球のピッチャーなどが肘を酷使して発症します。ピッチャーに次いで多く発症するのは、キャッチャー。

成長終了後の野球のピッチャーなどが肘を酷使して発症する外側型野球肘には、橈骨頭(とうこっとう)障害、尺骨(しゃくこつ)神経まひがあります。橈骨頭障害は、肘から手首にかけての長い骨である橈骨と、肩から肘にかけての長い骨である上腕骨がつながっている部分、つまり肘頭周囲に骨の出っ張りが生じ、関節の動きが悪くなったりする障害です。尺骨神経まひは、肘の皮膚の表面近くを通る尺骨神経が損傷して、まひを生じ、手指のしびれや感覚障害、運動障害が起こる障害です。

ここでは、少年野球のピッチャーなどが肘を酷使して発症する肘離断性骨軟骨炎について説明します。

肘離断性骨軟骨炎は繰り返す投球動作における微小な外反ストレスの蓄積により、上腕骨小頭の骨軟骨、すなわち肘関節を形成する上腕骨の遠位端の外側部にある球状の部位に変性、壊死が生じます。症状として、肘関節を伸ばしたり、曲げたりする時に痛みが出たり、動きが悪くなったりします。この初期の段階では、投球動作を中止することのみで、自然治癒が促されることがあります。

>実際は、練習や試合での投球動作の終了後は速やかに痛みが消失するために、単なる使いすぎによる痛みと勘違いされることが多く見受けられます。

放置して投球動作を続けると症状が進行し、壊死を起こした骨軟骨片が肘の関節面から遊離して関節内遊離体となり、関節の中をあちらこちらと移動することになります。

この関節遊離体に最も特有な症状が、嵌頓(かんとん)症状。肘関節の運動の最中に、突然、遊離体が関節の透き間に挟まってしまい、激しい痛みを起こして関節の運動が不能となる状態です。何かの拍子に遊離体が外れれば、急速に痛みは治まりますが、嵌頓症状を繰り返していると、滑膜炎と呼ばれる関節内の炎症や変形性関節症を起こしやすくなります。しかし、遊離体があっても、嵌頓症状が必す起こるわけでもありません。

そのほか、関節遊離体の症状として、関節の痛みや、だるさ、はれを感じたり、肘の曲げ伸ばしができなくなったり、関節に水がたまったりすることもあります。

肘離断性骨軟骨炎が進行してしまうと、投球動作にかかわるスポーツが十分できなくなるどころか、遊離したことで生じた上腕骨小頭の骨軟骨の欠損は成人期以降も肘の変形性関節症を発症し、痛みが出たり、動きが悪くなったりする後遺障害を残しやすくなります。

早期発見、早期治療を行う必要がある典型的な疾患が、肘離断性骨軟骨炎です。野球少年が投球時に肘の痛みを訴える場合は、早めに整形外科を受診することが勧められます。

外側型野球肘の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、問診をしたり、関節の動きを調べ、上腕骨小頭部の圧痛がある場合に、外側型野球肘の代表である肘離断性骨軟骨炎を疑います。

確定診断は、X線(レントゲン)検査により行います。病巣は、初期には骨の陰が薄くなった状態として、進行すると病巣部の骨軟骨片が上腕骨小頭から分離、遊離した状態として撮影されます。しかし、初期には病変を認識することが難しいこともあります。また、正面と側面からの肘関節2方向撮影法、肘関節を45度屈曲した位置で正面像を撮影する撮影法が有用です。そのほか、CT(コンピューター断層撮影)検査やMRI(磁気共鳴画像)検査は、骨軟骨がはがれやすい状態であるかどうか確認するなど病態を調べるのに有効です。

整形外科の医師による治療では、初期の場合、局所安静、投球禁止により病巣の修復、治癒が期待できます。しかし、実際には6カ月から1年間、場合によっては1年以上の長期にわたり投球動作を禁止することもあり、投球の再開により再発するケースもあります。

従って、初期の場合であっても長期の投球禁止を望まないケースや、再発例では、手術を行うこともあります。

進行した場合では、再び投球を可能にし、将来的な障害を残さないために、手術を行うことになります。具体的な手術としては、壊死した骨軟骨を切除し関節遊離体を取り除く方法を基本として、遊離しかけた骨軟骨片を再固定し、病巣部に新たな骨ができることを促す方法、遊離した骨軟骨片の再固定が困難な場合に、欠損した肘の関節面に体の他の部位から骨軟骨を移植し、関節面を形成する方法などがあります。

手術後のリハビリテーション、投球再開の時期は病期、手術法により異なりますが、おおむね6カ月程度で全力投球が可能になります。

肘離断性骨軟骨炎の発生の予防には、基本的には肘関節の使いすぎによるところが大きいため、練習日数と時間、投球数の制限が重要です。また、投球フォームにより肘に負担がかかりすぎるケースも多くあり、適切な筋力トレーニングと投球フォームの指導、正しいスケジュール決定も必要です。

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