2022/08/15

🇰🇮低出生体重性低身長症

極めて小さく生まれ、3歳を過ぎても身長が一定の基準に追い付かない低身長症

低出生体重性低身長症とは、妊娠週数(在胎週数)の割に極めて小さく生まれ、3歳を過ぎても身長が一定の基準に追い付かない状態。SGA(Small-for-Gestational Age)性低身長症とも呼ばれます。

子供の低身長症は、身長の伸びを妨げる原因によっていくつかの種類に分けられますが、その中の1つに相当します。

厚生労働省の調査によると、生まれたばかりの新生児の平均身長は男児49・2センチ、女児48・7センチ、平均体重は男児3076グラム、女児2990グラムと報告されています。実際には平均より大きく生まれる新生児もいれば、平均より小さく生まれる新生児もいるわけで、小さく生まれた新生児の中には、母親の胎内にいる間の妊娠週数(在胎週数)からみた時に、身長の伸びや体重の増加がゆっくりで、一定の基準に追い付かずに生まれてくる新生児がいます。

こうした新生児は、胎内発育遅延児(SGA児)と呼ばれます。原因については、母体や胎盤が原因のこともあれば、胎児や遺伝の問題ということもあり、さまざまな要因が重なりあっていると考えられます。

男児の標準的な成長をみると、1歳までに25センチ、1~2歳の間に10センチ、2~3歳の間に8センチ伸びますから、約50センチで生まれた新生児は3歳の時におよそ93センチに成長すると予測できます。子供の体には、こうした成長パターンが組み込まれているために、たとえ小さく生まれたとしても、10人中9人の子供は3歳になるまでの間に、身長が標準の範囲まで追い付きます。

しかし、10人中1人くらいの割合で、3歳を過ぎても身長が標準の範囲まで追い付かない子供がいます。こうした子供は、低出生体重性低身長症(SGA性低身長症)と呼ばれます。

低出生体重性低身長症の子供は、成長ホルモンの分泌はほぼ正常なものの、幼児期を過ぎ、小学校に上がってからも低身長のまま経過することが報告されています。また、通常に比べて思春期の訪れがやや早い傾向もあります。低身長のまま思春期を早く迎えることで、成人になっても背が低いことが予測されます。

低出生体重性低身長症か否かを知る手段の1つに、成長曲線をつける方法があります。成長曲線は、生まれた時からの子供の成長を折れ線グラフで示すもので、母子手帳にも付いています。子供の身長の測定値を継続して記載し、過去のものと線で結んでグラフ化します。あらかじめ標準的な身長グラフも記載されているので、その標準身長と子供の身長を比較してみましょう。もともと、胎内発育遅延児(SGA児)で、3歳になっても-2SD(標準偏差)以上の差がみられる場合は、低出生体重性低身長症が強く疑われます。

子供に低出生体重性低身長症が疑われたら、小児科、小児内分泌科の専門医を受診してください。低身長を改善するために、3歳から成長ホルモンによる治療を始めることが可能です。成長ホルモンの効果は個人差がありますが、効果を出すにはなるべく早い時期から治療を開始するほうが望ましいとされています。

低出生体重性低身長症の検査と診断と治療

小児科、小児内分泌科の医師による診断では、まず生まれた時の様子や、妊娠週数(在胎週数)と体重と身長、その後の成長の様子などを聞くので、受診する保護者には母子手帳や成長曲線の記録などを持参するようにしてもらいます。また、身長と体重の測定などで現在の成長の状況なども調べ、血液中の成長ホルモンの量や、ほかの下垂体ホルモンの量を測定し、総合的に判断します。

低身長には、低出生体重性低身長症以外にも、体質性のもの、疾患によるものなどさまざまな原因が考えられるため、下垂体とその周辺のMRI検査、CT検査を行うこともあります。鑑別すべきものに、思春期遅発症、甲状腺(こうじょうせん)機能低下症による低身長などがあります。

