2022/08/15

🇸🇬動揺病(乗り物酔い)

船など乗り物に乗っている最中に、気分が悪くなる症状

動揺病とは、船、飛行機、バス、車、タクシー、電車など、いろいろな乗り物に乗っている最中に気分が悪くなる症状。乗り物酔い、船酔い、空酔い、バス酔い、加速度病とも呼ばれています。

遊園地のジェットコースターやコーヒーカップなどの乗り物でも、症状が出ることもあります。軽いめまいのほかに、顔面が蒼白(そうはく)になったり、首や額、手のひらに冷や汗をかいたり、吐き気を伴ったりします。吐き気を感じると同時に生つばが出てきて、ため息や生あくびが出てきます。次第に無気力になり、頭の重みや頭痛が出てくる場合もあります。

生つばが出た状態が続くと、突然、嘔吐(おうと)を起こします。さらに悪化した場合には、下痢を起こすこともあり、あまりにも嘔吐を繰り返すと脱水症状に陥り、点滴が必要になることもあります。

一般的には、乗り物から降りた場合、しばらくすると症状は回復し、後遺症も残りません。

ふだんは動揺病を起こさない人でも、体調次第で起こすことがありますし、めまいを起こしやすい人は、動揺病も起こしやすい傾向があります。乗り物別の起きやすさには個人差があり、例えば車には全く酔わない人でも船には酔いやすかったり、飛行機や電車には全く酔わないのに車には酔いやすいという人もいます。急ブレーキ、急発進を行う乱暴な運転、渋滞、上り斜面、つづら折りのカーブ、効きすぎる暖房、効きが悪い冷房などが長時間続いた場合には、とりわけ発生しやすくなります。

動揺病が起こる原因ははっきりとはわかっていませんが、乗り物に乗っている時の振動、加速、減速などによって、耳の奥にある内耳の三半規管と前庭という平衡器官が連続的に刺激されて起こると考えられています。

体の平衡、すなわちバランスは、静止時でも運動時でも、脳やほかの神経系、目でも調節されますが、耳がたいへん重要な役割を果たしています。耳では、三半規管と前庭が体の平衡を調節していて、三半規管は主に回転運動に関係し、前庭は上下、前後の運動に関係しています。三半規管と前庭が病的に侵されると、立つことも歩くこともできず、めまいが起こります。

三半規管と前庭が強く刺激された例が動揺病で、この平衡器官は呼吸や循環器をつかさどる自律神経系とも連絡しているために、動揺病では気分が悪くなり、吐き気、嘔吐、冷や汗などの症状が出てくるのです。

なお、何日も繰り返し刺激されていると、動揺病の症状は急激に消失していきます。例えば、日本からヨーロッパまでの長期間の航海に出た時、最初の数日間は激しい症状を示した人でも、しばらくたつと消えてしまいます。つまり、慣れていない乗り物に乗ったとしても、何度も同じ体験を繰り返すと次第に動揺病の症状が軽減し、最終的にはその乗り物に乗っても症状が出なくなります。

動揺病の治療法と予防法

動揺病(乗り物酔い)の治療の基本は、不安感を抱かないことです。酔うかもしれないという不安を抱かないようにして、楽しみながら乗るべきです。周りの人も、不用意に不安がらせないことです。

どうしても不安が強い時は、乗り物に乗る30分前ごろに酔い止めの薬を飲んでおきます。この内服薬は抗ヒスタミン剤が代表的で、眠気やだるさの副作用が伴うために、これに無水カフェインを含ませている薬もあります。内服液になっているものや、水なしで内服できるチュアブルタイプの薬もありますが、内容はやはり抗ヒスタミン剤が主体で、どの薬も症状が出る前に内服することが大切です。

欧米では、スコポラミンという副交感神経遮断(しゃだん)剤を皮膚に張るタイプもありますが、眠気が生じ、しかも記憶障害が起こることがあるために日本では許可されていません。

