2022/08/15

🇷🇸洞停止

正常な脈が突発的、一過性に、完全に停止する状態

洞(どう)停止とは、心臓が鼓動するリズムを作っている洞結節(洞房結節)の機能障害により、脈がゆっくりになる徐脈を急に起こしたり、脈が突発的に停止したりする疾患。洞不全症候群のタイプの一つです。

洞の名称は、胎児期の心臓に当たる静脈洞からきたものです。

心臓が鼓動するリズムは、心臓の動きを伝導する電気信号によって決まります。このような電気信号の始まりで、心筋に規則的に収縮するように電気刺激を与え続ける洞結節は、交感神経や副交感神経などの自律神経作用の影響を受け、心臓の鼓動リズムを調節する重要な部位です。その洞結節の機能が正常に働かないことにより、洞結節の自力で興奮する能力が低下し、徐脈または心停止がみられます。

心臓の電気的な活動の様子をグラフの形に記録する心電図的には、正常な心臓における心電図の波形はP波という小さな波から始まり、とがって大きな波のQRS波、なだらかな波のT波、最後に小さい波のU波が見られ、これが繰り返されていきますが、洞停止の心電図の波形では、P波に続くQRS波、そしてT波へと続く関係は正常ですが、先行するP波が突然現れなくなります。

原因として考えられるのは、急激な運動によるもので、特にふだんから運動をしない人だと、洞停止の発症のリスクが高まります。特に高齢者の場合は、高血圧治療薬や虚血性心疾患治療薬、抗不整脈薬、精神疾患治療薬などの薬剤投与によって洞停止が引き起こされることもあります。

洞停止の典型的な症状は、心拍数が減少して脈がゆっくりになる徐脈、または約5秒間以上の洞停止に続く心停止に伴う脳虚血症状として現れ、意識障害、眼前暗黒感、めまい、失神、顔面蒼白(そうはく)、けいれん、呼吸停止などが起こります。夜間睡眠中に脳虚血症状が現れる場合は無症状で経過することもありますが、日中に現れる脳虚血症状により転倒した場合には時に、重大な頭部外傷をもたらす危険もあり、心停止から拍動が回復しない場合は突然死することもあります。

運動時の息切れや疲労感、心不全の悪化による呼吸困難、乏尿として現れる場合もあります。

 脳虚血症状などが長引く場合、繰り返すような場合には、循環器専門医の診察を受けてください。

洞停止の検査と診断と治療

循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による診断では、症状を起こした時の心電図を記録し、確認することで洞停止と確定します。洞停止の状態の波形として、P波の後に著しい長さの休止期があったり、P波が突然現れなくなったりします。洞停止のバックアップ機能として、房室接合部が自力で興奮する能力が優位となり、補充収縮が出現することもあります。

体表面の異なる12方向から記録する12誘導心電図、24時間ホルター心電図、携帯型簡易心電計などによる検査でわからない場合は、心臓電気生理学的検査(EPS)と呼ばれるカテーテル検査を行うこともあります。

循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科の医師による治療では、症状が軽い場合は、洞結節の自発的な興奮の回数を増やす薬剤を使用します。抗コリン薬(硫酸アトロピン)、β(ベータ)刺激薬(イソプロテレノール)などの経口薬や静注薬です。

薬を投与しても効果がみられなかった場合や、薬の投与を中断すると症状が悪化するような場合には、恒久型ペースメーカーを体内に植え込む必要が生じることもあります。

恒久型ペースメーカーは、徐脈が現れた時のみ電気刺激を出して心臓を刺激することにより心拍数を正常にし、高度な徐脈、心停止による失神などを予防します。手術で、ライターほどの大きさの恒久型ペースメーカーを鎖骨の下に植え込み、脈の状態は心臓の中に留置したリード線を通して察知します。

