2022/08/21

🇰🇼大腿骨頭壊死

血液供給が断たれて、大腿骨の頭の部分が壊死

大腿(だいたい)骨頭壊死(えし)とは、大腿骨の頭の部分への血液供給が断たれて、骨頭の一部、あるいは大部分が生命力を失う疾患。

原因不明で起こるものを突発性大腿骨頭壊死といいます。これに対して、もとに何か疾患、あるいは疾患的状態があるために、大腿骨頭壊死を来す場合もあります。例えば、老人によく起こる大腿骨頸部(けいぶ)骨折では、大腿骨頭に栄養を送っている血管が骨折を起こした際に損傷され、後に大腿骨頭壊死を生じます。

突発性大腿骨頭壊死は、30〜40歳代の成人、しかも男性に多く起こり、アルコール愛飲者や副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)の投与を受けた人に多くみられます。原因は完全には明確になっていませんが、大量のアルコール飲酒による肝臓障害が骨まで侵す危険性があることは否定できませんし、副腎皮質ホルモンの投与については、期間の長さより1日の投与量の多さが原因となりやすいことがわかってきています。

しばしば、股(こ)関節、大腿、ひざにかけての痛みが、突発的に起こります。多くのものは安静にしていれば2〜3週間で軽快しますが、次第に運動時にも安静時にも、痛みが持続して起こってくるようになります。

片側に発症すると、約半分くらいの割合で1年くらいのうちに、反対側にも骨頭壊死が生じてきます。

X線写真を撮ると、疾患の初期には骨頭輪郭の不整や、骨陰影の濃い部分の存在などの変化にすぎませんが、次第に進行すると、骨濃厚部が陥没して関節面が不整となります。

さらに経過すると、大腿骨頭変形に基づく変形性股関節症を合併します。

大腿骨頭壊死の検査と診断と治療

大腿骨頭壊死の診断には、単純X線撮影、骨シンチグラム、CT、MRIなどの検査が用いられます。早期に確実な診断ができるのはMRIで、骨シンチグラムなどと併用して確実な診断が下されます。

骨頭の変形が軽度で進行が遅いような場合は、つえの使用、体重のコントロール、筋力トレーニング、長距離歩行の制限、重量物の運搬禁止などでカバーすることができます。痛みに対しては、鎮痛消炎剤の服用で対処します。つえを使うことには最初は抵抗があるかもしれませんが、痛みを軽減するには有効です。また、つえの正しい使い方、筋肉トレーニングの方法は、整形外科医やリハビリの専門医から指導を受けます。

しかしながら、これらの保存的治療では症状の進行防止は大きく期待できないため、進行が予想される場合は手術が行われます。骨頭壊死がそれほど進行していないものに対しては、骨頭を温存して荷重部を変えることを目的とした骨切り術を行って、陥没を防止します。骨切り術としては、前方回転骨切り術、後方回転骨切り術、内反骨切り術、骨移植術などがありますが、骨移植術はあまり行われません。

最も多く行われている前方回転骨切り術は、骨頭を一度切り離して前方へ回転させ、壊死している部分を前のほうへ持っていく手術。壊死は骨頭の前方の部分に発生しやすいため、後方の正常な部分を一番上に回してきて、体重を受け止めるという方法です。切り離した骨頭は約10cmのボルトで固定し、数年後に骨が完全に結合していることを確認して、ボルトを抜き取ります。使用する金具類はチタン合金製で、体内に長期間入れておいても体への影響はほとんどありません。

壊死範囲が広いものや、すでに骨頭変形が進行したものに対しては、人工骨頭や関節置換を行わざるを得ません。関節置換では、全関節を人工関節に置き換えます。

この疾患の好発年齢が30〜40歳代と、人工骨頭や関節置換の適応年齢よりもかなり低いために、長期間に渡って挿入された場合、緩みや摩耗などの問題が生じます。近年、人工骨頭自体の構造も改良され、摩擦による骨の障害をできるだけ少なくする工夫もされています。

