2022/08/21

🇧🇳前庭神経鞘腫

脳の腫瘍による障害が聴神経に及び、聴力が低下する疾患

前庭神経鞘腫(ぜんていしんけいしょうしゅ)とは、脳の聴神経の回りを鞘(さや)のように覆っているシュワン細胞から発生する非がん性の腫瘍。聴神経腫瘍(しゅよう)、聴神経鞘腫、第8脳神経腫とも呼ばれます。

聴神経には、聴覚に関係する蝸牛(かぎゅう)神経と、平衡感覚に関する前庭神経があります。腫瘍は通常、前庭神経から生じますが、前庭神経と一緒に脳から出る蝸牛神経に障害が及んで聴力の低下が生じることが多いので、前庭神経鞘腫という疾患名が付けられています。

良性の腫瘍であり、非常にゆっくりとしたスピードで大きくなります。腫瘍が成長するのに時間がかかるので、これによる症状が出現するまでには何年もかけて大きくなってきていることが多いと思われます。まれに、短期間で腫瘍が大きくなることもあります。

前庭神経鞘腫の初期症状として最も多いのは、聴力の低下。腫瘍は聴神経の回りを覆っているシュワン細胞から発生するので、まず一番に聴神経を圧迫して、腫瘍のある側の耳の聞こえが悪くなるという症状が出現します。聴力の低下は徐々に出現するため、初めのうちは本人もあまり意識しないこともあるものの、悪いほうの耳では電話の声が聞こえにくいなどの兆候があったりします。

突然耳が聞こえなくなる突発型難聴を起こすものも、少なくありません。耳の聞こえがよくなったり悪くなったり、聴力の程度が変動することもあります。その他の初期症状として、片側の耳のみの耳鳴り、めまい、急に向きを変えるとバランスを失ったり、ふらつくなどがみられます。

腫瘍が大きくなって、顔面神経や三叉(さんさ)神経といった脳の他の部分の神経を圧迫すると、顔面のしびれ、顔の筋肉の脱力やまひ、嚥下(えんか)障害などが生じます。

前庭神経鞘腫の原因は明らかではないものの、遺伝したりするものではありません。神経線維腫症といって特殊例として両側に腫瘍が生じるものでは、遺伝性の原因が明らかにされています。

多くのケースでは、片側の耳の聞こえの悪さを覚えて耳鼻科を受診し、頭のCTスキャンなどの検査をして、腫瘍が見付かるという経過をとります。

前庭神経鞘腫の検査と診断と治療

片側の耳の聞こえが徐々に悪くなってきたり、めまいの発作を繰り返すなどの症状がある場合は、前庭神経鞘腫の可能性を疑って、まず耳鼻咽喉(いんこう)科の専門医を受診します。

聴力検査、音刺激に反応する脳波を調べる聴性脳幹反応、平衡機能(めまい)検査により前庭神経鞘腫が疑われる場合は、頭部MRIによる画像検査が行われます。特に、造影剤を静脈に注射しながら行う造営MRI検査では、小さい腫瘍も見付けることができます。そのほかにも、頭部の単純レント ゲンや、CTスキャンの検査が行われ、他の脳神経に異常がないかどうかを調べます。

治療は大きく、手術療法と放射線療法に分かれます。手術療法には、腫瘍が発生した部位や大きさ、残存聴力などに応じていくつかの手術方法があり、耳鼻咽喉科または脳外科が担当します。顕微鏡を用いた手術であるマイクロサージャリーが、行われることもあります。

マイクロサージャリーは、耳の後ろの部分の皮膚に小さな切開を加え、顕微鏡で拡大しながら周辺の脳神経を損傷しないように注意を払って、腫瘍を摘出します。通常10日から2週間程度の入院期間が必要です。

放射線療法には、ガンマナイフまたはリニアックによる治療法があり、腫瘍を消失させるのではなく、腫瘍が大きくなるのを抑えることを目的としています。それぞれの治療法は、聴力の悪化、顔面神経まひなど合併症に関して長所と短所があり、専門医の説明をよく聞いて選択します。

前庭神経鞘腫は比較的ゆっくり成長する良性腫瘍であるため、高齢者で腫瘍が小さい場合には治療を行わずに経過をみることもあります。

🇲🇾先天性陰茎湾曲症

生まれ付きにより、男性の陰茎が勃起した時に湾曲する状態

先天性陰茎湾曲症とは、生まれ付き備わっていることにより、男性の陰茎が勃起(ぼっき)した時に根元から、あるいは途中から湾曲する状態。

上下に曲がる場合や左右に曲がる場合、両方が混在した場合などがあり、陰茎の中ほどから下方向にへの字型に折れ曲がる場合が一番多くみられます。勃起していない時はほとんど目立たない場合が多いのですが、勃起すると明らかな曲がりが確認できます。

