2022/08/15

🇬🇪橈骨遠位端骨折

転んで手首近くを強く突いた際に起こる骨折

橈骨遠位端(とうこつえんいたん)骨折とは、転んで手首近くを強く突いた際に起こる骨折。頻度の高い外傷です。

前腕にある橈骨と尺骨(しゃくこつ)の2本の骨のうち、親指側にある骨が橈骨に相当し、この橈骨の手首近くでの骨折を総称して橈骨遠位端骨折といいます。

若年者ではスポーツや交通事故、転落事故などでの強い外力が加わる外傷が原因であることが多い一方、高齢者では屋内での転倒などでの軽微な外力が加わる外傷が原因となります。特に、骨粗鬆(こつそしょうしょう)症のある人では多発します。

手首の突き方、骨折線の入り方によって、さまざまな骨折のタイプがあります。 子供では、橈骨の手首側の成長軟骨板の部位で骨折が起きます。

橈骨遠位端骨折を起こすと、手首周囲の強い痛み、はれが生じ、手に力が入らない、手が動かしにくい、手首から先がグラグラするといった症状が出ることもあります。

まれですが、橈骨の手のひら側を走っている正中(せいちゅう)神経が、折れた骨やはれで圧迫されたり、損傷したりすると、親指から薬指の感覚が障害され、手のひらの感覚がおかしい、しびれるといった症状が出ることもあります。骨折した骨が傷口から見えたり、手指の色が変わって冷たくなることもあります。

骨折部のずれ(転位)がある場合には、変形も伴います。手首から先が手の甲の方向にずれるものは、古くからコーレス骨折、手のひらの方向にずれるものは、スミス骨折(逆コーレス骨折)といわれています。

コーレス骨折では、手首側の骨片が手関節を含んで手の甲の方向にずれ、食器のフォークを伏せて置いたように変形するタイプが多くみられます。

また、前腕にあるもう1本の骨である尺骨の先端やその手前の部分が、同時に骨折する場合もあります。

転倒して手首を突き、手首周囲の痛みを生じた際は、手指を動かすことができても骨折していることがあります。ただの打撲や捻挫(ねんざ)か骨折かが疑わしい時は、患部の固定と挙上、アイシング(冷却)を行いながら、速やかに整形外科などを受診することが勧められます。

橈骨遠位端骨折の検査と診断と治療

整形外科、形成外科、ないし手の外科の医師による診断では、まず視診ではれの程度や痛みの部位を調べ、X線(レントゲン)検査で骨折の有無を確認します。

また、骨の折れ方、骨折の程度、骨折部のずれ(転位)の程度により治療法が異なるので、折れた部分が単純で骨折線が1本だけか、いくつもの小さい骨片がある不安定な骨折か、手首側の骨片もいくつかに分かれて骨折線が手首の関節に及んでいるかなどを、X線検査で見極めます。

整形外科、形成外科、ないし手の外科の医師による治療では、骨折した骨が皮膚を突き破って見えている開放骨折の場合は、緊急手術を行います。

骨折部のずれが小さい場合は、手を指先の方向に引っ張って、ずれた骨片を元に戻す整復操作を行います。引っ張る力を緩めても骨片がずれず、安定した整復位が得られた時は、そのままギプスやギプスシーネで固定します。その後、通院で週に1~2回X線検査を行って骨折の状態を確認し、整復位を良好に保つことができれば、そのまま4~6週間のギプスやギプスシーネでの固定を継続し、その後、リハビリで手首の関節運動を開始していきます。

途中で骨折部がずれてきた時や、最初から整復位を保持できない時は、手術治療を行います。

手術には、X線で透視しながら、鋼線を刺し入れて骨折部を固定する経皮鋼線刺入法や、手前の骨片と手首側の骨片に金属のスクリュー(ネジ)や鋼線などを刺し入れてそれに牽引(けんいん)装置を取り付ける創外固定法、骨折部を直接切開して骨片を整復した上で金属プレートとスクリューで固定する方法などがあります。