🇷🇸洞不全症候群

主に洞結節の働きの低下により脈が遅くなり、主要臓器の循環障害が起こる疾患

洞不全(どうふぜん)症候群とは、血管系統の中心器官である心臓が鼓動するリズムを作っている洞結節やその周辺の異常により、脈がゆっくりになる徐脈を起こし、脳、心臓、腎(じん)臓などの臓器の機能不全が現れる疾患。洞機能不全症候群、SSS(Sick Sinus Syndrome)とも呼ばれます。

心臓の右心房の上部にある洞結節の細胞自体やその周辺に存在する心房筋の障害によって、心拍数が減少して脈がゆっくりになる徐脈のほか、心停止を起こす場合があり、その結果として脳への血流が途絶えることで意識障害や失神などの症状が出ることもあります。心臓から送り出される血液量の低下によって、心臓、腎臓などの主要臓器の循環障害が起こることもあります。

心臓が鼓動するリズムは、心臓の動きを伝導する電気信号によって決まります。このような電気信号の始まりである洞結節は、交感神経や副交感神経などの自律神経作用の影響を受け、心拍数を調節する重要な場所です。

心臓の電気的な活動の様子をグラフの形に記録する心電図的には、持続性の洞徐脈、洞停止または洞房ブロック、徐脈頻脈症候群の3つのタイプに分類されます。

持続性の洞徐脈の場合、常に脈拍数が1分間に40~50回以下に減少し、心房の興奮を反映するP波という小さな波の規則正しい間隔で現れる数が少なくなります。

洞停止または洞房ブロックの場合、洞結節からの電気信号が一過性に停止または心房に伝わらないことによって起こります。P波に続くP波よりも尖(とが)って大きな波のQRS波、そしてなだらかな波のT波へと続く関係は正常ですが、先行するP波が突然現れなくなります。

徐脈頻脈症候群の場合、心房細動や心房粗動、発作性上室性頻拍などの頻脈性不整脈が出現し、心房が速く興奮して、その刺激が洞結節に進入することで、洞結節の自発的興奮を一時的に強く抑えてしまうため、頻脈が自然停止した直後に高度の洞停止が生じます。

洞不全症候群の原因ははっきりしないことが多いのですが、特定できる原因として最も多いのは、加齢による洞結節または周辺の心房筋の線維化による伝導障害です。そのほかに、心筋梗塞(こうそく)や冠状動脈硬化などの虚血性心疾患、高血圧症、先天性心疾患、心筋症、心筋炎などが原因になりますが、慢性腎機能障害による電解質異常や甲状腺(こうじょうせん)疾患によって起こることもあります。

また、洞結節の刺激の発生数を低下させる迷走神経の緊張高進、高カリウム血症のほか、高血圧治療薬や虚血性心疾患治療薬、抗不整脈薬、精神疾患治療薬などの薬剤投与によって引き起こされる場合もあります。

洞不全症候群の症状は、心停止または徐脈に伴う脳虚血症状として現れ、意識障害、眼前暗黒感、めまい、失神、顔面蒼白(そうはく)、けいれん、呼吸停止などが起こります。夜間睡眠中に脳虚血症状が現れる場合は無症状で経過することもありますが、日中に現れる脳虚血症状により転倒した場合には時に、重大な頭部外傷をもたらす危険もあり、心停止から拍動が回復しない場合は突然死することもあります。

運動時の息切れや疲労感、心不全の悪化による呼吸困難、乏尿として現れる場合もあります。

徐脈頻脈症候群では、頻脈の時に動悸(どうき)を感じることがあります。また、不整脈のため血栓が脳に流れ脳卒中を起こすこともあります。

脳虚血症状などが長引く場合、繰り返すような場合には、循環器専門医の診察を受けてください。

洞不全症候群の検査と診断と治療

循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による診断では、症状を起こした時の心電図を記録し、確認することで洞不全症候群と確定します。

