2022/08/14

🇵🇾特発性食道拡張症

 

食道下端の通過障害と、胸部食道の拡張が起こる疾患

特発性食道拡張症とは、食道と胃の接合部である噴門の神経節障害の結果、胸部の食道全体が広がる疾患。噴門けいれん症、食道アカラシアとも呼ばれます。

食道は飲んだり食べたりした物を口から胃へ通す25センチほどの管ですが、それ自体が蠕動(ぜんどう)運動という、物を運ぶための働きを備えています。食べ物がのどを通ると、反射的に蠕動運動が起こって次第に下方に伝わり、その動きの波に乗って飲食物は運ばれます。蠕動の波が噴門に達すると、ここが緩んで飲食物を胃へ通し、通した物を再び食道へ逆流しないように、噴門は締まります。

しかし、何かの原因で食道の蠕動運動が起こらなくなると、噴門が緩まなくなるアカラシアという状態になって飲食物が滞る結果として、胸部の食道が異常に広がる特発性食道拡張症を生じます。

原因は、はっきりとはわかっていません。食道の蠕動運動は自律神経の働きによりますが、現在のところ、噴門の粘膜の下にある筋層内の神経節細胞の機能異常であることまでしか解明されていません。精神的なショックが誘因になることもあります。

症状としては、食べた物が胸の辺りでつかえる感じがして、すぐに満腹感が起こり、たくさん食べられません。ほかの食道狭窄(きょうさく)疾患と異なり、固形物より液体、とりわけ冷水の通過が悪い傾向にあります。

食道の広がりが高度になると嘔吐(おうと)が起こりますが、特に夜間、寝ている時にに多い傾向があります。そのほか、胸の圧迫感や痛み、背中の痛みが出て、病状が進行すると体重が減少してきます。

よくなったり悪くなったして長期間続き、精神的に緊張した時、体調不良の時には症状が悪くなります。10〜50歳代に発症して中年にピークがあり、やや女性に多くみられます。

特発性食道拡張症の検査と診断と治療

食べ物のつかえ、胸痛、嘔吐などがあったら、内科、消化器科(胃腸科)を受診します。

医師による診断では、バリウムを飲んでのX線造影検査をしたり、食道内視鏡検査、食道内圧検査を行います。さらに、食べ物の長期残留によって起こる慢性食道炎、食道内容物が気道に入って起こる肺感染症、食道がんなどの合併もあるので、これらの検査も行われます。

治療としては、精神安定剤、鎮痙(ちんけい)剤、狭心症に対する薬剤などがある程度有効なものの、大きな期待はできません。

軽症、中等症のものに対しては、噴門拡張術が有効です。食道下端の狭窄部にバルーンという袋つきのゴム管を挿入し、これに空気、水を満たして膨らませ拡張を図ります。また、内視鏡で病変を見ながら、バルーンを狭窄部に当てて膨らませるバルーン拡張術は、検査と治療が同時に行え、よい結果を得ています。

重症のものに対しては、手術が行われます。 内視鏡下に狭くなった下部食道の筋層を切開して広げ、胃液の逆流を防止する修復をします。

ただし、特発性食道拡張症では、食道に食物が停滞する時間が長いので、食物中の発がん物質が食道壁に接触する時間が長くなり、食道がんを合併する確率が高くなります。定期的に内視鏡検査を受けるようにします。

🇨🇱特発性心筋症

心臓の筋肉の疾患で、原因が不明なもの

特発性心筋症とは、原因または原因との関連が不明な心筋の疾患。原発性心筋症とも呼びます。

原因の明らかな心筋異常であるリウマチ性心疾患、心奇形、高血圧性心疾患、虚血性心疾患、内分泌性心疾患、貧血、肺性心などは、特発性心筋症から除外されます。同時に、特定心筋疾患、すなわち、全身疾患の一部として心筋病変を示す心筋炎や、ある疾患に伴う心筋疾患なども除きます。

