厳しい暑さによる熱中症の対策を強化する改正気候変動適応法が四月二十八日、参院本会議で可決、成立した。特に気温が高くなる日には新たに「熱中症特別警戒アラート」が発表されるほか、自治体はあらかじめ避暑施設として冷房が効いた「クーリングシェルター」とされる施設の導入を進めることになる。
来年の夏からの運用開始に向け、発表の基準や施設の要件などの検討が進められる。
毎年、熱中症で死亡する人が後を絶たない中、対策を強化するために成立した改正法では、暑さ指数の予測値が三十三以上になった場合に発表されている「熱中症警戒アラート」に加え、さらに気温が上がって深刻な健康被害が予想される場合に、一段上の「熱中症特別警戒アラート」が新たに発表されることになる。
また、自治体は事前に公共施設や民間施設を対象に冷房が効いた部屋を「クーリングシェルター」として指定し、「特別警戒アラート」が発表された場合には一般開放することが求められる。
地球温暖化で熱中症のリスクは高まっている。厚生労働省の人口動態統計によると、熱中症による年間の死者数は、二〇〇〇年代まで全国で五百人を超えることはほとんどなかったものの、記録的な猛暑となった二〇一〇年は千七百三十一人が死亡し、その後も二〇一八年、二〇二〇年は千五百人を上回った。
政府は熱中症対策を初めて法律で位置付け、死者や健康被害の減少に向けた取り組みを加速させる。
改正法では「十年に一度」などの極端な高温によって深刻な健康被害の恐れがある場合、環境省が「特別警戒アラート」を発表し、自宅での冷房の利用や、冷房を備えた施設への避難を促す。
環境省によると、すでに全国で百二十五の自治体で取り組みが進められているということである。
このうち、東京都世田谷区では毎年六月から九月まで、公共施設のほか民間の薬局や銭湯、接骨院などの二百五十カ所程度を避暑施設として開放している。「お休み処」という黄色ののぼりが目印で、今年も六月十五日から開放が予定されている。
避暑施設が開いている時間であれば、冷房が効いた室内の一角にある休憩スペースを誰でも利用でき、ペットボトルの飲料水を区が無料で提供している。
世田谷区によると、東日本大震災を切っ掛けに節電と夏の猛暑への対策として十二年前から始め、昨年は延べ七万五千人が利用したということである。
世田谷区では、今回の改正法の成立を受けて、土日や夜間などの幅広い時間帯でさらに多くの住民に対応できるように協力施設を増やしたいとしている。
2023年4月29日(土)