子供の骨折は、骨片の整復が不完全でも、自家矯正力が旺盛(おうせい)で骨同士がくっ付く骨癒合も早いため、通常手術を必要としません。

🇹🇷橈骨遠位端伸展型骨折

転んで手首近くの手のひらを強く突いた際に起こり、手首から先が手の甲の方向にずれる骨折

橈骨遠位端(とうこつえんいたん)伸展型骨折とは、転んで手首近くの手のひらを強く突いた際に起こり、手首から先が手の甲の方向にずれる骨折。コーレス骨折とも呼ばれ、橈骨遠位端骨折の定型的骨折の一つです。

前腕にある橈骨と尺骨(しゃくこつ)の2本の骨のうち、親指側にある骨が橈骨に相当し、この橈骨の手首近くでの骨折を総称して橈骨遠位端骨折といいます。

橈骨遠位端骨折は頻度の高い外傷で、若年者ではスポーツや交通事故、転落事故などでの強い外力が加わる外傷が原因であることが多い一方、高齢者では屋内での転倒などでの軽微な外力が加わる外傷が原因となります。特に、骨粗鬆(こつそしょうしょう)症のある人では多発します。

手首の突き方、骨折線の入り方によって、さまざまな骨折のタイプがあります。子供では、橈骨の手首側の成長軟骨板の部位で骨折が起きます。

橈骨遠位端骨折を起こすと、手首周囲の強い痛み、はれが生じ、手に力が入らない、手が動かしにくい、手首から先がグラグラするといった症状が出ることもあります。骨折した骨が傷口から見えたり、手指の色が変わって冷たくなることもあります。

骨折部のずれ(転位)がある場合には、変形も伴います。手首から先が手の甲の方向にずれるものは、橈骨遠位端伸展型骨折(コーレス骨折)といわれています。一方、手首から先が手のひらの方向にずれるものは、橈骨遠位端屈曲型骨折(スミス骨折、逆コーレス骨折)といわれています。

橈骨遠位端伸展型骨折では、橈骨の手首側の骨片が手首の関節を含んで手の甲の方向にずれ、食器のフォークを伏せて置いたように変形するタイプが多くみられます。骨折後は手首周囲に痛みを感じ、次第に前腕から手にかけてはれが出ます。手に力が入らず脱力し、もう片方の手による支えが必要になります。

この橈骨遠位端伸展型骨折は、事故やつまずきなどで手のひらを強く突いて転んだ際に、手首の関節に体重がかかり、無理な背屈を強制されて生じます。多くは橈骨の手首側に走る斜骨折を起こしますが、高齢者ではY字型骨折や粉砕骨折を起こすことが多いとされています。

骨折部のずれ(転移)が大きいと、橈骨と一緒に前腕を構成している尺骨との関節を支えている靭帯(じんたい)が断裂し、高齢者では尺骨が脱臼(だっきゅう)を起こすこともあります。また、尺骨の先端やその手前の部分が、同時に骨折する場合もあります。

まれですが、橈骨の手のひら側を走っている正中(せいちゅう)神経が、折れた骨やはれで圧迫されたり、損傷したりすると、親指から薬指の感覚が障害され、手のひらの感覚がおかしい、しびれるといった症状が出ることもあります。

一方、橈骨遠位端屈曲型骨折は、自転車やバイクのハンドルを握ったまま倒れて、手の甲を突いた時などに生じ、橈骨遠位端伸展型骨折とは反対の変形を起こします。

転倒して手首を突き、手首周囲の痛みを生じた際は、手指を動かすことができても骨折していることがあります。ただの打撲や捻挫(ねんざ)か骨折かが疑わしい時は、患部の固定と挙上、アイシング(冷却)を行いながら、速やかに整形外科などを受診することが勧められます。

橈骨遠位端伸展型骨折の検査と診断と治療

整形外科、形成外科、ないし手の外科の医師による診断では、まず視診ではれの程度や痛みの部位を調べ、X線(レントゲン)検査で骨折の有無を確認します。

また、骨の折れ方、骨折の程度、骨折部のずれ(転位)の程度により治療法が異なるので、折れた部分が単純で骨折線が1本だけか、いくつもの小さい骨片がある不安定な骨折か、手首側の骨片もいくつかに分かれて骨折線が手首の関節に及んでいるかなどを、X線検査で見極めます。