湾曲が強いと勃起自体に陰茎の痛みが伴うことがあるものの、勃起していない状態では陰茎の痛みはありません。陰茎の湾曲のほか、勃起弱化が起こることもあります。

ほとんどの男性の陰茎はどこかの方向に曲がっているものの、大半は真っすぐといえる範囲に収まっています。先天性陰茎湾曲症でも軽度の湾曲は問題ないものの、陰茎の湾曲が強ければ、パートナーの女性の腟(ちつ)内への挿入は不可能となり性交ができなくなります。

先天性陰茎湾曲症では、生まれ付き尿道の出口が陰茎の先より根元側にある尿道下裂に伴って、陰茎が下方向に屈曲するものが多数派で、尿道下裂に伴わずに左右やまれに上方向に屈曲する陰茎湾曲症も存在します。

陰茎は、主に3つの海綿体で構成されています。陰茎の下側に尿道海綿体があり、中に尿道が通っています。その尿道海綿体の上方に、勃起に関係する2つの陰茎海綿体があります。尿道下裂に伴わない先天性陰茎湾曲症では、この陰茎海綿体の発育のバランスがすでに胎児の時点で取れていないために、長じるに及んで勃起した時に湾曲が生じます。陰茎自体の発育は、ほぼ正常です。

先天性陰茎湾曲症の原因となる尿道下裂は、尿道の出口が陰茎の先端になくて、陰茎の途中や陰嚢(いんのう)などにある先天的な尿道の奇形で、陰茎背面の包皮が過剰なために、陰茎が下に向くことが多く認められます。

尿道の出口の位置によって、会陰(えいん)、陰嚢に出口がある近位型、陰茎、冠状溝(かんじょうこう)、亀頭(きとう)に出口がある遠位型という分類や、上部型、中部型、下部型という分類があります。

発生頻度は軽症のものを含めると、男児出生300~500人に1人の頻度でみられ、近年は増加傾向にあります。明らかな遺伝性はわかっていませんが、父親や兄弟での家族内発生が認められます。

奇形の原因は、尿道が発達する段階で陰茎の腹側で尿道がうまくくっつかなかったことや、胎児の精巣が作り出すホルモンの異常、母親が妊娠中に受けたホルモンの影響などが考えられており、近年の増加は環境ホルモンの影響が疑われています。

胎生8~9週に尿道の原基となる溝ができ、9週ごろから胎児の精巣から分泌されるテストステロン(男性ホルモン)により陰茎と尿道の形成が進みます。この段階でホルモンの産生や作用の異常が起きると、うまく尿道が形成されなくなると考えられます。尿道が形成されなかった組織が、陰茎の下方向への屈曲の原因になっています。

症状は、尿道の出口が正常の位置と違っているために、排尿する際に尿が飛び散ることです。奇形の程度が強い場合は、男児でありながら立小便ができないことがあります。陰茎が曲がっていることが多く、特殊な場合として、尿道の出口は正常で陰茎の屈曲だけがみられることもあります。

合併症として、尿道の出口が会陰、陰嚢に開く近位型では、停留精巣、矮小(わいしょう)陰茎、前立腺(せん)小室、二分陰嚢などが多いとされています。

男児に尿道下裂の症状が認められた場合は、合併症の有無を含めて、早期に小児泌尿器科もしくは小児外科の医師に相談すべきです。停留精巣や陰嚢の発育不全を伴う場合には、性分化異常の可能性もあるので、染色体検査や精巣機能検査を行ったほうがよいとされています。

先天性陰茎湾曲症は勃起した時に陰茎が曲がってしまうため、パートナーの女性との性行為の際にペニスを膣に挿入しにくかったり、挿入後にすぐに抜けてしまったり、女性が痛がったり、男性自身も亀頭部の摩擦が多くて痛みを生じるなどという問題が生じやすくなります。

変形によるコンプレックスや、勃起に伴う陰茎の痛みに対する不安など、精神的なストレスから勃起不全(インポテンツ)に陥ることもあります。

先天性陰茎湾曲症の検査と診断と治療

小児泌尿器科、小児外科、泌尿器科、外科などの医師による診断では、先天性陰茎湾曲症の大部分の原因となっている尿道下裂の有無、発症の時期、陰茎知覚異常の有無、勃起硬度の程度などを問診します。

さらに、陰茎にしこりがあるかどうか触診します。しこりがあれば、後天性陰茎湾曲症である陰茎形成性硬結症(ペロニー病)も疑います。超音波検査やMRI検査を行うと、しこりの厚さや大きさを観察できます。陰茎知覚異常がある場合には、振動覚測定を行います。