体表面の異なる12方向から記録する12誘導心電図、24時間ホルター心電図、携帯型簡易心電計などによる検査でわからない場合は、心臓電気生理学的検査(EPS)と呼ばれるカテーテル検査を行うこともあります。

循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科の医師による治療では、症状が軽い場合は、洞結節の自発的興奮の回数を増やす薬剤を使用します。抗コリン薬(硫酸アトロピン)、β(ベータ)刺激薬(イソプロテレノール)などの経口薬や静注薬です。

徐脈が薬にあまり反応しなかったり、薬を中断すると症状が悪化するような場合や、薬剤による治療がうまくいかないことが多い徐脈頻脈症候群と診断した場合は、恒久型ペースメーカーを植え込みます。恒久型ペースメーカーは、徐脈が現れた時のみ電気刺激を出して心臓を刺激することにより心拍数を正常にし、高度な徐脈、心停止による失神などを予防します。手術で、ライターほどの大きさの恒久型ペースメーカーを鎖骨の下に植え込み、脈の状態は心臓の中に留置したリード線を通して察知します。

一方、長年の肉体労働や長距離走などのトレーニングにより生理的に洞結節の機能が抑制されて、脈が遅くなっているような人には、ペースメーカー治療の必要はありません。また、薬剤の投与によって一時的に洞不全が生じた人で、薬剤の中止によってその機能が回復し得る人も、ペースメーカーの植え込みは不要です。

🇵🇰頭部白癬(しらくも)

水虫を起こす白癬菌が頭部に感染して起こる皮膚病

頭部白癬とは、かび(真菌)の一種である白癬(はくせん)菌が頭部の皮膚、毛髪に感染して起こる皮膚病。しらくも、頭部浅在性白癬ともいいます。

一群の白癬菌は、皮膚の表面にある角層につき、そこでケラチンという皮膚の蛋白(たんぱく)を栄養源として増殖し、感染を起こします。足の裏、足指の間にできる足白癬、すなわち水虫を始めとして、体のどこにでも白癬ができる可能性があります。

白癬が頭部にできた、頭部白癬の症状は、感染した部分の毛穴が境界のはっきりした類円形に赤くはれ、白い鱗屑(りんせつ、ふけ)が付着します。軽いかゆみがあり、頭皮がカサカサして髪の毛が抜けやすくなり、円形のまだらな脱毛を起こしたりします。症状が進行すると、発熱を伴ったり、リンパ腺(せん)がはれたりすることもあります

この型の頭部白癬は、昭和25年ころまでは、小学生を中心にたくさんみられましたが、現在は非常に少なくなっています。 今でも発症するのは10歳以下の小児がほとんどで、高齢者などにみられることもあります。

しかし、近年は飼い猫などの動物の白癬が、人の頭や顔、首などに感染するケースが多くなっています。猫などの白癬菌である犬小胞子菌(ミクロスポルム・カニス菌)が頭についた時は、治療が不適切だと、毛に沿ってどんどん皮膚の深部に菌が入っていき、非常に治りにくいケルスス(ケルズス)禿瘡(とくそう)という深在性白癬になりやすいので注意が必要です。

ケルスス禿瘡では、うみ、しこりを伴うようになって、ズキズキする痛みがあり、耳介後リンパ節がはれることもあります。放置すると、瘢痕(はんこん)を残し、難治性の脱毛を生じます。

加えて、頭部白癬、ケルスス禿瘡は、最近では柔道、レスリングなどの競技者の間でも増加中です。こちらはトンズランス感染症、新型水虫とも呼ばれ、白癬菌の一種であるトリコフィトン・トンズランス菌によるもので、感染力が非常に強いのが特徴です。

このトリコフィトン・トンズランス菌は、犬小胞子菌(ミクロスポルム・カニス菌)と同様に毛の中に侵入しやすい白癬菌で、元来は中南米に生息していたものが、競技者同士が体を密着させ、擦過傷ができやすい柔道、レスリングなどの国際試合を通じて、1960年代に中南米からアメリカに持ち込まれ、続いてヨーロッパ、2000年以降に日本へも持ち込まれたものです。