整形外科、形成外科、ないし手の外科の医師による治療では、骨折した骨が皮膚を突き破って見えている開放骨折の場合は、緊急手術を行います。

骨折部のずれが小さい場合は、手を指先の方向に引っ張って、ずれた骨片を元に戻す整復操作を行います。引っ張る力を緩めても骨片がずれず、安定した整復位が得られた時は、そのままギプスやギプスシーネで固定します。その後、通院で週に1~2回X線検査を行って骨折の状態を確認し、整復位を良好に保つことができれれば、そのまま4~6週間のギプスやギプスシーネでの固定を継続し、その後、リハビリで手首の関節運動を開始していきます。

途中で骨折部がずれてきた時、粉砕骨折や骨片が手首の関節内に入って最初から整復位を保持できない時は、手術治療を行います。

手術には、X線で透視しながら、鋼線を刺し入れて骨折部を固定する経皮鋼線刺入法や、手前の骨片と手首側の骨片に金属のスクリュー(ネジ)や鋼線などを刺し入れてそれに牽引(けんいん)装置を取り付ける創外固定法、骨折部を直接切開して骨片を整復した上で金属プレートとスクリューで固定する方法などがあります。

子供の骨折は、骨片の整復が不完全でも、自家矯正力が旺盛(おうせい)で骨同士がくっ付く骨癒合も早いため、通常手術を必要としません。

整復が十分に行われていない場合や、固定が十分でなく骨折部のずれが再発してしまった場合は、骨が変形したまま骨折部位の癒合が起こります。これを変形治癒といい、変形したままの癒合状態では、手首の関節を返す動きが抑制されるなどの機能障害を起こします。

🇹🇷橈骨茎状突起痛

手首の親指側にある腱鞘と、そこを通過する2つ伸筋腱に生じる炎症

橈骨(とうこつ)茎状突起痛とは、手首の親指側にある腱鞘(けんしょう)と、そこを通過する長母指外転筋腱と短母指伸筋腱に生じる炎症。狭窄(きょうさく)性腱鞘炎、ドケルバン病とも呼ばれます。

親指を広げると手首の親指側の部分に腱が張って、皮下に浮かび上がる2本の線があり、下側の線が長母指外転筋腱、上側の線が短母指伸筋腱に相当します。長母指外転筋腱は主に親指を広げる働きをする伸筋腱の1本で、短母指伸筋腱は主に母指を伸ばす働きをする伸筋腱の1本です。

親指の使いすぎによる負荷のために、2本の伸筋腱が通るトンネルである腱鞘が炎症を起こして肥厚すると狭窄が生じ、2本の伸筋腱の表面が傷んだり、癒着したりして、橈骨茎状突起痛となります。この手首の親指側にある腱鞘には、2本の伸筋腱を分けて通過させる隔壁が存在するために、狭窄が生じやすいという特徴があります。

橈骨茎状突起痛を発症すると、腱鞘の部分で2本の伸筋腱の動きがスムーズでなくなり、親指の付け根や手首の親指側が痛み、はれます。親指を広げたり、動かしたりすると、強い痛みが走ります。 タオルを絞ったりすると、手首の親指側が痛むこともあります。

また、2本の伸筋腱の周囲の組織が骨のように硬くなったり、手首の親指側の関節にある橈骨茎状突起部の周囲がはれ、押すと痛むという症状もみられます。

仕事で手や指を酷使している人、ラケットを強く握って手首の曲げ伸ばしを繰り返し行うテニスや卓球などのスポーツをしている人のほか、女性の場合、妊娠や出産、更年期が切っ掛けとなって、橈骨茎状突起痛を発症するケースもあります。