小児科、小児内分泌科の医師による治療は、ヒト成長ホルモンを注射することで、脳の下垂体から分泌される成長ホルモンを補って、背の伸びを促進させる成長ホルモン療法を行います。ヒト成長ホルモンは、以前はヒト下垂体から抽出していたので、その生産量に限りがありました。現在では、遺伝子工学技術を応用して大量に産出されるようになり、十分な治療が行われています。

本剤は注射液ですが、毎日少量ずつ投与するのが効果的で、自己注射が認められているため、小さい時は保護者が、大きくなると本人が注射の打ち方を習い、毎日1回寝る前に皮膚の下5ミリの部位に皮下注射します。

現在、使いやすくて安全なペン型の注射器が普及しています。従来のものよりも針先を細くして痛みを少なくしたり、注射器に補助具をつけることで針先が見えなくなるなどの工夫がされています。また最近では、ボタンを押すだけで注射できる全自動の注射器や、針のない圧力式注射器も登場しています。このような注射器を使えば安定した注射ができ、自宅で治療を続けることができます。ヒト成長ホルモンの注射を始めた子供の日常生活上の特別な注意点はなく、運動は自由、食事も自由です。

成長ホルモン療法により1年目は平均8センチぐらいの身長の伸びが認められますが、2年目、3年目と伸びは落ちていきます。すぐに正常身長になるというような治療ではありません。長期治療した例の最終身長の平均は、男性で160センチ、女性で148センチ前後とされています。

🇰🇮低身長症

何らかの原因によって身長が著しく低くなる疾患

低身長症とは、何らかの原因によって身長が著しく低くなる疾患。侏儒(しゅじゅ)症とも呼ばれています。

身長が著しく低くなる原因はいろいろあり、ホルモンの不足によって起こる場合や、ターナー症候群という性染色体の異常によって発生する疾患によって起こる場合、軟骨異栄養症という生まれ付き骨に異常があって低身長、短指症になる疾患によって起こる場合などがあります。

ホルモンの不足によって起こる場合にも、成長ホルモンの不足によって起こる場合と、甲状腺(こうじょうせん)ホルモンの不足によって起こる場合とがあります。このうち、成長ホルモンの不足による場合を成長ホルモン分泌不全性低身長症、あるいは下垂体性小人症といい、最もよく知られています。

成長ホルモンは主として、脳の中にある下垂体(脳下垂体)という器官から分泌され、骨の両端にある骨端線に作用して骨を成長させる働きを持っています。この成長ホルモンの分泌量が不足することにより、骨が成長できず、低身長になります。

低身長は身長SDスコアがマイナス2SD以下という統計の基準で定義され、同性・同年齢の100人に2~3人が低身長という定義に当てはまりますが、この低身長の中で成長ホルモン分泌不全性低身長症は5パーセント以下です。

原因はいろいろありますが、最も多いのは分娩(ぶんべん)時の異常です。骨盤位分娩(逆子)で、しかも仮死を伴って生まれた男児に多い傾向がみられます。ほかに、少し大きくなってから、脳に腫瘍(しゅよう)ができ、成長ホルモンの分泌が低下するために低身長になることもあります。非常にまれには、成長ホルモンや成長ホルモン放出因子の遺伝子の異常や、下垂体の発生に関係する遺伝子(転写因子)の異常によって、低身長になることもあります。

生まれた時には、身長、体重とも健康な赤子と変わりがないのが普通です。しかし、3歳ごろになると、ほかの子供と比べて体が小さいことに家族が気付くようになります。知能の発育は、正常です。

身体的特徴は、体全体の均整がよくとれていて、成人しても顔が丸くて子供っぽく、性器は幼児型のままのことが多いようです。声変わりもなく、陰毛やわき毛もないのが普通。これは性腺刺激ホルモンの分泌も同時に障害されることが多いためです。

このほか、下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモンや副腎(ふくじん)皮質刺激ホルモンも低下していることがあります。

