2022/08/14

🛏睡眠時遊行症

就寝中に起きて歩き回るなど、まるで目的があるような行動を起こす症状

睡眠時遊行(ゆうこう)症とは、就寝中に起きて歩き回ったりするなど、まるで目的があるような行動を起こす症状。睡眠時随伴症のうちの覚醒(かくせい)障害の一種で、夢遊症、夢遊病、夢中遊行症とも呼ばれます。

症例としては、毛布やシーツをきちんと直す、電気をつける、歩き回る、服を着る、ドアを開ける、トイレに行って排尿する、何かを食べる、外出するなどの行動をします。

うつろな表情で視線を動かさず、いくら呼び掛けても反応しません。数分で目を覚ますことがありますが、大抵の場合は30秒~30分程度の行動の後に再び眠り続け、翌朝、目が覚めた時には、本人には行動した記憶がまったくありません。

通常、深い眠りのノンレム睡眠の時に睡眠時遊行症は起こり、就眠後1時間前後に認められます。見ている夢と関係していると思われがちですが、夢とは関係なく起こります。

原因は現在、はっきりと解明されていませんが、過度のストレスや疲労、大量のアルコール摂取により脳が興奮状態になると、ノンレム睡眠中に運動抑制機能の働きが低下し、症状が起こると見なされています。脳内のセロトニンの不足が原因という説もあります。

この睡眠時遊行症は、幼児期~青年期前までに起きやすく、だいたい約3割が4歳から8歳くらいまでに発症します。大半の子供は遅くても思春期までに、ほどんど自然に消失します。約1パーセント程度は大人になっても、睡眠時遊行症の症状を持ち続けるといわれます。

対処法は、歩き回って本人が転倒したり、壁などにぶつかってけがなどしないように、周りを片付けて危険を回避することです。よほどの危険な状態にならない限り無理に起こすことはよくありませんので、静かに布団まで連れていくか、別の場所で横にさせることが望まれます。問題は自宅以外で寝泊りする場合で、幼稚園や小学校の外泊時には、事故を起こさないよう注意する必要があります。

大人になっても睡眠時遊行症の症状を持ち続けている場合は、無理に起こしたり制止しようとすると、危害を加えられる恐れがあり、過去には殺害事件も起きています。危険がない限りそっとしておくか、危急の場合は警察や救急車を呼んで対処することが望まれます。

子供では、てんかんなどの他の疾患による場合もあることに注意が必要で、症状がひどい場合には小児科、神経内科、精神科の医師に相談することが勧められます。

医師による治療では、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬による薬物療法が行われます。抗不安薬は睡眠時の緊張を緩和させることから、睡眠薬として利用されたり、抗てんかん薬として利用されたりする場合もあります。

🚭サードハンドスモーク

たばこの煙がカーテンや衣服、髪などに吸着して残った有害物資を吸い込むこと

サードハンドスモークとは、たばこの煙が室内の壁などに吸着して有害物質が残り、たばこを吸わない人が有害物資を吸い込むこと。三次喫煙、残留受動喫煙とも呼ばれます。

このサードハンドスモークは、喫煙者が体内に主流煙を吸い込むファーストハンドスモーク(能動喫煙)や、非喫煙者が喫煙者と同じ空間にいることで、自分の意思とは関係なく、たばこから出る副流煙を吸い込むセカンドハンドスモーク(二次喫煙、受動喫煙、間接喫煙)とは異なります。

たばこの煙が消失した後も、喫煙者の髪や衣服、部屋の壁紙やカーテン、クッション、カーペット、床、家具などの表面に吸着して残っている有害物質が徐々に揮発し、これを非喫煙者が吸い込むことで健康被害が生じる恐れがある受動喫煙を指します。

とりわけ、たばこの煙に含まれるニコチンは、壁紙などの表面に付着して凝結し何カ月も残存することが可能で、空気中の亜硝酸と反応して発がん性物質のニトロソアミンが生成され、健康被害が生じる可能性が指摘されています。