乗り物に酔って動揺病を起こさないためのポイントを紹介します。

きちんと睡眠をとっておく。空腹のまま乗り物に乗らない。脂肪分の多い食品を避けて食べすぎず、酒や乳製品、炭酸飲料を飲みすぎずに、適度な食事をとっておく。乗る前にトイレをすませておく。厚着をせず、風通しのよい楽な服装をする。きついネクタイやベルト、帽子、体を圧迫する下着は避ける。

乗り物の中では、読書や携帯メール、携帯ゲーム機のプレイなど、眼球の動きを細かくするような行為はしない。一点を凝視せず、遠くの景色をぼんやりと見る。窓を開けて、風に当たる。船なら甲板に出て空気を吸う。気分をリラックスさせ、深くゆっくりと呼吸する。周りの人と話す、好きな音楽を聞く、歌を歌う、合唱するなどで気分をそらす。

後ろ向きの座席を避け、進行方向が見える前の方に座る。気分が悪くなったら、早めにシートを倒すか横になる。

以上のポイントを一つずつ実践するとともに、何より気を強く持つことが大事です。酔うかもしれないと思っていると、本当に酔ってしまいます。予防に最善を尽くしたから大丈夫と自信を持って、乗り物に乗るようにします。

🇵🇦トゥレット症候群

不随意に急速な運動や発声が起きるチック症の中で、最も重症な疾患

トゥレット症候群とは、チックという一種の癖のようなものが固定、慢性化した疾患であるチック症の中で、最も重症な疾患。トゥレット障害とも呼ばれます。

チックというのは、ある限局した一定の筋肉群に、突発的、無目的に、しかも不随意に急速な運動や発声が起きるもの、とされています。従って、チック症の症状には、運動性チック、音声(発声)チックがあります。

運動性チックの症状としては、まばたき(瞬目)、首振り、顔しかめ、口すぼめ、肩上げなど上位の身体部位によく現れますが、飛び跳ね、足踏み、足けりなど全身に及ぶものもあります。音声(発声)チックの症状としては、咳(せき)払い、鼻鳴らし、舌鳴らしのほか、叫びや単語を連発するものがあります。

3〜4歳の幼児期から11歳ごろに発症することが多く、ピークは6〜8歳です。男児に多い傾向にあり、男女比は3対1。その意味付けに関して定説はありませんが、一応この時期の男女の成長、発達の特異性によるものと考えられています。

原因は、慢性的なものであれば、遺伝的なものを含め脳にあると考えられていますが、環境や心の問題も症状に影響します。一過性のものの中には、心因性のものもあると考えられていますが、その場合自然に軽快することが多いといわれています。脳については、線状体の障害説などがあります。

チック症は、一過性チック症、 慢性チック症、トゥレット症候群に分類されます。

一過性チック症は、1種類または多彩な運動性チックおよび音声チックが頻回に起こりますが、1年以内に症状が消失するものです。心と体の成長、発達の過程で、子供の10~20パーセントに何らかのチック症がみられるとされていますが、多くは一過性と考えられています。

慢性チック症は、1種類または多彩な運動性チックあるいは音声チックのどちらかが、頻回に起こり1年以上持続するものです。

トゥレット症候群は、多彩な運動性チックおよび1つまたはそれ以上の音声チックが、同時ではなくても頻回に起こり1年以上持続するものです。10歳過ぎになると、卑猥(ひわい)な単語などをいってしまう汚言症、他人のいった言葉などを繰り返す反響言語、音声や単語を繰り返す反復言語などの複雑な音声チックが出現することがあります。

このトゥレット症候群、時に慢性チック症にも併発することがあるものとして、強迫性障害、注意欠陥/多動性障害(AD/HD)、睡眠障害、学習障害、不登校、衝動性、攻撃性の高進、自傷・他害行為が挙げられます。

以上の一過性チック症、 慢性チック症、トゥレット症候群という3つの障害は、連続するものかどうかは明らかでありませんが、大きく見れば1つの集合と考えられています。そして問題なのは、どのようなタイプの一過性チック症が、慢性チック症あるいはトゥレット症候群に進展するかがわかっていないことです。