現在、低身長でなくても、成長率の低下がみられる時、学校での背の順が前になってくるような時は、成長ホルモン分泌不全性低身長症以外のホルモンの疾患が隠れている時がありますので、内科、内分泌代謝内科、小児科の専門医を受診します。

低身長症の検査と診断と治療

医師による診断は、血液中の成長ホルモンの量や、ほかの下垂体ホルモンの量を測定し、総合的に診断します。病因を調べるために、下垂体とその周辺のMRI検査、CT検査を行うこともあります。鑑別すべきものに、思春期遅発症、甲状腺機能低下症による低身長などがあります。

医師による治療は、ヒト成長ホルモンを注射することが最もよい方法です。このホルモンは、以前はヒト下垂体から抽出していたので、その生産量に限りがありました。現在では、遺伝子工学技術を応用して大量に産出されるようになり、十分な治療が行われています。

本剤は注射液ですが、毎日少量ずつ投与するのが効果的で、自己注射が認められているため、小さい時は両親が、大きくなると本人が注射の打ち方を習い、毎日寝る前に皮下注射します。

1年目は平均8センチぐらいの身長の伸びが認められますが、2年目、3年目と伸びは落ちていきます。すぐに正常身長になるというような治療ではありません。長期治療した例の最終身長の平均は、男性で160センチ、女性で148センチ前後とされています。

🇰🇮低髄液圧症

脳脊髄液が減少し、頭痛やさまざまな全身症状が現れる疾患

低髄液圧症とは、脳脊髄腔(のうせきずいくう)を循環する脳脊髄液が持続的、ないし断続的に漏出することによって減少し、頭痛やさまざまな全身症状を示す疾患。低脳脊髄液圧症、脳脊髄液減少症とも呼ばれます。

脳脊髄液は、脳と脊髄全体を覆うように脳脊髄腔を循環して保護液として働き、脳と脊髄を浮かせて頭や体が急激に動くことによる衝撃を柔らげたり、部分的な脳や脊髄の活動によって産生される物質を取り除く働きも併せ持つと考えられています。

脳の内側で4つに分かれて存在する脳室で、血液の成分から1日約500ミリリットル産生されて、1日で3回ほど全体が入れ替わる程度のスピードで循環しています。最終的には、くも膜という脳の保護膜と脳との間に広がっている静脈洞という部位から吸収され、血液へ戻ってゆきます。

何らかの原因で脳脊髄腔を覆っている硬膜に亀裂(きれつ)などが生じ、この脳脊髄液が脳脊髄腔から漏出することが原因で、低髄液圧症が生じます。

原因となるのは、頭や体に強い衝撃を受ける交通事故や、柔道、スノーボード、サッカー、バスケット、器械体操などによるスポーツ外傷、転倒のほか、出産、脱水などです。原因が不明なこともあります。

その症状は、起き上がると痛みが増強し、横になると痛みが軽減する起立性頭痛を主とし、付随する頸部(けいぶ)痛、めまい、耳鳴り、視機能障害、倦怠(けんたい)感などがみられます。

また、個人により、記憶力の低下、集中力の低下、食欲の低下、むくみ、しびれ、歩行障害、顔面痛、味覚障害、動悸(どうき)、胸痛、脱力感、頻尿、無月経、性欲低下、体温調節障害、不眠など、さまざまな症状が起きることもあります。

なお、この低髄液圧症は、日本の医師によって提唱された新たな疾患概念であり、いまだに定まった知見や治療法が確立されていないため、国において専門家による医学的な解明が進められているところです。

このため、診療や治療を行っている医療機関は少なく、脳神経外科、神経内科、整形外科、麻酔科などの一部が診療のみ、あるいは診療と治療を行っています。

低髄液圧症の検査と診断と治療

脳神経外科、神経内科、整形外科、麻酔科の医師による診断では、起立性頭痛などの症状、経過、発症の状況などを問診します。

頭部のMRI(磁気共鳴画像撮影)検査を行うと、脳脊髄液の減少を評価できるほか、脳脊髄液の減少のために脳がやや下垂している画像が認められることがありますが、常に認められるわけではありません。

