2022/08/18

🇭🇺肺塞栓、肺梗塞

血栓などによって肺の動脈が詰まったり、肺組織が壊死する疾患

肺塞栓(そくせん)とは、血液によって運ばれた血栓などによって、心臓から肺へ血液を運ぶ肺動脈が詰まった状態。肺梗塞(こうそく)とは、塞栓ができたために血液の流れが遮断され、その先の肺組織が壊死(えし)に陥った状態。

塞栓の多くは、何らかの原因で固まった血液によるものですが、脂肪やがん細胞が詰まることもあります。最も多いのは、下肢の静脈内でできた血栓が原因となるものです。近年問題になっている深部静脈血栓症、いわゆるエコノミークラス症候群もこの一つです。

海外旅行などで長時間飛行機に乗ると、座ったままで長時間同じ姿勢を保つため、下肢の深部静脈で血液が固まり血栓ができます。飛行機から降りようと立ち上がった時に、血栓が血液の流れに乗って移動し、肺動脈を閉塞するというものです。狭いエコノミークラスの座席のみでなく、ファーストクラスでも起こり得ますし、長時間の自動車や電車の旅でも起こっています。

疾患や手術のため長い間寝たきりの人なども、同じように下肢静脈での血液の流れが悪くなり、血栓を作りやすい傾向にあります。

症状としては、肺塞栓では通常、呼吸困難、胸痛、頻呼吸などがありますが、塞栓が小さい時には自覚症状を伴いません。また、塞栓が大きな場合には、肺梗塞を引き起こして胸痛のほかに、血たんや発熱、発汗が現れます。ショック状態に陥り、突然死することもあります。

肺塞栓、肺梗塞の頻度は合わせて10万人に約2.7人で、女性にやや多く、中年以降に多くみられます。

肺塞栓、肺梗塞の検査と診断と治療

肺塞栓のうちでも、深部静脈血栓症は急性期の死亡率が約10パーセントと高く、救急の疾患であり、早く診断し、早く血栓を取り除くことが大切です。従って、突然の呼吸困難や胸痛が起こったら、できるだけ早く循環器内科や呼吸器内科を受診します。

医師による診断では、まず心電図と胸部X線検査、血液検査が行われます。これらの検査だけでは肺塞栓の確定診断はできませんが、同じような症状を示す心筋梗塞や解離性大動脈瘤(りゅう)、気胸などとは、ある程度鑑別ができます。

次に、血液ガス分析で低酸素、心臓超音波検査で右心不全を認めれば肺塞栓が疑われ、造影CT、肺換気・血流シンチグラム、肺動脈造影、造影MRIのいずれかで肺動脈内の血栓を確認できれば診断は確定します。

肺塞栓の治療では、基本的に血液が固まらないようにする抗凝固剤を点滴静注で使います。重症の場合には、血栓を溶かす血栓溶解剤を投与したり、酸素吸入、利尿剤の投与、輸液などが行われます。肺梗塞を引き起こしてショック状態にある場合には、血圧を上昇させる薬を使います。大きな血管の塞栓は、外科手術やカテーテルにより、摘出することもあります。

治療によって病状が安定した後も、肺塞栓、肺梗塞は再発が多く、発症すると命にかかわることがあるため、予防的治療として抗凝固剤の内服を少なくとも3カ月、危険因子を持つ人は一生涯服用します。下大静脈にフィルターを留置して、肺動脈に血栓が流れ込むのを予防する方法もあります。

肺塞栓、肺梗塞では、血液が固まらないように、日常生活で予防することも大切です。特に手術直後の人や長い間床に就いている人は、静脈に血液の塊ができやすいので、時々、下肢や体全体を動かすこと、脱水にならないように水分を十分に取ることが必要です。

海外旅行などで長時間飛行機に乗る際には、十分な水分を取り、適度に足の運動をし、衣服を緩めるなどして、深部静脈血栓症を予防することが大切になります。飛行開始から到着まで一度も席を離れず、トイレも我慢すると危険。

🇭🇺肺動脈狭窄症

右心室から肺動脈への通路が狭い先天性心臓病

肺動脈狭窄(きょうさく)症とは、右心室から肺動脈へと通じる通路が狭い状態の疾患。比較的多く、先天性心臓病の約10パーセント近くを占めています。

この疾患には、弁性狭窄と漏斗(円錐〔えんすい〕)部狭窄の2種類があります。弁性狭窄は、正常では3つに分かれている肺動脈弁が互いに癒着して、メガホン状に狭くなり十分に開かないもの。漏斗部狭窄は、肺動脈弁の下部の心筋が分厚くなり、右心室の流出路が狭くなっているもの。時には、この2つが合併することもあります。