尿道下裂が認められ、家族内発生があった場合や、奇形の程度が高度な場合には、半陰陽と区別するために染色体検査、ホルモン検査、内性器と性腺の確認のために内視鏡検査を行います。

小児泌尿器科、小児外科、泌尿器科、外科などの医師による尿道下裂の治療では基本的に、ごく軽度の場合を除いて、手術による形成術が行われます。治療の目的は、正常な立位による排尿が行えることと、将来の性生活が支障なく行えることにあります。また、患児の男性としての自覚、精神発達に大きな影響を及ぼすため、機能だけでなく美容上の面からも満足するようにすべきです。

手術は通常、日本では1~3歳で行われますが、欧米では10カ月前後で行われています。1~2歳で亀頭、包皮の発育が十分であれば、対象になります。矮小陰茎では、テストステロン軟こうなどで陰茎の発育を促します。

形成術には、陰茎索の切除をまず行ってから形成術を行う二期手術と、一期的に行う手術とがあり、200以上の術式があるといわれています。奇形が高度な場合は二期手術をすることもありますが、近年は縫合糸、マイクロ機器の発達で一期手術が多く行われており、包皮を用いて尿の出口を新しく作り、曲がった陰茎をできるだけ真っすぐにし、必要な場合は亀頭の形成を行います。この形成術は非常に繊細なため、熟練した小児外科医が慎重かつ丁寧に行う必要があります。

手術後の合併症としては、尿道の途中から尿が漏れて皮膚と交通したり、新しくつないだ尿道が狭くなったり、陰茎が屈曲したりすることが起こりやすく、再度手術が必要になることも少なくありません。

生まれ付きテストステロン(男性ホルモン)が少ないため、手術後の思春期以降に陰茎が短いという訴えもみられます。この場合には、ホルモン療法を行うこともあります。

小児泌尿器科、小児外科、泌尿器科、外科などの医師による尿道下裂に伴わない先天性陰茎湾曲症治療では、性交渉に障害が出るような場合やその可能性が高い場合、性交経験がなくても湾曲が強く将来的に性交渉に障害が出る可能性が高い場合、本人が希望すれば手術を行います。

手術を行った場合、尿道海綿体を周囲組織から剥離(はくり)するだけで整復できることもありますが、 ほとんどは湾曲した形状の原因となっている陰茎海綿体を包む白膜(はくまく)という結合組織を切除します。方法としては、曲がる方向の反対側の白膜を切除して縫い縮める縫縮法(プリケーション法)で、勃起した時に真っすぐになるように矯正します。

手術では、確実に湾曲を治すことができます。しかし、長いほうの白膜を切除することにより治すため、結果的に陰茎の短縮を伴いますので、移植手術などで陰茎海綿体や尿道の延長を行うこともあります。1時間30分ぐらいの手術で、3日間程度の入院が必要です。

近年は、治療ができない場合、いくつかの手術も行われます。真皮(脂肪)移植や、陰茎海綿体の中に支柱材を埋め込むプロステーシス手術です。

🇲🇾先天性黄斑変性症

眼球内部の網膜にある黄斑に、進行性の変性がみられる遺伝性の疾患群

先天性黄斑(おうはん)変性症とは、眼球内部の網膜にある黄斑に進行性の変性がみられる目の疾患の総称。黄斑ジストロフィーとも呼ばれ、ジストロフィーとは遺伝子の異常により組織や臓器が徐々に変性することを指します。

先天性黄斑変性症と一口にいっても疾患の種類は多数あり、先天網膜分離症(若年網膜分離症)、錐体(すいたい)ジストロフィー、卵黄状黄斑変性(卵黄状黄斑ジストロフィー)、スタルガルト病(黄色斑眼底)、網膜色素変性症、オカルト黄斑ジストロフィー、家族性ドルーゼン(網膜ジストロフィー)、家族性滲出(しんしゅつ)性硝子体(しょうしたい)網膜症などがあり、症状もそれぞれ異なります。先天性黄斑変性症のいくつかでは、どの遺伝子に異常があるのかがわかっています。

眼球内部にある黄斑は、光を感じる神経の膜である網膜の中央に位置し、物を見るために最も敏感な部分であるとともに、色を識別する細胞のほとんどが集まっている部分。網膜の中でひときわ黄色く観察されるため、昔から黄斑と呼ばれてきました。

この黄斑に変性がみられると、視力に低下を来します。また、黄斑の中心部には中心窩(か)という部分があり、ここに変性がみられると、視力の低下がさらに深刻になります。

先天性黄斑変性症には、網膜よりさらに外側に位置している脈絡膜から、異常な血管である新生血管(脈絡膜新生血管)が生えてくることが原因で起こる滲出型と、新生血管は関与せずに黄斑そのものが変性してくる非滲出型(委縮型)の二つのタイプがあります。二つのタイプとも、両目の黄斑に変性がみられます。