中には、腱の変性により老人に発症する場合や、外傷で発症する場合、ガングリオン(結節腫)などの腫瘍(しゅよう)によって伸筋腱が圧迫されて発症する場合もあります。

橈骨茎状突起痛の検査と診断と治療

整形外科、ないし外科の医師による診断では、針を刺して関節液を採取する穿刺(せんし)検査を行います。

親指を使用した時の手首の親指側の痛み、また橈骨茎状突起部にはれや圧痛があれば、診断を確定できます。誘発試験として、医師が患者の母指を握って、手関節を小指側に曲げるフィンケルスタインテストを行い、痛みが増強するか否かで判定します。

区別する必要がある疾患として、母指CM関節症、月状骨(げつじょうこつ)軟化症、舟状骨(しゅうじょうこつ)骨折などがあり、単純X線撮影を行います。橈骨茎状突起痛は単純X線写真では異常が認められないことから、区別が可能です。

整形外科、ないし外科の医師による治療では、まず手をなるべく使わないよう指導します。また、湿布剤、軟こうなどの使用、非ステロイド性鎮痛消炎剤の投与を行います。時には、副木(ふくぼく)やバンドを当てて固定することもあります。

症状が強い時には、局所麻酔薬入りステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)を発症している腱鞘に直接注射するのが有効です。3回以上の直接注射は、腱の損傷を起こすことがあるので避けます。

これらの保存療法を3カ月程度行って症状が改善しない場合、腱鞘を切開する手術を行います。手術は局所麻酔を用い、橈骨茎状突起部に2cmほどの皮膚切開を入れて、まず橈骨神経浅枝という神経をよけ、長母指外転筋腱鞘と短母指伸筋腱鞘を出して、隔壁を含めて全長にわたり切離し、腱の滑りをよくします。手術成績は良好です。

橈骨茎状突起痛を予防するには、手、特に親指の酷使を避けることが一番大切です。

🇹🇷橈骨神経まひ

腕に走る橈骨神経が圧迫されて、腕がしびれたり、動かなくなる障害

橈骨(とうこつ)神経まひとは、腕の骨を巻くように、鎖骨の下からから手首、手指まで走っている神経が、外から圧迫されることで起こる障害。腕がしびれたり、手首や手指が動かなくなったりします。

橈骨神経は腕に走る大きな神経の1つで、主に肘(ひじ)関節を伸ばしたり縮めたり、手首や手指を伸ばしたりするなどの動きを支配している神経です。感覚領域は手の背部で、親指、人差し指とそれらの間の水かき部を支配しています。

腕に走る大きな神経はほかに、正中(せいちゅう)神経、尺骨(しゃくこつ)神経がありますが、橈骨神経は障害を受けやすく、腕の神経まひのほとんどを占めます。

この橈骨神経は鎖骨の下からわきの下を通り、上腕の外側に出てきて上腕中央部で上腕骨のすぐ上を走り、肘のあたりで腕の内側を走り、手首の近くでまた表面に出てきます。このようにいろいろな方向に走っていますので、いろいろな部位で圧迫を受ける可能性があります。中でも、橈骨神経が障害されやすい部位は2カ所あります。

1カ所はわきの下での圧迫、もう1カ所は上腕の外側での圧迫です。特に上腕の外側、いわゆる二の腕の部位は、上腕骨に接するように橈骨神経が走行し、筋肉が薄い部位であるために、上腕骨に橈骨神経が圧迫されやすい状況にあり、最も障害を受けやすい部位です。 

橈骨神経まひの原因は、大きく分けて2つあります。一番多いのが、腕の橈骨神経を体外から強く圧迫したことで起こる末梢(まっしょう)性の神経まひです。

典型的には、前夜から腕枕をして寝ていた、ベンチの背もたれにわきの下を挟むような姿勢を続けていた、電車で座席の横のポールに腕を当てて寝ていた、飛行機で肘掛けに寄り掛かるように寝ていた、浴槽でわきの下を圧迫するようにうたた寝していたなど、わきの下や上腕の外側を強く圧迫するような姿勢を一定時間続けると、気付いた時には腕はしびれ、動かなくなっていたというように発症するケースが多く認められます。飲酒後、寝て起きたら、橈骨神経まひになっていたというケースも多く認められます。