いずれの場合も、右心室の出口が狭いために、正常よりも高い血圧で血液を送り出さなければならぬ右心室に負担がかかり、右心室は肥大し、肺へと流れる血液量が減少します。軽症の場合には心雑音がある程度でほかの症状がみられませんが、疾患が進行すると右心房圧や静脈圧も上昇し、運動時の息切れ、動悸(どうき)や、むくみが出現します。

乳児の場合には、息切れがして、呼吸数と心拍数が減り、授乳力が低下します。呼吸のたびに首を前後に動かす動作をし、呼吸困難のため泣き声も弱く途切れがちになります。顔色は青白く、よく汗をかき、おなかの上部が膨れて見えることもあります。

狭窄が中等度から高度の場合には、ある年齢になると急に症状が進み、右心室不全を起こしてきます。心房中隔欠損を合併していると、右心房から左心房へ向けて静脈血が流れ込み、チアノーゼが現れます。心臓病で起こるチアノーゼは、血液の酸素不足によるもので、唇や手足の指先、全身の皮膚が紫色になります。重症の場合には、すぐに手術をしないと生命が危険になるため、特に注意が必要です。

肺動脈狭窄症の検査と診断と治療

肺動脈狭窄症の検査としては、心音、心電図、胸部X線、心エコー(心臓超音波)などの検査を行い、診断します。必要があれば、心臓カテーテル検査を行い、内腔(ないくう)の圧測定、心血管造影などで重症度を調べます。

軽度の場合は、治療を必要とせず、経過観察のみでよいこともあります。狭窄が中等度から重度の場合には、狭窄を広げる治療が必要となります。まず、バルーン(風船)つき心臓カテーテルによる弁拡張術が選択されます。右心房、右心室から肺動脈へカテーテルを通して、肺動脈弁の狭い部分でバルーンを広げ、狭い部分を広げるという治療です。

これで十分に弁機能が改善しない時、あるいは狭窄の場所や形態によっては、手術でしか治療できない場合もあります。手術の方法は肺動脈の狭い部分によって異なりますが、人工心肺を使って、肺動脈弁の狭窄部を取り除いて流出路を広くする手術、肺動脈弁の下部の心筋を切除して流出路を広くする手術、人工弁置換術などが行われます。

カテーテルによる治療の場合も、手術による治療の場合も、狭窄が少し残ることがあります。狭窄を完全に解除しようとすると肺動脈弁の逆流が起こってしまうこともあるため、狭窄の軽減と肺動脈弁の逆流の2つを天秤(てんびん)にかけて、治療が行われるためです。

年齢が進むにつれて右心室の負担が増加し、右心室の肥大が強くなって手術の危険性も高くなるので、手術は早い時期に行うことが必要です。生後3カ月未満での手術では生命の危険を伴うことがありますが、生後3カ月を過ぎれば比較的安全です。

肺動脈狭窄症の手術後の予後は、一般的に良好です。多くの場合、ほかの子供たちと同様に生活、活動していけると考えられています。ただし、残存する肺動脈の狭窄の程度によっては、多少の運動制限が必要となる場合もあります。また、乳児期に手術をしても再発することがあるので、小学校入学前に再検査を受ける必要があります。理想は1~2年置きの外来通院を行い、変化がないかどうかを外来で経過観察すること。

🇭🇺肺動脈性肺高血圧症

心臓から肺に血液を送る肺動脈の血圧が異常に上昇する疾患

肺動脈性肺高血圧症とは、心臓から肺に血液を送る血管である肺動脈の血圧が異常に上昇する疾患。いろいろな原因によって肺動脈の血圧が高くなる肺高血圧症の一種です。

酸素の少ない血液が右側の心臓の右心房に戻ってきて、右心室を通って肺に送られ、肺で酸素をもらって血液は左側の心臓の左心房に進み、左心室を通って全身に送られます。これが人間の血液循環の仕組みです。左側の心臓から全身に血液を送る動脈の血圧が上昇するのがいわゆる一般的な高血圧であり、右側の心臓から肺に血液を送る肺動脈の高血圧が肺高血圧症です。

 平均肺動脈圧が安静時25mmHg(ミリエイチジー)、運動時30mmHg以上となるものを肺高血圧症と呼びます。

肺高血圧症の一種である肺動脈性肺高血圧症で肺動脈の血圧が高くなるのは、右側の心臓から肺に血液を送る肺動脈の末梢(まっしょう)の1mm以下の細い小動脈の内腔(ないくう)が何カ所か狭くなって、血液が通りにくくなるためです。

何らかの原因で肺動脈の血管の内腔が狭くなると、肺を通過する血液の循環が不十分になります。この時、心臓が血液を十分に送ろうとするため、肺動脈の圧力が高くなります。肺動脈に血液を送る右心室は、より大きな力が必要なために心臓の筋肉を太くして対応しようとします。