🇰🇼大腿骨頭すべり症

成長期の子供にみられ、大腿骨の股関節に近い大腿骨頭の骨端線が本体部分からずれる疾患

大腿骨頭(だいたいこっとう)すべり症とは、成長期の子供の成長軟骨に障害が起き、大腿骨の股(こ)関節に近い大腿骨頭の骨端線が本体部分の骨幹部からずれる疾患。

太ももの大きな太い骨である大腿骨が骨盤と股関節をつくる部分を大腿骨頭といい、子供では大腿骨頭のすぐ下に、膨張することで骨が大きくなる成長軟骨の部分である骨端線(成長軟骨肥大細胞層)があります。

骨端線の部分は、骨の成長が終了すると均一で強固な骨になりますが、成長が終了する直前には逆に軟骨層の部分が薄くなっていて、外力に弱いため、骨頭に無理な力がかかると、その部分で後下方にずれてしまい、大腿骨頭すべり症を起こします。

10歳から16歳の成長が盛んな思春期の男子に多くみられ、とりわけ肥満型の男子に多くみられます。原因の1つに成長ホルモンや性ホルモン、副腎(ふくじん)皮質ホルモンなどの異常があるといわれ、ホルモンバランスが悪い肥満傾向の男子では、骨端線の成長の終了が遅れ、強度が弱い時期が長引くために、多くみられることになります。

外傷を切っ掛けにして、突然、強い股関節の痛みが起こり、歩けなくなる急性型と、日常動作や比較的軽微な外力によって、徐々に股関節の痛みが強くなって、脚を引きずって歩く慢性型があります。発症時期がはっきりせず、慢性の経過をたどる慢性型のほうが、多くみられます。

大腿骨頭すべり症を起こすと、股関節の近くの骨端線がずれて変形するため、股関節の痛みや動きの異常、歩行の障害が現れます。左右両側の下肢に症状が現れることもあります。

慢性の経過をたどる慢性型では、痛みが著しくないことが多く、医師の診断および治療が難しいなどの特徴を持っています。長い期間、正確な診断がつかない場合もありますが、大腿骨頭すべり症は適切に治療しなければ、成人してから変形性股関節症を引き起こす恐れがあります。

日常での歩行や、階段の上り下りでも股関節が痛ければ、整形外科を受診することが必要です。

大腿骨頭すべり症の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、X線(レントゲン)検査を行って骨頭が後下方へずれているのを確認し、CT(コンピュータ断層撮影)検査を行ってずれの程度を調べます。

整形外科の医師による治療は、急性型と慢性型で異なります。

急性型では、股関節の痛みが強いので比較的診断がつきやすく、診断がつき次第入院になります。急性に生じたずれは、手術で骨に鋼線を通して牽引(けんいん)し、大腿骨頭の骨端線のずれをゆっくり整復するか、麻酔をかけた上で手でゆっくりと骨端線のずれを整復します。骨端線のずれを戻した後に、再びずれを生じないように骨端線を貫くようにねじ釘(くぎ)で固定して、骨の成長が終了した後に釘抜きを行います。

一方、慢性型では、長い経過をたどって大腿骨頭の骨端線のずれが生じており、痛みは激しくないので、診断が難しいことがあります。また、時間がたっていると、骨端線のずれを戻す整復は困難です。無理な整復を試み、骨端線の軟骨細胞を痛めると、長期的に股関節の変形や痛みを生じることがあるためです。

骨端線のずれが軽い場合には、そのままの位置で骨頭と骨幹部をねじ釘で固定します。大腿骨には傾きを復元しようとする働きがあり、やがてバランスが取れるようになります。骨端線の変形が著しい場合には、手術で骨切り術を行い、変形により股関節の動きの異常が出ないように整復し、金属で固定します。

🇧🇭大腿四頭筋拘縮症

乳幼児や小児の太腿の前面にある大腿四頭筋が硬くなって、本来の機能が損なわれ、歩行や正座が困難になる疾患

大腿四頭筋(だいたいしとうきん)拘縮症とは、乳幼児や小児の太腿(ふともも)の前面にある大腿四頭筋が硬く線維化して、本来の機能が損なわれ、歩行や正座が困難になる疾患。大腿四頭筋短縮症とも呼ばれます。

