2022/08/15

🇳🇿多発性筋炎

筋肉の障害のために、筋肉に力が入らなくなったり、痛みを感じたりする疾患

多発性筋炎とは、炎症や変性による筋肉の障害のために、筋肉に力が入らなくなったり、筋肉の痛みを感じたりする疾患。また、明らかで特徴的な皮疹(ひしん)がみられる場合には、皮膚筋炎と呼ばれます。

多発性筋炎は膠原(こうげん)病の1つで、筋肉だけでなく、肺、関節、心臓、消化管など、他の臓器障害を合併することもあります。好発年齢は5~14歳の小児期と35~64歳の成人期の2つのピークを示し、成人では1対2で女性に多く、日本の有病率は10万人当たり2~5人。厚生労働省の指定する特定疾患(難病)の1つです。

自己免疫異常、ウイルス感染、悪性腫瘍(しゅよう)、日光暴露、薬剤の影響、遺伝的素因などが発症に関与しているのではないかと考えられていますが、その原因はまだわかっていません。

症状としては、筋肉の障害による筋力低下が大多数の発症者にみられます。さらに、筋肉以外の症状として、皮膚や内臓などの障害が認められることもあります。

筋肉の症状としては、筋肉が障害され、疲れやすくなったり、筋力が低下して力が入らなくなったりします。そのため、腕が上がらなくなったり、階段が上りにくくなったりします。しかし、亜急性ないし慢性に発症し、ゆっくりと経過するため、初めは自覚症状に気付かない場合もあります。 

一般に、躯幹(くかん)に近い部分の筋肉である頸部(けいぶ)屈筋、咽頭(いんとう)筋、喉頭(こうとう)筋、肩帯筋、腰帯筋が対称的に障害されます。また、筋肉の痛みが認められることもあります。進行すると全身の筋肉が委縮し、進行性ジストロフィーや重症筋無力症、運動ニューロン疾患と間違えることがあります。

筋肉以外の症状としては、皮膚筋炎では、ヘリオトロープ疹という眼瞼(がんけん)部のはれぼったい紫紅色の皮疹、ゴットロン徴候という手指関節背面の皮がはげた紫紅色の皮疹、肘(ひじ)や膝(ひざ)などの関節背面の少し隆起した紫紅色の皮疹などがみられます。

関節痛や関節炎などリウマチに似た症状、レイノー現象という寒冷時に手指が白くなり、ジンジンしびれたりする症状もみられます。呼吸器症状としては、肺胞と肺胞の間や血管の回りにある間質に炎症が起こる間質性肺炎、空ぜき、息切れ、呼吸困難が起こります。不整脈、心不全なども起こります。

全身症状として、発熱、全身倦怠(けんたい)感、食欲不振、体重減少などを認めることもあります。特に高齢者の皮膚筋炎では、悪性腫瘍が合併していることがあります。

多発性筋炎、皮膚筋炎は筋肉ばかりでなく、他の臓器も障害されることがあり、どの診療科が最適と簡単には決められません。一般に、膠原病、自己免疫疾患の1つとしてリウマチ(膠原病・免疫)内科、筋肉の疾患として神経内科、皮膚症状を中心に皮膚科を受診する発症者が大多数です。障害された臓器を中心に、全身を総合的に診療できる専門医に診てもらうことが重要です。

多発性筋炎の検査と診断と治療

医師による診断は、筋力低下、特徴的な皮膚症状、血清中の筋原性酵素(クレアチンキナーゼ〔CK〕、アルドラーゼ、LDH、AST〔GOT〕、ALT〔GPT〕など)の増加、特徴的な自己抗体の検出、筋電図の特徴的変化、筋肉の一部を採取し顕微鏡で調べる筋生検の特徴的組織所見などの結果を組み合わせて行われます。

全身の倦怠感が認められ、血液検査でLDH、AST、ALTなどが上昇するため、肝炎、肝機能障害と誤って診断されている場合もありますが、筋障害を反映する血清CK値の測定により区別されます。進行性ジストロフィーや重症筋無力症、運動ニューロン疾患などとの区別も大切です。