しかし、もともと右心室は高い圧力に耐えられるようにできていないため、この状態が続くと右心室の壁は厚くなって拡張し、右心室の機能が低下して肺性心(はいせいしん)という状態になります。さらに病状が進行すると、右心不全という通常の生活を送るのに必要な血液を送り出せない状態に陥ります。

肺動脈性肺高血圧症は、さらに細かく特発性肺動脈性肺高血圧症、遺伝性肺動脈性肺高血圧症、薬物・毒物に起因する肺動脈性肺高血圧症、他疾患(全身性エリテマトーデス、強皮症、混合性結合組織病、門脈圧高進症、先天性心疾患、 HIV感染、慢性溶血性貧血住血吸虫症、サラセミア、遺伝性球状赤血球症など)に関連する肺動脈性肺高血圧症に分けられます。いずれの場合も、その原因はまだ十分に解明されておらず、1998年から国より特定疾患治療研究事業対象疾患、いわゆる難病に指定されています。

肺動脈性肺高血圧症の中では、特発性肺動脈性肺高血圧症は最も頻度が高く、以前は原発性肺高血圧症と呼ばれていた疾患とほぼ同義であり、原因不明の慢性かつ進行性の難病です。

特発性肺動脈性肺高血圧症の一部は骨形成蛋白(たんぱく)質(BMP)システム異常が関与していますが、それだけでは疾患は起こらず、遺伝的素因に何らかの後天性要因が関与して発症すると考えられています。肺血管壁を構成している血管内皮細胞、血管平滑筋細胞、細胞外基質などが異常に増殖した結果、血管が硬くなって小動脈の内腔が狭くなり、結果として血流の流れが悪くなり、右心室に負担がかかることになります。

従来の治療では、特発性肺動脈性肺高血圧症の5年間の生存率が30パーセントといわれていました。長い間の研究で、さまざまな治療薬が試みられていましたが、最近、肺血管を拡張させる薬が開発され、治療効果も上がってきています。

肺動脈性肺高血圧症の初期は通常、無症状です。しかし、肺動脈の血圧が上昇し疾患が進行してくると、体を動かした時に息切れを感じるようになります。また、胸痛、全身倦怠(けんたい)感、呼吸困難、立ちくらみ、めまい、失神などを認めることもあります。肺性心となり右心不全を合併すると、顔や足のむくみや食欲低下などの症状も出現します。

肺動脈性肺高血圧症と類似している肺高血圧症が、左心不全、慢性閉塞(へいそく)性肺疾患、特発性間質性肺炎、睡眠時無呼吸症候群、高地生活、急性肺血栓塞栓症、慢性肺血栓塞栓症などで起こることがあり、それらの疾患が合併することもあります。

肺動脈性肺高血圧症の早期発見は、非常に重要です。早期発見と早期治療によって、生存率が上昇するからです。

肺動脈性肺高血圧症の検査と診断と治療

循環器科、循環器内科、呼吸器科などの医師による診断では、血液検査、心電図、胸部X線検査などで、少しでも肺動脈性肺高血圧症が疑われる場合には、心臓超音波(エコー)検査を行います。心臓超音波検査は胸に検査器具を接触させて心臓の大きさ、形、動きをリアルタイムに画像で観察できる検査です。最近の心臓超音波検査機器には、肺動脈圧を推定する機能が付いているものが多く、肺動脈性肺高血圧症の診断に重要な装置になっています。

このような検査で肺動脈性肺高血圧症の疑いが高い時には、診断を確定させるために右心カテーテル検査を行います。この検査は、肺動脈性肺高血圧症の診断および治療がどの程度有効かを見極める上で最も大切な検査です。肺動脈の圧力が実際にいくつなのか、また肺動脈の血管がどの程度流れにくくなっているのかを正確に判定することができる唯一の検査方法です。

首もしくは脚の付け根からカテーテルという細い管を挿入し、静脈を通して肺動脈まで血流に乗って通過させ、肺動脈の圧力を直接測定します。肺高血圧症の原因によっては、肺動脈造影検査を行ったり、カテーテルを通して心臓や血管のさまざまな部位から採血を行うことを追加の検査として行います。

循環器内科の医師による治療では、肺動脈性肺高血圧症の場合は従来、血管内で血栓が生じるのを予防する抗凝固薬、循環血漿(けっしょう)量を減少させて心臓の負担を減らす利尿薬、血管を縮める作用のあるカルシウムを抑制することで血管を広げるカルシウム拮抗(きっこう)薬、通常の空気より高い濃度の酸素を吸うことで心臓の機能が低下して全身への酸素供給能力が低下しているのを補う酸素吸入によって治療されていましたが、予後改善効果は大きくありませんでした。