大腿四頭筋は大腿直筋、外側広筋、中間広筋、内側広筋の4つの筋からなる筋肉で、骨盤および大腿骨から起こり、下のほうへ伸びていって膝蓋(しつがい)骨を包んで共同の膝蓋腱(けん)となり、脛(けい)骨粗面へ付着する強大な筋肉です。

大腿四頭筋拘縮症の多くは、小児期に明瞭となり、歩行開始から学童期ごろまでに発症します。通常は大腿四頭筋のすべてではなく、大腿直筋、外側広筋、中間広筋、内側広筋のうちの1つか、2つが障害されます。

すでに1946年に疾患が報告されていましたが、当時は先天的なものと考えられていました。しかし、1970年代に入って日本各地で多発し、社会問題となりました。そこで、日本医師会は1974年に検討委員会を設け、その原因として、まれにある先天的なものと、乳幼児や小児の大腿四頭筋への抗生剤や解熱剤の皮下注射や筋肉注射によるものとがあることを明らかにしました。

しかし、大腿四頭筋に注射を受ければ必ず筋肉の線維化が生じるわけではなく、むしろ一部に発生するものと思われます。注射薬の種類、濃度、量、回数などの各種の要素のほか、乳幼児や小児の体質といったものも関係しています。

大腿四頭筋拘縮症のほとんどは、足の不自由や歩行異常を来し、痛みなどを生じることはあまりありません。また、立位になると、出っ尻(ちり)の状態を示します。硬く線維化した筋肉と骨との成長の不均衡のために、骨の成長障害や変形をもたらすこともあり、左右の脚の長さが数センチ違ってしまうこともあります。

また、大腿四頭筋拘縮症は3つのタイプに分けられ、タイプによって症状に違いもあります。

大腿直筋が障害される直筋型では、尻(しり)上がり現象がみられます。尻上がり現象は、うつ伏せに寝て膝(ひざ)を曲げると、尻が浮き上がる現象をいいます。直筋型の場合、正座は程度の差はありますが、可能です。

大腿直筋と外側広筋が障害される混合型では、尻上がり現象がみられ、正座もできません。外側広筋と中間広筋が障害される広筋型では、尻上がり現象はみられませんが、正座ができません。

また、直筋型、混合型では、悪いほうの脚を外側へ振り回しながら歩くぶん回し歩行や、出っ尻歩行といった歩き方の異常がみられる場合があります。広筋型では、膝を突っ張って歩く棒足歩行といった歩き方の異常がみられる場合があります。

大腿四頭筋拘縮症の検査と診断と治療

整形外科、あるいは形成外科の医師による診断では、太腿への筋肉注射を受けたことがあって、そこに皮膚のくぼみや硬いしこりがあり、それに加えて足の不自由や歩行異常があれば、容易に判断できます。

関節の状態を判定するためにX線(レントゲン)検査を行ったり、筋肉の状態を把握するためにMRI(磁気共鳴画像撮影)検査を行う場合があります。

整形外科、形成外科の医師による治療では、年齢や、障害された筋肉や程度に応じて、方針を立てます。乳幼児である場合には、そのまま経過観察して筋力の増強を図ります。

小児の重症例に対しては、筋膜、靭帯(じんたい)、障害されている筋肉を切る筋切離術を行うのが一般的です。

手術を行うことにより、尻上がり現象の程度が軽くなったり、正座ができるようになったり、歩き方がよくなったりすることが期待できます。

しかし、手術前の状態によってもその成績は異なり、症状が再発したり、再手術が必要になることがあります。また、筋肉を切るために術後に筋力が低下する場合があります。

予防法としては、皮下注射、筋肉注射を問わず、注射の乳幼児や小児への乱用を慎むこと第一で、医者で治療を受ける時は保護者が十分な説明を受けることが大切です。

なお、注射による筋肉の拘縮は、大腿四頭筋のほか、殿(でん)筋、三角筋、上腕三頭筋などにもあり、注射部位として絶対安全なところはありません。

🇧🇭大腿骨疲労骨折

正常な大腿骨に骨折を起こさない程度の負荷が、ランニングで繰り返し加わった場合に生じる骨折

大腿骨(だいたいこつ)疲労骨折とは、太ももの骨である大腿骨に、正常な状態では骨折を起こさない程度の負荷が、ランニング中心のスポーツ活動で繰り返し加わった場合に生じる骨折。

