アメリカ食品医薬品局(FDA)は7日までに、アメリカのジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)の依頼を受け、新型コロナウイルスワクチンの緊急使用認可を取り消しました。安全性への懸念などから接種需要が低迷していました。アメリカ政府の購入した在庫は5月中に使用期限を迎え、配布をやめていました。
J&J傘下でワクチン事業を手掛けるヤンセン・バイオテックがFDAに変異型対応ワクチンを手掛ける計画がないことを伝え、緊急使用認可の取り消しを依頼しました。
J&Jのワクチンはこれまでに100カ国以上で承認を受けています。日本では2022年に製造販売承認を取得したものの、公費での予防接種には使われていません。アメリカ以外の地域では「今後も最も必要とされる地域にワクチンを届ける」と説明しました。
J&J製ワクチンは2021年2月に、FDAから緊急使用の承認を得ました。アメリカのファイザー製など2回接種が必要なメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンに比べ、J&Jワクチンは1回の接種ですむ特徴があり、利便性から接種率の向上につながる期待がありました。
だがその後、このワクチン接種後に血栓症を発症した患者の事例が報告され、安全性への懸念が浮上。FDAは2022年5月、特別な理由がない限りJ&J製よりmRNAワクチンの接種を推奨する方針を打ち出し、直近ではJ&Jワクチンの接種がほぼなくなっていました。
アメリカ疾病対策センター(CDC)によると、アメリカで追加接種を含めたワクチン接種は累計で6億8000万回となっています。その大部分をファイザーやアメリカのモデルナのmRNAワクチンが占め、J&J製は1900万回にとどまります。J&Jが4月に発表した直近2023年1〜3月期の決算では、コロナワクチンのアメリカでの販売はゼロでした。
2023年6月11日(日)