新型コロナウイルス治療薬としては未承認の抗ウイルス薬「アビガン」(一般名・ファビピラビル)が、千葉県内の公立病院で国の通知に違反して外来患者に処方された問題で、厚生労働省は19日までに、不適切な使用例は全国5医療機関計429人で確認されたとする調査結果をまとめました。うち2人は感染者の接触者でした。健康被害の報告はないといいます。
厚労省は、国内でコロナの承認薬がない状態だった2020年春、2014年に新型インフルエンザの治療薬として製造販売が承認され、新型インフルエンザ用に備蓄していたアビガンの処方を「観察研究」という枠組みで認めました。ただし動物実験で胎児に奇形が生じる副作用が確認されていたため、対象を入院患者に限定し、医師による管理を求めました。
しかし、2021年夏に千葉県内の公立病院が計115人に外来処方していたことが同年末に判明。厚労省は観察研究を終了し、類例がないか全国調査していました。
調査によると、使用したのは全国1166医療機関で、計5万1008人が投与されました。うち4医療機関が国の通知を十分理解せず、外来の計427人に処方しました。1医療機関では、感染者に接触したものの、検査で陽性だとは確認されていない2人にも使用されました。厚労省は医療機関名を公表していません。
残る1161医療機関のうち19医療機関が、入院していない90人に「病床を確保できないが、早期投与が必要」などとして処方したことも判明。これについて厚労省は「緊急避難的な使用」として不適切事例に含めませんでした。
製造販売元の富士フイルム富山化学(東京都中央区)はコロナ治療薬の承認を目指して臨床試験を進めましたが、2022年10月に開発を打ち切り、承認申請を取り下げると発表しました。
コロナ治療に詳しい愛知医科大の後藤礼司医師は、「多くの医療現場で専門医がアビガンの効果を疑問視していたのに、国が観察研究の枠組みを続けていたのは問題だった」と話しています。
2023年2月20日(月)