放射性同位元素(RI)脳槽(のうそう)・脳脊髄腔シンチグラフィーを行い、腰部から硬膜内に細い針を刺し、造影剤の放射性同位元素を外髄液腔(くも膜下腔)に注入すると、注入3時間以内に膀胱(ぼうこう)内に放射性同位元素が描出される画像や、放射性同位元素が髄液腔外に漏出している画像がみられれば、確定します。

脳神経外科、神経内科、整形外科、麻酔科の医師による治療では、十分な水分を摂取して、ベッドでの安静を保ちます。点滴による水分補給が必要な時もあります。

約2週間の水分摂取と安静で改善しない時には、ブラッドパッチ治療(硬膜外自家血注入療法)を行います。局所麻酔を行った後、X線(レントゲン)透視下で脳脊髄液の漏れている硬膜外腔(硬膜の袋の表面)の近くに針を刺します。そして、自己(患者本人)の腕から摂取した血液(ブラッド)に造影剤を混ぜ、刺しておいた針から注入します。すると、脳脊髄液の漏れている硬膜外腔の周囲に血液が広がって凝固し、硬膜の亀裂をふさぎます。

治療効果には個人差があり、初回で効果がない時は、2~3回行うことも少なくありません。ブラッドパッチ治療後、硬膜の亀裂は2週間から1カ月程度で修復します。

しかし、脳脊髄液の漏出が止まっても、脳脊髄液の生成が追い付くまで2~3カ月かかるのが一般的です。また、治療後6カ月間は再発のリスクが高いといわれています。

付随する諸症状についても、症状ごとに回復の程度が異なります。そのため、真に回復を実感するまでに1~3年かかるのが普通だともいわれています。

🇹🇱ディスチミア親和型うつ病(気分変調性障害)

軽い反面、長く続くタイプのうつ病

ディスチミア親和型うつ病とは、症状が軽い反面、長く続くタイプのうつ病。別名を気分変調性障害、気分変調症といい、かつては抑うつ神経症、神経性抑うつと呼ばれていた病気です。

うつ状態は数年間、場合によっては数10年間も続くケースがあります。10歳代後半から30歳代の若いころから発症することが多く、落ち込んでいるのは会社や家庭、社会環境のせいと思い込む他罰的な態度、責任を転嫁する態度を示すのが、近年の発症者の大きな特徴となっています。発症する原因は、性格に根差す傾向が強く、心因性やストレス性もあります。

青年層の発症者のタイプとして、社会のルールをストレスと感じる、秩序を否定する、仕事に熱心でないなどの性格を持っています。元来の気質の特徴は退却傾向と無気力で、やる気がなく、熱心に何かに取り組んで認められたという経験を持っていません。

学生時代も、親の期待通りに進学しながらあまり勉強せず、挫折感から体調を崩したりします。何となく就職しても、仕事のノルマや上司との関係など、規範でがんじがらめの社会で初めて壁にぶつかり、うつ状態に陥ってしまい長く続かなかったりします。

旅行や買い物などの時は、一時的に気分がよくなります。「仕事は仕事、自分は自分」と考えて、自分の生活を何より大切にし、そのためには会社を変わってもいいと考えているタイプだからです。

医学的にディスチミア親和型うつ病と診断されるのは、主に以下に相当する場合です。一つは、抑うつ気分がほとんど1日中存在し、抑うつ気分のない日よりもある日のほうが多く、本人の言明または周囲の人の観察によってそれが示され、少なくとも2年間以上、小児・青年については1年間以上続いていることです。もう一つは、抑うつの間、食欲減退または過食、不眠または過眠、気力の低下または疲労、自尊心の低下、集中力の低下または決断困難、絶望感のうち2つ、またはそれ以上が存在することです。発症者は衝動的に、大量服薬などの自傷行動に出ることもあります。