特発性心筋症はその形態や機能異常の特徴から、肥大型心筋症と拡張型心筋症の二つの型に分けられます。

肥大型心筋症は、左心室心筋の異常肥大が特徴です。肥大が心室中隔の上部で著しい場合には、左心室の流出路の狭窄(きょうさく)を生じるものがあり、これを閉塞(へいそく)性肥大型心筋症と呼びます。狭窄の生じないものは、非閉塞性肥大型心筋症と呼びます。

また、この肥大型心筋症では心室中隔の異常肥大が左心室自由壁に比べて著しいことが一般的なため、非対称性中隔肥大と呼ばれることもあります。

片や、拡張型心筋症は、心室の拡張が著しく、心室の収縮性が低下して、心臓のポンプとしての機能が十分に果たせないことが特徴です。

症状としては、非閉塞性肥大型心筋症では、動悸(どうき)、呼吸困難、胸部圧迫感、胸痛などが自覚症状として現れます。閉塞性肥大型心筋症では、さらにめまい、あるいは失神が加わります。

失神の多くは運動時に起こりますが、運動をすると安静時よりも心臓が強く収縮するため、左心室の流出路の閉塞を強めるためと考えられます。重い場合には、運動中に急死することもあります。多くみられるのは、若年者で家族歴に急死例のある人。

拡張型心筋症の症状としては、呼吸困難、動悸、疲労、むくみ、不整脈、胸部圧迫感などがみられますが、心臓の収縮力の低下によるものと考えられます。

特発性心筋症の検査と診断と治療

特発性心筋症の診断は、症状、身体所見、各種検査、特に心エコー所見によります。

肥大型心筋症の治療では、心臓が強く収縮して流出路が閉塞するのを防ぐために、心臓の筋肉の収縮力を抑えるβ(ベータ)遮断剤が有効です。しかし、この薬も急死を予防できるものではありません。日常生活では自覚症状のない軽症例でも、運動中の急死が起こりますから、急激な運動は避けます。カルシウム拮抗(きっこう)剤も、β遮断剤と同様に有効であると見なされています。

拡張型心筋症では一般的に、長期間に渡る安静と減塩食、水分摂取制限が必要です。また、心収縮力の低下に対しては通常、強心薬のジギタリス、利尿剤、降圧剤の一種のACE阻害剤の三つが使用され、症例によってはβ遮断剤が有効なこともあります。すべての薬剤が無効な場合には、心臓移植が検討されます。

拡張型心筋症で多く出現する頻拍性不整脈に対しては、抗不整脈薬が必要となります。しかしながら、心筋収縮力の低下している拡張型心筋症では、抗不整脈薬の使用で、さらに収縮力を低下させることは不利であるため、使用には十分な注意が必要。

また、心房と心室の間の刺激伝導が完全に途絶えた状態になるなどの徐拍性不整脈には、ペースメーカーの植え込みによる治療が行われます。

🇨🇱特発性腎出血

腎臓から尿管に至る部位からの原因不明の出血の総称

特発性腎(じん)出血とは、腎臓から尿管に至る部位からの原因不明の出血。本態性腎出血とも呼ばれます。

特発性とは、原因が不明、または原因との関連が不明という意味です。

目で見て明らかに赤い尿が出る肉眼的血尿が現れ、数時間から数日続きます。腎臓からの出血といっても、体内に血液がたまるわけではありません。一般に男性に多く、20〜30歳代の比較的若年者に多くみられます。

なお、ナットクラッカー(クルミ割り)現象による腎出血は、以前は特発性腎出血に含まれていましたが、左側の腎臓の静脈がそばの2本の動脈に圧迫されることで、静脈の流れが悪くなってうっ血が起こり、それが血尿の原因になると明らかになったため、現在では含まれません。

特発性腎出血も、何らかの原因で片側の腎臓内の微少な血管が破れ、軽いうっ血が起こることなどが原因と考えることもできます。

明らかな原因や誘因がなく、急に真っ赤な尿が現れるため、驚いてしまうことが多いようです。一度だけの場合もありますが、数日間続くこともあります。また、再発することもあります。