新生血管とは、網膜に栄養を送っている脈絡膜から、ブルッフ膜を通り、網膜色素上皮細胞の下や上に伸びる新しい血管です。正常な血管ではないため、血液の成分が漏れやすく、破れて出血を起こしてしまいます。

滲出型の初期では、物がゆがんで見える変視症や、左右の目で物の大きさが違って見えるなどの症状を自覚するケースが多くみられます。新生血管が破れて黄斑に出血を起こすと、見たい物がはっきり見えない急激な視力低下や、見ようとする物の中心部分が丸く黒い影になって見えなくなる中心暗点という症状が出現します。病巣が黄斑に限られていれば、見えない部分は中心部だけですが、大きな出血が起これば、さらに見えにくい範囲が広がります。病状が進行すると、視力が失われる可能性があります。

非滲出型(委縮型)の場合は、黄斑の変性が強く現れた状態で、網膜色素上皮細胞が委縮したり、脈絡膜の血管に委縮性の変化が生じて、徐々に視力が低下します。疾患の種類によって違いますが、視力低下のほか、見ようとする物の中心部分がぼやけたり、中心部分が丸く黒い影になって見えなくなる中心暗点、物がゆがんで見える変視症、明るい光をまぶしく感じる羞明(しゅうめい)、色覚異常などの症状が現れます。症状が進んでくると、視力が0・1~0・2まで下がるなど顕著な視力低下が起こります。最終的には、中心部が全く見えなくなってしまいます。

先天性黄斑変性症は疾患の種類によって、ある程度年齢が高くなってから症状が現れることも、幼少時にすでに発症していて気付いた時にはかなり進行していることもあります。

先天性黄斑変性症の検査と診断と治療

眼科の医師による診断では、両眼対称性であること、進行性であること、家族にかかった人がいること、薬物や感染症など外因がないことなどが重要な手掛かりになります。フルオレセイン蛍光眼底検査、網膜電図などの電気生理学的検査も、診断を確実にするには必須です。異常を起こす遺伝子が突き止められている先天性黄斑変性症のいくつかでは、遺伝子の検索も決め手になります。

残念ながら、先天性黄斑変性症の多くでは有効な治療法は見いだされていませんので、視力の大幅な低下を避けることはできません。

新生血管が生えてくることが原因で起こる滲出型の場合、治療の方法は新生血管の位置によって変わってきます。新生血管が中心窩から離れているケースでは、新生血管をレーザーで焼く光凝固が治療の方法となります。新生血管が中心窩に近いケースでは、治療が困難な例が多くなります。新生血管のレーザー光凝固を行うと中心窩も損傷を受けて、さらに視力が低下する危険性が高いからです。そこで、新生血管の栄養血管の光凝固、抗血管新生薬などの治療法が行われます。

先天性黄斑変性症の多くでは、症状に応じて遮光眼鏡、弱視眼鏡、拡大読書器、望遠鏡などの補助具を使用することが有用で、周辺視野と残った中心視を活用できます。その他のリハビリテーションも重要です。

いつの日か、先端的医療の進歩が根本的な治療法を可能にすることも期待されていますが、弱視学級や盲学校での勉学、職業訓練など、将来を見通して現実的に対応することが有益でしょう。

🇲🇾先天性気管狭窄症

生まれ付き、空気の出し入れを行う気管が細い疾患

先天性気管狭窄(きょうさく)症とは、のどから肺までの気管が生まれ付き細い疾患。医学が進歩した現在でも、治すことが難しい疾患の1つに挙げられています。

気管は、空気の出し入れを行う道に相当します。正常な気管は全周の80パーセントの気管軟骨と20パーセントの膜様部と呼ばれる薄い膜でできていますが、この疾患の大部分は膜が欠如していて、軟骨が気管の全周を占めています。これは、気管軟骨の形成異常のために生じると考えられています。

正常な気管は首を動かしても軟骨の輪をつないでいる膜様部が自由に伸び縮みして、空気の出し入れが妨げられることはありません。また、大きな呼吸をすると膜様部が伸びて気管の内腔(ないくう)を大きく開き、空気の出し入れを容易にします。先天性気管狭窄症では、これらの働きが大なり小なり障害されます。

気管の狭窄の程度や、狭窄の長さ、また狭窄が起きる気管の部位によって、疾患の発生時期や重症度が変わってきます。内腔が極端に細い場合には、生まれて間もなく生じる呼吸困難のために発見されます。内腔が半分くらいある場合には、1歳をすぎてから見付かることもあります。狭窄の程度が軽度である場合には、無症状に推移することもあります。