こうしたタイプのうつ病であるディスチミア親和型うつ病が増えてきた背景として、うつ病概念の広がりと、社会環境の変化の2点が挙げられます。

症状が軽いディスチミア親和型うつ病は従来、うつ病と見なされなかったタイプ。1980年代以降、精神科領域の診断基準が順次、変わってきて、うつ病の概念が広がったことにより、診断の範畴(はんちゅう)に入るようになりました。従来のうつ病は、定型うつ病、メランコリー型うつ病、あるいは気分障害の中の大うつ病性障害などと呼ばれ、発症は中年期以降に多く、非常にまじめで、規則や秩序を大事にし、仕事に打ち込む人がなります。

また、社会の価値観が変化し、若者文化では「型にはまらない」ことがよしとされる一方、企業社会の現実は厳しく、規則や秩序は依然としてあります。このギャップに対応できない青年層が増えている状況が、現代型うつ病であるディスチミア親和型うつ病を生み出しているといえます。

服薬、休養、精神療法的な働き掛け

不調が続く時は、つらい状態を我慢するよりも、早期に精神科、神経科、心療内科の専門医を受診し、治療を受けることが何よりも大切。

最近では、ディスチミア親和型うつ病(気分変調性障害、気分変調症)の発症者が自分から、「うつ病だから治して」と医療機関を受診してくるケースが、多く報告されています。インターネットなどで情報を収集し、自分で自分の病気に気付くようです。そうした人たちは、医師の診断に協力的で、診断書を要求して休職したりします。

現代では、誰(だれ)もがたくさんのストレスを抱えながら、生活しています。では、単なる気分の落ち込みであるか、うつ病であるかは、どこで線引きしたらよいのでしょうか。

ポイントとなってくるのは、日常生活に支障が出てくるかどうか。毎朝早くに目が覚めてしまい、睡眠不足の状態が続く。会社に行ってもいつものように頭が回らず、仕事にならない。そのような状態が2週間も3週間も続くようなら、一度専門医に診てもらう必要があります。また、生活を共にしている人が様子の変化に気付き、本人を促して受診につながるというケースもあります。

ディスチミア親和型うつ病の特徴は従来の定型うつ病と比較して、若年者に多く、他罰的な態度を示すことですので、医師による治療では服薬、休養のみならず、性格改善を目指した精神療法的な働き掛けが必要です。ただ、このタイプの治療は難しく、抗うつ薬が効きにくいため、かなりの時間と労力を要し、慢性化するケースも多くみられます。

しかし、精神科クリニックのリワーク・カレッジ(復職デイケア、復職支援デイケア)に通い、自分の生き方を考え直したことが、治癒につながる人もいます。中には、異動など職場環境が変わるだけで、途端に治る人もいます。

服薬は抗うつ薬や抗不安薬といったものを用いますが、いろいろな種類がありますので、医師と相談しながら自分に合った薬を見付けていくとよいでしょう。抗うつ薬は副作用が最初から出現しますが、服用を途中で中止すべきではありません。

ストレスの原因から遠ざかり、心身ともにゆっくり休むことも大切なので、時には休職し、自宅療養をすることも必要となります。会社を休んで家でゆっくりしていれば、次第に憂うつな気分が回復してきますが、治療は1週間や2週間で終わるものではありません。

病気を治すことが最優先とはわかっていても、月単位で会社を休むことには抵抗がある人も、多く見受けられます。自宅療養の生活では、早く復職したいという焦りとも闘わなければなりません。治療後の会社の生活への復帰というのも、通勤も含め、非常に落差があります。一度回復しても、朝早く起きて電車で通う大変さや、仕事に必要な集中力がなかなか戻らないのに耐えられず、再休職してしまうケースは後を絶ちません。

そういった状況を避けるために、精神科クリニックなどではリワーク・カレッジを立ち上げています。リワーク・カレッジとは、うつ病から立ち直った人たちをよりスムーズに復職させるためのプログラム。参加できるのは、休職後の自宅療養により、日々の生活リズムが一定に保てるまでになった人たちです。