真っ赤な尿のすべてが、特発性腎出血ではありません。原因を特定できない特発性腎出血は、肉眼的血尿の発症者の約10人に1人にみられるだけです。他の肉眼的血尿の原因となる疾患として、膀胱(ぼうこう)炎などの尿路感染症、尿管結石などの尿路結石症、膀胱がんなどの尿路悪性腫瘍(しゅよう)、急性糸球体(しきゅうたい)腎炎やIgA腎症などの糸球体腎炎、膀胱や尿道に異物が入って炎症を起こす尿路異物などが挙げられます。

また、健常者でも激しい運動後、一時的に血尿を認めることがあります。いずれにおいても血尿が認められた時、特に持続したり、何度も再発したりする場合には、泌尿器科、ないし腎臓内科の医師の診断を受け、定期的に経過観察することが必要です。

特発性腎出血の検査と診断と治療

泌尿器科、腎臓内科の医師による診断では、まず他の原因による肉眼的血尿を除外します。具体的な検査としては、尿沈渣(ちんさ)、尿細胞診、尿細菌培養、超音波、CT、MRI、静脈性腎盂(じんう)造影(IVP)、膀胱鏡などを行います。他の原因を除外することにより、特発性腎出血と診断を確定します。

特発性腎出血と診断されたら、腎臓の働きに関しては正常で、健康人と何ら変わることはありません。また、貧血になったり、IgA腎症のように将来、腎臓の働きが悪くなるといった恐れはないのが普通です。

泌尿器科、腎臓内科の医師による治療では、薬物療法として、抗プラスミン薬などの止血薬を使用して、血尿を止めます。肉眼的血尿が持続する場合には、尿管カテーテルを用いて、1~3パーセントの硝酸銀を腎盂内へ注入して、出血している静脈を凝固させる治療を行うこともあります。

自然に治ることも多いものの、安静が第一です。肉眼的血尿が見られる間は、血尿を増やしてしまう恐れがある過労や風邪などに注意しながら、1日の平均的な成人の尿量である1~1・5リットルを保つために十分な水分補給を心掛けます。飲酒や激しい運動も、控えたほうがよいでしょう。

🇨🇱低βリポ蛋白血症

低LDLコレステロール血症を示す遺伝性疾患

低βリポ蛋白(たんぱく)血症とは、低LDL(低比重リポ蛋白)コレステロール血症を示す常染色体優性遺伝疾患。家族性低βリポ蛋白血症とも呼ばれます。

その原因遺伝子として、アポBとPCSK9(プロ蛋白質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型)が知られています。アポB変異の大部分は、短縮アポBを生成し、VLDL(超低比重リポ蛋白)の分泌障害と異化促進の結果、血液中のアポB濃度が低下します。

人間の遺伝子は、父親由来と母親由来の2つが一組となってできています。LDL(低比重リポ蛋白)受容体やこれを働かせる遺伝子の両方に異常がある場合をホモ接合体と呼び、いずれか一方のみに異常が認められる場合をヘテロ接合体と呼びます。ホモ接合体のみならずヘテロ接合体も、低LDL(低比重リポ蛋白)コレステロール血症を示します。

低βリポ蛋白血症ヘテロ接合体の発症者では、短縮アポBを生成して、血液中の脂質であるコレステロールの濃度が軽度に低下し、一般に、総コレステロール120mg/dl未満、LDL(低比重リポ蛋白)コレステロール80mg/dl未満を示します。同じ血液中の脂質である中性脂肪(トリグリセライド)の濃度は、正常の値を示します。

低コレステロール血症を示すことを除いて、自覚症状がないことが多いものの、肝臓からのVLDL(超低比重リポ蛋白)の分泌不全のために、脂肪肝や胆石症の合併が増加することもあります。なお、自覚症状がないケースでは、発育も正常であり、かつ心血管病にかかるリスクが低いため、通常人より長生きするという報告もあります。

低βリポ蛋白血症ホモ接合体の発症者では、より短い短縮アポBを生成して、血液中の脂質であるコレステロールや中性脂肪(トリグリセライド)の濃度が低下し、一般に、総コレステロール80mg/dl未満、LDL(低比重リポ蛋白)コレステロール20mg/dl未満を示すか、非常に短い短縮アポBを生成してアポB合成が欠損し、無βリポ蛋白血症と類似した症状を示します。

