2022/08/14

🇵🇰水頭症

水頭症(すいとうしょう)とは、脳脊髄(せきずい)液の産生、循環、吸収などいずれかの異常によって、髄液が頭蓋(とうがい)内にたまり、脳の内側で4つに分かれて存在する脳室が正常より大きくなる病気です。脳脊髄液による脳の圧迫が、脳機能に影響を与えます。

生まれ付きの異常で起こっている場合を先天性、生まれてから生じた異常で起こってきた場合を後天性と区別しています。

先天性水頭症の原因としては、先天的な障害(奇形)や、母胎内での感染が挙げられます。いくつかの骨が結合してできている頭蓋骨は、生まれてしばらくの間、骨同士の結合が弱く、軟らかく組み合わさっています。生まれ付き水頭症を持っている乳児や、頭蓋骨の結合が軟らかい時期に水頭症になった乳児は、脳脊髄液が余分にたまって大きくなった脳室の圧力によって、頭蓋骨を押し広げる状態が続く結果、頭が大きくなることが起こります。

後天性水頭症の原因としては、頭蓋内出血(脳室の内部への出血の波及、けがによる硬膜下血腫(けっしゅ)など)、炎症(髄膜炎に代表される感染症など)、脳腫瘍(しゅよう)などが、年齢を問わず挙げられます。

頭の拡大が目立つ乳児までの時期以降、余分な脳脊髄液による内圧の上昇は、脳を直接圧迫する力となり、頭痛、吐き気、嘔吐(おうと)を引き起こします。食欲不振、体重減少、全身倦怠(けんたい)感など頭の症状とは考えにくいことも起こり、長い間、気付かれない場合もあります。また、神経への影響から、視力の低下、眼の動き方の不自由などを起こします。

一方で、大人の水頭症には、頭の圧力が上がった症状を示さない正常圧水頭症があります。脳室が大きくなっていて、認知障害、歩行障害、尿失禁といった特徴的な症状がありながらも、頭の圧力は高くなりません。くも膜下出血後や髄膜炎の治った後に認められることが多く、原因不明の特発性のものもあります。

水頭症そのものに対する治療としては、一時的な、緊急避難的な治療と、永続的な治療が行われます。

一時的な治療では、ドレナージと呼ばれる方法が一般的で、余分な脳脊髄液の一部分を頭蓋骨の外へ流す処置の総称です。先天的、後天的を問わず、頭の圧力が急上昇した状態による病状の不安定さを解除するために、救急処置として行われます。

永続的な治療では、シャントと呼ばれる手術法が一般的で、乳幼児から大人まで、年齢、原因を問わず行われています。本来の脳脊髄液の流れの一部分から、シャントチューブと呼ばれる細い管を用いて、頭以外の腹腔(ふくこう)や心房などへ脳脊髄液を流す仕組みを作ります。

内視鏡手術も行われています。神経内視鏡を用いて、脳の内部に本来ある脳脊髄液の流れ方の経路とは別に、新しい経路を作ります。治療できる年齢や原因に制約があり、シャントにとって変わる治療法にはいまだ至っていません。

🇵🇰随伴性肥満

何らかの疾患や薬物の影響を受けて起こる肥満

随伴性肥満とは、何らかの疾患や薬物の影響を受けて起こるタイプの肥満。二次性肥満、症候性肥満とも呼ばれます。

一方、原因となる特別の疾患がなくて起こるタイプの肥満は、原発性肥満、あるいは単純性肥満と呼ばれています。こちらのタイプの肥満の多くは、食べすぎと運動不足が主な原因となって起きます。肥満している人の大部分が原発性肥満であり、二次性肥満は肥満者全体の5パーセント程度にしか認められません。

随伴性肥満の原因も過食によるものですが、基礎にある疾患が食欲を増加させて脂肪を蓄積し、肥満してきたものです。基礎にあって影響を与える疾患としては、ホルモンの疾患や遺伝性の疾患、食欲中枢を刺激する脳の視床下部の疾患が挙げられます。ホルモンの疾患では、ホルモン作用の高進や低下によってエネルギーの摂取や消費のバランスが障害され、随伴性肥満を発症します。遺伝性の疾患では、遺伝的要因の異常によりエネルギー代謝調節系が破綻し、随伴性肥満を発症します。視床下部の疾患では、食行動の調節機能を有する視床下部の器質的および機能的異常に基づいて、随伴性肥満を発症します。