毎朝、同じ時間に寝起きができるようになれば、体のリズムも整い、気分はかなり回復してきます。薬の服用は続けつつ、軽い運動や読書などの負荷をかけていき、それに耐えられるようになったら、次は復職への第一段階としてリワーク・カレッジに毎朝通うという仕組みです。この通勤のシミュレーションともいえるプログラムを継続的に行えるようになったら、次はグループになじんでいくというプロセスへと移行します。

グループになじむ目的は、自宅療養中に遠ざかっていた人間関係を回復させるためにも、復職という同じ目的を持つ仲間の中へ加わり、復職への不安感を軽減すること。ここで前向きな行動が起こせるようになれば、いよいよ会社への復帰となります。休職開始から復職を果たすまでの期間は、個人差はあっても3~6カ月はみておく必要があります。

復職の際には、会社の上司や人事担当者、産業医などとの打ち合わせも重要。また、復職後も週1回から2週に1回受診して、当面の間は治療を継続することが大切です。心身ともに問題なく健康だという状態まで治しておかないと、すぐに再発する恐れがあるため、一見よくなったように思えても、半年や1年は薬物療法と精神療法的な働き掛けを続ける必要があります。

再びうつを繰り返さないためにも、うつの回復期における、過去を振り返っての自己分析も重要。自分の性格や対人関係能力などを把握し、物事がうまくいかないのは病のせいでも、会社や家庭、社会環境のせいでもなく、自分の性格や生き方に問題があるのだと気付くことが必要です。たとえ病状が回復したとしても、自分の感情をコントロールすることができず、責任を他に転嫁したままでは、同じような状況になった時に病気は再発してしまいます。

🇹🇱低体重児

低体重児とは、生まれた時の体重が2500g未満の新生児のこと。正しくは、低出生(ていしゅっしょう)体重児といいます。近年は増加傾向にあり、妊婦のやせ志向や、妊娠中の喫煙、飲酒などが、その背景にあると見なされています。

この低(出生)体重児はさらに、出生体重が1500g未満の場合は極低(出生)体重児に、1000g未満の場合は超低(出生)体重児に分類されます。かつては、極低(出生)体重児を極小未熟児、超低(出生)体重児を超未熟児と呼んでいました。

原因を大きく分けて、在胎週数が短くて出生する早産のために、赤ちゃんの出生体重が低くなる場合と、子宮内での体重増加が悪い子宮内発育制限のために、赤ちゃんの出生体重が低くなる場合があります。

子宮内発育制限は、先天性心疾患、染色体異常など胎児自身の異常や、妊娠中毒症、極端なやせ、喫煙や飲酒など妊婦側の異常、胎盤および臍帯(さいたい)の異常で起こります。

早産と子宮内発育制限、両方の原因が組み合わさって出生する赤ちゃんは、早産低出生体重児といいます。

低出生体重児であっても、在胎週数がほぼ正期産に近くて先天性異常などを持たず、体の機能が成熟している赤ちゃんには、あまり問題はありません。出生直後に低血糖などになりやすいものの、出生後の授乳、体重増加はおおむね良好に推移します。

小さく早く生まれた赤ちゃんは、体の機能が未熟なために生後さまざまな合併症を起こしやすく、免疫力も弱いために重症の感染症にかかりやすくなります。特に、極低体重児や超低体重児では、その傾向が高くなりますので、在胎週数36週未満の赤ちゃんは一般に、新生児特定集中治療室(NICU)に入って保育されます。

🇹🇱低中性脂肪血症

血液の中に含まれる中性脂肪の値が低い状態

低中性脂肪血症とは、血液に含まれる中性脂肪(トリグリセライド)の値が低い状態。低トリグリセライド血症とも呼ばれます。

中性脂肪は、エネルギーの貯蔵庫であり、生命維持活動に必要な細胞や血管を構築するための栄養素になります。また、中性脂肪を蓄えた脂肪細胞には、衝撃から内臓を守るクッション役、寒さや暑さから身を守る断熱材などの役割があります。