近年では、肺の血管を拡げて血流の流れを改善させる肺血管拡張療法が効果を上げています。肺血管を拡げるプロスタサイクリン製剤のフローランのポンプを用いた持続静注や、プロスタサイクリン製剤の誘導体であるベラプロスト製剤の内服、肺血管を収縮させるエンドセリンが血管平滑筋に結合することを防ぐエンドセリン受容体拮抗薬のトラクリアやヴォリブリスの内服、血管平滑筋の収縮を緩めるサイクリックGMPという物質を増加させるホスホジエステラーゼ5(PDE5)の作用を阻害するPDE5阻害薬のレバチオやアドシルカの内服などにより、次第に予後が改善されてきています。

一方、原因の明らかな他疾患に関連する肺動脈性肺高血圧症では、原疾患の治療により肺高血圧の改善が期待できます。

現在使用可能な治療法を継続しても右心不全が進行する場合、外科的治療の心房中隔開口術や、肺移植を行うこともあります。

🇵🇱排尿困難

円滑な尿排出が障害され、排尿開始まで時間がかかったり、排尿終了に時間がかかったりする状態

排尿困難とは、円滑な尿の排出が障害され、尿が出にくい状態。尿意があるのにトイレにいってもなかなか尿が出ず、排尿開始まで時間がかかり、あるいは尿の出が悪くて排尿終了まで時間がかかるといった状態です。

力まないと尿が出なかったり、排尿が終わるのに50秒以上かかったり、排尿が途中で止まったり、排尿しても膀胱(ぼうこう)が完全に空にならず、尿がいつも残っている残尿感を覚えることもあります。

この排尿困難は、前立腺(せん)肥大症、尿道狭窄(きょうさく)、神経因性膀胱、前立腺炎、前立腺がん、膀胱結石、尿道結石、加齢による膀胱の収縮性機能の低下、膀胱平滑筋の筋肉量の減少、疾患やけがなどによる脳や脊髄(せきずい)神経の損傷、糖尿病性の神経障害、自律神経の機能低下、排尿括約筋協調不全、薬剤の副作用など、さまざまな原因で起こります。

高齢の男性では、前立腺肥大症や、膀胱を支配している神経に異常がある神経因性膀胱で、排尿困難が起こりやすくなります。何らかの原因で尿道が狭くなっている尿道狭窄、あるいは膀胱や尿道に結石が存在することでも、排尿困難が起こります。

高齢の女性では、過去に子宮がん、直腸がんなどでの骨盤内の手術などを受け、膀胱を支配する神経が損傷されたために起こる神経因性膀胱で、排尿困難が起こりやすくなります。膀胱が弛緩(しかん)し、排尿筋の収縮が不十分になるため尿の排出が悪くなり、排尿後でも膀胱内に残尿が多く、しばしば膀胱炎を繰り返す状態になります。まれに、子宮筋腫(きんしゅ)による膀胱の出口の圧迫、尿道狭窄、膀胱結石が原因になって、排尿困難が起こることもあります。

とりわけ男性の場合は、中年以降に前立腺肥大症や前立腺がんが原因となって、排尿困難を起こしていることが多いので注意が必要です。前立腺は精液の一部を作る器官のことですが、この前立腺は年齢により少しずつ肥大していきます。30歳代から肥大が始まり、40歳代で4割、50歳代で5割、60歳代で6割、70歳代で10割の割合で増えるといわれています。

前立腺が肥大することで膀胱を圧迫し、排尿困難などの障害を引き起こし、尿を出すまでに時間がかかる、排尿に時間がかかる、尿の勢いが悪い、尿が途切れる、残尿感がある、何回もトイレにゆくなどの症状が現れます。

排尿困難が進行すると、尿閉といって、膀胱に尿がたまっているにもかかわらず一滴も尿が出なくなる場合もあります。激しい尿意とともに膀胱が張ってくると、非常な苦しみが生じます。前立腺肥大症を持つ人は、飲酒中に突然尿閉になることもあります。

尿閉になると、膀胱にたまった尿の中で細菌が増殖して膀胱炎になったり、腎臓(じんぞう)に尿がたまって水腎症や腎不全を合併する恐れがあります。

薬剤の服用で排尿困難を引き起こす場合もありますので、特に前立腺肥大症のある人は服用には注意が必要です。排尿困難を引き起こす薬剤には、総合感冒薬、抗ヒスタミン剤、鎮痙(ちんけい)剤、精神安定剤、抗不整脈剤などがあります。

尿が多少出にくい程度であれば、水分を多めに取るよう心掛ければ症状は改善しますが、疲れやすくなった、むくみがある、血尿が出るなどの症状がある時は、早めに泌尿器科の医師の診察を受けて下さい。