多くの場合は、生後1〜2カ月頃から呼吸困難や、呼吸時のゼーゼー、ヒューヒューという喘鳴(ぜんめい)音が発生し、時には突然呼吸困難に陥り、気管内にチューブを入れようとして入らないために生後比較的早い時期に見付かります。

狭窄の形と狭窄の長さはさまざまで 、狭窄の長さは気管の20~30パーセント程度から、気管全体が細い場合もあります。狭窄の長さが長いほど、狭窄の部位が気管の下にあるほど、疾患の程度は重いと考えられています。

気管支の分岐に異常を起こす気管気管支炎を合併していたり、肺動脈による血管輪症を合併することも多く、先天性心疾患の合併も多くみられます。かつては数万人に一人のまれな疾患と考えられていましたが、診断法の進歩や疾患に対する理解から、以前より多い頻度で発見されるようになっています。

先天性気管狭窄症の検査と診断と治療

医師による診断では、胸部単純撮影、MRI、3次元CT(3DCT)、硬性気管支鏡検査、並びに気管支造影が行われます。硬性気管支鏡検査は、狭窄起始部の同定、狭窄の範囲、末梢(まっしょう)気管支の状態の検索のために必須です。他の疾患を合併している場合には、他の検査も行われます。

保存的な治療としては、狭窄の程度が軽く、呼吸症状が軽度な場合に、去たん剤、気管支拡張剤、抗生物質を投与し、経過観察します。成長とともに狭窄部気管が拡大し、症状が軽減していくこともあります。しかし、気道感染などを切っ掛けに、急激に症状が悪化することもあります。

外科的な治療としては、気管の狭窄の長さがごく限られている場合には、細い気管を切除し、上下の気管を縫い合わせます。狭窄が長い場合は、さまざまな気管形成術が行われています。まず、狭窄部の気管前壁を縦に切開し、切開部に肋(ろく)軟骨、骨膜、心膜などの自家グラフトを当て、内腔を拡大する方法があります。気管後壁を縦に切開し食道壁を用いて拡大する方法や、内視鏡下に狭窄部をバルーン拡張したり、その後にステントを留置して拡大を図る方法もあります。

🇸🇬先天性QT延長症候群

突然、脈が乱れて不整脈発作や失神発作を起こし、突然死に至ることもある遺伝性の疾患

先天性QT延長症候群とは、心臓の細胞に生まれ付き機能障害があるために、突然、脈が乱れる不整脈発作や失神発作を起こしたり、時には突然死に至ることもある先天性の疾患。

医療機関において、心臓の動きをコントロールしている電気刺激の変化を記録する心電計で検査すると、心電図に現れるQTと呼ばれる波形の部分の間隔(QT時間)が、正常な心臓に比べて長くなることから、この疾患名が付けられています。

常染色体優性遺伝を示す遺伝性の疾患で、性別に関係なく50%の確率で親から子供に遺伝しますが、症状には個人差が大きく、遺伝子に異常があっても必ずしも不整脈発作の症状が現れるとは限りません。まれですが、先天性聾(ろう)と呼ばれる生まれ付きで両耳の聴力障害を伴うものは、常染色体劣性遺伝を示します。

心臓は収縮と弛緩(しかん)を絶えず繰り返していますが、この先天性QT延長症候群では、心臓の筋肉である心筋細胞が収縮して全身に血液を送り出した後、収縮前の状態に戻る時間が延長するために、心筋細胞が過敏になって不整脈発作を起こしやすくなります。

QT延長症候群には先天性と後天性とがありますが、学童期などの若年から指摘される先天性QT延長症候群は、心筋細胞の収縮と弛緩に関係する遺伝子に異常があるために起こります。一方、比較的年齢が高くなり、薬剤使用や徐脈に伴って起こる後天性QT延長症候群も、遺伝子の異常がかかわっています。

先天性QT延長症候群の原因は現在、2つが考えられています。1つは、心筋細胞にあるイオンチャネルと呼ばれる経路の異常です。心臓が規則正しく収縮と弛緩を繰り返すには、心臓の上部にある洞結節(どうけっせつ)と呼ばれる部分が1分間に60~80回発生させている電気刺激が正しく伝えられることが重要です。電気刺激を正しく伝えるため、心筋細胞はイオンチャネルという経路を使ってナトリウムやカリウムなどのイオンを出し入れしていますが、このイオンチャネルが正常に働かなくなり、電気刺激が正しく伝えられなくなると、脈が乱れる不整脈発作が起きやすくなります。

イオンチャネルの異常は、イオンチャネルを作る際に使った設計図の誤り、すなわち遺伝子の異常で起こります。現在では4種類のイオンチャネルに遺伝子の異常が見付かっていますが、この4種類のイオンチャネルの遺伝子に異常が見付からない場合も多く、ほかの種類のイオンチャネルにも異常があるのではないかと考えられます。