アポB合成が欠損した場合の症状は、まず乳児期に現れ、発育不全がみられます。脂肪吸収の障害により、授乳開始とともに便に過度の脂肪が含まれる脂肪便という状態になり、便は脂っぽく、悪臭があり、水に浮かびやすくなります。慢性下痢、嘔吐(おうと)も生じます。

また、ビタミンEを始めとした脂溶性ビタミンの吸収障害により、思春期までに網膜色素変性による夜盲、視野狭窄(きょうさく)、視力低下などの目の症状が生じ、失明する可能性もあります。中枢神経系の損傷による運動失調症や精神遅滞、末梢(まっしょう)神経系の損傷による知覚低下や腱(けん)反射消失などが起きる可能性もあります。

また、末梢細胞へのコレステロール供給が低下するために、赤血球は有棘(ゆうきょく)赤血球となります。肝臓からのVLDL(超低比重リポ蛋白)の分泌不全のため、脂肪肝を示すこともあります。

未治療のケースでは、30歳前後までに中枢神経系の損傷により、歩行など通常の日常生活に必要な基本的な活動が著しく障害されることもあります。

アポB合成が欠損した場合は通常、小児期に発見されますが、まれに成人期になって偶然発見されるケースもあります。

低βリポ蛋白血症の検査と診断と治療

内科、内分泌・代謝科の医師による診断では、血液検査で血中のLDL(低比重リポ蛋白)コレステロールの低値を確認し、リポ蛋白の電気泳動で短縮アポBを検出することで、低βリポ蛋白血症と確定します。

低βリポ蛋白血症ホモ接合体の発症者で、アポB合成が欠損している場合は、血中の総コレステロール値は25〜45 mg/dlで、そのほとんどはHDL(高比重リポ蛋白)コレステロール、トリグリセライド(中性脂肪)10 mg/dl未満であることが多く、アポBは検出感度以下、脂溶性ビタミンA・E・Kも低値を示します。

低βリポ蛋白血症と無βリポ蛋白血症は、家族歴によって鑑別します。低βリポ蛋白血症が常染色体優性遺伝であるのに対し、無βリポ蛋白血症は常染色体劣性遺伝疾患であるので、家族調査で無βリポ蛋白血症との鑑別が可能となります。

内科、内分泌・代謝科の医師による治療では、低βリポ蛋白血症ヘテロ接合体の発症者、および低値であるが検出可能なLDL(低比重リポ蛋白)を有する低βリポ蛋白血症ホモ接合体の発症者の場合、一般的に何も行ないません。

LDL(低比重リポ蛋白)の欠損する低βリポ蛋白血症ホモ接合体の発症者の場合、無βリポ蛋白血症に対する治療と同様、脂溶性ビタミン、特にビタミンEのサプリメントを使用し、多量に補充します。

幼児には1日1000〜2000mg、成人には5000〜10000mgの脂溶性ビタミンを長期にわたって大量に補充することによって、中枢神経系の損傷の発生と進行を遅らせることができます。

消化器症状に対しては、脂肪の摂取、特に長鎖脂肪酸の摂取を制限します。栄養障害に対しては、カイロミクロンを経ずに吸収される中鎖脂肪酸を補充することもあります。

🇧🇴停留精巣

男児の精巣が陰嚢内に位置せず、下降途中でとどまっている状態

停留精巣とは、男児の精巣の下降が不十分で、精巣が陰嚢(いんのう)内に位置せずに、途中でとどまっている状態。停留睾丸(こうがん)とも呼ばれます。

性腺(せいせん)に相当する精巣は本来、妊娠3カ月ごろから9カ月ごろまでの胎児期に、腹腔(ふくくう)の腎臓(じんぞう)に近いところから次第に下降し、鼠径管(そけいかん)という下腹部の決まった道を通ってから陰嚢まで下降し、出生時には陰嚢内に位置するようになります。陰嚢からの牽引(けんいん)、ホルモン(内分泌)などの働きにより精巣は下降しますが、何らかの原因によって下降が途中で止まったものが停留精巣です。

