2022/08/14

🇸🇻再生不良性貧血

貧血の中で最も治りにくく、いわゆる難病に指定されている疾患

再生不良性貧血は、骨髄にある血液細胞の源に当たる造血幹細胞が何らかの原因によって減るために、赤血球、白血球、血小板のすべての血球が減る疾患。

貧血の中で最も治りにくいために、厚生労働省は1972年に特定疾患、いわゆる難病に指定しました。日本の患者数はそれほど多くはなく推定で5000~6000人とされますが、諸外国に比べると日本での有病率は世界で最も高いといわれています。年齢別でみると、20歳代と50~60歳代に発症のピークがあります。

赤血球だけが減少する他の貧血と異なり、再生不良性貧血ではすべての血球が減少するのが特徴です。すべての血球は骨髄で造血幹細胞が盛んに分裂、増殖を繰り返し、そこにさまざまな造血因子が働き掛けることで、あるものは赤血球に、あるものは白血球に、またあるものは血小板へと姿を変えていきます。この血球分化の源である造血幹細胞が障害を受けてしまうと、いずれの血球も作られなくなるのです。

鉄欠乏性貧血は欠乏している鉄、悪性貧血は欠乏しているビタミンB12や葉酸を補充することで治りますが、再生不良性貧血はそういうわけにはいかず、これが難病に指定された理由でもあります。

再生不良性貧血は血球全体が減少するので、他の貧血のように赤血球だけが減少するものと症状の出方が異なります。赤血球が減少すると、動悸(どうき)や息切れ、めまい、立ちくらみ、頭痛などの貧血症状が現れ、顔面が蒼白(そうはく)になります。白血球、特に好中球が減少すると、細菌に対する防御力が低下し、感染症に掛かりやすくなり発熱も続きます。血小板が減少すると、出血しやすくなり、鼻や歯肉、泌尿器、性器、消化管からの出血のほか、皮下に紫斑(しはん)が現れることがあります。

この再生不良性貧血の80パーセント以上は誘因が不明ですが、一部は抗生剤や鎮痛薬などの薬物投与、ウイルス感染、原因不明の肝炎などが引き金になって、造血幹細胞自体の異常や造血幹細胞に対する免疫反応が誘導され、造血幹細胞が分裂、増殖できなくなるために、発症すると考えられています。

医師による診断では、すべての血球が減少していることを確認すると同時に、針を刺して採取する骨髄穿刺(せんし)によって骨髄の細胞密度が低いことを確認します。一般に測定される血液細胞は赤血球、白血球、血小板の3つですが、骨髄の働きを評価する場合には、網状赤血球という未熟な赤血球の数を調べる必要もあります。

骨髄を検査できる骨は、胸骨という胸の中心に位置する骨と、腸骨という骨盤の骨に限られています。全身の骨髄の状態を評価するためには、MRI(磁気共鳴画像)検査を行う必要があります。この検査の結果、胸部や腰部の脊椎(せきつい)骨の骨髄細胞密度が低ければ、再生不良性貧血の診断は確実になります。

再生不良性貧血との区別が特に難しいのは、骨髄異形成症候群のうち、骨髄中の芽球という幼弱な細胞の割合が5パーセント未満の不応性貧血です。不応性貧血では細胞の形に異常がみられますが、再生不良性貧血でも軽度の異常がみられるため、その区別には高度の専門的な判断が必要です。

再生不良性貧血に対する治療の二本柱は、免疫抑制療法と、HLA(ヒト白血球抗原)が一致する血縁ドナーからの同種骨髄移植です。45歳以下の発症者でHLAの一致する血縁ドナーが得られる場合には、一般に同種骨髄移植が適しています。45歳以上の発症者では、移植に伴う合併症のために生存率が低下するので、免疫抑制療法が第一選択の治療と見なされます。