もう1つの原因は、心臓に指令を出す交感神経の異常です。交感神経は、背骨の横に左右1本ずつあり、正常では左右の交感神経から収縮と弛緩を繰り返すように心臓に送られる指令は、バランスが保たれています。先天性QT延長症候群では、左側の交感神経の働きが右側より勝っており、バランスが崩れています。交感神経のアンバランスがなぜ起こるかは、わかっていません。

その実数は不明ですが、先天性QT延長症候群は2500〜5000人に1人程度の発症者が存在すると推定されています。

先天性QT延長症候群は原因遺伝子により、不整脈発作の切っ掛けや治療薬の効き方が変わってきます。重症度には個人差が大きく、遺伝子に異常があっても症状が現れない場合があることも知られています。

症状としては、不整脈発作による動悸(どうき)、立ちくらみ、気分不快や、失神発作、けいれん発作などがあります。発作の多くは、短時間で自然に回復しますが、心室期外収縮や多形性心室頻拍から心室細動となり、回復しない場合は突然死に至ることもあります。

また、失神発作、けいれん発作は、てんかんと間違えられることもよくあります。先天性聾、四肢の脱力、身体奇形などを伴うものもあります。

抗不整脈薬と、日常生活における発作誘因の回避で、突然死に至るような致死性不整脈発作はかなり予防できます。正しい診断がとても大切ですので、小児循環器科、循環器科などの不整脈の専門医を受診することが勧められます。

先天性QT延長症候群の検査と診断と治療

小児循環器科、循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による診断では、発作の既往歴、家族歴などから先天性QT延長症候群が疑われた場合は、心電図でQT時間の延長とT波と呼ばれる波の形の変化を確認します。検査の際に、運動や薬剤による負荷をかけることで、QT時間の延長がよりはっきりすることがあります。

遺伝子診断は、治療薬の選択や適切な生活指導のために有効です。近年では、原因遺伝子の型のみではなく、各原因遺伝子の変異部位によって重症度が異なることがわかってきており、QT時間や遺伝子型、あるいは変異部位に基づいて、リスク評価を行い、治療法を決定します。

小児循環器科、循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による治療では、不整脈発作の予防のために、β(ベータ)遮断薬、ナトリウムチャネル遮断薬、カルシウム拮抗(きっこう)薬などの抗不整脈薬を内服します。

内服薬の効果がない場合は、植え込み型除細動器(ICD)、交感神経切除術などによる治療を考慮します。

植え込み型除細動器(ICD)は、致命的な不整脈が起きても、それを自動的に感知して止めてしまう装置で、通常、左の胸部に植え込みます。鎖骨下の静脈に沿ってリード線を入れ、心臓の内壁に固定します。

交感神経切除術は、心臓に指令を送る左側の交感神経を首から胸にかけて切断します。

後天性QT延長症候群により、脈が正常よりも極端に遅くなる徐脈性不整脈を起こしている場合は、脈を正常まで速めて発作が起こりにくいようにするため、恒久型ペースメーカーの植込みによる治療を考慮します。

ペースメーカーは、徐脈時には電気刺激を出して心臓の拍動を調整する装置で、脈の状態は心臓の中に留置したリード線を通して察知します。手術で、ライターほどの大きさのペースメーカーを鎖骨の下に埋め込みます。

日常生活においては、不整脈発作の誘因となる激しい運動や精神的興奮、驚愕を避ける、発作を誘発しやすい薬剤は服用しないなどの注意が必要です。

🇸🇬先天性QT短縮症候群

脈が乱れて不整脈発作や失神発作を起こし、突然死に至ることが、まれにある遺伝性不整脈

先天性QT短縮症候群とは、心筋細胞に生まれ付き機能障害があるために、突然、脈が乱れる不整脈発作や失神発作を起こしたり、時には突然死に至ることがまれにあり得る疾患。

医療機関において、心臓の動きをコントロールしている電気刺激の変化を記録する心電計で検査をすると、心電図に現れるQTと呼ばれる波形の部分の間隔(QT時間)が、正常な状態の心臓に比べて短くなることから、この疾患名が付けられています。

先天性QT短縮症候群は、極めてまれな遺伝性の疾患で、正確な発生頻度は明らかになっていません。症状には個人差が大きく、遺伝子に異常があっても必ずしも不整脈発作の症状が現れるとは限りません。

心臓は収縮と弛緩(しかん)を絶えず繰り返していますが、この先天性QT短縮症候群では、心臓の筋肉である心筋細胞が収縮して全身に血液を送り出した後、収縮前の状態に戻る時間が通常よりも短縮するために、心筋細胞が過敏になって不整脈発作が起こりやすくなります。