発症直後の急性期は、できるだけ安静にして筋肉に負担をかけないようにします。筋力の回復、関節の拘縮(こうしゅく)予防のためにリハビリテーションが大切で、一般的には、筋原性酵素(血清CK値)が薬物療法により正常値に低下し、順調な筋力の改善を確認してから、徐々に開始します。食事は高たんぱく、高カロリー食で消化のよいものを取るようにします。

医師による治療は、薬物療法が基本となります。副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)が主に使われ、多くの発症者で有効です。副腎皮質ホルモンは、炎症を抑える作用が強く自己免疫異常も抑えます。

大量ステロイド療法が2~4週間行われ、筋力の回復や検査所見の改善をみながら、数カ月かけて、最少必要量まで減量されます。急速な減量は再発を来すことがあり、望ましくありません。筋力の回復は、発病後の治療開始が早い場合ほどよいとされています。

しかし、副腎皮質ホルモンが無効であったり、その副作用が出てしまう場合には、メトトレキサート、アザチオプリン、シクロホスファミドなどの免疫抑制薬が投与されることもあります。また、これらの治療でも効果が得られない時は、ガンマグロブリンの静脈内注射療法が有効なこともありますが、長期の有効性や副作用は不明です。

悪性腫瘍を併発した場合は、腫瘍摘出などの悪性腫瘍の治療により筋炎、皮膚症状が改善することも知られています。

🇳🇿多発性血管脂肪腫

脂肪腫の特殊なタイプで、血管成分が多く、四肢や体幹の皮下組織に多発する腫瘍

多発性血管脂肪腫(しゅ)とは、四肢や体幹などの皮下組織に多発し、脂肪組織と血管組織からなる良性の腫瘍(しゅよう)。血管脂肪腫とも呼ばれます。

皮膚のすぐ下に脂肪組織が蓄積して発生する良性腫瘍である脂肪腫の特殊なタイプで、脂肪腫の約10パーセントを多発性血管脂肪腫が占めると見なされます。

通常の脂肪腫は痛みやかゆみなどの自覚症状がなく、ゆっくり増大する軟らかな腫瘍であるのに対して、多発性血管脂肪腫では軽い自発痛や圧痛が認められることが多いのが特徴の一つで、脂肪腫より境界がはっきりとし、やや硬い感じがします。

多発性血管脂肪腫の大きさは直径1〜2センチ程度までのものが多く、小さめです。しかし、腫瘍が発生してから大きくなるまでの期間が短く、まれに鶏卵並みの大きさになることもあります。

中高年の男性に好発し、上肢、下肢、腰腹部にしばしば多発しますが、頭部、顔面、手のひら、足底に発生することはまれです。

多発性血管脂肪腫は繊維質の薄い膜に包まれてできていることが一般的で、赤色が混じった白色をしています。顕微鏡で組織を検査した場合、さまざまな割合で脂肪組織と毛細血管組織から構成されています。

多発性血管脂肪腫が発生する詳しい原因は、不明です。元々ある血管腫が脂肪組織内に侵入して多発性血管脂肪腫になるという説や、脂肪腫として発生した組織の辺縁にある血管が外的刺激で血栓を生じ、内皮細胞が増殖して多発性血管脂肪腫になるという説などがあります。

残念ながら、一度発生すると自然に消えることはまずありません。多発性血管脂肪腫の受診科は、皮膚科、皮膚泌尿器科、整形外科、形成外科です。

多発性血管脂肪腫の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、整形外科、形成外科の医師による診断では、ほとんどの場合は皮膚症状だけで判断できます。触診で疑問があったり、変わった部位に発生している場合は、そのほかの種類の腫瘍である疑いも出てきますので、超音波(エコー)検査、CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査を行います。