片側性と両側性があり、多くは股(また)の付け根の鼠径部に精巣を触れることができます。新生児の3~4パーセント、低出生体重児では20パーセントの頻度でみられ、珍しい疾患ではありません。

生後3カ月ごろまでは精巣の自然下降が期待でき、1歳時には新生児の1パーセント程度、低出生体重児では2パーセント程度となります。1歳を過ぎると、精巣の自然下降はほとんど期待できません。

普段は陰嚢が空のようであっても、風呂に入っている時や、リラックスして座っている時などに精巣が陰嚢内に触れるような場合には、移動性精巣と呼びます。移動性精巣は緊張や刺激により位置が高くなりますが、リラックスしている状態では陰嚢内に位置します。

陰嚢の中に精巣がある場合に比べ、それ以外のところに精巣がある場合は、2〜4度高い温度環境にさらされていることになります。陰嚢内にあると33度、鼠径管内にあると35度、腹腔内にあると37度というデータもあります。高い温度環境にある停留精巣を放置しておくと、精巣は徐々に委縮してしまいます。精子を作る細胞も少しずつ機能を失い、数も減少してゆきます。この変化は高い温度環境では常に進行してゆき、成人になってからの男性不妊の原因になると考えられています。

さらに、停留精巣から悪性腫瘍(しゅよう)ができやすい、停留精巣が外傷を受けやすく、精巣捻転(ねんてん)を起こしやすいなどともいわれます。

1歳の誕生日を過ぎても精巣が陰嚢内に触れない場合には、小児科、泌尿器科、小児外科の医師による診察を受けることが勧められます。また、移動性精巣と停留精巣の区別が難しいことも多いため、正しい治療方針を立ててもらいます。

停留精巣の検査と診断と治療

小児科、泌尿器科、小児外科の医師による診断では、陰嚢の中に精巣を触れない場合に、鼠径部にあるのかどうかをよく触診します。この触診で精巣を触知する場合には、停留精巣か移動性精巣です。

精巣を触れない時には、精巣がない疾患である無精巣症と区別する必要があるため、超音波検査、MRI検査、腹腔鏡などにより、腹腔内に精巣があることを確認することがあります。同じ目的で、精巣を刺激するホルモンを注射して、男性ホルモンの分泌能力をみるホルモン検査を行う場合もあります。

小児科、泌尿器科、小児外科の医師による治療では、停留精巣に対しては精巣を固定する手術を行います。手術前および手術中には、超音波検査、MRI検査、腹腔鏡などにより、停留精巣の位置、大きさを確認することが重要です。

手術の時期に関しては、1歳から1歳6カ月ごろまで、遅くとも2歳までに手術をするのがよいとされています。移動性精巣であれば、治療の必要はありません。

幼児期の手術は、将来の男性不妊症の予防と、合併しやすい鼠径ヘルニア、精巣腫瘍の早期発見に役立つとされています。 ただし、手術を行っても精巣腫瘍の発生を防げるかどうかは不明です。

手術でなく男性ホルモンを使って精巣の下降を促す方法もありますが、副作用もあり日本ではあまり行われていません。

🇧🇴適応障害

社会環境に適応できず、心身の症状が出現

適応障害とは、ある社会環境においてうまく適応することができず、さまざまな心身の症状が現れる精神疾患の一種。急性ストレス障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)と同様に、外的ストレスが原因となって起こるストレス障害に分類されます。

だれでも、新しい環境に慣れて社会適応するためには、多かれ少なかれ苦労をしたり、いろいろな工夫や選択をする必要に迫られることはよくあることです。それがうまくいかなくなった場合には、会社では職場不適応、学校では登校拒否(不登校)、家庭では別居あるいは離婚などといった形で現れます。

ストレス学説によれば、心理社会的ストレス(環境要因)と個人的素質(個人要因)とのバランスの中で、いろいろなストレス反応である心理反応、行動反応、身体反応が生じますが、これらは外界からの刺激に適応するための必要な反応です。ところが、ストレスが過剰で長く続く時、個人がストレスに対して過敏である時に、このバランスが崩れてさまざまな障害を来すようになります。