抗ヒト胸腺(きょうせん)細胞免疫グロブリン(ATG)やシクロスポリン(CSA)などの免疫抑制剤を内服する、最新の免疫抑制療法を用いれば、年齢を問わず80~90パーセントの長期生存率が得られます。ただし、免疫抑制療法後の長期生存者の中に、骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病へ移行する例が10~15パーセント存在するため、20歳以下の発症者では一般に骨髄移植療法が優先されます。

🇳🇮臍帯ヘルニア

へその部分の腹壁が生まれ付き欠損し、腸管などが脱出

臍帯(さいたい)ヘルニアとは、生まれ付き欠損している、へその部分の腹壁から、腸などの腹腔(ふくくう)内臓器が体の外に脱出した状態。脱出した臓器は、羊膜<、臍帯膠質(こうしつ)、腹膜の3層からなる薄い膜で覆われています。

臍帯ヘルニアは、腹壁にできた穴の場所により臍上部型、臍部型、臍下部型の3つに分けられます。最も多いのは臍部型で、他の型と比較すると奇形の合併は少ないものの、穴が5センチ以上と大きい場合は腸だけでなく肝臓も出ていることがあります。臍上部型と臍下部型では、いろいろな種類の重い奇形を合併していることが知られています。

全体でみると、50パーセント以上の症例で染色体異常、消化管、心血管、泌尿生殖器、中枢神経系などの重い奇形を合併しています。

また、穴が小さく小腸の一部だけがわずかに出ているものは臍帯内ヘルニアと呼ばれ、重い奇形の合併は少ないものの、腸の奇形を伴うことが多く、治療する時に確認が必要です。

原因としては、胎生早期の3〜4週の腹壁形成障害(腹壁形成不全説)と、胎生8週ころの中腸の腹腔内への還納(かんのう)障害(腹腔内還納不全説)の2つの説があります。肝臓の脱出を伴うような大きな臍帯ヘルニアでは腹壁形成障害、小さな臍帯ヘルニアでは還納障害が有力と見なされています。

在胎20週ころの胎児エコー(超音波)により出生前に診断される場合が多く、出生後でも臍帯内に脱出した腸が認められるため診断は容易です。へその緒(臍帯)が極端に太いために異常に気付かれ、小さな臍帯ヘルニアが見付かることもあります。 発生の頻度は出生5000人に1人。

症状としては、脱出した臓器を覆う薄い膜であるヘルニア嚢(のう)の表面が破れたり、細菌感染を起こしたりします。ヘルニア嚢が破れたものは、破裂臍帯ヘルニアと呼ばれます。

臍帯ヘルニアの検査と診断と治療

出生前診断で臍帯ヘルニアが疑われた場合は、新生児科と小児外科の専門医がそろった医療機関での出産が望まれます。出生後に診断された場合は、同様の医療機関への緊急搬送が必要です。搬送に際しては、ヘルニア嚢と脱出臓器が滅菌乾燥ガーゼで覆われます。

医師による診断に際しては、破裂臍帯ヘルニアと先天性腹壁破裂との見極めが必要になります。他の奇形の合併の確認も大切です。

臍帯ヘルニアの治療では、脱出している臓器を腹腔内に戻し、腹壁の穴を皮膚で覆う手術を行います。脱出臓器が少なければ、1回の手術で腹壁を閉めることができます。脱出臓器が多い場合や肝臓も出ている場合は、1回の手術では腹壁を閉めることができないため、何回かに分けて少しずつ臓器を腹腔内に戻します。通常、1~2週間で戻すことが可能です。

生まれ付き心臓の疾患などの重い奇形の合併があり、全身状態が悪い場合は、生まれてすぐに手術をすることが危険なので、ヘルニア嚢を特殊な液で消毒しながら皮膚のように硬く強くなるのと、1歳を過ぎて体が大きくなるのを待って、腹壁を閉める根治手術を行います。