それでもはっきりしない場合は、確定診断のために、局所麻酔をしてから腫瘍の一部を切り取り、顕微鏡で調べる検査である生検を行います。画像検査では、悪性腫瘍に分類される脂肪肉腫と区別が困難なこともあり、生検を行ったほうがよいこともあります。

皮膚科、皮膚泌尿器科、整形外科、形成外科の医師による治療では、部位的に接触することが多くて痛みを感じる場合、化膿(かのう)した場合、関節の部位に発生して普通の動きを妨げる場合、大きくなってきた場合、体の比較的目立つ部位に発生し見掛けが気になる場合は、手術によって多発性血管脂肪腫を摘出します。

手術では局所麻酔をした上、腫瘍の直上をほぼ腫瘍の直径に一致するように切開し、被膜を破らないように周囲組織からはがして、赤色が混じった白い脂肪の塊を摘出します。摘出後は、血がたまる血腫を予防するため十分に止血し、縫合処置を施します。

必要に応じて、ドレーン(誘導管)という合成樹脂性のゴムを挿入し、貯留する血液や浸出液を体外へ排出する処置を施し、切開部を圧迫、固定する縫合処置を施すこともあります。ドレーンは2日後に取り除き、1週間後に抜糸します。

このようにして摘出した多発性血管脂肪腫の再発は、まれです。

🇳🇿多発性硬化症

脳、脊髄などに病巣が多発し、多彩な症状を示す脱髄疾患

多発性硬化症とは、中枢性脱髄(だつずい)疾患の一つで、脳、脊髄、視神経などに病変が起こり、多彩な神経症状を起こす疾患。日本では、特定疾患(難病)に認定されています。

脱髄性疾患とは、神経線維を取り巻いている髄鞘(ずいしょう)がアレルギー性変化によって壊されるものです。多発性硬化症は10〜60歳代までの男女に起こりますが、女性にやや多く、30歳前後の人がかかりやすいといわれています。

原因は不明です。アレルギー性のものであるという考え方が強いのですが、はしか(麻疹〔ましん〕)ウイルスによるという考え方もあります。遺伝説、自己免疫説も唱えられています。北欧、北米などの寒い地域に多く、これらの国では日本の10倍以上の頻度で発生しています。日本でも有病率は増加してきており、10万人当たり8〜 9人がかかっています。

脱髄の病巣が視神経、大脳、小脳、脳幹部、脊髄などに多発し、病巣が古くなると少し硬く感じられるので、この多発性硬化症の疾患名があります。症状も多彩で、初めは、突然に片側の目が見えなくなったり、急にものが二つに見えたり、あるいは手足のまひ、しびれなどが現れます。また、歩行障害、めまい、言語障害、膀胱(ぼうこう)障害、直腸障害、けいれん発作、震え、筋肉痛、頭痛などで始まることもあります。膀胱障害、直腸障害では、尿意や便意を感じなくなったり、自分の意思で排尿、排便ができなくなったりします。

数時間、時には数日は症状が増していきますが、軽いものは1週間ないし数時間で、全く症状がなくなることもあります。重症のものでは、手足のまひ、知覚鈍麻、視力消失、視神経委縮などを残します。視神経委縮では、視力が悪くなり、放置すると失明に至ります。

このような発作を繰り返し起こすことが、多発性硬化症の特徴。発作の間隔は、数カ月に1回くらいのものから、数年ないし十数年に1回くらいのものまでいろいろです。

多発性硬化症の検査と診断と治療

脳の病変部位には炎症がありますので、脳脊髄液に炎症反応があるかどうかをみます。そのために腰椎(ようつい)穿刺(せんし)という検査を行い、腰の部分に針を刺して脳脊髄液を取って調べます。急性期の多発性硬化症では、リンパ球数の増加、蛋白(たんぱく)質の増加、免疫グロブリンlgGの増加など、炎症を反映した所見が見られます。また、髄鞘の破壊を反映して、髄鞘の成分であるミエリン塩基性蛋白の増加が見られます。近年、CTやMRI検査で病巣を検知することができるようになり、多発性硬化症の診断は容易になりました。