基礎にあって影響を与える薬物としては、抗精神病薬や副腎(ふくじん)皮質ホルモン薬などがあります。抗うつ剤の服用による副作用で食欲が増して肥満になることがあり、膠原(こうげん)病などで用いられる副腎皮質ホルモン薬は使用量が多いと肥満を起こします。

ホルモンの疾患には、インスリノーマ(インスリン産生膵島〔すいとう〕細胞腫〔しゅ〕)、高インスリン血症、クッシング症候群、甲状腺(こうじょうせん)機能低下症、性腺機能低下症があります。

インスリノーマでは、インスリンによる低血糖発作を回避するために過食を生じ、随伴性肥満を発症します。高インスリン血症による脂肪蓄積作用も、随伴性肥満に関与します。しかし、多くのケースで肥満は顕著ではなく、インスリン自体は中枢神経系で摂食抑制性に働いています。クッシング症候群では、副腎皮質からグルココルチコイドというホルモンが過剰に分泌され、丸顔と上半身の肥満を特徴とする随伴性肥満を発症します。甲状腺機能低下症では、甲状腺ホルモンの低下によって体重増加を来します。この体重増加は脂肪蓄積ではなく、体液貯留やムコ多糖類の蓄積が原因であるとされます。

遺伝性の疾患には、ターナー症候群、糖尿病などがあります。食欲中枢を刺激する脳の視床下部の疾患には、松果体腫瘍(しゅよう)、フレーリッヒ症候群、キアリ・フロンメル症候群といった疾患があります。

随伴性肥満の検査と診断と治療

内科の医師は、肥満者を診察する際には、今までの病歴や家族歴、生活歴、身体検査の結果から、随伴性肥満か原発性肥満かを区別します。

随伴性肥満の場合は、主として原因となっている疾患の治療が必要になるので、入院の上、精密検査を行うことが必要になります。ホルモンの疾患による肥満や、視床下部の疾患による肥満では、各種内分泌学的検査、神経学的検査、CTやMRIなどの画像検査が必要となります。遺伝性の疾患による肥満、および遺伝性の視床下部の疾患による肥満では、必要に応じて染色体検査や各種遺伝子の検査を行います。

随伴性肥満に対する治療は、原因となっているクッシング症候群、甲状腺機能低下症などの疾患の治療が中心になります。ホルモンの疾患に対しては、ホルモン補充療法を行います。薬剤の服用による肥満に対しては、薬剤の減量、または体重増加の少ない、ほかの薬剤に変更します。

肥満自体には原発性肥満と同様に食事療法、運動療法および行動療法を用いますが、遺伝性の疾患による肥満など知能障害を伴うケースでは、それらの遂行が困難な場合も多くなります。

🇵🇦水疱性角膜症

角膜の内側にある角膜内皮細胞の機能不全により、角膜が浮腫状に混濁し、視力が下がる疾患

水疱(すいほう)性角膜症とは、角膜の内側にある角膜内皮細胞の機能不全により、角膜が浮腫(ふしゅ)状に混濁し、視力が下がる疾患。

角膜は、黒目の表面を覆う透明な無血管組織で、表面から内側に向かって上皮細胞層、角膜固有層、デスメ層 、そして内皮細胞層という4つの異なった層からなっています。外界の光が目の中に入る入り口となるとともに、目の屈折力の約7割を担うレンズとしての役割も果たしています。三叉(さんさ)神経が多岐に分布し、知覚が非常に鋭敏であるという特徴があり、厚さ1ミリながら眼の中の組織を守るために膠原線維(こうげんせんい)というとても丈夫な線維組織で作られています。

角膜の一番内側にある内皮細胞層を構成している角膜内皮細胞は、角膜内の水分量を調節する役割を果たしています。具体的には、角膜に入ってくる眼内の水(房水)をポンプ機能により眼内へ戻す役割を担っています。この機能により、角膜の水分量は一定に保たれ、角膜の厚みや透明性が維持されています。

