がん免疫治療薬「オプジーボ」を巡る特許に関する訴訟で、小野薬品工業は7日、アメリカの研究所と全面的に和解したと発表しました。オプジーボの特許権を持つ小野薬品とアメリカのブリストルマイヤーズスクイブ(BMS)が、訴訟を起こした研究所に契約一時金を支払うことで和解します。オプジーボの販売量が大きく増えた場合などには、アメリカの研究所に対し追加の支払いが発生します。
和解したのはダナファーバーがん研究所。小野薬品が支払う契約一時金などの金額は非公表で、2023年3月期の連結業績に与える影響は5月の決算発表時に公表するとしています。
クライブ・ウッド博士とダナファーバーがん研究所のゴードン・フリーマン博士は、本庶佑京都大学特別教授とオプジーボの仕組みである「PDー1」ががん細胞と関係していることを明らかにした論文を共同執筆していました。両氏はオプジーボを始め、PDー1などに関する特許に、共同発明者であるとして加えるよう求めた訴訟をアメリカで起こしており、2019年にアメリカ連邦地方裁判所は2人を共同発明者として認定しました。
小野薬品はオプジーボの特許を巡り、ノーベル生理学・医学賞を受賞した本庶氏とも争った経緯があります。小野薬品がアメリカの製薬会社メルクとの特許侵害訴訟の和解で受け取った金額に対し、本庶氏側への分配金が少ないことなどを理由に訴訟を提起されました。2021年秋に本庶氏に50億円を支払い、京都大学に設立した基金に230億円を寄付して和解していました。
今回、ダナファーバーがん研究所との和解が成立したことで、特許権者を巡った一連の訴訟は落ち着くことになります。ただ小野薬品やBMSが、他社から受け取った売上高に応じたロイヤルティー収入の配分などの調整や、イギリスのアストラゼネカが販売する治療薬についての特許侵害訴訟などもあります。特許権を行使できるのは小野薬品やBMSという構図は変わらないものの、巨大な収益を生んでいる超大型医薬品を巡った争いは、しばらく続きそうです。
2023年4月8日(土)