骨折は、骨が壊れることを意味し、ヒビも骨折ですし、骨の一部分が欠けたり、へこんだ場合も骨折です。正常な骨では、かなり大きな負荷がかからないと骨折しませんが、正常な骨に小さい負荷がかかる場合でも、同じ部位に繰り返し長期間かかり続けて、骨にヒビが入る微細な骨折を生じたり、ヒビが進んで完全な骨折に至る状態が疲労骨折です。

疲労骨折のほとんどは、スポーツ活動で激しいトレーニングをしている運動部の学生や社会人に生じます。陸上、サッカー、野球、バスケットボールなどあらゆるスポーツ活動で発生する可能性があり、それぞれのスポーツ活動ごとに疲労骨折を生じやすい部位があります。

下肢の中で最も太い大腿骨に疲労骨折を生じるスポーツ活動としては、まず陸上のマラソン、長距離走が挙げられ、そのほかのスポーツ活動でも、走り込みを続けることで生じます。

長時間のランニングによって、過度の体重の荷重が上方から繰り返し加わったり、地面をける際に生ずる突き上げが下方から繰り返し加わったり、大腿四頭筋、ハムストリング、内転筋などの大きな筋群による張力が繰り返し加わることによって、股(こ)関節から膝(しつ)関節に至る長い骨である大腿骨の付け根の頸部(けいぶ)から、骨幹部、膝に近い顆上部(かじょう)まで、骨の構造的な弱点といえる部位にまさまざまな疲労骨折が発生します。

頸部の疲労骨折は、股関節を介した体重の荷重による衝撃のため生じます。外側に張力、内側に圧縮力が加わる繰り返される負荷により、頸部を内反させる力が強く作用すると、外側からヒビが入ります。さらに、内反力が加わると、離解して転位します。

骨幹部の疲労骨折は、内側に生じます。これは内転筋による牽引(けんいん)張力のためだと考えられています。顆上部の疲労骨折は、内転筋やふくらはぎ後面の腓腹(ひふく)筋などの牽引張力が作用して発生します。

大腿骨疲労骨折を生じても、一般の外傷性骨折のように皮下出血や著しい腫脹(しゅちょう)を伴うことはありませんが、骨折部位は軽度の腫脹を伴い、押さえると痛みを生じます。骨幹部の疲労骨折、顆上部の疲労骨折では、その大半が膝の痛みを生じます。

痛みは、ランニングの開始時に強く出て、運動途中は痛みが軽くなります。運動終了時から終了後にかけて、痛みが強くなります。運動を休んでいる間は、痛みはほとんど出現しません。

短期的に集中的なランニングを行った時に、大腿骨疲労骨折が生じることが多いのも特徴です。競技者の要因としては、筋力不足、筋力のアンバランス、走る姿勢や走法のアンバランス、O脚やX脚や外反足などの下肢の構造的アンバランス、体の柔軟性不足などが考えられ、環境の要因としては、オーバートレーニング、競技者の体力や技術に合わないトレーニング、不適切なシューズ、練習場が硬すぎたり軟らかすぎるなどが考えられます。

症状が時としてわかりにくいことがあるのも大腿骨疲労骨折の特徴で、痛みのある部位が漠然としていることが多いともされています。

明らかな外傷がなく、ランニング中心のスポーツ活動時に大腿部の痛みを感じる場合は、疲労骨折が疑われます。整形外科を受診することが勧められます。

大腿骨疲労骨折の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、骨の痛みがある部位と症状、スポーツ活動の種類などから判断します。

骨折の初期の段階では、X線(レントゲン)検査を行ってもほとんど異常を示さず判断が難しいこともありますが、骨折後1カ月程度で骨膜反応という骨折の修復により異常がわかります。骨シンチグラフィー検査やMRI(磁気共鳴画像撮影)検査、CT(コンピュータ断層撮影)検査を行うと、骨折の初期の段階の病変でも判断することが可能です。