🇳🇮サイトメガロウイルス感染症

サイトメガロウイルスによって起こり、さまざま症状を生じる感染症

サイトメガロウイルス感染症とは、ヒトヘルペスウイルスの仲間であるサイトメガロウイルス(CMV)に感染することによって、さまざまな症状を生じる疾患。

サイトメガロウイルスは世界中で見られるウイルスで、その感染は直接的、間接的な人と人の接触によって起こります。感染源になり得るものとしては、唾液(だえき)、鼻汁、子宮頸管(けいかん)粘液、腟(ちつ)分泌液、精液、母乳、涙、血液、尿、便などが知られており、一見健康にみえる人からもウイルスの排出が起こることもあります。

日本人の大多数は、誕生前の胎児の段階で母子間でサイトメガロウイルスに初めて感染し、潜伏した状態で体内にウイルスを保有します。この先天性感染では、胎児に重い後遺症を残すこともあり、重症の場合には肝臓のはれ、黄疸(おうだん)、出血などの症状に加え、小頭症や水頭症といった神経の異常も加わり、胎児や新生児が死亡することもあります。5歳ころまでに、難聴や知能の障害、目の異常などの症状が出てくる場合もあります。

小児や成人の段階で初めてサイトメガロウイルスに感染する後天性感染では、症状が現れる場合でも発熱、肝臓やリンパ節のはれというような軽い症状がほとんどです。しかし、一度、サイトメガロウイルスに感染すると、症状が消えて治ったように見えても一生の間、体内に生きたサイトメガロウイルスが潜伏しています。

疾患や薬など何らかの原因で免疫力や抵抗力が低下した状態になると、潜伏感染していたサイトメガロウイルスが再活性化して、ほとんどの人に症状が現れます。発熱、白血球減少、血小板減少、肝炎、関節炎、大腸炎、網膜炎、間質性肺炎などの症状が現れると重症になります。

サイトメガロウイルス感染症の検査と診断と治療

免疫状態や抵抗力が低下している場合は、治療が必要です。それ以外の場合は無症状か軽症のことが多く、治療が不必要なこともあります。

医師による診断は、血清抗体の測定や尿などの臨床材料からウイルスを検出することで確定します。妊娠中に超音波検査などで胎児に異常が見付かった場合は、羊水のウイルス検査を行うこともあります。サイトメガロウイルスの遺伝子は健常人の組織中にもあり、無症状でウイルスを排出することもあります。

治療では、ガンシクロビル、フォスカーネット、シドフォビル 、アシクロビル、バラシクロビルなどの抗ウイルス剤、抗サイトメガロウイルス高力価(こうりきか)免疫グロブリン、ヒト型抗サイトメガロウイルス単クローン抗体などが用いられます。

予防のためには、サイトメガロウイルスを含む唾液、母乳、膣分泌物、精液、血液、尿、便を介して人から人への感染が起こると考えられますので、これらの体液に触れた後は、よく手を洗うようにします。

🇳🇮再発性アフタ

口腔粘膜に円形、あるいは楕円形の浅い潰瘍ができるアフタ性口内炎が再発を繰り返す疾患

再発性アフタとは、単純にアフタとも呼ばれるアフタ性口内炎が再発を繰り返す疾患。再発性アフタ性口内炎、慢性再発性アフタとも呼ばれます。

アフタ性口内炎は、口腔(こうくう)粘膜に、1センチまでの円形あるいは楕円(だえん)形の浅い潰瘍(かいよう)であるアフタができる疾患で、このアフタが1個できる場合もあれば、多数できる場合もあります。唇や頬(ほお)の内側の粘膜、舌、歯茎など、どこにでもできます。

アフタの表面は白色や黄色がかった白色をしており、中央は少しくぼみ、クレーターのような形をしています。アフタの縁は周囲の粘膜よりも赤く、物が触れたりすると強く痛みます。

通常は1週間から2週間程度で、自然に完治します。発熱や全身倦怠(けんたい)感などの全身症状は伴いません。

このアフタ性口内炎が再発を繰り返す再発性アフタの場合は、7~10日ぐらいで跡を残さず自然に治りますが、また再発します。年に数回から月に1度程度の頻度で、再発することもあります。

