2023/05/14

🟧世界のボトル水市場、2030年までに倍増 国連大が報告

 世界でペットボトルなどに入った水の市場規模が2030年までに現在の2倍近くに増え、地下水の枯渇やプラスチックごみ問題などを悪化させる懸念があるとの報告書を、国連大学の研究チームが3日までにまとめました。「ボトル入りの水を買えない貧しい人との間で不平等を拡大させ、飲み水に関する持続可能な開発目標(SDGs)達成の障壁になる」としました。

 カナダのハミルトン市に所在する国連大の水・環境・保健研究所が、日本を含む世界109カ国のデータなどを分析し、「世界のボトル飲料水産業:影響と傾向の評価」をまとめました。

 世界のボトルなどに入った水の消費量は2021年に3500億リットルに上り、市場規模が過去10年で1・7倍になりました。国別ではアメリカが614億リットルとトップで、中国、インドネシアの順。日本は100億リットル弱で8位でした。ほかの消費量上位国は、カナダ、オーストラリア、シンガポール、ドイツ、タイ、メキシコ、イタリア。

 2020年に2700億ドルだった売上額は、2030年までに5000億ドルを超えると見込まれます。

 ペットボトルのごみも急増し、2000年の1200万トンから2021年は2500万トンと2倍超に増えました。2021年のごみの総重量2500万トンは、40トントラック62万5000台分に相当し、縦列させたらニューヨークからバンコクをつなげられる距離。

 地下水を安価に取水する例も多く、インド、北アメリカなどで飲料メーカーによる取水の悪影響が報告されています。ボトル飲料水産業の一部の民間企業は、公共財である水をわずかなコストで入手し、処理し、お金を払える人に売り戻しています。40カ国における事例で、皮肉なことに、製品として完成したボトル飲料水は必ずしも安全ではないことが示されました。公共水道事業者と比べて民間企業はほとんど監督されていないためです。

 本報告書によれば、世界で安全な水を享受できていない20億人の人々に安全な水を提供するために必要な年間投資額は、ボトル飲料水に2020年に費やされた2700億ドルの半分以下といいます。

 2023年5月14日(日)

🟧早老症治療剤「ゾキンヴィ」、国内販売の承認を申請 アンジェス

 バイオスタートアップ企業のアンジェスは12日、早期の老化を引き起こす希少疾患「早老症」の治療薬「ゾキンヴィ」について、国内販売に向けて承認申請したと発表しました。

 ゾキンヴィは、アメリカのスタートアップ企業のアイガー・バイオファーマシューティカルが2020年11月に承認取得し、アメリカで販売されました。その後、アンジェスが 2022年5月に日本における独占販売契約をアイガー・バイオファーマシューティカルと締結し、2023年3月に厚生労働省により希少疾病医薬品(オーファン・ドラッグ)に指定されました。ゾキンヴィは、2022年8月にイギリスでも承認されています。

 ゾキンヴィは、早老症の中でも「ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群」と「プロジェロイド・ラミノパチー」に対する治療薬。それぞれが大変希少な致死性の遺伝的早老症であり、若い時点から死亡率が加速度的に上昇します。

 ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群は、LMNA遺伝子の点突然変異により、ファルネシル化された変異タンパク質のプロジェリンが生成されることにより発症します。

 プロジェロイド・ラミノパチーは、LMNAやZMPSTE24遺伝子の変異により、プロジェリンに類似したファルネシル化タンパク質が生成され、老化が促進されます。

 いずれの病型ともに、深刻な成長障害、強皮症に似た皮膚、全身性脂肪性筋委縮症、脱毛症、関節拘縮、骨格形成不全、動脈硬化の促進などの早老症状が現れ、動脈硬化性疾患(心筋梗塞あるいは脳卒中)により若年期に死亡するとされ、ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群の平均年齢は14・5歳と報告されています。

 ゾキンヴィは、ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群とプロジェロイド・ラミノパチーの小児および若年成人において、核膜の構造・機能を損なうファルネシル化された変異タンパク質の蓄積を阻害します。

 臨床試験(治験)では、ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群の患者において、ゾキンヴィは死亡率を60%減少し、平均生存期間を2・5年延長しました。多くの患者は10年以上にわたってゾキンヴィ治療を継続しており、最も多く報告された副作用は消化器系(嘔吐、下痢、悪心)で、そのほとんどが軽度又は中等度です。

 アンジェスでは、日本国内のゾキンヴィの使用対象者は数名とみています。アンジェスが2021年に始めた新生児対象の検査事業の項目に早老症を盛り込みます。早期発見することで生存期間を延ばす効果が期待できるといいます。

 2023年5月14日(日)

🟧ワクチンや治療薬の公平な供給を明記 G7保健相会合、共同声明

 長崎市で開かれていた先進7カ国(G7)保健相会合は14日、2日間の日程を終えて閉幕しました。新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)を踏まえ、将来的に健康危機が起きた際に、ワクチンや治療薬、検査キットを途上国を含めた世界各地に公平に供給する必要性を明記した共同声明を採択しました。誰もが必要な医療を適切な費用で受けられる「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)」の取り組み強化も確認しました。