しかし、何らかの原因で角膜内皮細胞の機能不全が起こり、そのポンプ機能が障害されますと、角膜内の水分が排出できなくなるため、角膜はむくんで厚くなり、透明性も低下します。

角膜が浮腫状に混濁することにより、外界の光が通りにくくなりますし、角膜の表面を覆っている角膜上皮にも水がたまって、水疱ができます。そのため、視力が低下しますし、表面の水疱のために痛みもあります。また、角膜上皮がはがれやすくなり、はがれてしまうと非常に強い痛みを生じます。原因によって、両眼性であったり片眼性であったりします。

角膜の内皮細胞は、生まれてから死ぬまで増えることはないので、フックス角膜内皮ジストロフィなどの角膜内皮疾患で遺伝的に内皮細胞が弱かったり、眼内の手術や炎症、外傷、角膜感染など外的な原因で内皮細胞が障害されたりすることにより、水泡性角膜症が生じます。

最近では、白内障の手術後や、緑内障に対するレーザー治療後に、水泡性角膜症が生じることも増えています。コンタクトレンズの長期装用によっても、内皮細胞は少しずつ減少するので、注意が必要です。

水疱性角膜症の検査と診断と治療

眼科の医師による診断では、眼球内を観察する細隙灯(さいげきとう)顕微鏡検査を行い、角膜の浮腫状の混濁、角膜の厚さの増加、角膜内皮細胞の密度の低下もしくは測定不能により確定します。

年齢にもよりますが、角膜内皮細胞の密度の正常値は2500〜3000個/mm2程度ですが、密度の値が約500個/mm2以下になると水泡性角膜症と見なされます。

眼科の医師による治療では、非常に初期の場合、濃度の濃い生理食塩水の点眼や眼軟こうで角膜内の水分を吸い取ることによって、視力の改善を図ります。痛みに対しては、治療用ソフトコンタクトレンズを装用します。

根本的な治療としては、角膜内皮細胞は増えて再生しないために、角膜移植が必要になります。従来は、全層角膜移植のみが行われていましたが、最近では、角膜の内皮側だけを入れ替える角膜内皮移植も行われるようになっています。

🇵🇦水疱性鼓膜炎

外耳と中耳の境界にある鼓膜に、急性に水疱ができ、炎症が起きる疾患

水疱(すいほう)性鼓膜炎とは、外耳と中耳の境界である鼓膜の薄い膜の外側表面に、急性に水疱ができ、炎症が起きる疾患。

鼓膜は、耳に入ってくる音を振動に変換し、耳小骨経由で内耳に伝える働きのほか、外耳と中耳を境界する役目をしている器官です。その構造は、直径約9ミリ、厚さ0・1ミリの薄い膜状で、耳の入り口から約3センチのところに位置しており、外耳道のほうに向かって開いたパラボラアンテナのような形態をしています。

体の中には、いくつかの膜状構造物がありますが、鼓膜は常に外界に交通しているため、外力に弱い器官といえるでしょう。

この水疱性鼓膜炎が単独で起こることは比較的少なく、多くは風邪やインフルエンザなどに伴って起こります。子供よりも20〜40歳代の成人女性に多く、両側の耳に起こることはまれです。

原因は、風邪やインフルエンザなどによるウイルス感染が原因と疑われていますが、まだはっきりしていません。耳かきのしすぎなどが原因で鼓膜に傷が付くことで、細菌が感染して炎症が起こることもあります。

水疱性鼓膜炎が引き起こされると、鼓膜の表面に急性に、小さな液体の詰まった水疱が1個から数個でき、突発的に激しい耳の痛みが生じるのが特徴で、耳の奥が詰まったような不快感も覚えます。耳垂れ(耳漏)は、あまりありません。

まれに、音を感じる内耳に影響を与えて、感音難聴を起こすことがあり、耳鳴りなどの症状を伴います。時々、中耳炎を合併することもあり、その場合は伝音難聴や発熱を覚えます。