治療としては、ステロイド剤ないし副腎(ふくじん)皮質刺激ホルモン(ACTH)が有効です。早期に服用すると、経過のよいことが多いものです。また、慢性になった場合には、積極的にリハビリテーションを行うと、かなりよく機能が回復してきます。再発予防には、インターフェロンβを皮下注射します。

再発を何回も繰り返し、最後には下半身まひや知能障害、高度の失調症状を来すこともありますが、このような進行性の経過を示すものは約10パーセントです。大部分は、完全によくなって再発を認めないか、ある程度の障害は残っても、日常生活には差し支えないものです。

🇦🇺多発性骨髄腫

血液中の特殊細胞が骨髄で増殖し、全身の骨を破壊する疾患

多発性骨髄腫(しゅ)とは、形質細胞という血液の中のリンパ球に似た特殊な細胞が腫瘍(しゅよう)化して、骨髄の中で増殖し、全身の骨を破壊する悪性の疾患。単に骨髄腫ということもあります。

形質細胞は、外から体に侵入した細菌などを撃退する仕組みの1つとして、抗体と呼ばれる免疫グロブリンを作る細胞に当たります。免疫グロブリンは、蛋白(たんぱく)質の一種です。

多発性骨髄腫の原因は、よくわかっていません。発症頻度は低く、10万人に1人くらいのまれな疾患に属します。年齢層は、70〜80歳代の人に多く発症します。

腫瘍化した形質細胞は骨髄の中で増殖し、正常な血液を作るのを障害したり、骨を溶かしたりします。そのため、貧血、血小板減少などの血液の異常が起こったり、骨がもろくなって、骨粗鬆(こつそしょう)症と呼ばれる状態になります。骨粗鬆症が進行すると、脊椎(せきつい)が体の重荷に耐えかねてつぶれる、圧迫骨折を起こすことがあります。

発症は多くの症例では、いつから始まったか明確ではなく、ゆっくりと進行します。初期のころは、症状はないか腰や背中、胸が痛いという、病気のせいなのか、年のせいなのかわからないような症状が出てきます。

普通、長い経過をたどって悪化していきます。骨はほとんど全身の骨が侵されますが、脊椎、肋骨(ろっこつ)、胸骨などから現れるケースが多いようです。

骨が弱くなるために、ちょっとしたことで手や足の骨折を起こしたり、骨が溶けて血液中のカルシウム濃度が高くなると、意識障害、多尿、口渇などの症状も現れてきます。

過剰に産生された免疫グロブリンの軽鎖が腎臓(じんぞう)に沈着して、障害を起こしてくることもあります。正常な形質細胞は減少しているので、抗体を作る働きが障害され、体の抵抗力が低下し、さまざまな感染症に悩まされることもあります。

また、血液中に異常なガンマグロブリンが著しく増加するために、血液が粘っこくなって循環障害が起こり、心不全、倦怠(けんたい)感、頭痛、意識障害、けいれんなどの症状が現れることがあり、過粘稠度(かねんちゅうど)症候群と呼ばれます。

何の症状もないまま、定期検診を受けたところ、血液と尿の蛋白異常を指摘され、それが切っ掛けで疾患が見付かるケースも少なくありません。骨折して受診し、疾患が発見されるケースもあります。

背中や腰の痛みを訴えることが多いため、初めに整形外科を受診することがしばしばですが、診断と治療は主に内科、ないし血液専門内科が行います。

多発性骨髄腫の検査と診断と治療

内科、ないし血液専門内科の医師による診断は、血液中の蛋白の数値が高く、分析すると免疫グロブリンが異常に高い数値を示していることから判断されます。骨髄を調べると、この免疫グロブリンを分泌する形質細胞が多数認められます。骨のX線検査では、打ち抜き像といわれる輪郭の明確な所見があり、骨が薄く、もろくなっています。