何らかの思い当たる原因があって手が動かなくなったのであれば、まず末梢性のもので一時的な神経まひと考えられます。逆に、全く何の覚えもなく発症した時は、腫瘤(しゅりゅう)などほかの原因から起きている場合もありますので、要注意です。

橈骨神経まひのもう1つの原因は、骨折、脱臼(だっきゅう)などの外傷による外傷性の神経まひで、外からの圧迫で神経を傷付けたり、骨折した骨が神経を傷付けたりといったケースです。

橈骨神経が上腕の中央部で傷害されると、手首と手指の付け根の関節に力が入らず伸ばしにくくなり、手首と手指がダランと垂れる下垂手になります。親指、人差し指、中指の伸ばす側を含む手の甲から、前腕の親指側の感覚の障害も生じます。

橈骨神経が肘関節の屈側で傷害されると、手首を伸ばすことは可能ですが、手指の付け根の関節を伸ばすことができなくなり、指のみが下がった状態になる下垂指になります。手の甲から前腕の感覚の障害がありません。

橈骨神経が前腕から手首にかけての親指側で傷害を受けると、障害の部位によりいろいろな感覚の障害が起こりますが、下垂手にはなりません。

共通する症状は、グーが握れなくなる、パーに開けなくなる、しびれです。まひの程度が重いほど、パーに開けなくなる症状が顕著です。手首の筋力が著しく弱くなるため、ちょっとした物でも持ち上げられなくなります。また、感覚の鈍さが現れ、親ペンなどをうまく持てず、字もうまく書けません。親指と人差し指の水かき部分のしびれ、腕のだるさや痛み、腕や手のひらのむくみなどがよくみられる症状です。

まひの状態が長く続くと、筋肉の委縮が起こり、腕の筋肉がやせ細ってきます。

手がしびれ、動かなくなった場合のほとんどは、末梢性のもので一時的な神経まひと考えられますが、中には重症の場合があるので、念のために整形外科、ないし神経内科を受診することが勧められます。

橈骨神経まひの検査と診断と治療

整形外科、神経内科の医師による診断では、上腕の中央部の傷害で下垂手を示して感覚障害があり、チネルサインがあれば、傷害部位が確定できます。チネルサインとは、破損した末梢神経を確かめる検査で、障害部分をたたくと障害部位の支配領域に放散痛が生じます。

知覚神経が傷害されていれば、チネルサインと感覚障害の範囲で、傷害部位の診断が可能です。確定診断には、筋電図検査、X線(レントゲン)検査、MRI検査、超音波検査など必要に応じて行われます。

整形外科、神経内科の医師による治療では、回復の可能性のあるものや原因が明らかでないものに対しては、局所の安静、薬剤内服、必要に応じ装具、運動療法などの保存療法を行います。薬剤内服では、発症早期にメチルコバラミンや副腎(ふくじん)皮質ステロイド剤などを服用することが有用です。予後はおおむね良好で、多くの場合1~3カ月で完治します。

3カ月ほど様子を見て全く回復しないもの、まひが進行するもの、骨折などの外傷で手術が必要なもの、腫瘤のあるものでは、手術が必要になります。神経損傷のあるものでは、神経剥離(はくり)、神経縫合、神経移植などの手術が行われます。神経の手術で回復の望みの少ないものは、ほかの筋肉で動かすようにする腱(けん)移行手術が行われます。

🇮🇹橈骨頭亜脱臼

乳幼児期、特に2〜6歳に起こりやすい肘の亜脱臼

橈骨頭亜脱臼(とうこつとうあだっきゅう)とは、乳幼児が起こしやすく、肘(ひじ)の関節が少しずれる不完全な脱臼状態。肘内障(ちゅうないしょう)とも呼ばれます。

7歳ぐらいまでの子供の肘の関節は、構成する橈骨という骨の関節端の形状が不完全な形をしており、橈骨を支えている橈骨輪状靱帯 (じんたい)から逸脱しやすくなっています。