先天性QT短縮症候群の原因は、心筋細胞にあるイオンチャネルと呼ばれる経路の異常です。心臓が規則正しく収縮と弛緩を繰り返すには、心臓の上部にある洞結節(どうけっせつ)と呼ばれる部分が1分間に60~80回発生させている電気刺激が正しく伝えられることが、重要になります。電気刺激を正しく伝えるため、心筋細胞はイオンチャネルという経路を使ってナトリウムやカリウム、カルシウムなどのイオンを出し入れしていますが、このイオンチャネルが正常に働かなくなり、電気刺激が正しく伝えられなくなると、脈が乱れる不整脈発作が起きやすくなります。

イオンチャネルの異常は、イオンチャネルを作る際に使った設計図の誤り、すなわち遺伝子の異常で起こります。先天性QT短縮症候群では、これまでに6個の原因遺伝子が報告されています。最も多いQT短縮症候群1型(SQT1)の遺伝子の異常は25%程度に認められるとされていますが、そのほかの原因遺伝子の検出頻度は低くなります。

また、先天性QT短縮症候群の遺伝子異常は、常染色体優性遺伝の形式をとり、子孫に代々受け継がれて家族性に発症する場合もあり、家族には認めずに本人にのみ遺伝子異常が出現する場合もあります。

無症状の場合もありますが、まれに心室頻拍や心室細動などの不整脈が発生して失神したり、心停止や突然死に至ったりすることもあります。症状が起こる可能性は、小児から成人のあらゆる年齢層にあります。

一度でも心停止を起こしたことがある場合、失神または不整脈が出現している場合、家族に同様の発症者がいる場合は、リスクが高いことが予想され、小児循環器科、循環器科などの不整脈の専門医を受診し、適切な検査と治療を受けることが勧められます。

先天性QT短縮症候群の検査と診断と治療

小児循環器科、循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による診断では、不整脈発作や失神発作の既往歴、家族歴などから先天性QT短縮症候群が疑われた場合は、心電図でQT時間の短縮を確認します。

QT時間で280~300ms(ミリ秒)以下、心拍数で補正したQTc時間(補正QT時間)で300~320ms(ミリ秒)以下がQT短縮とされていますが、QTc時間(補正QT時間)が330ms(ミリ秒)以下の場合は、先天性QT短縮症候群である可能性が高くなります。

一般的に通常の心電図検査は限られた時間の中で情報を集めますが、詳しく検査する場合はホルター心電計を利用します。これは胸に電極をつけて24時間にわたる心電図を記録する携帯式の小型の装置で、運動中や食事中、就寝中などでのQT短縮や不整脈の出現頻度と出現形態を確認できます。

また、基礎心疾患の有無や運動前後でのQT短縮や不整脈の出現頻度をみる目的で、心臓超音波検査や運動負荷心電図を行います。

遺伝子診断は、治療薬の選択や適切な生活指導のために有効有効であるものの、症状を伴う先天性QT短縮症候群でも現状、遺伝子診断率は低くなっています。

小児循環器科、循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による治療では、無症状で家族に同様の発症者がいない場合、家族に突然死した人がいない場合は、経過観察を行います。

心室頻拍や心室細動が出現した場合、原因不明な失神を繰り返している場合、家族に同様の発症者がいたり突然死した人がいる場合は、心停止リスクが高いため小児から成人まで年齢を問わず、植え込み型除細動器(ICD)を植え込むことがあります。また、一度でも心停止を起こしたことがある場合も、植え込み型除細動器(ICD)を植え込みことが第一選択の治療法となります。

植え込み型除細動器(ICD)は、致命的な不整脈が起きても、それを自動的に感知して止めてしまう装置で、通常、左の胸部に植え込みます。鎖骨下の静脈に沿ってリード線を入れ、心臓の内壁に固定します。

QT時間を延長させる薬がいくつかあり、抗不整脈薬であるキニジンの内服、ニフェカラントやジソピラミドの点滴静脈注射を行うこともありますが、QT時間を安定して延長することはできません。

🇸🇬先天性巨大結腸症

腸管が細くなって慢性の便秘になり、大腸が拡張する先天性疾患

先天性巨大結腸症とは、腸管が細くなって慢性の便秘になり、大腸が拡張する先天性疾患。ヒルシュスプルング病とも呼ばれます。

大腸や小腸など消化管の壁の中には、神経節細胞があります。その細胞の刺激により、蠕動(ぜんどう)運動と呼ばれる消化管環状筋(輪状筋)の伸び縮みが起こり、口から摂取した食物は腸管を経由して消化され、便となって肛門(こうもん)から排出されます。