医師による治療としては、化学療法(抗がん剤による薬物療法)でコントロールすることを主体とします。よく用いられるのは、メルファランとインターフェロン。近年では、60~65歳以下の比較的若い発症者に対しては、強力な化学療法と自家造血幹細胞移植を組み合わせて、異常な形質細胞を絶滅させる方法が研究されています。このような強力な化学療法は、高齢者に対しては行えません。

また、腫瘍化した形質細胞が腫瘤(しゅりゅう)を形成した場合や、痛みの緩和の目的で、放射線療法が行われることもあります。骨病変の改善には、ビスホスフォネートという薬剤が用いられることもあります。

多発性骨髄腫と診断された全例が、治療の対象となるわけではありません。治療にはある程度の副作用を伴うこと、また、中には無治療で経過を観察しても、数年間に渡って症状の進展がみられない例もあるからです。

確実に治癒を期待できる治療法は確立されおらず、完全に治すのは難しい疾患ですが、適切な治療を行えば普通の生活を長期間送ることができるので、もし多発性骨髄腫と診断されても、悲観せずに、専門医の治療を受けることです。

🇦🇺多発性神経炎

末梢神経が2個所以上の広範囲に渡って、同時に侵される疾患

多発性神経炎とは、末梢(まっしょう)神経が2カ所以上の広範囲に渡って、同時に侵される疾患の総称。多発性ニューロパチーとも称されます。

この多発性神経炎には、薬剤・農薬・有機物・化学薬品中毒を始め、アルコールの慢性中毒、糖尿病などの代謝異常、全身性疾患、感染症、アレルギー、ビタミン欠乏症など原因の明らかなものと、遺伝によって起こってくる原因不明のもの、ウイルスなどの感染が関係しているギラン・バレー症候群(急性感染性多発性神経炎)と呼ばれているものがあります。

原因によって、急性に起こったり、慢性に進行していくものなどいろいろです。通常は、手足の先の方から左右対称性に、末梢神経が侵されます。手先、足先から、次第にしびれや感覚の鈍麻が始まり、同時に筋力の低下や筋肉の委縮が始まって細くなり、上のほうに広がっていきます。

全身に広がると、全身の著しいやせとともに筋力もなくなり、まひが起こってきます。感覚の鈍麻が強いと、自分の足の位置がわからないので、フラフラとした酔っぱらいのような歩き方になります。脳神経も同時に侵されることがあり、顔面神経まひ、視神経の障害による視力低下、動眼(どうがん)神経まひによる眼球運動のまひなども起こってきます。

末梢神経が侵される場合には、運動神経が強く侵される場合と、知覚神経(感覚神経)が強く侵される場合とがあります。時には知覚神経でも特に痛覚だけが強く侵されたり、また位置覚だけが強く侵されることもあります。

末梢神経が侵されると同時に、自律神経や栄養神経も侵されるため、皮膚に潰瘍(かいよう)を生じたり、時には手足の末端が崩れて、骨も破壊されることがあります。

ギラン・バレー症候群の発症の原因は、ウイルスなどを排除して自分を守るための免疫システムが異常となり、運動神経、知覚神経など自分の末梢神経を攻撃するためと考えられています。約7割ほどの人が発症の前に、風邪を引いたり、下痢をしたりしています。軽い発熱、頭痛、咽喉(いんこう)痛、下痢が数日続いた後、1週間前後を経て、急に手足の脱力が始まってくるのが普通です。

片側の手足が動かなくなる脳卒中と異なり、両手両足が動かなくなります。大部分の人は運動神経だけでなく知覚神経も傷害されて、手足の先のしびれ感もしばしば伴います。顔面の筋肉や目を動かす筋肉に力が入らなくなって、目を閉じられなくなったり、物が二重に見えたり、ろれつが回らなくなったり、食事を飲み込みにくくなったりすることもあります。

