世界でペットボトルなどに入った水の市場規模が2030年までに現在の2倍近くに増え、地下水の枯渇やプラスチックごみ問題などを悪化させる懸念があるとの報告書を、国連大学の研究チームが3日までにまとめました。「ボトル入りの水を買えない貧しい人との間で不平等を拡大させ、飲み水に関する持続可能な開発目標(SDGs)達成の障壁になる」としました。
カナダのハミルトン市に所在する国連大の水・環境・保健研究所が、日本を含む世界109カ国のデータなどを分析し、「世界のボトル飲料水産業:影響と傾向の評価」をまとめました。
世界のボトルなどに入った水の消費量は2021年に3500億リットルに上り、市場規模が過去10年で1・7倍になりました。国別ではアメリカが614億リットルとトップで、中国、インドネシアの順。日本は100億リットル弱で8位でした。ほかの消費量上位国は、カナダ、オーストラリア、シンガポール、ドイツ、タイ、メキシコ、イタリア。
2020年に2700億ドルだった売上額は、2030年までに5000億ドルを超えると見込まれます。
ペットボトルのごみも急増し、2000年の1200万トンから2021年は2500万トンと2倍超に増えました。2021年のごみの総重量2500万トンは、40トントラック62万5000台分に相当し、縦列させたらニューヨークからバンコクをつなげられる距離。
地下水を安価に取水する例も多く、インド、北アメリカなどで飲料メーカーによる取水の悪影響が報告されています。ボトル飲料水産業の一部の民間企業は、公共財である水をわずかなコストで入手し、処理し、お金を払える人に売り戻しています。40カ国における事例で、皮肉なことに、製品として完成したボトル飲料水は必ずしも安全ではないことが示されました。公共水道事業者と比べて民間企業はほとんど監督されていないためです。
本報告書によれば、世界で安全な水を享受できていない20億人の人々に安全な水を提供するために必要な年間投資額は、ボトル飲料水に2020年に費やされた2700億ドルの半分以下といいます。
2023年5月14日(日)