排尿困難の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、問診、直腸診、尿検査、超音波検査、血液検査、尿流動態(ウロダイナミクス)検査(膀胱内圧、腹圧、排尿筋圧、外尿道括約筋活動、尿流量測定)、尿路造影検査、内視鏡検査などを行って、排尿困難の原因を探ります。

泌尿器科の医師による治療は、排尿困難の原因になる疾患の種類によって異なり、基礎疾患があればその治療が第一です。

前立腺肥大症が排尿困難の原因の場合は、症状が軽い場合は薬物療法から始め、症状がひどい場合や合併症を引き起こしている場合は手術療法が行われます。

前立腺肥大症の薬物療法は、近年では薬の開発もかなり進んでおり、効果があることが確認されています。治療に使用される薬には、α1受容遮断薬(α1ブロッカー)、抗男性ホルモン薬(抗アンドロゲン剤)、生薬・漢方薬の3種類があります。

α1受容遮断薬は、交感神経の指令を届けにくくし、筋肉の収縮を抑えて尿道を開き排尿をしやすくする薬で、ミニプレスが代表です。副作用としては、起立性低血圧、めまい、下痢、脱力感、鼻詰まりなどの症状が伴います。

抗男性ホルモン薬は、男性ホルモンの働きを抑制する薬で、プロスタール、パーセリンなどが一般的です。その効果は服用してから3カ月程かかり、前立腺を20~30パーセントぐらい縮小させることができます。副作用としては、性欲が減退することがあります。

生薬・漢方薬は、植物の有効成分のエキスを抽出したもので、むくみを取ったり、抗炎症作用などの効果があります。副作用はほとんどありませんが、まれに食欲不振、胃腸障害が伴う場合があります。

前立腺肥大症の手術療法には、経尿道的前立腺切除術(TURP)、レーザー治療、温熱療法などがあります。

経尿道的前立腺切除術は、先端に電気メスを装着した内視鏡を尿道から挿入し、患部をみながら肥大した前立腺を尿道内から削り取ります。手術で前立腺の傷口を洗い流す灌流(かんりゅう)液が体内に入って、電解質のバランスを崩し、吐き気や血圧の低下などを起こすTURP反応と呼ばれる副作用が起こることがあります。

レーザー治療は、尿道に内視鏡を挿入し、内視鏡からレーザー光線を照射します。そして、肥大結節を焼いて壊死を起こさせ、縮小させます。組織を焼いてしまうため、がんの有無を調べられません。また、組織が壊死し脱落が起こるまで、症状の改善はみられません。

温熱療法は、尿道や直腸からカテーテルを入れ、RF波やマイクロ波を前立腺に当てて加熱し、肥大を小さくして尿道を開かせます。根治的な治療ではないため、半年から1年で症状はもとに戻ってしまいます。

神経因性膀胱が排尿困難の原因の場合は、基礎疾患に対する治療が可能ならばまずそれを行いますが、神経の疾患はなかなか治療の難しいことが多く、薬物療法、排尿誘発、自己導尿法などで排尿効率を高めることになります。

薬物療法は、膀胱の収縮力を高める目的で、副交感神経刺激用薬のウブレチド、ベサコリンのいずれかまたは両方を処方します。尿道括約部を緩める目的で、α1受容遮断薬(α1ブロッカー)のエブランチルを処方することもあります。

排尿誘発は、手や腹圧による膀胱訓練で、恥骨上部を押したり、下腹部の最も適当な部位をたたいたりすると膀胱の収縮反射を誘発できることがあります。

自己導尿法は、尿が出にくく残尿が多い場合に、1日に1〜2回、清潔なカテーテルを自分で膀胱内に挿入し、尿を排出させるものです。

このような治療だけでは不十分な場合、神経ブロックや手術などの方法もあります。

🇵🇱排尿痛

尿路の炎症や結石、腫瘍が原因となって、排尿の際に痛みを感じる状態

排尿痛とは、排尿の際に痛みを感じる状態。腎臓(じんぞう)、膀胱(ぼうこう)、尿道などの尿路の細菌感染による炎症、結石、腫瘍(しゅよう)が主な原因となります。

排尿の際のどの段階で痛みを感じるかによって、初期排尿痛、終末時排尿痛、全排尿痛に分けられます。

初期排尿痛は、尿の出始めに痛みを感じるもので、尿道炎の際に多く認められます。前立腺(ぜんりつせん)炎、淋菌(りんきん)感染症、性器クラミジア感染症などの疾患も疑われます。