水疱性鼓膜炎の検査と診断と治療

耳鼻咽喉(いんこう)科の医師による診断では、顕微鏡やファイバースコープで鼓膜を拡大して観察し、似た症状の中耳炎と鑑別します。観察すると、鼓膜は出血性に赤くなり、さらに表面に水疱が認められるので、すぐに鑑別できます。

感音難聴を起こして耳鳴りなどの症状を伴っている場合には、聴力検査を行います。

耳鼻咽喉科の医師による治療では、抗生剤、鎮痛薬の内服を行います。痛みの強い場合には、痛みを緩和するために綿棒で水疱をつぶすか、小さなメスで水疱を切開して排液を行うことがあります。通常、耳に薬剤を入れる点耳などの局所処置は必要ありません。

感音難聴が生じた場合は、突発性難聴に準じて、ステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン剤)、ビタミン剤、循環改善薬などを使用します。

水疱性鼓膜炎の予防法は、解明されていません。いったん発症した場合は、耳に水が入らないように気を付けることが重要です。

🇵🇦髄膜炎

人間の脳は、内側から軟膜、くも膜、硬膜の三層の髄膜で覆われています。髄膜炎とは、ウイルスや細菌などの感染によって、脳を取り巻いている髄膜に炎症が起こる病気です。別名は、脳脊髄(せきずい)膜炎、脳膜炎。

よくみられるのは、風邪や中耳炎、副鼻腔(びくう)炎などにかかったことをきっかけに発症するケースです。風邪を引いた際に発熱と頭痛が一緒に起こることがありますが、熱に激しい頭痛を伴う時は、髄膜炎の可能性もあります。

髄膜の炎症が広がると、首が強く突っ張る項部強直(こうぶきょうちょく)で、首が曲がらなくなり、さらに炎症が脳そのものまでに及ぶと脳炎を合併し、意識障害や手足のけいれんを起こすこともありますので、すぐに神経内科や内科、小児科の専門医に診てもらうようにしましょう。

髄膜炎の原因は、ウイルスによるものと、細菌によるものに大別されます。髄膜炎を起こすウイルスは、夏かぜ、はしか、風疹(ふうしん)、おたふくかぜ、ヘルペス、日本脳炎などのウイルスで、神経に感染しやすい性質があります。しかし、それらが感染しても髄膜炎にかかるのは、ごく一部です。脳炎を合併するのは、ウイルスが大部分の原因です。

髄膜炎を起こす細菌は、インフルエンザ菌や肺炎双球菌、髄膜炎菌、結核菌、大腸菌、真菌(かびの一種)などで、鼻やのど、肺にくっつき、そこから血管内へ進入して髄膜に到達し、髄膜炎を起こします。

専門医の診断で髄膜炎が疑われた時は、入院して脊髄液の検査を行います。脊髄液を腰椎(ようつい)から採取して、白血球や糖を調べ、髄膜炎ならば、その病原は何かの判断をした上で、ウイルスや細菌を見付けます。髄膜炎や脳炎の程度を見るために、CT(コンピューター断層撮影法)やMRI(核磁気共鳴画像法)の検査も行います。

原因がウイルスの場合は抗ウイルス薬を使うことが多く、原因が細菌の場合は抗生物質を用います。髄膜炎を引き起こしたもとになる病気があれば、その治療も並行して行います。

髄膜炎は、早期に発見して早期に治療すれば予後の改善が期待できますが、時期を失したり、脳炎を合併したりすると、治ったとしても記憶障害などが残ってしまいます。大人では激しい頭痛が続き、熱がなかなか下がらない場合、乳幼児ではかん高い泣き声を上げたり、大泉門(だいせんもん)という前頭部にある頭がい骨の透き間が膨らんで硬く張った場合は、すぐに専門医を受診することが大切です。

🛏睡眠時遺尿症

5〜6歳を過ぎても夜間のお漏らしがある状態

睡眠時遺尿症とは、肉体的にも知能的にも正常なのに、5〜6歳を過ぎても継続的に夜間のお漏らしがある状態。排泄(はいせつ)障害の1つで、夜尿症とも呼ばれます。

睡眠中に無意識に排尿してしまうのは、膀胱(ぼうこう)に尿がいっぱいになったのが自覚できなかったり、膀胱に尿が十分にたまっていないのに我慢できないために起こります。