トゥレット症候群などのチック症の症状が長期、慢性化し、多発、激症化する場合には、子供専門の精神科などの医療機関への受診が必要になります。

トゥレット症候群の検査と診断と治療

精神科などの医師による診断は、一般には症状や治療経過の特徴などからなされます。

精神科などの医師による治療は、「トゥレット症候群などのチック症という疾患を治すのではなく、チック症の子供を治療する」ことになります。治療の目標は、ストレスなどへの適応性を高め、人格の発達援助を目指すことです。

軽症の場合は、遊戯療法などの行動療法的なアプローチが有効とされています。その際は、親へのカウンセリングが重要になります。親の対応としては、症状を誘発する緊張や不安を軽減、除去することや、それへの耐性(精神的抵抗力)を高めるように援助することが肝要です。

症状の出現をやめるように、いたずらに叱責(しっせき)して注意を促すことは、避けるべきです。チックは、緊張や不安、興奮、疲労などによって影響されますので、ちょっとした変動で一喜一憂しないことです。

学校ではチックが目立たないのに、家庭では多い場合もあります。これは家庭に問題があるのではなく、むしろリラックスできるからであることが多いと思われます。本人が症状に捕われすぎないように配慮し、ゆったりと過ごせるようにします。全身運動による発散に関心を向けさせ、一方では、何か興味を抱いて熱中できる、趣味的なものを持たせることが有効です。

トゥレット症候群や慢性チック症の治療には、主としてハロペリドール、ピモジドなどの向精神薬による薬物療法が有効です。そのほかの治療法の併用も、行われます。

🇵🇦兎眼

顔面神経まひにより、目を閉じることができなくなり、目の表面が乾燥する疾患

兎眼(とがん) とは、顔面>神経まひが原因で、目を閉じることができなくなり、目の表面が乾燥する疾患。

兎眼はその字の通り、兎(うさぎ)の目という意味です。兎は、その目が外敵から身を守るのに都合よくできていて、まばたきの回数が人間より大変少ないため、いつも開いているように思われています。人間が兎眼を生じると、意識してまぶたを閉じようとしても薄目を開けている状態になり、本当にいつも目を開いていることになります。

目は、常に外界と接して空気にさらされているために乾燥したり、ほこりが付いたりします。そこで、まばたきというまぶたの動きによって、常にその表面を涙で湿らして、ほこりを取り除き、細菌などの侵入を防いでいますので、いつも目を開いていると、目の表面が乾燥したり、黒目の表面を覆う角膜に傷が付いたりします。

兎眼の初期には、睡眠中だけに症状が現れる夜間性兎眼がみられます。睡眠中にまぶたを完全に閉じることができないため、涙で目を十分に潤すことができず、翌朝目覚めた際には目の表面が乾燥していて、不調を感じます。しかし、日中はまぶたを閉じることができるため、兎眼に気付かない場合もあります。

日中もまぶたを閉じることができず、目が常に開いている状態になると、目の表面が強度に乾燥し、ごろつき感や痛みを生じます。

さらに、目の表面が乾燥したまま放っておくと、角膜の傷が常態化するばかりか、点状表層角膜症や角膜混濁を生じ、極端な例では角膜潰瘍(かいよう)を生じ、視力の低下を引き起こすこともあります。細菌や、かびの一種の真菌、ウイルスなどの感染を伴い、重症となることもあります 。

兎眼の主な原因は顔面神経まひであり、単純性疱疹(ほうしん)、帯状疱疹などのヘルペスウイルス感染症で、一般的には口唇ヘルペスを患ったことがある人が急性あるいは亜急性に、顔面神経まひを発症し、上下のまぶたの開閉にかかわる眼輪筋がまひで動かなくなるため、兎眼を合併します。症状は普通、片側だけの目に起こります。まれには、両側の目に起こります。

ほかには、脳梗塞(こうそく)や脳腫瘍(しゅよう)の部分症として顔面神経まひを発症したり、ベルまひといって原因ははっきりしていないもののヘルペスウイルスによる場合が多いと推定されている顔面神経まひを発症したりして、兎眼を合併します。