頭部白癬の検査と診断と治療

頭部白癬(しらくも)、ケルスス禿瘡の症状がみられる場合、皮膚科で検診すべきです。自然に治癒することは難しく、放置すると治癒にも時間が掛かります。また、犬小胞子菌(ミクロスポルム・カニス菌)やトリコフィトン・トンズランス菌は感染力が強いため、完全に治癒しないと、再発する可能性が高く、他の人や動物への感染源になってしまいます。

犬小胞子菌は、人間から猫などの動物にも感染します。もし柔道、レスリングなどの競技者や、競技者の家族である場合は、検診時に医師にその旨を伝えるのがよいでしょう。

医師による頭部白癬、ケルスス禿瘡の検査では、ふけや皮膚、毛を水酸化カリウムで溶かし、溶けずに残る白癬菌を顕微鏡で観察する方法が一般的で、皮膚真菌検査と呼ばれます。 時には、培養を行って、原因菌の同定を行うこともあります。

治療としては、経口抗真菌剤を1~3カ月に渡って内服します。悪化する恐れがあるため、外用剤は使用しません。例えばケルスス禿瘡の場合、頭部白癬の症状をかぶれと間違って副腎(ふくじん)皮質ステロイド外用剤を塗っているうちに、症状が進展して生じる場合も多いといえます。ステロイド外用剤を早急に中止することが必要です。

経口抗真菌剤の内服と併用して、せっけんや、抗真菌剤の入ったシャンプーなどで、よく洗髪します。通常、頭部白癬が治れば、脱毛した部分の頭髪は生えてきます。

なお、トリコフィトン・トンズランス菌によるものは、接触する機会の多い競技者間で感染する例が非常に多い疾患です。そこで、家族に柔道などの競技者がいる場合、予防のポイントは次のようなことになります。

感染を防止するため、練習や試合後にはできるだけ早く、シャワーで頭や体を洗い流す。柔道着、トレーニングウエア、使ったタオルは、こまめに洗濯する。脱衣所、感染者の部屋は、まめに掃除をする。タオルなどの共用を行わない。

🇵🇰頭部粃糠疹

頭部の角質片のはがれ落ちが目立つ疾患

頭部粃糠疹(ひこうしん)とは、頭部の表皮の角質層が大小の角質片であるふけとなって、はがれ落ちるのが目立つ疾患。ふけ症とも、乾性脂漏とも呼ばれます。

頭皮だけでなく全身の皮膚の表面からは、絶えず角質が自然にはがれ落ちています。この角質の細胞は非常に小さいために、目で見ることができません。ふけというのは、角質に皮膚の脂やごみが混ざり、細かい米ぬか状の白色、ないし灰色の角質片となってはがれ落ちたものです。

健康な人でも生理的な現象として軽度のふけはみられますが、頭皮の新陳代謝が速まって角質がどんどんはがれ落ち、くしでとかすと肩に大小のふけが目立つ場合は病的と考えられます。一般的に、乾いたサラサラのふけを乾性ふけ、粘っこく重いふけを脂性ふけと呼びます。

頭部粃糠疹の原因として、男性ホルモンであるアンドロゲンの影響が指摘されています。しかし、ふけの程度と皮脂の量は必ずしも比例しません。頭部の毛嚢(もうのう)に住み着いている微生物、特にかび(真菌)の一種である癜風(でんぷう)菌の量が増えており、これを抑える薬用シャンプーでふけが減ることから癜風菌が原因との説がありますが、関係はないとの説もあります。

20歳代がピークで、その後、特に誘因もなく、ふけの量が増えたり減ったりします。40〜50歳代になると、自然に軽快する傾向にあります。普通、かゆみはなく、あっても軽度です。