乳幼児の場合、床や家具に顔が近く、部屋の中の物を手や口で触ったりするため、大人以上に有害物質を吸い込みやすいとされます。

たばこが燃えている時に窓を開けたり、扇風機を回して換気しても、サードハンドスモークの危険性がなくなるわけではありません。また、屋外で吸うことは屋内での喫煙よりはましですが、たばこの煙の残留物は喫煙者の髪や肌、衣服に付着して屋内に持ち込まれ、広く拡散するとされます。オフィス内で喫煙室が仕事場と別にあっても、仕事場がたばこ臭かったりするのは、そのためです。

たばこの煙については、たばこの先の火のついた部分から立ち上る副流煙のほうが、喫煙者が直接口から吸い込む主流煙よりも、血管収縮作用のあるニコチンや、発がん物質のタール、学習・運動能力が低下する一酸化炭素を始め、非常に発がん性の高いベンツピレン、ベンゼン、トルエン、アンモニアなど200種以上の有害物質を多く含むことがわかっています。

しかし、サードハンドスモークに関連する有害物質の濃度は極めて低いため、現時点では正確な測定は難しく、健康への影響を判断するのは困難とされています。

セカンドハンドスモークによる害には、のどの痛み、心拍数の増加、血圧上昇などがあります。また、肺がんや虚血性心疾患、呼吸器疾患などにかかりやすくなります。とりわけ、子供は大人以上に影響を受けやすくなり、家庭内の喫煙によって、気管支炎、喘息(ぜんそく)などを起こす率が高くなったり、乳幼児突然死症候群が増加することも明らかになっています。

アメリカや日本の有識者らは、「子供がいるなら、家庭内は完全禁煙を」と呼び掛けています。サードハンドスモー クの認識があるアメリカの家庭では、完全禁煙にしている割合が高くなっています。

🏄サーファーズイヤー

外耳道の深部の骨部外耳道の骨が増殖して、隆起する疾患

サーファーズイヤーとは、耳の穴の入り口から鼓膜までの空洞である管腔(かんくう)、つまり外耳道(がいじどう)に長期間冷水刺激が加わることにより、骨部外耳道の骨が増殖して隆起が生じた疾患。外耳道外骨腫(がいこつしゅ)とも呼ばれます。

外耳道でも、耳の穴の入り口は軟骨部外耳道で、深部の鼓膜に近い部分が骨部外耳道に相当します。

外耳道外骨腫は古くから潜水夫や、頻繁に水泳を行う人に多いことが知られていましたが、特にサーファーに好発することから1977年にサーファーズイヤーと命名されました。

日本でのサーフィンの起源は、第2次大戦後日本に駐留した米軍兵士が神奈川県や千葉県で行ったのが始まりといわれ、国内でのサーフィンの歴史は60年前後と考えられます。1990年代に起こった世界的なロングボードサーフィンのリバイバルブーム以降、日本でもサーフィン愛好者は増加しています。

サーファーズイヤーは、水上スポーツ愛好家、水中スポーツ愛好家、職業ダイバーのほか、サウナ愛好家にも認められることがあります。サウナ愛好家の中には、サウナで温まった後に、冷水に飛び込むことを習慣とするケースがあり、そのような場合にも外耳道外骨腫が形成されることがあります。

競技会に参加するような熱心なサーファーを対象とした調査では、日本人のプロサーファーの81パーセント、アマチュアサーファーの54パーセント、両者の平均で59・8パーセントに外耳道外骨腫の形成が認められました。また、サーフィン経験が同程度の場合、男性のほうが女性よりも高度の病変が形成されることが多いことがわかりました。

原因は、外耳道に長期間にわたって加わる冷水刺激と考えられます。サウナ愛好家にも認められることから、外耳道に加わる寒暖差が外耳道外骨腫の形成に関与している可能性も示唆されます。サーフィン経験年数や頻度が多いほど、また海水温の低い地域のサーファーほど高度な病変が形成されやすくなります。耳に強い冷たい風を受ける影響もあると考えられます。

外耳道に冷水の侵入が繰り返されたり、強い冷たい風を受ける刺激で、基本的には両側の耳の骨部外耳道の骨が炎症を起こして増殖し隆起するために、外耳道が狭くなっていきます。