何もしなくても痛く、また強い接触痛があります。複数個所にアフタ性口内炎が生じる重度のものでは、痛みのあまり摂食不能になることもあります。

再発性アフタは、20~30歳代に多く生じ、女性のほうが多いといわれています。

アフタ性口内炎そのものの原因は、まだ不明です。過労、精神的ストレス、胃腸障害、ビタミン不足、ウイルスの感染、女性では妊娠、月経異常といった内分泌異常などが誘因になります。

ベーチェット病が、再発性アフタで始まることがあり、目や外陰部にも潰瘍のできている時は注意が必要です。ベーチェット病は、原因不明の膠原(こうげん)病類縁疾患で、目のぶどう膜炎に加えて、口腔粘膜のアフタ性潰瘍、皮膚症状、外陰部潰瘍を主症状とし、血管、神経、消化器などの病変を副症状として、急性炎症性発作を繰り返すことを特徴とします。

再発性アフタによる痛みが強い場合は、口腔内科、口腔外科、歯科口腔外科を受診するのがよいでしょう。何度も再発を繰り返す場合は、ベーチェット病などの全身的な疾患の部分症状ということも考えられますので、眼科、皮膚科、内科などを受診しておいたほうがよいでしょう。

再発性アフタの検査と診断と治療

歯科口腔外科、内科などの医師による診断では、原因となる誘因の検査を行い、口腔内の炎症部位、炎症状態の観察を行います。アフタが何度も再発を繰り返す場合は、ベーチェット病なども考えて、血液検査や免疫学的検査を行います。

歯科口腔外科、内科などの医師による治療では、ステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)の入ったケナログ軟こう、アムメタゾン軟こうや貼(は)り薬をアフタのできている部位に使います。

貼り薬は軟こうと異なり、シールを貼るように潰瘍面を被覆保護するため、貼ることが可能な部位にアフタがあって個数が少ない場合はとても有効であり、食事時の痛みが劇的に減少します。

アフタの個数が多い場合や、口の奥にできた場合には、ステロイド剤の入った噴霧剤、うがい剤なども使います。

予防としては、過労、精神的ストレス、胃腸障害などの誘因となるものを避けるようにします。うがいをして、いつも口内を清潔に保つことも大切です。

🇧🇿臍肉芽腫

新生児の臍帯が脱落して皮膚で覆われる前に、肉の塊が生じたもの

臍肉芽腫(さいにくげしゅ)とは、新生児の臍帯が乾いて脱落した跡に、豆状の肉の塊である肉芽が増殖したもの。

出生時に母胎と切り離された新生児の臍帯(へその緒)は、生後1週間〜10日で乾いて自然に脱落し、本来ならば、跡はすぐ皮膚で覆われます。臍帯が脱落する際に、臍帯の組織の一部が臍底に残ると、これが増殖して盛り上がるために、米粒から小豆粒ぐらいの大きさで、赤いいぼのような臍肉芽腫が生じます。時には、大豆(だいず)大になり、臍部から表面に飛び出して見えることもあります。

肉芽腫の表面から、少し濁った滲出(しんしゅつ)液が出るため、いつも湿って乾きが悪く、放置すると細菌感染を起こしたり、こすれて出血したりします。表面が上皮化して、皮膚のように硬く強くなることもあります。

なお、胎生の初期では、臍帯が腸管や膀胱(ぼうこう)とつながっているために、まれに腸管の一部が臍部に残る臍ポリープを生じたり、膀胱とのつながりが臍部に残る尿膜管遺残を生じたりすることがあります。これらは臍帯の名残の臍肉芽腫とは別のもので、治りにくく手術が必要です。

臍肉芽腫の検査と診断と治療

退院した後1週間〜10日ぐらいしても、へそがジクジクしているようなら臍肉芽腫の可能性がありますので、出産した病院または小児科を早めに受診します。

医師による治療では、滅菌した糸で肉芽腫の根元を硬く縛り、ステロイド含有軟こうを塗布してガーゼで覆っておくと、2〜3日で取れます。小さければ、硝酸銀棒(ラピス)や硝酸銀液で焼き切る方法もあります。