骨折の初期の段階で診断を確定できない場合に、痛みを誘発して再現するテストを行って、骨折の可能性を検査することもあります。頸部の骨折では、片脚ジャンプで痛みが誘発されます。骨幹部の骨折では、大腿骨の下に堅い支点となるような物を入れて、大腿骨をしならせるような状態にすると、痛みが誘発されます。顆上部の骨折では、抵抗をかけて膝を屈曲させると痛みが誘発されます。

整形外科の医師による治療では、骨折部に負担のかかるランニングなどのスポーツ活動を休止し、必要に応じて固定を行います。一般には、4〜8週間の固定が必要となることが多く、激しい負荷のかかる競技者の場合には、12〜16週間の固定による安静が必要となることも珍しくありません。

固定による安静期間の後に、徐々にリハビリを開始します。まずは、日常生活だけのリハビリを行い、続いて、痛みが生じない範囲に制限してスポーツ活動を再開します。疲労骨折の場合、同じ部位が再骨折する可能性が高いため、慎重に運動を再開する必要があります。

転位のある骨折の場合や、頸部の外側骨折の場合は、手術が必要となることがあります。また、手術後のリハビリが最低6カ月間必要となります。

再発予防としては、疲労骨折が発生した要因を検討し、通常のトレーニングが過度にならないようにしたり、運動前後にストレッチを行ったりして、普段からコンディションの調整をすることも大切です。

🇧🇭大腿神経痛

太ももの前部と側面を支配している大腿神経が圧迫を受けて起こる神経痛

大腿(だいたい)神経痛とは、太ももの前部と側面を支配している大腿神経が何らかの圧迫を受けることによって、痛みなどが生じる神経痛の一つ。

大腿神経は、股関節(こかんせつ)周囲筋を支配する運動神経の一種で、座骨神経の上部にある比較的太い神経です。第2、第3、第4腰椎(ようつい)の腹側から神経根を形成して、脊髄神経より分枝し、骨盤の前面を通り、鼠径(そけいぶ)部、太ももの前部、さらに下腿まで続き、腰から下肢にかけての神経系統として座骨神経と対をなしています。

痛みの症状としては、座骨神経痛では下肢の裏側に走るのに対して、大腿神経痛は下肢の表側に走るのが特徴です。つまり、尻(しり)の裏から、片側、あるいは両側の太ももの前や外側、膝(ひざ)下の内前側にヒリヒリとした痛みを感じます。そして、痛みだけでなく、しびれや神経の鈍りを覚えます。さらに、太ももだけでなく、腰が痛むこともあります。

大腿神経痛の原因は、ほとんどが腰椎疾患からきています。腰椎疾患による骨盤のゆがみによって骨盤周辺の筋肉が圧迫され、大腿神経も圧迫されることにより引き起こされます。このゆがみにより、障害部位が異なります。

大腿神経を支配している第2、第3腰椎間の神経根、および第3、第4腰椎間の神経根が障害されると、神経痛が起こります。これを根性大腿神経痛といい、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄(きょうさく)症、変形性脊椎症、腰椎すべり症、腰椎不安定症などで発症します。

高齢者で多いのは腰部脊柱管狭窄症からくる神経痛で、その症状は歩いていると腰、足の痛みやしびれがひどくなりついには歩けなくなる、前かがみの姿勢は楽だが後ろに反らすと痛い、朝より夕方のほうが痛みとしびれが強いのが特徴。若年者から壮年者に多いのは腰椎椎間板ヘルニアからくる神経痛で、骨盤前面から股関節にかけて痛みが生じることがあります。

また、大腿神経は股関節の前部では大腰筋の中を走っており、この大腰筋がゆがみで緊張すると神経痛が発症します。これを絞扼(こうやく)性大腿神経痛といいます。

腰椎疾患による骨盤のゆがみ以外に、コルセットの着用、腰椎牽引(けんいん)、ギプスによる圧迫、窮屈な下着やズボンの着用、べルトやガードルの締めすぎ、自動車のシートベルトの締めすぎ、長時間の股関節屈曲位、外傷などが原因で、大腿神経が圧迫されて神経痛が起こることもあります。