形成される外耳道外骨腫は、層状の緻密(ちみつ)な骨で、骨細胞に富み、骨髄腔が乏しいことが特徴とされます。1つ、あるいは2つの外耳道外骨腫が形成されることも、3つ以上形成されることもあnter>ります。

発症初期には自覚症状に乏しく、高度の外耳道の狭窄(きょうさく)に至っても、いくらか透き間が開いていれば難聴はほとんど起こりません。ただし、外耳道炎を起こしたり、外耳道外骨腫と鼓膜の間に耳垢(みみあか)がたまることにより、外耳道が閉塞(へいそく)した場合は、急に伝音(でんおん)難聴を来すことがあります。

そのほか、外耳道から水が抜けにくい、耳痛、耳鳴り、頭痛、かゆみなどの症状も起こりますが、必ずしもサーファーズイヤーの程度とは相関しません。

サーフィンやマリンスポーツなどの後、耳の穴から水がいつまでも抜けない、右耳だけが聞こえにくい気がするなど、耳に違和感を覚えたら、早めに耳鼻咽喉(いんこう)科を受診することが勧められます。

サーファーズイヤーの検査と診断と治療

耳鼻咽喉(いんこう)科の医師による診断では、処置用顕微鏡で耳の中を観察し、聴力検査を行います。側頭骨CT(コンピュータ断層撮影)検査を行い、外耳道骨と同濃度の結節性、あるいはびまん性の外耳道外骨腫の隆起を認めることで確定できます。手術の実施を予定している場合は、側頭骨CT検査で、外耳道に近接している顔面神経の走行と、骨の削除範囲を入念に確認します。

耳鼻咽喉科の医師による治療では、外耳道の狭窄が軽度で無症状であれば手術は行わず、点耳薬などの保存的治療で対応します。サーフィンやマリンスポーツをやめたとしても、一度形成された外耳道外骨腫は小さくならないと考えられています。

外耳道炎を繰り返したり、難聴などの症状が強い場合は、基本的に全身麻酔の下、耳内切開ないし耳後切開による手術を実施し、ノミやドリル、あるいは超音波装置といった手術具を使用して隆起した骨を削り、外耳道を広げます。

外耳道の皮膚の温存に努めて、骨部外耳道の骨面露出を最低限に抑えれば、通常、別の部位の皮膚を移植する遊離植皮などは必要ありません。サーファーズイヤーの程度が左右の耳で大きく異なる場合には、治療期間にも左右差が生じることがあります。手術後、完治するまでには時間がかかります。

予防としては、外耳道への冷たい海水の侵入刺激や、風による蒸散熱の冷却により骨増殖が増進するので、冬期や海水温の低い海域でのサーフィン中止、型を取った耳栓の装用が有効です。

市販されている耳栓も、シリコン製の耳栓や粘土形状の耳栓、大きなサイズや小さなサイズ、外部からの音を聞き取れる耳栓とさまざまなものがありますので、自分の耳に一番適した耳栓を探すとよいでしょう。

🇵🇦サーモンパッチ

新生児に多くみられ、額の中央、上まぶたなど顔の中央に近い部分に現れるあざ

サーモンパッチとは、額の中央、上まぶた、上唇、鼻背など顔の中央に近い部分に現れる、紅鮭(べにざけ)の赤身に似た淡紅色ないし暗赤色のあざ。正中部母斑(ぼはん)とも呼ばれます。

生まれた時からあり、多くは帯状や逆三角形の形をしており、平らで濃淡のむらは少なく、境界線は不明瞭です。新生児の20〜40パーセントに現れると見なされています。

圧迫すると一時的に色が消えることが特徴で、新生児が力んだり、泣いたりすると、色が濃くなることがあります。

生後6カ月くらいで薄くなり、上まぶたにあるサーモンパッチの大部分は、1歳ごろまでに自然に消失します。眉間(みけん)から額の中央、上唇にあるサーモンパッチの大部分も、1歳6カ月ごろまでに自然に消失します。