まれには、外傷後のまぶたの傷跡による閉瞼(へいけん)障害によって、兎眼を起こすこともあります。

兎眼の症状に気付いたら、原因の治療が必要ですので、眼科の専門医を受診することが勧められます。

兎眼の検査と診断と治療

眼科の医師による診断では、顔面神経まひの原因を調べるために、頭部のCT(コンピュータ断層撮影)検査やMRI(磁気共鳴画像撮影)検査を行います。

眼科の医師による治療では、顔面神経まひを治すことを第一とします。目に関しては、顔面神経まひの症状が軽快してくるまでの間、目の表面が乾燥するのを防ぐため、軽症では、防腐剤を含んでいない人工涙液を頻回に点眼したりします。

中等症では、抗菌剤眼軟こうを入れて眼帯をします。重症の兎眼では、目を閉じた上から透明な専用保護膜を張ったり、角膜に穴が開く危険性があったり痛みが強い場合には、上と下のまぶたを一時的に縫い合わせたりします。

睡眠中だけに症状がみられる夜間性兎眼の場合は、睡眠時のみ、抗菌剤眼軟こうを塗ることで対応することが必要です。

🇵🇦トキソプラズマ症

ネコの便や動物の肉を介して、トキソプラズマ原虫が人に感染

トキソプラズマ症とは、単細胞の原虫の一種であるトキソプラズマによる感染症。トキソプラズマは世界中に存在し、人や動物、鳥に感染します。

不顕性感染が多く、症状が出る人はほとんどいません。顕性感染となって重い症状が出るのは、新生児や乳幼児と免疫機能が低下している人だけです。

この寄生虫はさまざまな動物の組織で成長しますが、卵を産み付けるのはネコ科の動物の腸の内皮細胞のみ。卵はネコなどの便に混じって排出され、土の中で最長18カ月間生き続けます。トキソプラズマの卵が入っている土に触った人が手を口に入れて感染する場合もあれば、卵がついている食べ物を介して感染する場合もあります。

時には、ブタなどの動物が土からトキソプラズマ症に感染することもあり、その感染した動物の肉を生や加熱調理が不十分な状態で人が食べて感染する場合もあります。冷凍するか、よく加熱すれば、トキソプラズマは死滅します。

妊婦が感染した場合には、血液中に流入したトキソプラズマが胎盤を通して胎児に感染することがあります。その結果、流産や死産になったり、形態異常児出産、知能障害、けいれん、まひ、水頭症、脈絡網膜炎などの視力障害がみられることがあります。

先天性トキソプラズマ症の新生児は、重症で生後まもなく死亡することもあれば、何カ月もたってから症状が出ることもあります。場合によっては何年も症状が現れなかったり、一生発病しないこともあります。妊娠前に感染した場合は、寄生虫が胎児に感染することはありません。

免疫機能が低下している人、特にエイズやがんの人や、nter、トキソプラズマ症を発症するリスクが高くなります。このような人たちの症状は、通常は過去に感染したトキソプラズマが再び活動を始めたことによるものです。

感染部位によってさまざまな症状が現れ、脳のトキソプラズマ症になると、半身の脱力感、言語障害、頭痛、錯乱、けいれん発作などが起こります。急性散在性トキソプラズマ症は、発疹(はっしん)、高熱、悪寒、呼吸困難、疲労を起こします。髄膜脳炎、肝炎、肺炎、心筋炎を起こす人もいます。治療しなければ、ほぼ100パーセント死亡します。

健康な人が後天的にトキソプラズマ症にかかった場合は、ほとんど症状は現れません。症状が出ても普通は軽症で、痛みのないリンパ節のはれ、間欠性の微熱、はっきりしない体調の悪さなどです。脈絡網膜炎が単独で起こり、視力障害、目の痛み、光過敏性を伴うこともあります。

