新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが季節性インフルエンザと同じ5類に変わるのに伴い、厚生労働省は感染者の死亡者数の統計について、最短であれば死亡から2カ月後に公表することにしました。病院からの報告を求めている現行の方式を取りやめる影響ですが、目の前の感染状況が不透明になり、感染対策が取りづらくなるとの懸念が専門家から上がっています。
新型コロナは現在、感染症法では「2類相当」と呼ばれる強い対策を取る位置付けで、国などはこれまですべての感染者の情報についての報告を医療機関に求めてきました。死亡した場合には、医療機関などは年代や死亡日などを都道府県に報告していました。厚労省は都道府県の集計をもとに全国の死亡者数を公表し、通常、死亡から数日しかかかっていません。
5月8日にインフルエンザと同じ5類に移行するのに伴い、医療機関はインフルエンザと同様に、基本的に感染者について自治体に報告しなくなります。死亡者についても厚労省は、自治体の負担も考慮して報告を求めないことにしました。
その代わりに、出生や死亡の統計制度を使って、新型コロナの死亡者を把握します。家族らが市区町村に提出した死亡届や死亡診断書に基づき、年齢や死因などを記した調査票を保健所を通じて毎月、都道府県に報告し、厚労省は全国の数値をまとめます。こうした流れのため、通常は出生や死亡の件数などに限った速報値で公表まで2カ月後、死因などを含めた正式な数値では5カ月後となります。
また、新型コロナの死亡者の定義も変わる見通し。現在は感染が確認された死亡者すべてが対象で、必ずしも死因がコロナとは限らなかったものの、今後は、死亡診断書に死因が記されている場合などに限られる可能性があります。
感染状況については、インフルエンザと同様に定点医療機関からの報告で分析することにしており、厚労省は「感染状況は一定程度は把握できる見込みだ」としています。
コロナ患者の診療に当たる埼玉医大総合医療センター感染症科の岡秀昭教授は、「死亡者数や感染者数が見えにくくなれば、一人一人が流行状況を意識した必要な感染対策を取りにくくなる恐れがある。政府や専門家は感染状況についてわかりやすい説明が求められる」と指摘しています。
2023年3月26日(日)