終末時排尿痛は、排尿が終わる間際から終了後にかけて痛みを感じるもので、急性膀胱炎や前立腺炎、腎盂腎炎(じんうじんえん)、尿道結石などの疾患が考えられます。

全排尿痛は、尿の出始めから終わりまで持続する痛みを感じるもので、尿道狭窄(きょうさく)や尿道結石などのために排尿が障害され、尿道内圧が上昇することに起因することが多い症状です。膀胱炎が再発して慢性化していたり、腎盂腎炎などの疾患の際にもみられます。

痛みの性質により、焼け付くような痛みや、刺すような痛み、鈍く重苦しい鈍痛、ずきずき痛む疼痛(とうつう)などに分けられますが、痛みの感じ方は個人差がかなり大きく、男女の性差、年齢、基礎疾患の有無などによっても大きく異なります。また、痛みがごく軽い場合には、排尿時または排尿後の不快感として感じる場合もあります。

排尿痛を引き起こす尿道炎は、約20センチと長い尿道を持つ男性に多くみられる疾患です。原因のほとんどは、性行為による淋菌やクラミジア菌などの感染で、尿道に急性の炎症を起こします。淋菌の感染では、尿の出始めに焼け付くような強い痛みとともに、黄色いうみが混じります。クラミジア菌の感染では、尿の出始めの軽い痛みや染みる感じとともに、淡黄色や白色のうみが少量排出され、尿が濁ります。尿道炎を放置しておくと、全く排尿できなくなる尿道狭窄の原因にもなります。

前立腺炎は、20〜30歳代の若年層の男性に多い疾患です。主な原因は、尿道から侵入した大腸菌やブドウ球菌の感染で、男性の尿道後部を囲む前立腺に炎症を起こします。初期には尿の出始めに軽い痛みを感じ、それとともに頻尿や残尿感などが現れます。進行して炎症が強くなると排尿時の痛みが増し、前立腺肥大症に移行することもあります。

淋菌感染症は、淋菌による性感染症です。男性の場合、尿道が感染することで尿の出始めに焼け付くような強い痛みとともに、うみが尿に混じります。女性は顕著な症状が現れることが少なく、感染から数日後に外陰部のかゆみや下り物の増加が起こる程度なので、感染に気付かず慢性化することがあります。見過ごすと炎症が尿道や膀胱に広がり、排尿時に痛みを感じるようになります。また、妊婦が感染すると、新生児の結膜炎を招き、最悪は失明の危険もあります。

性器クラミジア感染症は、クラミジア菌による性感染症です。男性が感染すると、尿の出始めの軽い痛みや染みる感じとともに、淡黄色や白色のうみが少量尿に混じります。女性の場合、下り物が多少増える程度の軽い症状のため、感染に気が付かない場合も多くあります。進行すると不妊の原因となったり、妊婦の場合は胎児が産道の通過で感染し、重篤な肺炎や結膜炎を起こすこともあるので、注意が必要です。

急性膀胱炎は、膀胱内に細菌が侵入して急性の炎症を起こす疾患です。膀胱炎になるとトイレが近くなり、排尿が終わるころに痛みを感じたり、尿の濁りや血尿などの症状が現れます。圧倒的に尿道が約4センチと短い女性に多く、再発しやすくて慢性化すると尿がたまるだけで痛みが生じたり、排尿の間中ずっと痛みを感じるようになります。性交渉による感染が原因になることもあります。

腎盂腎炎は、腎臓からの尿が集まる腎盂や、腎臓そのもの(腎実質)が細菌に感染して起こる疾患です。排尿が終わるころや、排尿の間ずっと痛みを感じるようになり、尿中の白血球が増えるために尿の濁りが生じます。また、悪寒を伴う高熱、血尿、背中から腰にかけての響くような痛みや吐き気、嘔吐などが現れます。主な原因は下半身の冷えによるもので、この悩みを抱える女性に多くみられる疾患です。

尿道結石は、腎臓や膀胱でシュウ酸や尿酸などの塩類が石のように固まって作られた結石が、尿の最終的な通路である尿道の途中にとどまる疾患です。尿の流れに乗って移動した結石が尿の通り道を傷付けるために、尿が出終わるころに刺すような強い痛みを感じます。時には、突然の激痛や冷や汗、吐き気、嘔吐(おうと)を伴うこともあります。排尿に時間がかかるとともに残尿感があり、トイレに行く回数も増え尿が濁ることもあります。

尿道狭窄は、尿道の内側が狭くなるために尿が出にくくなる疾患です。かつては淋病や結核菌による慢性的な炎症が原因になるケースが多くみられましたが、近年は手術や検査などで尿道にカテーテルや内視鏡を挿入することで、尿道を傷付けてしまうために起こるケースも多くみられます。排尿の間、ずっと痛みを感じるようになり、尿が細くなります。さらに進行すると、全く排尿できなくなることもあります。