手足のまひの程度は発症してから1〜2週以内に最もひどくなり、その後は改善していきます。重症の場合には、寝たきりになったり、呼吸もできなくなります。

多発性神経炎の症状を重くしないためには、原因を早く発見してそれを排除または改善することですので、神経内科、ないし内科の専門医を受診します。

多発性神経炎の検査と診断と治療

神経内科、ないし内科の医師による診断では、原因となる疾患を特定します。多発性神経炎が発症する要因はすべて解明されているわけではありませんが、原因となる疾患が特定されると症状が改善される可能性が高くなります。

原因となる疾患の明らかな多発性神経炎では、原因となっている糖尿病を治したり、中毒の原因となっているものの摂取や接触を禁じ、ビタミン剤の大量服用を行えば、よく治ります。ビタミン欠乏症なら食事療法を取り入れたり、筋肉の委縮があればリハビリを取り入れることで症状を改善できます。

多発性神経炎はある程度進行しても、末梢神経の機能は比較的回復することが多く、数年間に渡って次第に改善してくることもあるので、根気よく治療を続けることが必要です。

多発性神経炎の中でも特異なギラン・バレー症候群(急性感染性多発性神経炎)では、急性期に副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)の大量服用が有効です。

発症してからなるべく早い急性期に免疫グロブリン大量静注療法、あるいは単純血漿(けっしょう)交換療法を行うと、ピークの時の症状の程度が軽くなり、早く回復することもわかっています。単純血漿交換療法では、人工透析のような体外循環の回路に血液を通して、血液を赤血球、白血球などの血球成分と、血球以外の血漿成分に分けます。自己抗体を含む血漿成分を捨てて、ウイルスが混入していない代用血漿と自分の血球を体内に戻します。

重症の場合は、まひが次第に体の上のほうに広がって、呼吸まひを起こすようになるので、呼吸管理に気を付ける必要があります。ピークの時には人工呼吸器を用いたり、血圧の管理を行ったりといった全身管理が重要であり、回復する時期にはリハビリテーションも大切となります。

症状は遅くとも1カ月以内にピークとなり、その後徐々に回復に向かい、6~12カ月で多くの発症者はほぼ完全によくなります。ギラン・バレー症候群は比較的、良性の疾患ながら、何らかの障害を残す人が約2割いて、急性期やその後の経過中に亡くなられる人が約5パーセントと報告されています。再発率は多くても、5パーセント未満と見なされています。

🇦🇺多発性ニューロパチー

末梢神経が2個所以上の広範囲に渡って、同時に侵される疾患

多発性ニューロパチーとは、末梢(まっしょう)神経が2カ所以上の広範囲に渡って、同時に侵さる疾患の総称。多発性神経炎とも称されます。

この多発性ニューロパチーには、薬剤・農薬・有機物・化学薬品中毒を始め、アルコールの慢性中毒、糖尿病などの代謝異常、全身性疾患、感染症、アレルギー、ビタミン欠乏症など原因の明らかなものと、遺伝によって起こってくる原因不明のもの、ウイルスなどの感染が関係しているギラン・バレー症候群(急性感染性多発性神経炎)と呼ばれているものがあります。

原因によって、急性に起こったり、慢性に進行していくものなどいろいろです。通常は、手足の先の方から左右対称性に、末梢神経が侵されます。手先、足先から、次第にしびれや感覚の鈍麻が始まり、同時に筋力の低下や筋肉の委縮が始まって細くなり、上のほうに広がっていきます。

全身に広がると、全身の著しいやせとともに筋力もなくなり、まひが起こってきます。感覚の鈍麻が強いと、自分の足の位置がわからないので、フラフラとした酔っぱらいのような歩き方になります。脳神経も同時に侵されることがあり、顔面神経まひ、視神経の障害による視力低下、動眼(どうがん)神経まひによる眼球運動のまひなども起こってきます。

末梢神経が侵される場合には、運動神経が強く侵される場合と、知覚神経(感覚神経)が強く侵される場合とがあります。時には知覚神経でも特に痛覚だけが強く侵されたり、また位置覚だけが強く侵されることもあります。