さらに、肥満、妊娠により骨盤周囲の筋肉の緊張が強くなることで、大腿神経が圧迫されて神経痛が起こることもあります。妊婦においては胎児が正常な位置にいない場合に、大腿神経痛としてしびれが出ることもあります。鼠径ヘルニアの手術や股関節の手術の後に、一時的な大腿神経の圧迫により障害されることもあります。

大腿神経痛を引き起こす原因である神経の圧迫には、さまざまな原因が考えられます。中には深刻な疾患が原因であることもあるので、まず整形外科、ないし神経内科の医師を受診し原因を突き止めることが必要です。

大腿神経痛の検査と診断と治療

整形外科、神経内科の医師による診断では、腰椎や骨盤のX線写真、MRI(磁気共鳴画像)検査などで、神経の圧迫像を確認し、腰椎椎間板ヘルニアや変形性腰椎症などの疾患がないかどうかをチェックします。

必ずしも神経の圧迫像がなくても、痛みが生じる場合も割にあり、MRI検査では見付けにくいような小さな突起物が神経を圧迫していることもあります。

整形外科、神経内科の医師による治療は、大腿神経を圧追する原因を取り除くことが第一です。体重を減らすことや、骨盤部の矯正、窮屈な下着やズボンの着用の禁止などが、効果を発揮します。

また、大腿神経痛を起こしている原因によって変わってきますが、リリカ(プレガバリン)という神経痛治療内服剤、トラムセット配合錠という内服鎮痛剤などの内服、外用が有効とされています。ただし、リリカには、ふらつき、めまい、眠気、意識消失などの副作用があり、飲んでいる間は車の運転はできません。トラムセットには、投与初期に吐き気、慢性的には便秘などの副作用があります。

痛みが強い場合は、局所麻酔薬を注射して痛みを和らげる神経根ブロックを行います。この場合、1 回の注射では一時的に症状が緩和しても、数時間から1日で元の症状に戻ったりしますので、何回か注射を繰り返すこともあります。局所麻酔薬と一緒に、ステロイドホルモン剤という炎症を抑える薬を注射することもあります。

腰椎部で大腿神経が圧迫された時には、脊髄の周囲の硬膜外腔(がいくう)に局所麻酔薬を注射して、神経の痛みを和らげる硬膜外ブロックを行います。局所麻酔薬の種類を変えたり、投与濃度、投与量を変えたりして行い、硬膜外ブロックを何回か繰り返すと、痛みが急速に、あるいは徐々に軽減してゆくケースが多くみられます。

症状が治まらず、日常生活に支障を来す場合は、大腿神経を剥離(はくり)、または切離する手術を行うこともあります。炎症を起こした神経は周囲の靱帯(じんたい)や筋肉と癒着した状態にありますので、その癒着を手術で解き放つのを剥離、神経そのものを切除して痛みを感じなくするのを切離といいます。

🇶🇦大腸カタル

細菌が原因で大腸に起こる炎症

大腸カタルとは、急性胃腸炎の中で、主として赤痢菌、大腸菌、サルモネラ菌、カンピロバクターなどの細菌が原因となって、嘔吐(おうと)を伴わずに、炎症が大腸に限局しているような疾患を指します。急性大腸炎と呼ぶこともあります。

実際には、急性胃腸炎と大腸カタルの区別は、臨床症状だけでは付きにくいものです。

大腸カタルの症状としては、急性胃腸炎と同じように腹痛、下痢、発熱を伴います。特に下腹痛があり、しばしば渋り腹で、便意を催したりもします。下痢の便には、粘液、うみ、時には血液が混じります。

血便が出る腸炎について、かつては「血便すなわち赤痢」という考えが強かったのですが、近年では赤痢菌による血便はほとんどみられなくなりました。

現在、血便を出す下痢症で頻度の高いのは、サルモネラ菌とカンピロバクターによるもの。食中毒の原因菌として有名なサルモネラ菌とカンピロバクターは、腸炎の原因菌となることも多いのです。ほかに、病原大腸菌による血便もあります。