トキソプラズマ症の検査と診断と治療

医師による診断では通常、血液検査でトキソプラズマに対する抗体を調べます。ただし、エイズで免疫機能が低下している人は、血液検査で偽陰性が出ることがあるので、医師は脳のCT検査とMRI検査に基づいて診断します。まれに、トキソプラズマの感染部位の組織片を採取し、顕微鏡で調べて診断する生検を行うこともあります。

感染していても、症状がなくて免疫機能が正常な成人の場合には、治療の必要はありません。症状がある場合は、スルファジアジンとピリメタミンの併用で治療し、ピリメタミンの副作用から骨髄を保護するためにロイコボリンを追加します。脈絡網膜炎の治療には、クリンダマイシンと併用して、炎症を鎮めるためにプレドニゾロンなどのステロイド剤を使います。

エイズ患者の場合、トキソプラズマ症は再発する傾向があるので、投薬は期限を決めずに行うことが多くなります。トキソプラズマ症を予防するため、トリメトプリム・スルファメトキサゾール(ST合剤)の予防投与を行うこともあります。妊娠中の人がトキソプラズマ症にかかった場合は、胎児への感染を防ぐためにアセチルスピラマイシンで治療します。

予防としては、ネコはしばしば庭や砂場をトイレにすることがあるため、妊娠中に庭いじりをしたり、土や砂に触れるような時には、手袋を着けます。土や砂に触れた後、食事や料理の前には、水とせっけんでよく手を洗い流します。また、ネコのトイレを屋内に設置している場合には、その掃除をするのはやめるか、掃除をする際には手袋を着けるなどの注意が必要です。ブタ、ウシ、トリ、ヒツジなどの肉は、十分に加熱調理したものだけを食べるようにします。

🇵🇦毒キノコ中毒

食用キノコによく似た毒キノコが起こす食中毒

毒キノコ中毒とは、食用キノコによく似た毒キノコを食べることによって、引き起こされる食中毒。

日本は気温も湿度も、キノコ類の発生に適しています。特に、繁殖することが多い晩夏から秋にかけては、採集して食べる人も増え、しばしば毒キノコ中毒がみられます。平成16年から平成20年までの間では、年間42~79件の食中毒、年間77~232人の食中毒患者が全国で発生しています。約9割は家庭で発生し、約1割は販売店、飲食店などの営業施設が原因で発生しています。

毒キノコには多数の種類がありますが、多くは特有の色彩とにおいを有するので、食用キノコと間違われやすいのは10数種にすぎません。この10数種が引き起こす毒キノコ中毒は、胃腸炎型、脳症・神経症型、コレラ型の3タイプに大別されます。

胃腸炎型を起こすのは、ツキヨタケ、イッポンシメジ、クサウラベニタケ、カキシメジ、ニガクリタケなど。食後30分から2時間で、吐き気、嘔吐(おうと)、腹痛、下痢などの症状を起こします。

脳症・神経症型を起こすのは、ワライタケ、オオシビレタケ、ヒカゲシビレタケ、テングタケ、ベニテングタケ、ハエトリシメジなど。食後30分から1時間で、ワライタケやオオシビレタケ、ヒカゲシビレタケは幻覚、知覚まひ、めまい、言語障害を起こし、意識不明に陥らせます。同じく食後30分から1時間で短時間眠くなった後。テングタケやベニテングタケ、ハエトリシメジは嘔吐、腹痛、下痢に続いて耳鳴り、めまい、視力障害、けいれんなどの症状を起こし、進行すると幻覚、精神錯乱、意識不明に陥らせます。

コレラ型を起こすのは、ドクツルタケ、タマゴテングタケ、コタマゴテングタケ、シロタマテングダケ、コレラタケなど。食後6時間から半日で発症し、アマニタトキシンなどの毒成分が強烈な腹痛、嘔吐、下痢とともに、意識障害、けいれん、脱水状態を起こして、発症者を死亡させたり、肝臓、腎臓(じんぞう)などに障害を残したりします。