頭部粃糠疹として治療が必要になってくるのは、ほかの疾患の症状、脂漏性皮膚炎や乾癬(かんせん)などがある場合です。これらの真菌によって起こる疾患では、頭の皮膚が赤くなったり、かゆみを伴ったりしています。また、ふけがかさぶたのように大きく、固着する傾向のある時も、ほかの疾患の症状と考えられます。

そのほか、若い男性の若はげの前兆として、ふけと抜け毛が多くなることもあり、粃糠性脱毛症と呼ばれます。

頭部粃糠疹の検査と診断と治療

自分でできる頭部粃糠疹の対処法として、抗真菌薬であるケトコナゾールを含有するシャンプー(コラージュフルフル)を始め、真菌を抑制するジンクピリジンチオンを含有するメリットシャンプー、カロヤンなどのヘアートニックを用います。これらは、薬局で市販されています。洗髪回数としては、毎日1回または1日おきが適当であり、洗いすぎは逆効果のことがあります。

日常生活での対処で効果が見られない場合、ほかの疾患の症状として頭部粃糠疹がある場合は、皮膚科を受診します。

頭部粃糠疹の特別な検査はありませんが、脂漏性皮膚炎、皮膚の角質が異常増殖する乾癬、水虫の原因である白癬菌が頭皮に感染する頭部白癬、頭虱(あたまじらみ)との区別が必要です。抜けた毛やふけの顕微鏡検査により、白癬菌や頭虱の虫卵の有無が診断されます。

専門医による治療としては、せっけんでよく洗い、皮膚の状態に合わせて副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)のローションを1日に2〜3回、擦り込むと効果があります。

🇵🇰動脈管開存症

本来は自然閉鎖される動脈管が残った先天性心臓病

動脈管開存症とは、出生により本来は自然閉鎖される動脈管が残った先天性心臓病。ボタロー管開存症とも呼びます。

胎児の時の動脈管は開いていて、肺動脈から大動脈に血液を送る重要な役目を持ち、胎盤からもらった酸素の多い血液が下半身へ通っていきます。出生によって肺が呼吸をすると、肺動脈から肺静脈へと血液が回り、動脈管は自然閉鎖する仕組みになっています。

本来は自然閉鎖される動脈管が出生後も残った動脈管開存症では、大動脈圧が肺動脈圧より高くなるため、心臓を出て大動脈へ行った血液が動脈管を通って、再び肺動脈へと流れ込むことになります。そのぶんの血液は、肺血管と左心房、左心室を空回りします。結果として、左心室の負担と肺動脈圧の上昇が起こり、肺高血圧は右心室の肥大や拡大を招きます。

動脈管開存症の症状としては、運動時の息切れ、動悸(どうき)があり、感染(細菌)性心内膜炎にかかりやすくなります。

動脈管開存症の検査と診断と治療

出生時における動脈管の開存は、生後1日から7日くらいではプロスタグランジン合成阻害剤により、閉鎖する場合もあります。この方法で閉鎖しない場合は通常、外科的手術が行われます。

手術は通常、人工心肺を用いないで、動脈管を切り離したり、しばって血行を止める結紮(けっさつ)により行われます。心臓を切開して内部を見ながら行う開心術を必要とせず、開胸術、すなわち胸腔(きょうくう)切開術のみによってできるので、成績も極めて良好です。動脈管開存症では、左のわきの下から胸腔にメスを入れ、動脈管を切断するか、しばります。

また、動脈管が細い場合には、心臓カテーテル法によって、動脈管を人工栓で閉塞(へいそく)する方法がとられることもあります。

子供の場合の手術は、比較的短期間の入院ですむことがほとんどで、予後も非常に良好。通常、ほかの子供たちと同様に生活していけると見なされています。手術を実施する時期は1歳から7歳くらいまでがよいのですが、重症例では新生児でも行われます。