しかし、眉間から額の中央にあるサーモンパッチは、まれに成人になっても残ります。成長とともに拡張した血管が自然に細かくなって目立たなくなっても、やはり力んだり泣いたり、飲酒したりすると赤く浮かび上がることがあるという人は、多いようです。

サーモンパッチの原因は、皮膚の真皮表層での毛細血管の機能的拡張だとされています。毛細血管の内部の血液によって、皮膚の表面が淡紅色ないし暗赤色に見えます。

このサーモンパッチが後頭部かcenter>ら頸(けい)部(うなじ)にかけてできた場合は、ウンナ母斑と呼ばれます。ウンナ母斑は消失するのに時間がややかかりますが、3歳ごろには半数が消えます。しかし、一生消えない場合もあります。

1歳をすぎてもサーモンパッチが消えない場合は、念のため皮膚科の医師を受診することが勧められます。サーモンパッチが残っている成人で、どうしても気になる人も、治療を受けることが勧められます。

サーモンパッチの検査と診断と治療

皮膚科の医師は通常、見た目と経過から診断します。一般的には、サーモンパッチは自然に消えていく場合が多いので、治療せずに経過をみます。

単に色調だけを自然経過よりも早期に淡くしたい場合には、パルス色素レーザー治療を行います。完全に消えず成人まで残る可能性があるもの、成人になっても残ったものは、露出部位のあざなので、パルス色素レーザー治療を行います。

パルス色素レーザー治療は、傷を残さずに赤みを消退させることができます。術後に残った傷が目立ちますので、手術を行うことはありません。

ウンナ母斑は、髪に隠れて目立たない部位に生じるので、ほとんど治療しません。成人まで残っていても、悪性になることはないため、大半は治療をしません。美容的に気になる場合には、パルス色素レーザー治療を行います。

🇨🇷臍炎

新生児のへそに細菌が感染し、周囲にも炎症が及んだ状態

臍炎(さいえん)とは、新生児の臍帯(へその緒)が取れたくぼみの部分に細菌感染が起こり、へそやへその周囲に炎症が及んだ状態。

出生時に母胎と切り離された新生児の臍帯は、生後1週間〜10日で乾いて自然に脱落し、跡はすぐ皮膚で覆われたくぼみになります。このくぼみにたまった垢(あか)や汗、異物などに細菌が感染すると、臍炎が生じます。

症状としては、へそやその周囲に発赤、はれ、痛みが起こったり、へそから分泌液や、うみが出てジクジクしたりします。出血することもあります。

臍炎の検査と診断と治療

へそやへその周囲が赤くはれている、分泌物が出ている、出血している、新生児が痛がるなどの症状が出ている場合には、早めに小児科を受診します。

医師による治療は、感染した垢や異物を取り除き、うみを十分に排液しながら消毒を行います。さらに、抗生物質を服用したり、軟こうを塗布します。

このような処置で通常は比較的短期間に治癒することが多いのですが、症状が長引く場合や再発を繰り返す場合は、ほかの病状を考える必要があります。

胎生の初期では、臍帯が腸管や膀胱(ぼうこう)とつながっているために、まれに腸管の一部が臍部に残る臍ポリープを生じたり、膀胱とのつながりが臍部に残る尿膜管遺残を生じたりすることがあります。これらは臍炎とは別のもので、治りにくく手術が必要です。

<臍炎の予防としては、へその緒が取れたくぼみの部分がきれいに乾くまで、しっかり消毒します。入浴後に消毒し、滅菌ガーゼを張っておくのがよく、出産した病院でもらえる臍消毒セットを使い切るぐらいまでやっておくと安心です。

🇨🇷細菌性角膜炎

目の角膜に細菌が感染して、強い炎症を起こす疾患

細菌性角膜炎とは、目の角膜に細菌が感染して、強い炎症を起こす疾患。

角膜は、黒目の表面を覆う透明な無血管組織で、4つの異なった層からなっています。外界の光が目の中に入る入り口となるとともに、目の屈折力の約7割を担うレンズとしての役割も果たしています。三叉(さんさ)神経が多岐に分布し、知覚が非常に鋭敏であるという特徴があり、厚さ1ミリながら目の中の組織を守るために膠原線維(こうげんせんい)というとても丈夫な線維組織で作られています。