血液に含まれる中性脂肪の値が高いと高中性脂肪血症(高トリグリセライド血症)となり、心筋梗塞(こうそく)などの重篤な疾患が誘因されやすいものの、中性脂肪の値が低すぎても問題になります。

中性脂肪の値は、血液中のコレステロールと中性脂肪値を測る脂質検査で調べることができます。おおよその目安では、29mg/dl以下を低中性脂肪血症と見なし、30 ~149mg/dlを正常、150~299mg/dlを軽度高中性脂肪血症、300~749mg/dlを中等度高中性脂肪血症、750mg/dl以上を高度高中性脂肪血症としています。

適正な中性脂肪の値は現在、30~149mg/dlとなっており、29mg/dl以下は低中性脂肪血症に当てはまる可能性がありますが、この基準値以下でも普通の生活している場合であれば、問題はありません。

基準値をはるかに下回る場合は、問題が生じます。中性脂肪は筋肉や心臓を動かす体のエネルギー源であるため、低すぎると体を正常に動かすエネルギーまで不足してしまい、慢性的な疲労感を感じる原因になります。健康を維持する上では、適正な中性脂肪値を保つことが大切なのです。

中性脂肪が低くなりすぎる原因として、まず第一に考えられるのは、無理なダイエットです。極端に食事量を減らしたり、海草や野菜ばかり食べるなどの食事内容により、摂取するエネルギー量が極端に低かったり、栄養素が偏ったり、栄養が不足していることが原因となります。

あまりに中性脂肪が低い場合は、バセドウ病や甲状腺(せん)炎を原因とする甲状腺機能高進症や、肝硬変、吸収不良症候群などの疾患が隠れている可能性があります。

甲状腺機能高進症では、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されている場合、全身の代謝が高進するとともに脂肪の代謝が促進され、コレステロールや中性脂肪が著しく低下します。この場合、動悸(どうき)、発汗、手の震え、倦怠(けんたい)感などの自律神経の緊張症状とともに、体重の減少が生じます。

肝硬変や吸収不良症候群では、脂肪自体が吸収および産生されていない状態に陥り、コレステロールや中性脂肪が著しく低下します。

疾患がなく、食事をしっかり取っているにもかかわらず、低中性脂肪血症になっている人もいます。やせ形の人に多いのですが、そのような人は、生まれ付き中性脂肪値が低い可能性があります。

低中性脂肪血症の検査と診断と治療

血液に含まれる中性脂肪が29mg/dl以下の低中性脂肪血症と判明した場合は、原因となる疾患の有無を調べます。

内科、内分泌・代謝科の医師による治療では、低下した中性脂肪の値を増加させる必要はなく、甲状腺機能高進症や肝硬変、吸収不良症候群、栄養障害などの原因となる疾患に対応して改善を図ります。

🇳🇨定年退職うつ病

会社を定年退職後に、抑うつ気分に陥り日常生活に支障が出る状態

定年退職うつ病とは、今まで勤めてきた会社を定年退職後に、抑うつ気分などの、うつ病の症状が現れ、日常生活に支障が出てくるようになった状態。退職うつ病、退職症候群、定年症候群などとも呼ばれます。

うつ病は、気分障害の一種であり、抑うつ気分や不安、焦燥、精神活動の低下、食欲低下、不眠症などを特徴とする精神疾患。一般に、うつ病を発症しやすい年齢は25歳から35歳ですが、何歳からでも起こる可能性があり、退職や転居といった人生の節目、生活の大きな変化で起こる場合もあるのです。

定年退職うつ病は、定年退職後になるばかりでなく、定年の数年前から退職後の年金生活などに不安を感じて、抑うつ的になってしまう人もいます。定年退職うつ病を発症しやすいタイプは、学校を卒業してからずっと同じ会社に勤め、仕事中心にひたすら頑張ってきた会社人間の人です。40年前後働き続けて定年退職を迎えると、自分の人生の中心であった仕事を失い、何をしてよいのやら途方に暮れてしまいます。また、会社を辞めるということは、愛着を持ってきた仕事、地位や肩書き、所属していた集団、経済的基盤といったものを失い、さまざまな喪失感を伴うものです。

