献血から造られる血液製剤の余剰分について、国内メーカーによる海外輸出が2月中にも開始されることが、明らかになりました。輸出は1966年から停止されており、半世紀ぶりの再開となります。血液製剤は血友病患者用で、政府は医療提供体制が行き届いていない途上国の治療支援につなげたい考えです。
日本血液製剤機構(東京都港区)が2月にも「世界血友病連盟」(カナダ)に無償提供し、血液製剤が手に入りにくい途上国などに届けられる見込み。「KMバイオロジクス」(熊本市)も、来年度中に海外への販売を開始する見通しになっています。
血友病は血が固まりにくくなる病気で、必要な血液製剤の量は症状などによって異なります。同機構が今回無償提供する血液製剤は、百数十人の緊急手術に対応できる量といいます。
献血由来の血液製剤は、かつて輸出が認められていたものの、ベトナム戦争での軍事目的の使用を防ぐため、1966年に禁じられました。それ以降も、国内での供給量確保が優先されてきました。
献血で得た血液からは、輸血用の血液製剤に加えて、感染症など治療目的に応じた血液製剤が造られます。治療目的に応じた血液製剤は、メーカー3社が日本赤十字社から血漿(けっしょう )の成分を購入して製造しています。このうち血友病患者用については近年、国内自給率が100%に達し、余った血漿成分は使われてきませんでした。
一方で、途上国には血液製剤メーカーがない国が多くみられます。世界血友病連盟の報告書では、世界には約80万人の患者がいるとされます。このうち50万人超が治療を受けられていないとの推計もあり、国内の患者団体などからは、余剰分の有効活用を求める声が出ていました。
国は2018年に関係法令を改正し、余剰分で造った血液製剤に限って輸出の解禁を決めました。その後、厚生労働省がメーカー側と協議し、血友病患者用を輸出することになりました。日本血液製剤機構では来年度も、無償提供する方針です。
血友病に詳しい国立病院機構大阪医療センターの西田恭治医長は、「先進国は途上国の患者の支援に乗り出しており、日本もその流れにようやく乗ることができる。日本の血液製剤は品質や安全性が高く、途上国の期待は大きい」と話しました。
2023年2月8日(水)