そのため、誰(だれ)かに不意に手や腕を引っ張られたり、腕をひねられたりすると、簡単に肘が亜脱臼を起こしてしまいます。また、自ら転倒して手を突いた際に、亜脱臼することもあります。場合によっては、寝返りの動作で腕がねじれた際に、亜脱臼することもあります。

肘の外側には2つの小さな骨の出っ張りがあり、この2つの出っ張りは肘を伸ばした状態で直列しており、間に関節の透き間のへこみがあります。上腕側の出っ張りは、上腕骨の外顆(がいか)という骨の出っ張りです。前腕側の出っ張りが、前腕の骨のうちの1本である橈骨の骨頭になります。

また、肘の関節全体は、関節包という靱帯状の線維で覆われており、さらにその上に内側側副(ないそくそくふく)靱帯、外側側副(がいそくそくふく)靱帯、そして橈骨輪状靱帯などが補強しています。

一般的に完全脱臼は、関節包を突き破り関節包の外へ骨の関節端が逸脱しますが、橈骨頭亜脱臼では関節包を損傷することなく、その上を補強する橈骨輪状靱帯の支えから、橈骨の関節端が関節包内で少しずれた不完全な脱臼状態、すなわち亜脱臼(不全脱臼)となります。従って、脱臼の中では比較的損傷程度の少ない軽度のものといえます。

橈骨頭亜脱臼は乳児、幼児、小児にみられ、特に2〜6歳に多く起こり、男女の性差、左右差はありません。

一度、橈骨頭亜脱臼を起こすと癖になりやすいものの、小学生ぐらいになると橈骨の形状が成人の形に近くなり、橈骨頭が大きくなって関節の透き間のへこみができ上がるので、亜脱臼しにくくなります。

橈骨頭亜脱臼を起こした腕は、急に肘が抜けたようになって、肘が伸びた状態で下垂し、曲げられなくなります。手のひらは、後ろに向いています。肘を軽く上に曲げようとすると痛みが強くなり、子供は泣き出したり顔をしかめたりします。外見上、関節のはれや変形、熱感、発赤はみられません。

痛みは、肘の外側の橈骨頭を中心に起こり、時には手首や肩などに放散痛を起こすこともあります。このため、肩や手首が外れたなどと見なされることもあります。

肩の脱臼と間違えやすいですが、子供の肩を触っても痛がらなければ橈骨頭亜脱臼と見なして、すぐに整形外科、小児科を受診することが勧められます。

橈骨頭亜脱臼の検査と診断と治療

整形外科、小児科の医師による診断では、受傷時の状況と、肘をやや曲げた状態で下げたままにして、痛がって動かそうとしないことから、橈骨頭亜脱臼(肘内障)を疑います。子供は痛みのために恐怖心を持っているので、痛がらない部分から触れ始め、肘の外側の橈骨頭が痛い部分なのかどうかを調べます。

X線(レントゲン)検査を行っても写真上では変化を認めませんが、骨折や脱臼との鑑別のために行って、骨や関節に異常がないことを確認することもあります。

整形外科、小児科の医師による治療では、骨折や脱臼の可能性がなく橈骨頭亜脱臼が疑われた時は、徒手整復を行います。

徒手整復の操作は簡単で、子供の肘を真っすぐに伸ばし、片方の手で肘を押さえ、もう一方の手で手のひらを握ります。最初、手のひらは下に向けます。肘を固定したままで、ゆっくり肘を曲げながら、手のひらを上に返します。橈骨頭が橈骨輪状靱帯の支えに戻ると、弾発音(コキッ、コツン、カクンなどの小さな音)を伴って整復され、その瞬間から痛みが消え、肘を曲げて腕を動かせるようになります。

ただし、整復されてから4~5日の間は最も亜脱臼を繰り返しやすいので、手を引っ張るなどの外力を加えないように注意することが必要です。また、習慣性の場合は、4~5日間の包帯もしくはサポーター固定をするのも効果があります。