特に、現代社会では寿命が長くなり、60歳代もまだまだ働ける年齢です。多少の衰えは感じていても、自分としては十分働く気がある時期に会社を辞めなくてはならないというのは、社会から必要とされていないように思ってしまい、必要以上に自分を過小評価したり、劣等感にさいなまれたり、むなしさ、寂しさを感じたりもします。それとともに、家庭では主(あるじ)としての地位が揺らいでいることを感じ、プライドさえも打ち砕かれます。

同時に、これまでの生活リズムが一気に大きく変化し、行動範囲が会社から地域へと変化します。出勤する必要がなくなった長い一日をどのように過ごしたらよいか、わからなくなってしまい、気分が沈み込んで何かをする気力がなくなったり、回りのことに興味が持てなくなって人生が味気なく感じられるようになります。意欲減退、無気力、無感動のほか、頭が重い、めまいがする、胃の調子が悪い、疲れやすいなどの身体症状が現れたり、記憶力が衰えるというようなこともあります。

そのような状態が長く続くと、食欲も低下し、睡眠障害なども起こって、日常生活に支障が出てくるようになります。最悪の場合は、自分を責め、自殺を図ることさえあります。

うつ病の原因は十分にわかっていませんが、脳内の神経伝達の一部が一時的に悪くなって、情報(刺激)の伝わり方が部分的に悪くなっているのではないかと考えられています。だから、うつ病の人がやる気をなくしてぐったりしているのは、決して怠けているわけではないのです。脳、あるいは神経という臓器が一時的に不調になっていると考えたほうが、わかりやすいかもしれません。

定年退職うつ病の症状がみられたら、早期に発見して治療を受けるようにしましょう。うつ病と診断された場合は、抗うつ薬による薬物療法がメインに行われます。SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)と呼ばれる抗うつ薬を中心に、気分を安定させる気分安定薬や抗精神病薬、不安や不眠を改善する抗不安薬や睡眠薬など、さまざまなものが選択されます。

薬を服用することで、気分が安定して楽になりますが、3カ月から6カ月、1年くらいの時間がかかります。風邪の熱が解熱剤で翌日には下がったというような治り方はせず、一進一退で、調子が悪くなったり調子がよくなったりという状態を繰り返しながら、次第に軽快していき、ある日気付いてみたら、全く元通りの健康な状態になっていたというような経過をたどります。

調子がよくなったり、副作用が出たりからといって自己判断で薬の服用を中止すると、うつ病が再発することもあるので、注意が必要です。医師と相談しながら、根気よく治すことが大切です。

なお、周囲の人が励ますとかえって本人が重荷に感じ、症状が悪化することもあるので、ストレスを与えないような気配りが必要です。

定年退職うつ病を予防するには、早めに定年後の第二の人生の計画を立て、その準備をしておくことです。定年前から、仕事以外に熱中できる趣味などを持つようにしましょう。また、休日は家族と一緒にどこかへ出掛けるなど、家庭でのコミュニケーションを増やし、自分の居場所を作っておきましょう。趣味のサークル、地域の行事などに積極的に参加し、会社や家庭以外の人間関係も築いておくのもよいでしょう。

何よりも定年退職後の人生を明るく前向きにとらえ、「これからは、今までやりたくてもやれなかったことをやる」というような考え方をすれば、うつ病とは無縁な第二の人生が送れるでしょう。

🟥「H3」型インフルエンザの新たな変異ウイルス、国内でも確認

 海外で拡大している「H3」型インフルエンザの新たな変異ウイルスが国内でも確認されたことが、国立健康危機管理研究機構の解析でわかった。専門家は「免疫を持っている人が少なく、感染が広がりやすい可能性がある」として注意を呼び掛けている。  季節性インフルエンザとして流行する「H3」...