世界保健機関(WHO)が11日、欧米を中心に患者が相次いだエムポックス(サル痘)の「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を終了すると発表しました。
WHOのテドロス・アダノム事務局長は11日の会見で、「エムポックスがもはや『国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態』ではないと宣言することをうれしく思います」と述べました。
WHOには、計8万7377人以上の感染と140人の死亡が111カ国から報告されてきました。テドロス事務局長は、直近3カ月の感染者数が前の3カ月と比べて、ほぼ9割減になったことを紹介し、「アウトブレークを制御することについての着実な進歩を確認した」と述べました。
ただし、テドロス事務局長は「これで仕事が終わったわけではない」とも強調。引き続 き、詳細な感染経路がわかっていないアフリカを含む、すべての地域に影響を及ぼしており、忍耐強い対処が必要になると訴えました。
エムポックスはウイルスを持つ動物との接触で感染し、人から人への感染はまれとされるものの、患者の体液や、皮膚の病変に触れることなどでも感染します。性的接触や患者が使った寝具などでも感染するため、誰でも感染する可能性はあります。
従来はアフリカ中部や西部で時々流行する感染症でしたが、昨年5月以降、欧米を中心に感染が拡大。WHOは昨年7月23日に最高度の警告である「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言し、ピークとなった昨年の8月中旬には、1週間で7500人余りの新たな感染者が報告されました。
エムポックスの主な症状は、発熱やリンパ節のはれ、全身に広がる発疹などとされる一方で、今回の流行では発疹が性器周辺にとどまったりするなど、従来と異なる症状が報告されています。患者の多くは軽症で2~4週間で自然に治っていますが、まれに重症化する例もあります。
WHOによると、今回の流行で報告されている患者の96%は男性で、その多くは男性間による性的接触があった人でした。
日本国内では昨年7月、初めて患者が確認されました。世界的には患者数は減っているものの、国内では今年に入り、患者の報告が増えています。国立感染症研究所によると、5月2日時点で129人を数え、全員男性で、死者は報告されていません。
2023年5月12日(金)