 議長を務めた加藤勝信厚生労働相は閉幕後の記者会見で、「G7が率先して、途上国が入手可能な価格で医薬品を確保できる仕組みの構築に取り組む」と述べました。今後、具体策を検討します。

 共同声明では、新型コロナワクチンについて「製造、調達のプロセスで多くの課題に直面した」と指摘。今後の感染症など健康危機に備え、特に低・中所得国に行き渡るようにすることが重要だとしました。製造から流通までを迅速、円滑に行えるよう、国際機関との連携を強化し支援します。

 こうした取り組みには持続可能な資金調達が重要になるとして、昨年、世界銀行に設立された途上国向けの「パンデミック基金」を有効に運用できるよう支援を拡充します。G7のみならず、すべての国に対して財政的、政治的支援の強化も求めました。

 コロナ禍は世界の保健システムに混乱を与え、適切な医療を受けることが難しくなった地域も少なくありません。このため、2030年までのUHCの実現を目指し、途上国への資金提供や、医療、介護人材育成の支援といった8項目の行動計画をまとめ、支援の強化に乗り出します。

 ロシアのウクライナ侵攻を巡っては、医療システムの激しい混乱を招いていると批判しました。医療施設が損傷・破壊され、数千人の医療従事者が避難を余儀なくされている実態に触れて、「侵略戦争を可能な限り最も強い言葉で非難する」と言明。ロシアに「即時かつ無条件の撤退」を求めました。

 2023年5月14日(日)

2023/05/13

🟧アステラス製薬、更年期障害治療薬でアメリカFDA承認を取得 非ホルモン治療薬で新たな選択肢に期待

 アステラス製薬は13日、アメリカで開発中の更年期障害治療薬「フェゾリネタント」について、アメリカ食品医薬品局(FDA)から承認を取得したと発表しました。同社の試算でピーク時に年間5000億円の売り上げを見込むフェゾリネタントは、承認時期が当初予定より遅れた経緯がありました。

 更年期障害は顔のほてりやのぼせ、発汗、不眠などの症状を引き起こすとされます。かつては治療薬としてホルモン製剤が使われていたものの副作用が多く、使用されなくなった経緯があります。フェゾリネタントは非ホルモン治療薬で、更年期障害の治療に向けた新たな選択肢となる可能性があります。

 発表資料によると、アステラス製薬は閉経に伴う中等度から重度の血管運動神経症状に対する治療薬として開発を進めてきました。顔のほてりやのぼせなどを特徴とする血管運動神経症状は、閉経に伴う症状として女性の治療ニーズが最も高く、フェゾリネタントはこうした症状の頻度や重症度を軽減するといいます。

 今回の承認取得は血管運動神経症状を有する女性3000人以上を対象に米欧などで行った試験結果に基づいており、同社はヨーロッパやオーストラリアでも承認を申請中です。将来は日本でも実用化を目指します。

 同社が4月に発表した2024年3月期の業績予想には、フェゾリネタントによる売上貢献期待として、400〜500億円を織り込んでいます。

 FDAは2月、フェゾリネタントの審査終了時期を当初予定より3カ月後となる5月下旬に延期すると発表。

 岡村直樹社長は4月に、承認の遅れが「すごくネガティブなインパクト」になるとした上で、売れ行き次第としながらも「もっと投資してその遅れを取り戻すことができるぐらいの計画を作る」と述べていました。

 現在、アステラス製薬の業績を支える主力薬は前立腺がん薬「イクスタンジ」で、2023年3月期の売上高は約6600億円と、連結売上高の4割強を占めます。ただ、イクスタンジは2027年ごろから特許切れを迎えます。医薬品は特許が切れるとすぐに後発薬が登場し、収益が激減します。

 アステラス製薬はイクスタンジの独占期間満了による売り上げ減少を補う収益の柱の筆頭として、フェゾリネタントを位置付けます。さらに同社が1日に約59億ドルで買収すると発表したアメリカのバイオ医薬品企業の持つ眼科領域での新薬候補も、収益の柱の一つに育てる考えです。

 2023年5月13日(土)

🟧基準値の最大7・5倍の汚水違法排出疑い、マルハニチロシーフーズを書類送検 茨城海上保安部

 基準値を超える汚水を海に排出したとして、茨城海上保安部は12日、水質汚濁防止法違反の疑いで、茨城県ひたちなか市にある水産食料品製造業「マルハニチロシーフーズ」を水戸地検に書類送致しました。同海保によると、排出した汚水に含まれる油や廃棄物などの浮遊物質量は最大で基準値の7・5倍に達しました。

 書類送検容疑は2021年12月から今年2月までの間、計5回にわたり同法で定める基準値を超える浮遊物質量を含む汚水を同社付近の側溝に流した疑い。

 同海保警備救難課によると、昨年10月11日、パトロール中に那珂湊港に接続する排水口で魚臭のする茶色の汚水を発見し、捜査を進めていました。汚水はサケの加工をする過程で発生。同社は汚水を浄化施設でろ過していたものの、処理能力が足りておらず、規制された基準値を超えたまま排出していました。