🇮🇩動脈硬化

動脈壁が硬化し、肥厚した病変

動脈硬化とは、コレステロールなどが動脈壁に沈着し、動脈壁の限られた部分が硬化し、肥厚した病変をいい、これによって引き起こされるさまざまな病態を動脈硬化症といいます。

動脈硬化によって動脈の血管壁に病変が起こっても、初期のうちは特に症状はありません。しかし、ある程度病変が進むと、血管の内腔(ないくう)が狭くなって血液の流れが障害されたり、血管壁の弾力性が失われた動脈が拡張、蛇行したり、時には破裂してしまうこともあり、その流域の臓器に影響が現れてきます。

影響を受ける臓器とそれに関連する動脈の部位によって、動脈硬化症を分類すると、脳へいく動脈に起こる脳動脈硬化症、心臓の動脈に起こる冠動脈硬化症、腹部や胸部の大動脈に起こる大動脈硬化症、手足へいく動脈に起こる末梢(まっしょう)動脈硬化症、腎(じん)臓へいく動脈に起こる腎動脈硬化症が、主なものとして挙げられます。

また、動脈壁に生じる病変によって、動脈硬化は粥状(じゅくじょう)硬化(アテローム硬化)、中膜硬化、細動脈硬化という3つのタイプに分類されます。

粥状硬化(アテローム硬化)は、太い動脈や比較的太い動脈の内壁、特に3層からなる動脈壁の内側表面の層である内膜に、コレステロールを主成分とする脂質や石灰が沈着しているタイプ。

アテロームとは、ギリシャ語で粥(かゆ)という意味です。石灰とは、酸と結び付いたカルシウムのことで、血液中のカルシウムはリン酸カルシウムの形となって、血管壁に沈着します。

中膜硬化は、手足などの動脈壁の中膜にまで、石灰の沈着が及んでいるタイプ。中膜とは3層から動脈壁の中央の層のことであり、筋肉と弾力線維からなっています。

この中膜硬化は、高齢者に多くみられる動脈硬化の一つで、加齢に従って動脈壁の中膜に変化が起こると考えられています。血管は硬くなり、弾力性は失われていきます。

細動脈硬化は、脳や腎臓などの臓器内部の細い動脈の壁が厚くなり、内腔が狭くなるタイプ。細動脈は直径わずか0.1ミリから0.2ミリにすぎない血管で、血管壁の老化などに伴って硬くなり、弾力性がなくなるため、血圧に対する抵抗力が弱くなります。高血圧が長い間続くと、その圧力で細動脈の壁が傷付きやすく、細動脈硬化は一層進行します。

この状態では、血管が破裂しやすく、特に脳内で破裂すると体の機能が突然まひする脳卒中になりやすく、危険なタイプの病気です。血圧を下げる薬を服用する以外に、決定的な解決策はありません。

最も注意を要する粥状硬化

通常、動脈硬化といえば、粥状硬化(アテローム硬化)を指します。この粥状硬化は、高血圧、高脂血症、糖尿病、高尿酸血症、肥満、喫煙、運動不足、ストレスなどの危険因子により生じると考えられています。

この粥状硬化は、心臓を取り巻く冠動脈、心臓からの血液を受け入れる大動脈、その大動脈から枝分かれして、腎臓と連絡する腎動脈、下肢へいく腸骨動脈や大腿(だいたい)動脈、脳へいく内頸(ないけい)動脈、同じく脳へいく脳底動脈など、比較的太い動脈の壁によく起こります。

早い場合、粥状硬化はすでに10歳代から始まります。個人差はありますが、その後長い年月をかけて、加齢とともに進展していきます。

初期の病変は、動脈壁の内膜の下に、血液中のコレステロール、リン脂質、中性脂肪などが沈着し、黄色い斑(まだら)状あるいは線状になることです。

やがて、その部位に、中膜の平滑筋細胞や、細胞間をくっつけている結合組織の成分が増殖して固まって、内膜が肥厚し、内腔側に膨らんきます。この塊が粥腫(じょくしゅ)、すなわちアテロームで、粥のようにドロドロしています。

