厚生労働省と経済産業省は6日、新型コロナウイルス感染症で亡くなった人の遺体の処置や葬儀に関するガイドライン(指針)の改定版を公表し、自治体に通知しました。遺体を包む「納体袋」を不要とするなど制限を大幅に緩和しました。コロナ以外の死亡者と同様に、故人に触れて最後の別れを告げることが可能となります。
ガイドラインは主に葬儀業者や医療機関に向けて、2020年7月に作成されました。コロナで亡くなった人の遺体や葬儀の対応について、これまでは▽体液に触れないよう納体袋に収容する▽遺体に触れることは控える▽通夜や葬儀は可能であれば開催を検討し、オンラインも推奨するなどと定めていました。厚労省は今回、国立感染症研究所の協力を得て、遺体からの感染率が極めて低いとの最新の知見に基づいて改定しました。
遺体の鼻などに詰め物をして体液の漏出を防ぐ処置を取れば、通常の遺体と同様の取り扱いが可能で、外傷などがある場合を除いて納体袋への収容は不要としました。「遺体との接触を控える」との記載は削除し、触れた場合は手指消毒を求めます。
火葬や葬儀は、遺族の意向を踏まえて原則執り行うよう求めました。従来、葬儀などへの参列を控えるよう求めてきた濃厚接触者の遺族については、検査での陰性確認を条件に出席を容認します。
改定版の運用は、それぞれの医療機関や葬儀業者で準備が整い次第、始められます。
厚労省がガイドラインの改定を行ったのは、コロナで亡くなった人の遺族から「最期の別れができなかった」と批判の声が高まっていたためです。
厚労省が昨年9~10月に全国の火葬場1162施設を対象に行った調査では、コロナ死亡者の遺族に火葬場への「入場を認めていない」と回答した施設は16%で、「入場の人数を制限している」(38%)と合わせると半数超が制限を設けていました。一般の火葬と時間帯を分けるなど「コロナ枠」を設けている火葬場は6割超に上りました。
厚労省は一部で過剰な対応が取られているとして、改定版では一般の火葬と時間帯や動線を分けたり、拾骨を制限したりすることは不要と明記しました。
指針の改定について、葬儀業界の関係者は「遺族に寄り添う内容の指針となり、よりよい最期の別れの実現につながるのではないか」と評価する一方、「業者や遺族にとって大きな運用変更になる。国は相談窓口を設け、新たな指針の内容や制限緩和の根拠について、広く国民に周知してほしい」と注文を付けました。
2023年1月7日(土)