 浮遊物質量の基準値は、1リットル当たり最大160ミリグラムと定められています。同課が行った計5回の検査ではいずれも基準値を上回っており、最大1200ミリグラムを測定していました。

 警備救難課では、今年2月に同社に捜索に入り、基準を上回っていたことを示す社内の調査結果の資料などを押収したということです。

 同課によると、同社は容疑を認め、浄化施設の設備投資改善などに着手しているといいます。

 マルハニチロシーフーズは「真摯(しんし)に受け止め、反省している。近隣住民や漁業者の皆様に不安とご迷惑をおかけしたことをおわび申し上げます」とコメントしました。

 また、親会社の食品大手マルハニチロも「指導を徹底し管理体制を強化して信頼回復に努めたい」とコメントしています。

 2023年5月13日(土)

🟧最も長寿な市区町村、男女とも川崎市麻生区 ワースト1位は男女とも大阪市西成区

 厚生労働省は12日、市区町村別の2020年時点の平均寿命を公表しました。最も長寿だったのは、男女とも川崎市麻生区で、男性84・0歳、女性89・2歳。前回調査の2位と4位から順位を上げました。

 厚労省は5年に1回、国勢調査などから市区町村別の平均寿命を推計しています。今回は5回目で、東京電力福島第一原発事故で避難指示区域に指定されるなどした9町村を除く、1887市区町村を対象にしました。

 全国平均は男性が81・5歳(前回80・8歳)、女性は87・6歳(同87・0歳)で、男女の平均寿命の差は6・1歳となりました。男性の2位は横浜市青葉区(83・9歳)で、長野県宮田村(83・4歳)、愛知県日進市(83・4歳)、京都府木津川市(83・3歳)が続きました。

 厚労省は小数点第2位を四捨五入して公表しており、女性は2位~4位の熊本県益城町、長野県高森町、滋賀県草津市がいずれも89・0歳で僅差でした。5位は兵庫県芦屋市(88・9歳)。

 一方、ワースト1位は男女とも大阪市西成区で、男性が73・2歳、女性が84・9歳となり、男性は5回連続、女性は3回連続。男性は西成区と1位の麻生区で10・8歳の差があり、女性は西成区と1位の麻生区で4・3歳の差がありました。

 都道府県別で最も短命だった青森県は、男性が7市町村、女性は6市町村がワースト10位に入りました。

 厚労省は市区町村で差があることについて、「平均寿命の差には食生活などの生活習慣や気候、健康への意識など、さまざまな要因が考えられる。今回の結果を住民の健康増進に向けた取り組みに役立ててほしい」としています。

 2023年5月13日(土)

🟧新幹線に乗り合わせた2人はしか感染、30歳代女性と40歳代男性 東京都で3年ぶり確認

 12日、東京都は男女2人がはしか(麻疹)に感染したと公表しました。はしかは強い感染力を持つことで知られています。東京都内で感染が確認されるのは2020年2月以来、約3年ぶりです。

 東京都によりますと、はしかに感染したのは都内在住の30歳代女性と40歳代男性で、3日に発熱やせきなどの症状が出たため、その後、医療機関を受診し、それぞれ10日と11日に医療機関から届け出がありました。現在は、いずれも入院していて、症状は落ち着いているということです。

 2人に面識はありませんが、4月23日に東海道・山陽新幹線「のぞみ50号」9号車の新神戸駅-東京駅で同じ車両に乗っていました。

 また、男性は5月4日に東海道新幹線「こだま740号」10号車の三島駅-新横浜駅に乗っていたということです。

 なお、4月28日に、茨城県つくばみらい市の30歳代男性がインドから帰国後、はしかへの感染が確認されていて、この男性は4月23日に同じ新幹線「のぞみ50号」を利用していたということです。東京都はこの男性から感染が広がったとみています。

 はしかは感染症法上の5類感染症で、主な感染経路は空気感染です。感染力が極めて強く、10日間ほどの潜伏期間を経て発熱やせき、発疹などの症状が出るといわれています。合併症として肺炎や脳炎などを引き起こし、重症化すると死亡することもあるということです。 

 東京都は、2人が乗っていた新幹線の情報をホームページで公開していて、13日と14日に発熱や発疹などはしかを疑う症状が出た人などの相談を受け付けることにしています。

 電話番号は03-5388-3615で、いずれも午前9時から午後5時まで受け付けています。

 また、医療機関を受診する際は、事前に連絡した上で、移動の際は公共交通機関の利用を控えるよう呼び掛けています。

 東京都は、まだ予防接種を受けていない人に対して早めの接種を呼び掛けています。

 2023年5月13日(土)

🟩特定保健用食品、2商品で機能性成分不足 消費者庁の買い上げ調査

 消費者庁は7日、機能性表示食品や特定保健用食品(トクホ)の表示が適正かどうかを確かめる買い上げ調査の結果を公表しました。調査した101商品のうち機能性表示食品は84商品で、うち2商品で機能性関与成分が記載された含有量を下回っていました。  消費者庁の指摘を受けた2事業者は2商...