食中毒の症状は食べた種類や量によって異なりますが、症状が早く現れるもののほうが比較的軽く、回復も早い傾向があります。

毒キノコ中毒の検査と診断と治療

キノコを食べた後に胃が重くなり腹痛、嘔吐、下痢などの症状が現れて、少しでも「おかしい」と思ったら、すぐに食べた物を吐き出します。当人が自力で困難のようなケースでは、周囲の人が発症者の口の中に指を入れて、舌の奥を刺激して吐かせます。何も出なくなったら、水やぬるま湯を飲ませて、さらに何回か吐かせるようにします。

応急処置を施した後は、毛布にくるむなど全身を保温して内科か、救命救急センターに運び、医師の診察を受けます。嘔吐物や食べ残しをサンプルとして持ってゆくと、素早く適切な治療につながります。毒キノコ中毒の初期症状を自覚しても、素人判断で胃腸薬や下剤を服用しないことも大切です。

医師による診断では、問診でキノコの外観、採集場所、調理前の処理、調理法、食べた量を聞き出し、食べ物の残り、嘔吐物、便、調理くずなどの検査によって毒キノコの種類を調べます。

治療では、もし誤食したとわかったら、指で口の中を刺激して吐き出させたり、胃洗浄、腸洗浄を行ったり、活性炭末などの吸着剤を投与したりします。また、対症的に、リンゲルなどの電解質液の輸液や、強心剤、呼吸中枢刺激剤などを用いることもあります。

短時間に現れた胃腸炎型の毒キノコ中毒の場合は、対症療法ですみ数日中に治ります。しかし、コレラ型の毒キノコ中毒では直ちに入院し、早期の毒素除去、集中治療が必要です。

毒キノコによる食中毒を防止するには、以下のことを心掛けます。毒キノコは多くの種類に分かれていて共通の特徴を持っていないので、確実に鑑別できる食用キノコ以外は絶対に採らない、食べない。図鑑の写真や絵に出ていない種類のキノコは、無理に食用とされているキノコに当てはめない。食用のキノコでも、生の状態で食べたり、一度に大量に食べると食中毒になるものがあるので注意する。毒キノコは塩漬け、乾燥、水さらしなどの加工によって毒成分がなくなることはないので、加工して食べるのもやめる。

🇹🇴特発性顔面神経まひ

顔面神経が侵されて、顔の筋肉の運動がまひする疾患で、原因不明なもの

特発性顔面神経まひとは、顔面神経が侵されて、顔の筋肉の運動がまひする疾患。この疾患を報告した医師の名を付けてベルまひ、あるいは特発性末梢(まっしょう)性顔面神経まひとも呼ばれます。

原因はいまだ不明ですが、考えられる可能性としてはウイルス感染、アレルギー、局所浮腫(ふしゅ)、寒冷刺激などがあります。いずれにしても、顔面神経は顔面神経管と呼ばれる骨で取り囲まれた狭いトンネルを通って脳から外に出ますが、何らかの原因で顔面神経がはれると、顔面神経が圧迫されてまひが現れると見なされています。

一方、原因疾患が明らかな顔面神経まひは、症候性顔面神経まひと呼ばれます。症候性顔面神経まひの原因疾患として多いのは、単純性疱疹(ほうしん)、帯状疱疹などのヘルペスウイルス感染症で、一般的には口唇ヘルペスを患ったことがある人が突然の顔面神経まひで発症します。ほかには、腫瘍(しゅよう)や代謝疾患が原因となる場合もあります。

特発性顔面神経まひ、症候性顔面神経まひとも、急性あるいは亜急性に発症します。症状は普通、片側だけに起こります。まれには、両側に起こります。

侵された側の表情筋が緩むために、顔がゆがむ、額にしわが寄らず仮面様の顔付きになる、口の一方が曲がって食べ物やよだれが出てしまう、目が完全に閉じられない、などの症状が現れます。

そのほか、まひ側の舌の前方3分の2の味覚障害を伴うこともあり、物を食べた時、金属を口に入れたような感じがしたりします。まひ側の耳が過敏になり、音が大きく響くように感じることもあります。目が閉じにくいために目を涙で潤すことができず、夜間などに角膜が乾燥しやすくなるため、角膜に潰瘍(かいよう)ができることもあります。