細菌に有効な抗生物質で治療し、食事制限

サルモネラ菌は抗生物質を使っても使わなくても、全身状態の管理さえしっかり行えば、その効果はほとんど変わらないと見なされています。

カンピロバクターには、抗生物質のエリスロマイシンが効果的。そのほかの原因菌による場合も、その細菌に有効な抗生物質が用いられます。

全身状態の管理は、胃腸炎と同じで、食事制限を行い、水分を十分に摂取します。下痢が少し治まったら、流動食から普通食へと移行していきます。なお、口から食べ物が取れない場合は、輸液を行う必要があります。

🇶🇦大腸カルチノイド

がんに似た性質を持つ悪性腫瘍が大腸粘膜下に発生した疾患

大腸カルチノイドとは、カルチノイドという、がんに似た性質を持つ悪性腫瘍(しゅよう)が大腸粘膜下に発生した疾患。

カルチノイドは、がんの意味であるカルチと、類を意味するノイドが組み合わさった英語で、日本語で「がんもどき」とも呼ばれます。消化管内分泌細胞腫瘍、神経内分泌腫瘍、消化管ホルモン産生腫瘍と呼ばれることもあります。

がんと同様、カルチノイドはいろいろな臓器に発生します。胃、十二指腸、小腸、虫垂、直腸などの消化管内壁のホルモン産生細胞に発生し、膵臓(すいぞう)、精巣、卵巣、肺、気管支、胸腺(きょうせん)のホルモン産生細胞でも発生します。

このカルチノイドは、一般的には悪性度が低いと考えられています。実際、症状の進行もゆっくりで長期生存が期待できるものも多く、これらは定型カルチノイドと呼ばれています。一方、比較的早く症状が進行し治療が困難なものがあり、これらは非定型カルチノイドと呼ばれています。定型カルチノイドは非がん性、非定型カルチノイドはがん性と見なされます。頻度的には、定型カルチノイドのほうが多くみられます。

盲腸から始まる大腸は、時計回りに上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、そして直腸に区別できますが、大腸カルチノイドは特に直腸に多く、盲腸の先端にある虫垂、結腸にも発生します。直腸カルチノイドは、胃、十二指腸、小腸を含めた消化管カルチノイドの約4分の1を占め、全直腸がんの1パーセント未満を占めます。

大腸に発生したカルチノイドは、小型核を持つ形状をしていて、卵円形から円形をした細胞で構成されており、表面は大腸粘膜で覆われています。

胃や小腸にできたカルチノイド、あるいは虫垂や結腸にできた大腸カルチノイドでは、その腫瘍がセロトニンを始め、ブラジキニン、ヒスタミン、プロスタグランジン、カテコールアミンなどのホルモン様の生理活性物質を分泌し、顔面紅潮、下痢、喘息(ぜんそく)などカルチノイド症候群と呼ばれる症状が出ることがあります。

顔や首に出る不快な紅潮は最も典型的で、最初に現れることが多い症状。この血管拡張による紅潮は、感情の高揚や、食事、酒類、熱い飲み物の摂取によって起こります。紅潮に続いて、皮膚が青ざめることもあります。

セロトニンに起因して腸の収縮が過剰になると、腹部けいれんと下痢を生じます。腸は栄養を適切に吸収できないため栄養不足になり、脂肪性の悪臭を放つ脂肪便が出ます。心臓も傷害を受けて、下肢がはれます。肺への空気の供給も妨げられて、気管支喘息に似た発作や息切れが現れます。セックスへの興味を失ったり、男性では勃起(ぼっき)機能不全になることもあります。

ただし、直腸にできた大腸カルチノイドでは、このようなカルチノイド症候群の症状が起こることはめったにないとされています。直腸の腫瘍が大きくなって表面に潰瘍(かいよう)が生じると、血便を起こすようになります。疼痛(とうつう)、便秘を起こすこともあります。

無症状の直腸カルチノイドは、他の症状で直腸検査または大腸内視鏡検査を受けて、偶然発見されることがあります。

大腸カルチノイドを放置しておくと、転移して大腸がんのような経過をたどることがあります。最悪の場合は命を落とすこともあるので、カルチノイド症候群による種々の症状、あるいは血便などが現れた場合は、消化器科、外科の医師を受診します。主症状が腹痛なので、内科を受診することがあるかもしれませんが、それでも問題はありません。