なお、生理痛と関連して周期的に排尿痛、排尿違和感を感じる女性の場合、子宮内膜症などの婦人科疾患が関係していることもあります。また、更年期症状の一部として、頻尿や尿漏れなどの排尿症状の中に排尿痛を感じることもあります。

排尿時の痛みが強い時や長期間続く時には、泌尿器科で診察を受けましょう。性感染症の疑いがある時は、泌尿器科または婦人科を受診しましょう。万が一性的パートナーが感染していた時は、自覚症状がなくても感染している可能性がありますので、必ず自分も診察を受けましょう。

排尿痛の検査と診断と治療

泌尿器科、ないし婦人科の医師による診断では、症状および各種検査を総合し、排尿痛の原因を確定します。一般的には問診、尿検査、超音波検査、血液検査、尿流動態(ウロダイナミクス)検査(膀胱内圧、腹圧、排尿筋圧、外尿道括約筋活動、尿流量測定)、尿路造影検査、内視鏡検査などを行って、排尿痛の原因を探ります。

泌尿器科の医師による治療は、排尿痛の原因になる疾患の種類によって異なり、基礎疾患があればその治療が第一です。

細菌性の尿道炎の治療では、抗生物質が有効ですが、短期間で治らず、しばしば慢性化します。慢性化しても、それほど強い症状は続きません。強い症状はなくても、ぐずぐずして治りにくいのが、慢性尿道炎の特徴です。

強い痛みや不快症状がある急性(細菌性)前立腺炎は、入院して鎮痛剤で痛みや不快症状を抑え、同時に感染菌に効く強力な抗生物質による治療を行います。前立腺は薬物移行が悪いため、治療効果が得られるまでに時間がかかることも多く、敗血症に移行することもあるので注意が必要です。また、再発を繰り返すと慢性化してしまうので、医師の指示通り、服薬や治療を継続しなければなりません。

 逆に、慢性前立腺炎は大事に至ることはありません。慢性(細菌性)前立腺炎では、抗菌剤を4~12週間程度服用します。また、前立腺のマッサージで、分泌腺内にたまっている膿性分泌物を排出させます。

慢性(非細菌性)前立腺炎でも、細菌感染の可能性もある場合には、抗菌剤を4〜8週間程度服用します。細菌の可能性がない場合や、前立腺痛では、筋弛緩(しかん)剤、温座浴などの温熱治療、漢方薬が用いられます。さらに、精神科医との連携も必要な場合があります。

淋菌感染症の治療では、抗生物質(抗生剤)のスペクチノマイシンの筋肉注射、セフォジジムの静脈注射、セフトリアキソンの静脈注射などを症状に応じて実施します。1日から7日間の抗生物質の注射を行い、3日以上たってから淋菌がいないか再検査を行います。

性器クラミジア感染症の治療では、キノロン系、テトラサイクリン系の抗生物質が非常に有効です。通常は、7~14日間服用します。また、性的パートナーへの治療も大切です。

急性膀胱炎の治療では、原因菌に有効な抗生物質、抗菌剤が投与されます。一般に女性では、合併症が起こっていなければ、2~3日で症状は軽快します。感染が長引く際には、抗生物質を7~10日間服用します。男性では投与期間が短いと再発を繰り返すため、一般に抗生物質を10~14日間服用します。

男女とも、水分の摂取を多くして尿量を増やし、細菌を洗い流すほか、尿の刺激性を低下させて症状を和らげます。症状の強い際は、十分な休息、睡眠を確保するようにします。

慢性膀胱炎の場合には、症状は比較的軽く、ほとんど自覚しないこともあります。尿検査で偶然に発見されることが、普通です。膀胱に腫瘍、結石があったり、結核、前立腺、腎臓の病気などが膀胱炎の陰に隠れている際に、慢性化しやすいものです。

慢性膀胱炎の治療では、抗生物質や抗菌剤が2~4週間、使用されます。原因疾患がある際には、そちらを治療しない限り、完治しません。特に原因疾患もなく、症状のほとんどない際は、経過観察となることもあります。

腎盂腎炎の治療では、感染している細菌に有効な抗生物質、抗菌剤を投与します。若い女性によくみられる急性の腎盂腎炎では、治療薬の進歩により、特殊なケースを除いては速やかに改善します。慢性の腎盂腎炎は、10〜20年といった長い期間をかけて、腎臓機能が悪くなる場合もあり、完全に治癒させるためには長期間、抗生物質やサルファ剤を投与します。生活上の注意として、症状が著しい急性期には、水分を多量にとって、尿量を多くすることが大切になります。

尿道狭窄の治療では、内視鏡を用いて、狭いところを切開する場合が多いのですが、切開手術を要することもあります。いずれにしても、処置後も比較的長期間、ある程度の拡張処置を外来で続ける必要があります。