自律神経や栄養神経も侵されるため、皮膚に潰瘍(かいよう)を生じたり、時には手足の末端が崩れて、骨も破壊されることがあります。

ギラン・バレー症候群の発症の原因は、ウイルスなどを排除して自分を守るための免疫システムが異常となり、運動神経、知覚神経、自律神経など自分の末梢神経を攻撃するためと考えられています。約7割ほどの人が発症の前に、風邪を引いたり、下痢をしたりしています。軽い発熱、頭痛、咽喉(いんこう)痛、下痢が数日続いた後、1週間前後を経て、急に手足の脱力が始まってくるのが普通です。

片側の手足が動かなくなる脳卒中と異なり、両手両足が動かなくなります。大部分の人は運動神経だけでなく知覚神経も傷害されて、手足の先のしびれ感もしばしば伴います。顔面の筋肉や目を動かす筋肉に力が入らなくなって、目を閉じられなくなったり、物が二重に見えたり、ろれつが回らなくなったり、食事を飲み込みにくくなったりすることもあります。

手足のまひの程度は発症してから1〜2週以内に最もひどくなり、その後は改善していきます。重症の場合には、寝たきりになったり、呼吸もできなくなります。

これら多発性ニューロパチーの症状を重くしないためには、原因を早く発見してそれを排除または改善することですので、神経内科、ないし内科の専門医を受診します。

多発性ニューロパチーの検査と診断と治療

神経内科、ないし内科の医師による診断では、原因となる疾患を特定します。多発性ニューロパチーが発症する要因はすべて解明されているわけではありませんが、原因となる疾患が特定されると症状が改善される可能性が高くなります。

原因となる疾患の明らかな多発性ニューロパチーでは、原因となっている糖尿病を治したり、中毒の原因となっているものの摂取や接触を禁じ、ビタミン剤の大量服用を行えば、よく治ります。ビタミン欠乏症なら食事療法を取り入れたり、筋肉の委縮があればリハビリを取り入れることで症状を改善できます。

多発性ニューロパチーはある程度進行しても、末梢神経の機能は比較的回復することが多く、数年間に渡って次第に改善してくることもあるので、根気よく治療を続けることが必要です。

多発性ニューロパチーの中でも特異なギラン・バレー症候群(急性感染性多発性神経炎)では、急性期に副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)の大量服用が有効です。

、あるいは単純血漿(けっしょう)交換療法を行うと、ピークの時の症状の程度が軽くなり、早く回復することもわかっています。単純血漿交換療法では、人工透析のような体外循環の回路に血液を通して、血液を赤血球、白血球などの血球成分と、血球以外の血漿成分に分けます。自己抗体を含む血漿成分を捨てて、ウイルスが混入していない代用血漿と自分の血球を体内に戻します。

重症の場合は、まひが次第に体の上のほうに広がって、呼吸まひを起こすようになるので、呼吸管理に気を付ける必要があります。ピークの時には人工呼吸器を用いたり、血圧の管理を行ったりといった全身管理が重要であり、回復する時期にはリハビリテーションも大切となります。

症状は遅くとも1カ月以内にピークとなり、その後徐々に回復に向かい、6~12カ月で多くの発症者はほぼ完全によくなります。ギラン・バレー症候群は比較的、良性の疾患ながら、何らかの障害を残す人が約2割いて、急性期やその後の経過中に亡くなられる人が約5パーセントと報告されています。再発率は多くても、5パーセント未満と見なされています。

🇨🇺多発性脳梗塞

脳の細い血管に小さな梗塞が多発して、血液が脳の神経細胞に届かない状態

多発性脳梗塞(こうそく)とは、脳の細い血管に複数の血栓による梗塞ができて、血液が脳の神経細胞に届かない状態。

誰でも、年齢を重ねると微小脳梗塞ができるので、高齢者に比較的多くみられます。多発性脳梗塞は本来、直径15ミリ以下の小さな梗塞を意味します。

多発性というと非常に重篤な症状に聞こえますが、脳の細い血管が何個所か詰まり、それをもって多発性脳梗塞という場合もありますので、一概に重症とはいえません。症状は軽度、または限定されたものであることが多く、全く無症状であることも多くみられます。意識障害を認めることは、ほとんどありません。