乳児のお漏らしは当たり前のことで、成長するに連れて夜尿の回数は減っていき、ほとんど5〜6歳までにはなくなります。しかし、その年齢にはかなり個人差があり、5歳を過ぎて夜尿があっても、必ずしも病的というわけではありません。経過をみて、次第に回数が減ってくるようであれば、睡眠時遺尿症として大騒ぎすることはありません。

一説では、5〜6歳児では約20パーセント、小学校低学年では約10パーセント、小学校高学年では約5パーセントに睡眠時遺尿症がみられるとされています。男女別では、児童・学童では男子のほうが多く、約1パーセントにみられる成人では女性のほうに多いとされ、遺伝する傾向も指摘されています。

児童・学童では60パーセントは夜間だけですが、残りは昼間も漏れることがあります。昼間に漏れる時は、排尿を我慢している時や、何かに夢中になっている時に起こります。

原因としては、いくつかのことが考えられています。一つには、排尿のメカニズムに関係する自律神経の緊張状態が考えられます。自律神経の一つである副交感神経が過敏で、排尿を促す信号をすぐに出してしまう状態です。二つ目は、普通は尿は夜間に作られる量が減るはずですが、ホルモンの調節が未熟で脳下垂体から出る抗利尿ホルモンが少ないため、夜中にもたくさんの尿ができるのも一つの原因と考えられています。

さらに、先天的に膀胱の容量が小さいことも、睡眠時遺尿症の原因になります。これらの原因が発症者個人について、必ずしも明確にわかるわけではありません。

以上の原因のほかに、夜尿が尿路感染症や尿崩症の症状としてみられる場合があります。睡眠時遺尿症の治療を希望する場合は、小児科の専門医を受診します。

睡眠時遺尿症の検査と診断と治療

医師はまず、尿路感染症や尿崩症などの基礎疾患がないことを確かめた上で、睡眠時遺尿症(夜尿症)の治療に取り掛かります。

医師による治療では、原因を想定して、順次それに応じた対策を試みていくことになります。副交感神経が過敏なためと考えられる場合は、緊張状態を解くために三環系抗うつ剤や抗コリン剤、精神安定剤を試します。三環系抗うつ剤の有効率は40〜50パーセント程度で、飲んでいる時は尿意で起きたり、朝まで尿を我慢できるようになりますが、中止すると元に戻ることが多い薬です。

抗利尿ホルモンの分泌が少ないためと考えられる場合は、夜の就寝前に抗利尿ホルモンを投与します。これには点鼻薬があり、寝る前に鼻にスプレーするだけなので簡単に治療を行うことができます。有効率は40〜50パーセント程度で、尿量を減らす薬なので使用している時は夜尿は減りますが、短期間で中止すると元に戻ることも多い薬です。また、使用時に水分を取りすぎると水中毒という合併症を起こすため、使用2〜3時間前から次の朝まで水分を制限し、コップ一杯程度にする必要があります。

膀胱の容量が小さいためと考えられる場合は、昼間たくさん水を飲ませて、できるだけ排尿を我慢させる方法がとられます。また、排尿時に一時的に排尿をストップさせることにより、排尿をコントロールする訓練も行われます。

眠った後に無理やり起こして排尿させる方法は、目が覚めない状態で排尿するというパターンが身に着いてしまうといわれ、今は行われていません。尿が少し漏れるとアラームが鳴る夜尿アラームという装置が開発されており、これを用いた療法が有効であることがわかっています。夜尿アラーム療法は睡眠中の膀胱容量を増やし、尿意により起きやすくする効果がある方法で、少なくとも3カ月間行い、有効率は約60パーセントです。ただし、アラームでは患児本人は起きないことがほとんどのため、家族が起こす必要があり、毎日行うとかなりの負担になります。

夜尿症が精神的、心理的原因で起きるという考え方は、今ではあまりいわれなくなりました。従って、育児に問題があるとか、何か心理的要因があるというふうに考える必要はありません。睡眠時遺尿症は膀胱や排尿にかかわるメカニズムが未熟なために生じていることで、体の発育とともにいずれは治るのだという考え方が大切です。お漏らしをしたからといって子供をしからず、本人に引け目を感じさせないようにします。親や子供が神経質になって、治るものも治りにくくすることがあるので、注意が必要です。