適応障害の発症に関しては、個人的素質が大きな役割を果たしていますが、もし外的ストレスがなければこの状態は起こらなかったと考えられることが、この障害の基本的な概念です。つまり、外的ストレスの源がはっきり指摘できる場合にのみ、適応障害と診断されます。症状が現れるのに先立って、日常的ではあるが個人にとっては重大な環境の変化である就職、就学、独立、転居、結婚、離婚、失業、経済的困難、重い病気、子離れ、親別れなどがあります。

適応障害の症状はいろいろで、不安、抑うつ、焦燥、過敏、混乱などの情緒的な症状、不眠、食欲不振、全身倦怠(けんたい)感、易疲労感、頭痛、肩凝り、腰痛、腹痛、吐き気、動悸(どうき)などの身体的な症状、業績や学力の低下、遅刻、欠勤、不登校、早退、過剰飲酒、ギャンブル中毒、暴力などの問題行動があります。そして、次第に対人関係や社会的機能が不良となり、仕事や学業にも支障を来し、引きこもってうつ状態となります。

精神科、心療内科以外の病院で身体的な症状のみを訴える場合、検査では確認できないため、適応障害が見過ごされることが多くなります。逆にいうと、不眠や頭痛、吐き気などの症状があるにもかかわらず、病院で異常なしといわれた場合、適応障害であることがあります。

軽度のうつ病と区別がつきにくく、放置しているとうつ病になることもあります。また、適応障害がもとで発生する身体的な異常は、自律神経失調症や心身症とも呼ばれます。

適応障害は比較的よくみられ、精神科受診者の約10パーセントとも見なされています。思春期、青年期に多く起こりますが、どの年代でも起こり得ます。男性より女性により多くみられ、性格がまじめで、忍耐強い人ほどかかりやすいとされます。

適応障害の検査と診断と治療

適応障害の診断には、次のような基準があります。

1、はっきりとした心理社会的ストレスに対する反応で、3カ月以内に発症する。2、ストレスに対する正常で予測されるものよりも過剰な症状。3、社会的または職業(学業)上の機能の障害。4、不適応反応はストレスが解消されれば6カ月以上は持続しない。そして、他の精神障害がないことが前提条件です。

適応障害のタイプとしては、その主要な症状によって以下のように分類されます。

1、不安気分を伴う適応障害:不安、神経過敏、心配、いらいらなどの症状が優勢。2、抑うつ気分を伴う適応障害:抑うつ気分、涙もろさ、希望のなさなどの症状が優勢。3、行為の障害を伴う適応障害:問題行動、人の権利の障害、社会規範や規則に対する違反行為などが優勢。4、情動と行為の混合した障害を伴う適応障害:情動面の症状(不安、抑うつ)と行為の障害の両方がみられるもの。5、身体的愁訴を伴う適応障害:疲労感、頭痛、腰痛、不眠などの身体症状が優勢。6、引きこもりを伴う適応障害:社会的引きこもりが優勢。

適応障害の治療では、まず原因となっている心理社会的ストレスを軽減することが第一です。環境要因を調整して適応しやすい環境を整えることや、場合によってはしばらく休職、休学して休養し、心的エネルギーを回復することが必要です。また、心理的葛藤(かっとう)に関してカウンセリングを受けて、混乱した情緒面の整理をすることや、社会適応へ向けての心理的援助を求めることも有効です。精神療法によるストレス脆弱(ぜいじゃく)性の体質改善も、効果があるといわれています。

不安を主とする場合は抗不安薬、うつ症状を主とする場合は抗うつ薬の服薬など、それぞれの病型に応じて薬物療法が必要な場合もありますが、薬物は期間を限って補助的に用いられます。

適切な治療で、多くは3カ月以内という短期間で回復します。しかしながら、適応障害の原因となっている心理社会的ストレスの軽減、あるいは除去が行われないことには、さまざまな症状が再発する可能性が高くなります。 ストレス因子がなくなった後も6カ月以上症状が続く場合は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)や分類不能の重度のストレス障害、特定不能の不安障害などを考慮する必要もあります。