さらに進むと、粥腫がつぶれたり、その部分に血栓がついたり、石灰化なども起こって、一層複雑な病変となっていきます。そうなると、血管の内腔はさらに狭くなってしまいます。

結果として、動脈の血流が遮断されて、酸素や栄養が重要な臓器に到達できなくなる結果、脳卒中、狭心症、心筋梗塞(こうそく)といった生命の危険につながる病気を引き起こす原因となります。

治療の方法と病気の予後

現代では、動脈硬化は治療と予防が可能な病気と見なされています。しかし、一般的には、治療より予防という考え方が大切にされており、実際に予防は非常に効果があります。

その治療と予防の重要なポイントは、危険因子をできるだけ早く発見して、上手にコントロールすること。

動脈硬化、特に粥状硬化の危険因子は高血圧、高脂血症、糖尿病、高尿酸血症、肥満、喫煙、運動不足、ストレスなどですので、これらの危険因子を一つだけでなく複数持っている場合、動脈硬化を進行させる危険は一層高まります。

特に、内臓脂肪が増加し、血圧の上昇、中性脂肪の上昇、糖代謝異常が合併した状態は、メタボリック・シンドローム(代謝症候群)と呼ばれ、動脈硬化が進展しやすい状態です。

治療と予防の原則は、まず食事療法です。その理由として、食事療法がかなり効果的である上に、薬物療法に比べて副作用が少ないことが挙げられます。

動脈硬化を促進させる高血圧や高脂血症、肥満を防ぐため、毎日規則正しい時間に、栄養バランスのとれた食事を取るようにし、偏食や過食をしないように心掛けます。より具体的には、動物性脂肪やコレステロール含有量の多い食品の摂取を制限することで高血圧、高脂血症を防止し、高カロリー食品の制限によって肥満を是正します。野菜や海草類のほか、不飽和脂肪酸のDHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)を多く含む青魚を多く摂取するように心掛けます。

運動療法を適当に取り入れることも効果的です。運動療法によって肥満の是正、ストレスの解消が図れますし、日常的な運動を継続的に行えば、中性脂肪を減らし、善玉コレステロールを増やし、血清脂質の代謝の改善が図れます。そのほかにも、運動は血圧を安定させたり、糖代謝を改善させる効果があります。

運動の種類は、激しいものは適しません。ウオーキング、水泳、水中ウオーキング、ジョギング、サイクリング、体操など、体に無理をかけない適度な運動を習慣にして、楽しく、長く続けることが大切です。

また、善玉コレステロールを減らし、ビタミンCを破壊する喫煙の制限や、ストレスの軽減を図るなど、生活上の注意を怠りなく続けることが肝要です。

食事療法や運動療法、生活上の注意だけでは、動脈硬化の進行が抑えられない時には、危険因子の改善、合併症予防のために、薬物療法が行われます。具体的には、降圧薬、脂質降下薬(特に悪玉コレステロール低下作用のあるスタチン系)、糖尿病治療薬が用いられます。この場合でも、食事療法や運動療法は、基礎的な治療として続けることが重要です。

🇸🇬動揺性肩関節症

肩の関節のつくりが不安定で、あらゆる方向に正常以上に動いてしまう状態

動揺性肩関節症とは、肩の関節のつくりが不安定で、あらゆる方向に正常以上に動いて、不安定感を伴う状態。動揺肩、ルーズショルダーとも呼ばれます。

大抵は先天的なもので、両側性が多く、肩関節以外にも指、足、肘(ひじ)、膝(ひざ)の関節が軟らかい人に多くみられます。男女とも13~14歳で発症することが多いとされていますが、自然治癒することもあります。