🇮🇹洞性頻脈

精神的な緊張状態の時や運動後に起こる一般的な頻脈性不整脈

洞性(どうせい)頻脈とは、特別な病気がなくても、精神的な緊張状態の時や運動後に、心臓の拍動が異常に速くなる頻脈性不整脈。洞性頻拍とも呼ばれます。

心臓には、刺激伝導系(興奮伝導系)という洞結節から始まる電気刺激の通り道があります。洞結節で発生した電気刺激が正しく心臓全体に伝わり、心臓が正常な拍動のリズムを示している状態を洞調律(洞リズム)と呼び、成人の場合の安静時の正常な拍動数は、1分間に60~80回です。それが1分間に100回以上になったものが、洞性頻脈に相当します。

心臓は交感神経や副交感神経などの自律神経によって支配されており、交感神経が優位になると洞性頻脈が起こります。精神的な緊張状態の時は、交感神経の活動が優位になっているため、交感神経の活動が高進して洞性頻脈が起こります。

通常は、何もしなくても時間の経過とともに洞性頻脈は収まりますが、常に精神的な緊張状態が続いたり、ストレスにさらされ続けると、洞性頻脈が起こります。これは、一種のストレス病です。

交感神経の活動の高進によるもの以外に、心不全や肺疾患、また甲状腺(こうじょうせん)機能高進症や更年期障害、貧血や出血、あるいは、常用している血圧降下剤などの薬が原因で、洞性頻脈が起こる場合もあります。

洞性頻脈は、急に拍動が速くなるのではなく、普通は徐々に拍動が速くなり気が付いた時には動悸(どうき)が強くなります。一般には緊張状態やストレスから解放された時、特に夕方から就寝時に起こりやすくなります。不安感が強いと、動悸がより強く感じるようになり、悪循環に陥ります。

交感神経の活動が高進し、洞結節からの電気刺激が頻発しても、刺激伝導系は洞調律を示します。そのため、洞性頻脈に特徴的な心電図波形の変化はありません。しかし、正常な状態に比べて1分間に100~140回程度に拍動数が増えています。頻脈になるにつれて、血圧の上昇、発汗などが起こりやすくなります。人によっては、下痢や腹痛などが起こることもあります。

洞性頻脈の検査と診断と治療

内科、循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科の医師による診断では、まず一般的な心臓病の検査を行い、心臓の疾患の有無を判断します。さらに、呼吸器疾患や貧血、甲状腺などの疾患の有無について調べ、それらが除外された場合に、動悸と心電図での心拍数の増加以外には変化がないこと、精神的な緊張状態にあることなどから、洞性頻脈と判断します。

内科、循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科の医師による治療では、動悸の自覚症状が強い時には、薬を使用します。一般的な薬としては、動悸を沈めるためにβ(ベータ)遮断薬やカルシウム拮抗(きっこう)薬の一種であるワソランなどを使用します。また、抗不安薬を使用することもあります。

定期的に薬の内服を指示することもあれば、動悸を自覚する時だけ内服するように指示することもあります。

洞性頻脈は無害な頻脈性不整脈ですが、動悸に対する不安感が極度に強いと胸痛、呼吸困難、めまいなどより大きな症状を感じて、心臓神経症と呼ばれるようになります。この場合には、心療内科や精神神経科の医師の診察が必要になります。

🇮🇹透析骨症

腎不全に伴って骨にいろいろな変化が起きる疾患

透析骨症とは、腎(じん)不全に伴って起こる骨障害の総称。腎性骨異栄養(こついえいよう)症、腎性骨症とも呼ばれます。

腎不全そのものが、この疾患の発症や進行に大きく影響し、長く人工透析を続ける場合の代表的な合併症となっています。発症は15パーセントの頻度といわれていますが、長期の人工透析になればなるほど透析骨症が起こる頻度は高まります。症状はさまざまで、無症状のものから、骨の痛み、骨折、骨の変形、異所性石灰化、関節の痛み、皮膚のかゆみ、筋力の低下、さらに皮膚の潰瘍(かいよう)などが挙げられます。