まれには、帯状疱疹が耳たぶや内耳にできた場合に、激しいめまい、耳鳴り、歩行障害、味覚の消失とともに、顔面のまひが起こります。

特発性顔面神経まひの検査と診断と治療

基本的には耳鼻咽喉(いんこう)科の外来で治療可能な場合が多いのですが、検査が必要な場合、診断がはっきりしない場合、特発性顔面神経まひ(ベルまひ)や症候性顔面神経まひの程度が強い場合などでは、入院が必要です。

医師による診断は、典型的な顔の表情から比較的容易です。しかし、原因となる疾患がある症候性顔面神経まひの場合、両側に同時に発症したり何度も繰り返す場合などは、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査などの画像診断が必要です。

サルコイドーシス、ライム病などの珍しい疾患で起こった可能性が疑われる場合には、血液検査などの検査が必要になります。障害の程度や回復の正確な評価のために、筋電図や誘発電位検査が行われることもあります。

特発性顔面神経まひは治りやすい疾患で、まひが軽度であれば1~2カ月で完全に治ります。しかし、急性期にはステロイド剤、ビタミンB複合剤などを処方して治療を行います。マッサージや電気治療も行われます。また、目が閉じにくい場合、人工涙液を点眼して角膜を保護します。

帯状疱疹の治療では、原因療法として抗ウイルス剤、対症療法として消炎鎮痛剤が処方されます。抗ウイルス剤は、ウイルスの増殖を阻止して治癒を早めます。神経がまだ破壊されていない初期の段階で使用すれば、帯状疱疹後神経痛の予防が期待できます。

また、痛みがひどい場合は、神経ブロックを行って痛みを止める治療法が有効です。神経ブロックとは、局所麻酔剤を用いて、神経の流れを一時的に遮断する治療法です。この治療法によって血液循環がよくなるとともに、神経の緊張が和らぎ、その神経が支配している領域の痛みを止めることができるのです。

帯状疱疹が原因で起こった場合には、比較的、経過が長く、顔面まひがある程度残ることが多いようです。また、再生した顔面神経が本来の支配先と異なった筋を支配してしまった場合には、口を閉じると目が一緒に閉じたり、熱い物や冷たい物を食べた時に涙が出たりする異常連合運動が起こることがあります。

特発性顔面神経まひ、症候性顔面神経まひとも、リハビリテーション療法も重要です。家庭でできるマッサージとしては、朝夕30分間ほど、手で額や目の周りの筋肉をゆっくりと回すようにしてマッサージしたり、まひした口角を引っ張り上げるようにしたり、顔面の筋肉を働かせるために百面相の練習をしたりすると、効果があります。

🇹🇴特発性血小板減少性紫斑病

血を止めるのに必要な血小板が減少して、出血しやすくなる自己免疫疾患

特発性血小板減少性紫斑(しはん)病とは、血液中にあって血を止めるのに必要な血小板の数が著しく減少して、出血しやすくなる自己免疫疾患。

体内にあって細菌やウイルスなどを攻撃する抗体が、免疫の異常によって自己の血小板に結合するために、マクロファージという血液細胞によって脾(ひ)臓や肝臓、骨髄で破壊されて、血小板の数が減少します。どのようして免疫異常が起きるかは、不明とされています。

通常、健康な人は、血小板が血液1マイクロリットル中に15〜40万個存在します。この数が10万個以下になると、血が止まりにくくなります。

特発性血小板減少性紫斑病は急性型と慢性型に分類され、急性型は小児に多く、風邪やはしか、おたふく風邪などの後に、急に血小板の数が減って発症します。重症化しますが、その9割は長引かずに自然に治ります。

一方、血小板の数の減少が半年以上続く慢性型は成人、とりわけ男性の約二倍と女性に多く発症し、皮膚の紫斑や粘膜からの出血が全身にみられます。歯茎や鼻からの出血、血尿、血便、月経過多などの症状が起こり、貧血、体がだるい、熱っぽいなどの症状も起こってきます。重症の場合は脳出血、胃や腸からの出血を起こすこともあり、大けがや手術時の出血が止まらなくなることが懸念されます。慢性型の一部は、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染が原因といわれています。