こういう動揺性肩関節症の人が肩を使いすぎると、その最中に肩の痛みや疲れ、だるさを感じます。肩の不安定感、脱臼(だっきゅう)感、脱力感、可動域の制限、腕や手指のしびれ感、肩凝りを伴うこともあります。

野球では、投球の最後に腕を振り切る動作であるフォロースルーの際に、肩が抜けるように感じることがあります。これは肩関節の90度外転位での外旋運動、その後の急激な内旋運動の繰り返しによって、つくりが不安定な肩関節が常にストレスにさらされるために起こります。

バレーボールのスパイクやサーブ、テニスのサーブ、ハンドボールのシュート、槍(やり)投げ、砲丸投げ、ボウリング、水泳などでも肩の痛みが起こります。

動揺性肩関節症の人は、野球やバレーボールなどのスポーツが不向きという潜在的要素を持ち合わせていますので、それらのスポーツを無理に続けた場合、肩から肘にかけての大きな骨である上腕骨頭が肩甲骨関節窩(か)中央からいろいろな方向へずれてしまうことで、関節窩の縁にある線維軟骨性の関節唇の剥離(はくり)を起こしたり、肩関節で上腕を保持している筋肉と腱の複合体である腱板(けんばん)の損傷を起こすこともあります。

動揺性肩関節症の原因としては、肩甲骨の外転外旋筋力低下によるもの、肩甲骨臼蓋(きゅうがい)後下縁の形成不全や傾斜角度の異常によるもの、肩甲骨臼蓋に肩峰(けんぽう)および烏口(うこう)突起までを含めた機能的臼蓋の形成不全によるもの、肩関節を包んでいる関節包や、関節の周囲にある滑液包といった軟部組織の膠原(こうげん)繊維の異常によるものなど、さまざまあります。

動揺性肩関節症の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、X線(レントゲン)検査で、おもりを持ってもらって撮影を行うと、肩から肘にかけての大きな骨である上腕骨骨頭が外れた状態が映ります。

整形外科の医師による治療では、痛みが続く場合、三角巾(きん)固定による安静、非ステロイド性消炎・鎮痛剤の投与、肩峰下滑液包、腱板、烏口突起などへの局所注射を行います。

そのほか、肩の周囲の筋力を積極的に鍛えてもらいます。筋力を強化しても、動揺性肩関節症が治るわけではありませんが、痛みを軽くする効果があります。

肩をすぼめ猫背の姿勢の場合、不良姿勢の矯正が大切で、肩甲骨の安定を図り、姿勢をよくするバンドを装用してもらうこともあります。また、やや大股(おおまた)歩きで早足の歩行は、姿勢矯正に有効です。

重い物を持たないようにし、肩甲骨を中心とした部位である肩甲帯の下垂を助長しやすいショルダーバックは避けます。

野球やバレーボールなどの継続している限り自然治癒が望めないスポーツを禁止するか、必要に応じて運動量を制限することを勧めます。野球の投球フォームやバレーボールのスパイクフォームが正しくない場合は、フォームを矯正することを勧めます。テニスなどのラケット競技の場合では、サーブやストロークに際してなるべく肘を伸ばすことで、肩関節にかかる外旋ストレスを小さくすることが可能です。

氷を用いたアイスマッサージやアイシング(冷却)も痛みの軽減に効果があるので、スポーツ直後に実行することを勧めます。

症状が重度な場合や保存療法が無効な場合は、肩関節を包んでいる関節包を縫い縮める手術や、肩甲骨の傾きを正しくするために大胸筋腱(けん)を肩甲骨の下部に移動する手術などを行うこともあります。

🟥「H3」型インフルエンザの新たな変異ウイルス、国内でも確認

 海外で拡大している「H3」型インフルエンザの新たな変異ウイルスが国内でも確認されたことが、国立健康危機管理研究機構の解析でわかった。専門家は「免疫を持っている人が少なく、感染が広がりやすい可能性がある」として注意を呼び掛けている。  季節性インフルエンザとして流行する「H3」...