先天性巨大結腸症は、この神経節細胞が先天的に欠損しているため腸管が細くなり、蠕動運動が起こらないために慢性の便秘となり、大腸の大部分を占める結腸が拡張します。

消化管の蠕動運動には、食べ物を後戻りさせない機能があり、周期的に環状の伸び縮みを次々と下部に伝え、食物塊を肛門側へ移動させる役割を果たしています。この蠕動運動は自律神経の働きによって行われているので、人間が意識的に調整したり、活発にさせることはできません。

先天性巨大結腸症は1886年に、デンマークの内科医ハラルド・ヒルシュスプルングによって初めて報告されました。

日本では出生5000人に1人の頻度でみられ、男児が女児の3倍多いとされています。原因については、いくつかの遺伝子情報の異常が深くかかわっていることが明らかにされつつありますが、十分には解明されてはいません。

生まれてすぐの新生児では、胎便の排出が遅れることが最初の症状です。排便、排ガス(おなら)ができず、腹部は風船のように膨満してきます。ほ乳力が低下し、濃緑色の胆汁の色に染まったものを嘔吐(おうと)したり、症状が進むと体重増加不良や栄養不良が現れてくることもあります。

また、嘔吐で塩分が失われるため、体内の塩分(電解質)バランスも崩れます。嘔吐物を肺に吸い込んでしまうと、重い肺炎になります。重い腸炎や腸に壊死(えし)や穿孔(せんこう)が起こって、危険な状態になることもあります。腹部が張るために呼吸がうまくできなくなり、死に至ることもあります。

約9割は生まれてすぐに先天性巨大結腸症の症状が出てきますが、少数は1歳以降に症状が出てくることがあります。乳幼児では、慢性的な便秘などの排便障害がみられます。

症状の程度は、神経節細胞のない腸管の長さでおおよそ決まります。全体の約80パーセントは、直腸から比較的近いS状結腸までの部分に神経節細胞の欠損がみられます。12パーセントは直腸からS状結腸を越えて結腸までの部分に、5パーセントは全結腸と小腸の一部までの部分に、3・5パーセントは小腸の口側までの部分に神経節細胞の欠損がみられます。

新生児や乳幼児に頑固な便秘が続く場合は、小児科、ないし消化器科を受診することが勧められます。

先天性巨大結腸症の検査と診断と治療

小児科、消化器科の医師による診断では、新生児では胎便が排出された時期、乳幼児では排ガスが出ているか、何をどのくらい食べているか、便の性状と排便の頻度などを確認します。その後、腹部膨満の有無を確認し、肛門から指を入れる直腸指診でガスの噴出や便の有無を確認します。

腹部X線検査を行い、拡張した腸管ガス像が腹部全体に認められ、小骨盤内の腸管ガス像が欠如していれば、先天性巨大結腸症を疑います。

精密検査としては、肛門から腸の中に軟らかい造影剤を注入してX線撮影をする注腸造影検査を行い、大腸の肛門側の狭窄(きょうさく)と大腸の口側の拡張を確認し、肛門側と口側の口径差を確認します。

さらに、通常鎮静剤を用いて眠った状態で、直腸で風船(バルーン)を膨らませる肛門内圧検査を行い、直腸肛門反射と呼ばれる直腸が拡張した際に認められる肛門管圧の下降の欠如を確認します。また、直腸の粘膜を一部採って、特殊な染色を行った上で顕微鏡で調べる生検を行い、腸管壁内の神経節細胞の欠損に伴う外来神経の増加を組織学的に確認することもあります。

先天性巨大結腸症と区別する疾患には、生まれながらに肛門や腸が閉鎖している鎖肛や先天性腸管閉鎖症、上方の腸管が下方の腸管の中に入り込む腸重積(じゅうせき)症などがあります。

小児科、消化器科の医師による治療では、腸管壁内の神経節細胞が欠損した領域が非常に狭い場合は、浣腸(かんちょう)などでコントロールできることもあります。

ほとんどの場合は、腸管壁内の神経節細胞が欠損した領域を切除し、端々をつなぎ合わせる手術が必要です。手術は、小児外科という特殊な診療科で行います。

神経節細胞が欠損した領域の広さにより、根治手術を行う場合や、人工肛門を造設する場合もあります。根治手術には複数の方法がありますが、その基本は正常な腸管を肛門部に下ろして肛門から排便ができるようにすることです。近年は、腹腔鏡(ふくくうきょう)補助下手術や、開腹しない経肛門手術が導入されています。

また、根治手術はある程度の発育を待って行うため、それまでの間は、点滴栄養、肛門拡張、浣腸などで状態を保つことになります。生後3カ月以降、体重が5〜6キログラム以上で根治手術を行うのが一般的ですが、最近では早めに生後1カ月以降、体重4キログラム以上で行う傾向にあります。

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