大腸カルチノイドの検査と診断と治療

消化器科などの医師による診断では、症状から大腸カルチノイドが疑われる場合は、尿を24時間採取して、尿中のセロトニンの副産物の1つである5ーヒドロキシインドール酢酸(5ーHIAA)の量を測定し、その結果から判断します。

この検査を行う前の少なくとも3日間は、バナナ、トマト、プラム、アボカド、パイナップル、ナス、クルミといったセロトニンを豊富に含む食べ物を避けます。ある特定の薬、せき止めシロップによく使われるグアイフェネシン、筋弛緩(しかん)薬のメトカルバモール、抗精神病薬のフェノチアジンなども検査結果の妨げになります。

腫瘍の位置を突き止めるには、放射性核種走査(放射性核種スキャン)が有効な検査です。カルチノイドの多くはホルモンのソマトスタチン受容体がありますので、放射性ソマトスタチンを注射する放射性核種走査によって、腫瘍の位置や転移の有無が確認できます。この方法で約90パーセントの腫瘍の位置がわかります。

CT(コンピューター断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像)検査、動脈造影も、腫瘍の位置を突き止めたり、腫瘍が肝臓に転移していないかを確認するのに役立ちます。腫瘍の位置の診査手術が必要な場合もあります。

腫瘍が虫垂、結腸、直腸など一定部分に限定していれば、外科的切除で治癒することがあります。大腸カルチノイドの腫瘍径が1cm以下の良性である場合は、内視鏡切除が行われます。腫瘍径が1cm以上2cm以下である場合は、大腸壁の筋層まで入っていることが少なくないので、外科手術で局所切除をすべきだと考えられています。腫瘍径が2cm以上であり、表面が結節状になっていて、びらん、潰瘍を伴う悪性である場合は、原則として外科手術が必要となります。

ただし、腫瘍径が1cmに満たないものでも、切った断面にカルチノイド細胞が残ることがあります。そのため、切除をした後に再発の有無について調べる病理検査を定期的に受けなくてはなりません。

腫瘍径が2cmを上回る場合は、リンパ節に転移する可能性が高くなってくるため、大腸がんと同様に腸を切除する根治手術が原則として行われます。放置すると腫瘍が増殖を続け、大腸がんと同じ経過をたどります。

直腸カルチノイドの治療では、経肛門(けいこうもん)的内視鏡下マイクロサージェリー(TEM)という手術法も有効だとされています。これは、腹部を切開しなくても、肛門から直腸の奥深くまで届き、顕微鏡を見ながら正確な手術ができるという手術法です。筋肉も含めてカルチノイド細胞を完全に切除し、縫合もきれいにできるとされています。

腫瘍が肝臓に転移している場合、手術で治すのは困難ですが、症状が緩和されることがあります。腫瘍の増殖は遅いので、腫瘍が転移している人でさえ、10〜15年生存することがしばしばあります。

進行した場合、一般のがんと同様に放射線療法や、抗がん剤による化学療法を含めた集学的治療を行います。ストレプトゾシンにフルオロウラシル、時にはドキソルビシンなどの抗がん剤の併用によって、症状を緩和できることがあります。オクトレオチドもホルモン産生や腸の収縮を抑制して症状を緩和し、タモキシフェン(ホルモン剤)、インターフェロンアルファ(生物学的応答調節剤)、エフロルニチンは腫瘍の増殖を抑制します。

カルチノイド症候群による紅潮を抑えるためには、フェノチアジン、シメチジン、フェントラミンが使用されます。

🟥千葉県旭市の農場のうずら10万羽余り、鳥インフルエンザで処分

 千葉県旭市にある農場で死んだうずらから「高病原性」の疑いがある鳥インフルエンザウイルスが検出され、県はこの農場で飼育されているおよそ10万8000羽の処分を始めた。千葉県内で鳥インフルエンザの感染が確認されたのは今シーズン初めてである。全国では18例目。  千葉県によると、2...