厚生労働省は25日、社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の年金部会を開き、国民年金(基礎年金)制度改革の議論を本格化させます。保険料の納付期間を現行の20歳以上60歳未満までの40年間から、65歳未満までの45年間に延長する案を検討します。自営業者や、60歳以降は働かない元会社員らは負担が増します。企業の雇用延長などで65歳まで働く人は現在も保険料を払っており負担は変わりません。
5年に1度行っている年金の財政検証に合わせて、2024年に結論を出し、2025年の通常国会に関連法改正案の提出を目指します。
社会保障制度改革は、少子高齢化に伴う現役世代の減少により年金の受給水準が低下するのを少しでも食い止め、財源を確保するのが狙い。
公的年金制度は、20歳以上60歳未満のすべての国民が加入する国民年金を1階部分、会社員や公務員などが加入する厚生年金を2階部分とする2階建ての仕組みとなっています。国民年金の保険料は月1万6590円で、40年間納付し続けた場合の受給額は月約6万5000円。
年金部会では保険料の納付期間の延長に加え、厚生年金の財源の一部を国民年金に回すことも検討する見通し。これらを加味した厚労省の試算によると、自営業者らだけでなく、会社員らの受給額も現在とほぼ同水準を保てる可能性があるといいます。
人口動態を巡っては、2025年に団塊の世代が75歳以上となり、2042年には高齢者人口が3935万人でピークを迎えます。制度を持続可能なものにするため、年金の伸びを物価や賃金の伸びより低くする給付抑制策「マクロ経済スライド」があるものの、これにより国民年金のみの高齢者の生活はより苦しいものになることが予想されます。こうしたことを踏まえ、厚労省は見直しを急ぎます。
ただ、政府・与党は公的年金制度を「100年安心」とうたった経緯があり、保険料納付期間の延長には反発も予想されます。厚生年金の財源の一部を国民年金に回すことについても、会社員らから理解を得るのに時間がかかりそうです。
厚労省幹部は、「納付期間延長の話は前回の2019年の財政検証の際にも選択肢としてはあった。年金制度を維持するためには現行からの変更は待ったなしだ」と語っています。
2022年10月24日(月)