日常生活上の心掛けとしては、環境要因からの心理社会的ストレスにより、心身のバランスを崩した時に症状が現れてくるので、適度の休養を確保したり、気分転換を図ったりして、日頃からストレスをためないような工夫をする必要があります。適切な相談相手を持って一人でくよくよ考えないことや、人といかにうまく付き合い、その中でいかに自己実現するかというソーシャルスキルを身に着けることも有効です。

🇧🇴滴状乾癬

扁桃炎などに引き続いて、水滴くらいに小さい発疹が現れる皮膚疾患

滴状乾癬(てきじょうかんせん)とは、扁桃(へんとう)炎や風邪などに引き続いて、1センチほどの水滴状の赤い発疹(はっしん)が急速に現れる皮膚疾患。滴状類乾癬とも呼ばれます。

滴状乾癬は多くの場合、突然、発症します。扁桃炎や風邪などウイルスまたは溶連菌の上気道感染の1週間から3週間後に、腹部や背中、尻(しり)などの体幹や大腿(だいたい)部に水滴くらいから1センチ大くらいの赤い発疹が現れます。

この小さな赤い発疹は、体の狭い部分に限定して現れる場合もあれば、一度に多発して体中に広まって現れる場合もあります。

一見、乾癬という皮膚疾患、すなわち表皮の細胞の新陳代謝が異常に早くなり、皮膚の細胞が垢(あか)になる角化が早く進む皮膚疾患に、よく似ていることから乾癬の一種とされていますが、症状は比較的軽く、かゆみや痛みを感じることはほとんどありません。

乾癬との大きな違いは、発疹部に集まって血管に炎症を起こしている白血球のタイプの違いで、発疹を表面から見ただけではなかなか区別はつきません。

やがて、小さな赤い発疹の表面は、垢(あか)のような銀白色の鱗屑(りんせつ)となり、その一部がポロポロとはがれ落ちます。

いったん滴状乾癬を発症すると、再発を繰り返し慢性化しやすいのですが、一度出た一つ一つの小さな赤い発疹はそう長続きせず、すぐに治る傾向にあります。再発を繰り返すと、新しい発疹と古い発疹が皮膚に混在し、古い発疹は色素沈着や、皮膚の一部の色が白く抜け落ちる白斑(はくはん)を残すことがあります。

再発を繰り返す傾向がある一方、扁桃炎や風邪がよくなると症状も改善し、自然に治癒することもあります。しかし、時には、滴状乾癬から移行して、乾癬を発症することもあります。

滴状乾癬は、男女を問わず子供から30歳未満の成人に、比較的多くみられる傾向が強いのが特徴です。

自然に治癒することもありますが、もちろん治療を受けたほうが早く治るため、滴状乾癬の症状に気が付いたら早めに皮膚科、ないし皮膚泌尿器科を受診したほうがよいでしょう。

滴状乾癬の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断は、乾癬の場合と同じように、特徴的な発疹とその分布、経過から判断します。細菌検査をすると、溶連菌、インフルエンザ菌などが検出されることがあります。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、軽い場合は、炎症を抑制するステロイド(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)の外用剤を用います。多くは1カ月から3カ月で治癒します。

発疹の範囲が広くて目立つ場合は、内服剤を用いたり、紫外線治療を行います。

内服剤には、かゆみに有効な抗アレルギー剤から、炎症を抑制するステロイド剤や免役抑制剤まで、多くの選択肢があります。滴状乾癬の原因が感染症であった場合、内服剤の服用によって感染が終息すれば、多くは数週間で治癒します。

紫外線治療には、波長や使用する薬の違いにより、PUVA(プーバ)療法、UVB療法、ナローバンドUVB療法などがあります。

🟥「H3」型インフルエンザの新たな変異ウイルス、国内でも確認

 海外で拡大している「H3」型インフルエンザの新たな変異ウイルスが国内でも確認されたことが、国立健康危機管理研究機構の解析でわかった。専門家は「免疫を持っている人が少なく、感染が広がりやすい可能性がある」として注意を呼び掛けている。  季節性インフルエンザとして流行する「H3」...