原因から、線維性骨炎、無形成骨、骨軟化症、混合型の大きく4つに分けられます。

線維性骨炎は、腎臓の機能の低下とともに生じる血液中のカルシウムやリンのバランス異常や、血液中のカルシウムの濃度を増加させる働きがある活性型ビタミンD3の不足が、副甲状腺(せん)ホルモン(上皮小体ホルモン)の分泌高進を招くことによって、骨吸収と骨形成が激しい状態で骨量が減少し、それに伴って生じます。せきや日常の動作で、容易に肋骨(ろっこつ)や背骨に骨折を引き起こします。

無形成骨は、極端に骨吸収と骨形成の両方が低下した状態です。高齢者や糖尿病の患者、カルシウムやビタミンD3製剤の過剰な摂取患者では、極端に副甲状腺ホルモンの分泌が抑えられている状態で生じやすいと考えられています。カルシウムやリンが有効に骨代謝に利用されないため、容易に皮下などの軟部組織や血管などに異所性石灰化を起こします。血管の壁に異所性石灰化が起きた時には、血管が固くなり動脈硬化が進みます。 

骨軟化症は、骨の形成に必要不可欠な石灰化障害の結果、骨組織の基質要素の1つである類骨量が増加した状態です。その骨の石灰化障害は、活性型ビタミンD3の欠乏、または骨のカルシウム沈着部位(石灰化前線)へのアルミニウムの蓄積により生じるアルミニウム骨症が招きます。アルミニウムは水道水、アルミニウム製剤(水酸化アルミニウムゲル、制酸薬など)などから体内に入り、腎臓から排出されないないために、体内に蓄積します。骨軟化症になると、骨折を起こしやすくなります。

透析骨症の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、線維性骨炎に対しては、定期的にカルシウムやリン、副甲状腺ホルモン、骨代謝マーカーなどの血液検査や骨X線検査を行います。副甲状腺機能高進が疑われる時は、頸部(けいぶ)のCTやシンチグラムによる画像診断も行います。無形成骨に対しては、 線維性骨炎と同様、血液検査や骨X線検査により、異所性石灰化を含めた画像評価を行います。骨軟化症に対しても、カルシウム、アルミニウムなどの血液検査や骨X線検査を行います。

泌尿器科の医師による治療では、線維性骨炎に対しては副甲状腺ホルモンの分泌抑制が基本となり、人工透析前の場合、多くは活性型ビタミンD3の内服で治療が可能です。活性化ビタミンD3を服用することは、骨の軟化による痛みや骨折を防ぐのに有効です。長期の人工透析例の場合、加えて炭酸カルシウムやレナジェルといったリン吸着剤や、カルシウム感受性受容体拮抗(きっこう)剤が必要になることがあります。重度の副甲状腺機能高進が続く場合、人工透析後にビタミンD3製剤を静脈投与こともあります。

副甲状腺機能高進がある場合は、リンの体内への蓄積を防ぐ必要があり、低たんぱく食を摂取する食事療法が重要になります。同じ目的から、人工透析を行う場合に、透析液の組成や、透析膜を変えることもあります。このような内科的な治療でもよくならず、はれた副甲状腺が確認され、副甲状腺ホルモンの分泌が高いままである時には、手術で副甲状腺を摘除します。

無形成骨に対しては、過剰なカルシウムやビタミンD3製剤の服用を中止し、高リン血症にはリン吸着剤の塩酸セベラマーを使用します。

骨軟化症に対しては、ビタミンD3製剤の服用や、腎臓の機能低下時にアルミニウムを含んだ胃腸薬を避けることが有効です。体内に入ったアルミニウムは、キレート剤の一つのデフェロキサミンを筋肉注射、または点滴静脈注射によって投与して除去します。

🟥「H3」型インフルエンザの新たな変異ウイルス、国内でも確認

 海外で拡大している「H3」型インフルエンザの新たな変異ウイルスが国内でも確認されたことが、国立健康危機管理研究機構の解析でわかった。専門家は「免疫を持っている人が少なく、感染が広がりやすい可能性がある」として注意を呼び掛けている。  季節性インフルエンザとして流行する「H3」...