この角膜は、常に外界と接して空気にさらされているために乾燥したり、ほこりが付いたりします。そこで、まばたきというまぶたの動きによって、常にその表面を涙で湿らして、ほこりを取り除き、細菌を始め、かび、ウイルス、アメーバなどの侵入を防いでいます。涙には、細菌感染などから目を守るさまざまな分子が含まれています。

しかし、目にゴミが入ったり、目を強くこすったり、涙の出る量が少なくて角膜が乾燥したりすると、角膜の表面に傷が付いて、傷口から細菌が侵入し、感染を起こします。

近年は、コンタクトレンズを介して細菌が侵入し、角膜上皮で増殖して感染を起こすケース非常に増えています。涙の出る量が少なかったり、コンタクトレンズを長時間装用しすぎたりすると、目の中の細菌が洗い流されずに定着して、増殖しやすくなり、細菌性角膜炎の発症につながります。また、レンズケースの洗浄を怠っていると、ケース内で細菌が増殖してコンタクトレンズに付着し、目の中に細菌が持ち込まれることもあります。

目の角膜に感染する主な細菌は、ブドウ球菌、緑膿(りょくのう)菌、連鎖球菌などです。

細菌性角膜炎の症状は、炎症の原因、位置、大きさなどによって異なりますが、通常は片眼性で、一般的には激しい目の痛み、目の充血、視力低下、異物感、流涙、目のかすみ、まぶしさなど。

角膜には三叉神経が走っているために、炎症が起きると激しい痛み、異物感が生じます。そして、炎症が進行すると角膜が濁って視力が低下していきます。ひどくなると、角膜に穴が開いて失明する危険性も伴います。角膜に穴が開いた時は、温かい涙が突然たくさん出ます。これは、眼内液である房水(ぼうすい)が外へ突然漏れ出すためです。

また、細菌が目にとどまっているために、コンタクトレンズを外しても症状は消えません。むしろ、コンタクトレンズを外した時のほうが、痛みや異物感が増すこともあります。

細菌性角膜炎は日に日に症状が悪くなる疾患で、治療のスタートが遅れれば遅れるほど予後が悪くなるため、早く眼科を受診する必要があります。ゴミなどの異物が入った時は、それが細菌の感染の切っ掛けになるため、症状が軽くても、やはり放置せず眼科を受診する必要があります。

コンタクトレンズが感染源として疑われた場合は、そのコンタクトレンズをレンズケースの保存液に浸したまま持っていけば、検査設備の整った医療機関なら、そこから原因となった細菌を見付けることができることがあります。

細菌性角膜炎の検査と診断と治療

眼科の医師による診断では、細隙灯(さいげきとう)顕微鏡で角膜を観察して、角膜炎の診断を行います。一般的に、病変部は混濁するとともに、病変周囲の角膜組織には浮腫(ふしゅ)が生じています。

細菌性角膜炎の可能性がある場合は、角膜の悪くなっている部分をこすり取って、顕微鏡で調べたり、培養したりして、細菌が感染していることを確認します。同時に、病原体となっている細菌の種類を同定する検査と、どのような抗菌剤が有効かを調べる薬剤感受性試験を行います。

眼科の医師による治療では、原因となっている細菌に感受性を示す抗菌剤を必要、かつ十分に投与することを原則とします。ただし、原因菌の同定や薬剤感受性試験の結果が出るまでには一定の日時を要するため、病歴や細隙灯顕微鏡所見などから原因菌を想定して、治療を開始する必要があります。

通常は、有効な抗菌剤を配合した点眼薬や眼軟こうによる治療が主体となりますが、病状によっては、白目の表面を覆っている眼球結膜下への抗菌剤の注射、点滴、内服などを併用することもあります。この場合は、多くは入院治療が必要となります。

症状が軽い場合は、短期間で治って予後も良好です。治療が遅れた場合は、病変が角膜中央部に及んでいると、たとえ病変が治癒しても瘢痕(はんこん)性の角膜混濁を残し、視力障害が残る可能性があります。