尿道結石の治療では、痛みや繰り返す膀胱炎、腎盂腎炎などの症状がなければ、尿とともに自然に出てくるまで経過観察で様子をみることもあります。症状がある場合や大きな結石の場合は、結石に超音波などの物理的エネルギーを加え、そのエネルギーで結石を粉砕し、体外に出す破砕療法や、手術によって除去します。

🇵🇱肺嚢胞(のうほう)症

肺の中に空気や液体を含む空間が発生

肺嚢胞(のうほう)症とは、肺の中に、空気や液体を含む空間である嚢胞ができる疾患。嚢胞の数は、1つから複数の場合まであります。

先天性と後天性があり、多くは後天性です。

先天性肺嚢胞症は、肺嚢胞が生まれ付きできている場合です。最も代表的なものは、ブラ(気腫〔きしゅ〕性嚢胞)やブレーブ(自然気胸)。ブラは、肺胞がほかの肺胞とくっついて膨張した状態で、ちょうど風船のように肺の表面に飛び出します。これが破裂し、たまっていた空気が胸腔(きょうくう)内に出て、肺を圧迫するとブレーブと呼ばれます。

このブレーブは、左肺よりも右肺に多くみられ、しばしば気管支とつながっています。このような場合、嚢胞は細菌に感染しやすく、発熱、せき、膿(のう)性のたんが出て、肺膿瘍(のうよう)と似た症状が現れます。

しかし、嚢胞壁が感染を中に閉じ込めるので、胸部X線写真で見ても、嚢胞の外に炎症反応はみられません。時に喀血(かっけつ)を伴うこともあり、肺結核と間違われることもあります。

後天性肺嚢胞症でよく知られているのは、条虫エキノコックスによって起こる包虫嚢胞です。ピーナッツなどの異物で気管支がふさがれて起こることもあります。

肺嚢胞症の検査と診断と治療

先天性肺嚢胞症の場合は、自覚できる症状はほとんどありません。胸部X線検査を行った時に、偶然発見されることがあります。後天性肺嚢胞症の症状は、胸痛や呼吸困難、せき、胸部圧迫感、チアノーゼなどです。

治療は、嚢胞が小さければ、経過を見守るにとどまります。ブレーブ(自然気胸)で細菌に感染した場合は、抗生物質で治療を行います。また、嚢胞が大きく、全身への影響のみられる場合には、手術によって切除します。

🟧新型コロナで自殺者8000人増、20歳代女性最多 2020年3月以降、東大試算

 2020年3月から今年6月にかけ、新型コロナウイルス感染症が流行した影響により国内で増加した自殺者は約8000人に上るとの試算を東京大学などの研究チームが17日までにまとめました。最多は20歳代女性で、19歳以下の女性も比較的多くなりました。

 研究チームの仲田泰祐・東大准教授(経済学)は、「男性より非正規雇用が多い女性は経済的影響を受けやすく、若者のほうが行動制限などで孤独に追い込まれている可能性がある」としています。

 政府の統計から2020年と2021年の自殺者はいずれも約2万1000人で2018、2019年より多かったことはわかっていたものの、新型コロナの影響の規模は明確でありませんでした。

 日本では失業率が上がると自殺者が増える傾向にあり、経済的困難が要因の1つと考えられています。研究チームはこれまでの自殺者数の推移や失業率の予測などを基に、新型コロナが流行しなかった場合のこの期間の自殺者数を推計。実際との比較の結果、8088人増えたと試算しました。

 年代別では20歳代が1837人と最多で、この年代の自殺者の約3割を占め、新型コロナの影響の大きさをうかがわせました。女性は1092人、男性は745人でした。19歳以下でも約2割に当たる377人に上り、このうち女性は282人でした。

 人とのつながりが少なくなると孤独を苦にした自殺が増えるといわれており、研究チームは行動制限の影響もあるとみています。

 政府の統計で国内の自殺者は2010年以降、毎年約500~3000人ずつ減り続けてきたものの、2020年は11年ぶりに増加に転じ、2021年は微減したもののほぼ横ばいでした。男性は12年連続で減少する一方、女性は2年続けて増加。小中高生は2020年に過去最多の499人に達し、高止まりが続いています。

 2022年8月18日(木)

🟥アフリカ連合、エムポックス緊急宣言終了 新規感染者数減少で拡大抑止

 アフリカ連合(AU)の疾病対策センター(CDC)は23日までに、エムポックス(サル痘)の拡大を受けて2024年8月に出した緊急事態宣言を終了した。22日付。2025年前半から後半にかけて新規感染者数の減少傾向が続き、拡大を抑止できたためとしている。  アフリカでは2024年に...