この多発性脳梗塞のほとんどは、小さな血栓が発生するラクナ梗塞の多発であり、ラクナ梗塞は脳の細い動脈である穿通(せんつう)動脈に、直径15ミリ以下の小さな梗塞が起きた状態をいいます。直径15ミリ以上の大きな梗塞は、ラクナ梗塞とは呼びません。

このラクナ梗塞は、他の種類の脳梗塞であるアテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓と違い、大きな発作が起こることはありません。その症状はラクナ症候群といい、運動まひ、しびれなどの感覚障害が主に起こります。そして、症状は段階的に現れて、少しずつ進行していきます。ラクナ梗塞が発症することが多いのは、安静時で、特に睡眠中です。また、朝起きた時にも起こることが多くみられます。

また、ラクナ梗塞では梗塞する部分が小さいので、症状が出ないことがあります。これを無症候性脳梗塞、あるいは隠れ脳梗塞といい、運動障害や感覚障害などの自覚症状を感じないまま、小さな脳梗塞が起こります。高齢者に多くみられ、高血圧、高脂血症、糖尿病などがあると発症する確率が高くなります。

ほとんどが直径5ミリ以下の小さな梗塞ですが、そのまま放置しておくと、梗塞の数が増えたり、梗塞が脳のいろいろなところに発生して、多発性脳梗塞になります。多発性脳梗塞になると、言語障害、歩行障害、食べ物を飲み込みにくくなる嚥下(えんげ)障害などの症状や、認知症の症状が現れることもあります。

多発性脳梗塞の一番の危険要因は、高血圧です。高血圧は、血管の内側の壁に強い圧力を加えます。そのために、血管の内側の壁が傷付いて、どんどん硬くもろくなり、動脈硬化が発症します。動脈硬化が起こると、血管の血液が通る部分が狭くなり、血流が途絶えて脳梗塞になる危険が増すのです。

多発性脳梗塞の検査と診断と治療

脳神経外科、脳外科、神経内科の医師による診断では、MRI(磁気共鳴画像)で脳血管の様子を調べるほか、超音波検査で首を通る頸(けい)動脈が動脈硬化を起こして狭くなっていないかどうかを調べます。頸動脈で血栓ができて脳に流れると、脳血管が詰まる恐れがあるためです。

血管が狭くなっていれば、血液を固まりにくくする抗血小板剤を服用します。また、切開して血管内にたまったコレステロールなどを取り除く手術や、金属製の筒であるステントを足の付け根の動脈から挿入し、血管を広げる治療をする場合もあります。

脳血管がこれ以上詰まらないようにするには、血圧の管理が大切です。塩分を控え、過カロリー、脂質過多の食生活を見直して、魚や植物性たんぱく質中心の日本食を取り入れるなど食生活に気を配り、50歳代であれば、上は130未満、下は80未満を目標にします。毎日30分程度歩くこともお勧め。水分はしっかり補給し、節酒や禁煙も必要です。

適正な血圧は、年齢や心臓病や糖尿病の有無、コレステロール値などによって変わってきます。掛かり付け医を持ち、指導を受けるといいでしょう。

多発性脳梗塞で起こりやすい認知症には、根本的な治療はありません。デイケア、デイサービスへの通所や、家族の協力のもとでの散歩や、食事、テレビ、清掃、おやつ、会話など、生活習慣を規則正しく続けることで、脳を活性化させ、症状が改善したり、進行が遅れたりということがあります。

🟥「H3」型インフルエンザの新たな変異ウイルス、国内でも確認

 海外で拡大している「H3」型インフルエンザの新たな変異ウイルスが国内でも確認されたことが、国立健康危機管理研究機構の解析でわかった。専門家は「免疫を持っている人が少なく、感染が広がりやすい可能性がある」として注意を呼び掛けている。  季節性インフルエンザとして流行する「H3」...