重篤な視力障害が残った場合には、角膜移植などの手術治療が必要となることがあります。

細菌性角膜炎の治療中は、風、ゴミ、光などの刺激から目を守ることが重要です。

🇨🇷細菌性眼内炎

細菌が目の中に入り、眼球の内部が炎症を起こす感染症

細菌性眼内炎とは、何らかの原因で細菌が目の中に入り、眼球の内部が炎症を起こす感染症。

細菌が手術の切開部や眼球のけがから侵入する外因性のものと、体のほかの部分に感染していた細菌が血流に乗って目に波及する内因性のものがあります。

目の手術による外因性細菌性眼内炎のほとんどは、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、腸球菌などのグラム陽性球菌が原因となって、手術後2日から3日ほどで発症します。プロピオニバクテリウム・アクネスというグラム陽性桿菌(かんきん)や、表皮ブドウ球菌などの弱毒菌が原因となる場合は、手術後半年から1年以上経過してから発症する場合もあります。

眼球のけがによる外因性細菌性眼内炎は、グラム陽性球菌のほか、土壌中にも存在するグラム陽性桿菌や、緑膿(りょくのう)菌などのグラム陰性桿菌が原因となって、発症します。

内因性の細菌性眼内炎のほとんどは、糖尿病を患っている、抗がん剤投与を受けている、肝臓や心臓に感染症を起こしている、体が弱り免疫力が落ちている、血管内カテーテル(栄養のチューブ)が挿入されているなどで起こります。原因となる細菌は、グラム陰性桿菌(かんきん)である肺炎桿菌や大腸菌が多くみられ、グラム陽性球菌であるB群レンサ球菌もみられます。

肺炎桿菌は、口腔(こうこう)や腸管に常在する細菌で、免疫力の低下した人に感染し、肺炎や尿路感染症、敗血症などを起こしています。大腸菌は、代表的な腸内細菌で、血液中や尿路系に侵入した場合に病原体となり、敗血症、尿路感染症などを起こしています。B群レンサ球菌は、糖尿病やがんなどを基礎疾患に持つ人に感染しています。

細菌性眼内炎の症状としては、 ひどい目の痛み、目のかすみ、明るい光の非常なまぶしさ、充血、目やに、急な視力低下、視力の部分的な欠損があり、視力の完全な欠損によって失明を起こすこともあります。

目のかすみ、痛みの症状が出たら、早めに眼科を受診します。数時間から数日の単位で進行し、重症になった場合は、最大限の治療を施しても目を救えないこともあります。

細菌性眼内炎の検査と診断と治療

眼科の医師による診断では、目のけががある場合や、眼科の外科手術を受けた経験がある場合は、そこから目に原因となる細菌が入った可能性が強いとして、外因性の細菌性眼内炎と判断します。

内因性の細菌性眼内炎が疑われる場合には、問診で全身的な要因の有無や、血管内カテーテルの使用有無を確認します。

確定するためには、目の表面を拡大して見る細隙灯(さいげきとう)顕微鏡を用いて眼球を丹念に調べます。続いて、分泌液の培養検査を行います。場合によっては、抗体検査やDNA検査も行います。

分泌液の培養検査では、眼球内の前方にある液体である房水や、眼球後部の内部にあるゼリー状の組織である硝子体(しょうしたい)から採取し、感染の原因となっている細菌を早急に特定するとともに、どの薬剤が最も有効かを調べます。

また、同じような症状が出る真菌性眼内炎や、悪性リンパ腫(しゅ)などと慎重に区別していきます。

眼科の医師による治療では通常、視力を守るために、抗菌剤による治療を直ちに開始します。極端な場合、数時間の遅れが、回復不可能な視力の低下につながることがあります。

細菌性眼内炎の原因であると判明した細菌に応じて、抗菌剤の選択を調整することがあります。抗菌剤は、眼内注射、あるいは静脈内注射、または経口で投与します。

抗菌剤を眼内に注射した後、数日間にわたって痛みを和らげるコルチコステロイド剤を経口で投与することもあります。感染を食い止める確率を上げるため、眼球内部の感染組織を取り除く手術を行うこともあります。

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