国内には約2万人の患者がおり、厚生労働省から特定疾患、いわゆる難病に指定されていますので、所定の手続きを経て申請が受理されると、医療費の補助を受けることができます。最近は、出血傾向がみられない時期に、健診で血小板の減少を指摘されて診断に至るケースもあります。

血小板の数や臨床症状により治療の緊急性が異なるので、内科の医師を受診し、適切な検査と治療を受けます。

特発性血小板減少性紫斑病の検査と診断と治療

出血症状があり、特徴的な検査所見がみられ、基礎疾患を否定された場合に、特発性血小板減少性紫斑病と診断されます。特に、血液を正常に作れない二次性血小板減少症、白血病、再生不良性貧血、骨髄異形成症候群、膠原(こうげん)病、薬剤性血小板減少症の否定が、重要となります。

特徴的な検査所見は、血小板数が血液1マイクロリットル中に10万個以下に減り、骨髄検査で未熟な巨核球が正常または増加することです。巨核球とは、血小板を作る血液細胞のことです。

治療においては、小児に多い急性型は半年以内に約9割は自然軽快しますので、出血傾向が強くなければ経過を観察します。急性型から慢性型へ移行する確率は、高くありません。

成人に多い慢性型では、ピロリ菌感染が見られる人に対しては、特別な胃薬と抗生物質を1週間内服しピロリ菌を除く治療をすると、約半数で血小板が増加します。ピロリ菌に感染しているかどうかは、尿素呼気試験、血液検査、便検査で調べることができます。

ピロリ菌感染が見られない人、あるいはピロリ菌を除菌しても血小板が増加しない人に対しては、ステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)を用います。このステロイド療法により約8割の人で血小板が増えるものの、完全に治るのは約2割にとどまります。

完全に治らない人は大きな出血を避けるために、少量のステロイド剤を飲み続ける必要があります。ステロイド剤を長期間飲み続けると、胃十二指腸潰瘍(かいよう)、骨粗鬆(こつそしょう)症、糖尿病、白内障、精神神経症状、顔が丸くなる満月様顔貌(がんぼう)などの副作用が、一部の人で見られることが知られています。

ステロイドを減量できない場合には、血小板の破壊にかかわっている脾臓を手術で摘出することがあります。近年では腹腔鏡(ふくくうきょう)手術が行われ、1週間程度の入院で約7割の人に効果が認められます。脾臓を摘出する前には、肺炎球菌ワクチンの予防接種を受け、摘出後の長期経過中に見られることがある敗血症や髄膜炎などの重篤な感染症を避けます。

血小板の数が急激に減少し、全身の出血傾向が強い場合は、入院をしてガンマグロブリン大量療法と血小板輸血を行います。脾臓摘出をしても血小板数が3万個以下の場合、血小板を増やすトロンボポエチン受容体作動薬や免疫抑制剤を使うことがあります。

ふだんは血小板数が安定していても、通院中に風邪を切っ掛けに血小板数が1万個以下に減り、鼻血、全身の皮膚の出血を認めることがあり、受診を必要とします。血小板数が少ない場合は、脳内での出血に注意を払わなければならないため、スキー、スノーボードなど頭部を打撲するような激しいスポーツを避ける必要があります。

出血を伴う歯科治療、胃カメラ、大腸カメラなどの検査を受ける時、手術の予定がある時は、事前に担当の医師に相談する必要があります。痛み止めの種類によっては、血小板の機能を落として出血傾向を悪くするものもあるからです。

🟥「H3」型インフルエンザの新たな変異ウイルス、国内でも確認

 海外で拡大している「H3」型インフルエンザの新たな変異ウイルスが国内でも確認されたことが、国立健康危機管理研究機構の解析でわかった。専門家は「免疫を持っている人が少なく、感染が広がりやすい可能性がある」として注意を呼び掛けている。  季節性インフルエンザとして流行する「H3」...