🛏睡眠時無呼吸症候群

睡眠中に無呼吸が頻回に起こって睡眠が障害され、さまざまな症状が現れる疾患

睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に無呼吸状態がしばしば起こる疾患。睡眠不足や、眠りが浅いと感じる人の中にみられることがあります。

睡眠中にしばらく呼吸が起こらなくなる、つまり短い無呼吸が起こることは、決してまれではなく、軽度のものは健康な人にもみられます。しかし、この睡眠時無呼吸症候群では、一晩7時間の睡眠中に10秒以上呼吸が停止し、30回以上も繰り返します。呼吸停止と呼吸再開は、眼球が速く動くレム睡眠、眼球は動かず大脳が休むノンレム睡眠の両方に現れます。

原因により、睡眠中の呼吸運動が停止するために無呼吸となる中枢型、呼吸運動は持続しているものの上気道がふさがるために無呼吸となる閉塞(へいそく)型、両者の混合型の3型に分類されます。

中枢型は呼吸中枢の障害によって起こりますが、極めてまれな病態です。一般に問題になる場合のほとんどは、咽頭(いんとう)や喉頭(こうとう)などに原因があって、特徴的ないびきとともに、一時的に上気道がふさがる閉塞型です。いびきは、呼吸停止時と呼吸再開時に反復して起こります。

無呼吸により動脈血の酸素飽和度が低下するとともに、眠りが浅くなったり、途中で目覚めたりするため、夜間に十分に眠れず、昼間に強い眠気や集中力の低下、注意力の低下、活力の喪失、抑うつ症状などを招きます。また、運転中や仕事中の居眠りから事故を起こすケースもあり、社会的問題にもなっています。

30~60歳の男性では4パーセント、女性では2パーセントくらいの頻度でみられるとされますが、成人の発症者には首が太くて短い、肥満している人が多いことから、肥満との関係が指摘されています。小児では、アデノイド(咽頭扁桃〔へんとう)〕との関係も指摘されています。

睡眠時無呼吸症候群は睡眠不足だけでなく、高血圧や肺性心、糖尿病になりやすく、不整脈、心筋梗塞(こうそく)、脳梗塞などを起こす危険が高まるため、専門医に診てもらうことが大切になります。

医師による診断では、日中の強い眠気、夜間の不眠、大きないびきと呼吸停止などの症状を確認した上で、睡眠中のさまざまな生理学的指標を測定するポリソムノグラフィーによって検査が行われます。

ポリソムノグラフィーでは、睡眠中の脳波、眼電図、筋電図、口と鼻の気流、胸腹部の呼吸運動、心電図、酸素飽和度などを終夜に渡ってモニターします。無呼吸が一晩に30回以上か、1時間当たりの無呼吸の回数が5回以上の場合に、睡眠時無呼吸症候群の診断が確定します。

医師による治療では、肥満している人に対してはまず体重を減らし、脂肪によってのどがふさがれないようにします。アデノイド、口蓋(こうがい)扁桃肥大、形態異常などが上気道の閉塞の原因である場合は、その手術を行います。

また、睡眠中に鼻を覆う特殊なマスクから空気を送り、上気道を広げて閉塞を起こさないようにするシーパップ(CPAP)療法が行われます。下あごを前方に移動させる歯科装具を用いて、上気道に透き間を作って換気を助ける治療法が行われることもあります。薬物療法により、呼吸を促進させることもあります。

飲酒後や睡眠剤、鎮静剤の服用後に起こることが多いので、これらをなるべく控えることも、発症者には必要です。

🟥「H3」型インフルエンザの新たな変異ウイルス、国内でも確認

 海外で拡大している「H3」型インフルエンザの新たな変異ウイルスが国内でも確認されたことが、国立健康危機管理研究機構の解析でわかった。専門家は「免疫を持っている人が少なく、感染が広がりやすい可能性がある」として注意を呼び掛けている。  季節性インフルエンザとして流行する「H3」...