硝酸銀棒はそのまま使用し、滅菌蒸留水100cc に硝酸銀20gを溶かした硝酸銀液は滅菌綿棒に染み込ませて使用します。焼き切った後は、化学熱傷を起こさないように、臍部を生理食塩水を浸した滅菌綿棒でよくふいて、硝酸銀を除去します。

以上の処置で治らない臍肉芽腫の場合は、手術で切除することもあります。臍ポリープ、尿膜管遺残の場合も、手術で切除することが必要です。

🇧🇿後方型野球肘

少年期の野球のピッチャーに多く、腕の使い過ぎで肘の後方に炎症や痛みが起こる関節障害

後方型野球肘(ひじ)とは、投球動作による腕の使い過ぎで慢性的な衝撃がかかることによって、利き腕の肘の後方に炎症や痛みが起こる関節障害。

後方型野球肘は、小学生から中学生の野球少年に多くみられますが、成人以降の野球選手にもみられます。

野球の投球動作では、ボールが手から離れ腕の動きが減速されるリリース期から、最後に腕を振り切るフォロースルー期にかけては肘が伸ばされるため、肘の後方に牽引(けんいん)力や張力が加わり、肘を伸ばす筋肉である上腕三頭筋が付着する肘頭(ちゅうとう)は、少し上にある肘頭窩(か)と衝突するようなストレスを受けます。

成長期の少年では、肘頭のすぐ下に、膨張することで骨が大きくなる成長軟骨の部分である骨端線があります。骨端線の部分は、骨の成長が終了すると均一で強固な骨になりますが、成長が終了する直前には逆に軟骨層の部分が薄くなっていて、外力に弱く、関節にかかるストレスを受けやすくなっています。

そのため、投球動作の繰り返しにより、肘頭の成長軟骨の部分である骨端線に微小なストレスが蓄積すると、骨端線が損傷され、離開、剥離(はくり)を起こしたり、疲労骨折を起こし、後方型野球肘を生じます。

症状としては、投球時や投球後に肘が痛くなります。肘の伸びや曲がりが悪くなり、急に動かせなくなることもあります。肘の後ろの肘頭、時に肘頭窩に圧痛がみられることもあります。

成長期の小中学生の後方型野球肘では骨の障害が多いのに対し、成人以降では肘頭周囲に骨の出っ張りである骨棘(こつきょく)が生じ、関節の動きが悪くなったり、肘の皮膚の表面近くを通る尺骨(しゃくこつ)神経が骨棘の圧迫で損傷されて、まひを生じ、手指のしびれや感覚障害、握力が落ちるなどの運動動障害が起こる尺骨神経まひを伴うこともあります。

少年にみられる後方型野球肘の場合、初期の痛みは投球時のみで、すぐに症状がなくなるので軽くみられがちですが、発症初期に投球動作を休止しないと骨端線の閉鎖が遅れたりする状態になって骨の変化を来し、結果的に数カ月から数年の投球禁止を余儀なくされます。

肘の痛みが3週間以上続いたり、肘の曲げ伸ばし角度が悪くなった際には、整形外科を受診することが必要です。

後方型野球肘の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、問診をしたり、関節の動きを調べ、投球時の肘の痛み、肘後方の圧痛がある場合に後方型野球肘を疑います。

X線(レントゲン)検査を行い、肘頭の骨変化、亀裂骨折、疲労骨折像を認めれば、後方型野球肘と確定します。

整形外科の医師による治療では、主原因である投球動作を数週間禁止し、電気治療や、リハビリでのストレッチを行います。

骨変化が認められる場合は、投球動作を3カ月以上禁止します。3カ月以上経過観察し、軟骨部分の骨癒合による修復傾向がみられない場合は、手術で遊離しかけた軟骨片を再固定します。

遊離骨片が肘の関節の透き間に挟まって、関節の運動が不能となっている場合は、手術で軟骨片を摘出します。

🇧🇿肛門括約筋不全

肛門括約筋の断裂や筋力の低下により、排便時以外に便が漏れる状態

肛門(こうもん)括約筋不全とは、肛門括約筋の断裂や筋力の低下によって肛門の締まりが悪くなり、排便時以外に便が漏れてしまう状態。便失禁とも呼ばれます。

肛門括約筋不全の症状としては、便意を催してからトイレに行くまで我慢できずに便を失禁するタイプと、便意を感じないままに無意識のうちに便が漏れるタイプがあり、両方を併せ持つタイプもみられます。

肛門括約筋不全の原因には、いろいろなものがあります。原因のうち最も多いものとして、出産時の肛門周辺の筋肉の損傷があります。排便には内肛門括約筋、外肛門括約筋、肛門挙筋、恥骨直腸筋という4種類の筋肉が関与していますが、出産の際に肛門括約筋などが傷付き、その伸縮自在の筋肉の強さが低下することで便失禁、ガス失禁、下着が汚れる、肛門がただれてかゆくなる、便の偏位などの症状が起きます。また、出産の際に肛門括約筋を支配する神経が傷付くこともあります。

この障害は出産後すぐに気付くこともありますが、年を取るまで明らかにならないこともあり、この場合には出産と肛門括約筋不全との因果関係がはっきりしないことがあります。

肛門や肛門周囲の組織の手術を受けたり、しりもちをつくなどのけがをすることで、内外肛門括約筋を傷付けた場合も、肛門括約筋不全が起こります。肛門周囲の組織に感染症が起こった場合にも、肛門括約筋が傷付いて肛門括約筋不全が起こることがあります。

高齢になるにつれ肛門括約筋が弱くなったり、脊髄(せきずい)から肛門周辺の筋肉に入っている神経線維が委縮してくる結果、排便を十分にコントロールできない肛門括約筋不全が起こることもあります。

腸の炎症や、直腸腫瘍(しゅよう)、直腸が肛門から飛び出す直腸脱といった疾患により、肛門括約筋不全が起こることもあります。脳、脊髄、視神経などに病変が起こり多彩な神経症状を起こす多発性硬化症や、糖尿病といった疾患により、肛門括約筋を支配する神経が障害されるために、肛門括約筋不全を来すこともあります。脳卒中、脊髄損傷、脳神経疾患、痴呆(ちほう)により、神経の刺激が肛門に届かなくなるために、肛門括約筋不全を来すこともあります。

さらに、下剤の乱用が、肛門括約筋不全の原因となることもあります。直腸に固まった便が詰まっている時に下剤を飲むと、固まった便の周りを下痢便が伝って失禁することもあります。

便意を催してからトイレに行くまで我慢できずに便を失禁するタイプは、意識的に力を入れた時の肛門の締まりが弱くなっており、出産時に肛門周辺の筋肉を損傷した人、肛門や肛門周囲の組織の手術を受けた人に多くみられます。

便意を感じないままに無意識のうちに便が漏れるタイプは、無意識での肛門の締まりが弱くなっており、高齢者や直腸脱の発症者などに多くみられます。

肛門括約筋不全は起こる頻度の高いもので、特に加齢とともに起こる頻度が高くなってきますが、羞恥(しゅうち)心のために、どんなに不快な症状があっても医療機関へ行かず、自己療法で我慢している人が少なくありません。医師に気軽に相談することが重要です。

肛門括約筋不全の検査と診断と治療

肛門科、あるいは消化器科、婦人科の医師による診断では、まず問診により、便の失禁の程度とそれが生活に及ぼす影響について明らかにします。肛門括約筋不全の原因の多くは、詳しく病歴を聴取することにより明らかになります。

例えば、女性の場合、過去の出産歴は重要です。出産の回数が多かったり、新生児の体重が大きかったり、鉗子分娩(かんしぶんべん)の既往があったり、会陰(えいん)切開の既往があったりすると。肛門括約筋が損傷されていることがあります。時には、全身疾患や薬剤が原因となって肛門括約筋不全を来すこともあります。

次いで、肛門部の診察を行います。これにより肛門括約筋の損傷が容易に明らかになることがあります。肛門領域をもっと詳しく調べるために、他の検査が必要となることがあります。例えば、肛門内圧検査では、小さなカテーテルを肛門内に挿入し、肛門括約筋を緩めた時と締めた時の圧力を測定します。この検査によって、肛門内圧がどの程度弱いか、または強いかが明らかになります。

肛門括約筋を支配する神経が正常に機能しているかどうかを調べるために、他の検査が必要になる場合もあります。さらに、肛門領域に対して超音波検査を行い、肛門括約筋が損傷している領域を明らかにすることもあります。

肛門科、消化器科、婦人科の医師による治療では、症状が軽度ならば、食事習慣の改善指導および整腸剤での処置を行います。時には、現在処方されている薬剤を変更することで、症状が改善することもあります。

大腸炎など直腸領域の炎症性疾患が肛門括約筋不全の原因になっている場合には、原因疾患を治療することによって、症状が改善することもあります。

肛門括約筋を強くするために、簡単な体操(ケーゲル体操)が勧められることもあります。バイオフィードバックという治療法があり、特殊な機械を用いて正しく肛門括約筋を締めるコツを体得することによって、排便時の肛門領域の知覚を改善し、肛門括約筋を強くすることもできます。

肛門括約筋が損傷している場合には、手術を行うこともあります。手術には、肛門の皮下に紐(ひも)を入れて肛門を小さくするチールシュ法、肛門括約筋縫合術、代替筋利用手術法などがあります。

肛門括約筋縫合術は、外肛門括約筋を折り畳むように縫い縮めることで肛門に力を入れやすくし、同時に肛門後方で恥骨直腸筋を縫縮することにより、直腸を前方に折り曲げて、直腸肛門角を強くすることで便が直腸から肛門に下りてきにくくするものです。しかし、手術直後から完全に便の漏れがなくなるわけではありません。手術で筋肉の緩みを取って、筋肉が効率よく働けるようにすることはできても、筋力が強化されるわけではありません。その後に、筋力増強のためのリハビリテーションが必要となります。

肛門の手術や出産時の外傷による肛門括約筋の損傷が原因のものは、手術的に肛門括約筋を修復することで、元通りに治すことができます。加齢による便失禁には、完全に治す治療法はありませんが、近年行われている低周波電気刺激治療器の使用は特に筋肉の老化によるものに対して効果があります。

脳卒中、脊髄損傷、脳神経疾患による便失禁は、治すことができません。近年、末梢(まっしょう)神経の障害が原因と思われるものに対しては、神経の移植や人工肛門括約筋なども試みられていますが、まだはっきりした結論は出ていません。

予防対策は、まず便の失禁が減るように排便をコントロールすることです。特定の食べ物や飲料で下痢や水様便、軟便になりがちな人は、それらを控えるように注意します。水様便や軟便はどうしても漏れやすく、硬い便は肛門に無理がかかります。肛門に負担のかからない質のよい便が直腸に下りてくるように、運動や食事、場合によっては薬を使用して、根気強く下痢や便秘をコントロールすることも必要です。

また、便秘で刺激性下剤を服用している場合は、塩類下剤(酸化マグネシウムなど)に変更して下痢や軟便にならないようにコントロールします。普段から下痢や軟便が多い人は、便を固める作用のある止痢薬で有形便にコントロールすることも有効です。

排便後しばらくして失禁する場合は、排便のたびに座薬や浣腸(かんちょう)を使用し、直腸内の残便をなくすように試みることが有効な場合もあります。突然の便の失禁に対しては、一時的に便の排出を抑える肛門用タンポン(アナルプラグ)を使用するのも一つの方法です。

🟥「H3」型インフルエンザの新たな変異ウイルス、国内でも確認

 海外で拡大している「H3」型インフルエンザの新たな変異ウイルスが国内でも確認されたことが、国立健康危機管理研究機構の解析でわかった。専門家は「免疫を持っている人が少なく、感染が広がりやすい可能性がある」として注意を呼び掛けている。  季節性インフルエンザとして流行する「H3」...