厚生労働省は27日までに、富士フイルム富山化学(東京都中央区)の開発した抗ウイルス薬「アビガン」を希少疾病用医薬品に指定しました。アビガンは、マダニが媒介する致死率の高いウイルス感染症への効果が期待されています。指定により国の助成や薬事承認審査の優遇措置を受けることができ、同社は実用化に向けて試験開発を進めます。
希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)は、国内の対象患者数が5万人未満で、医療上、特に必要性が高いなどの条件を満たした医薬品。アビガンは5月29日の厚労省薬事・食品衛生審議会医薬品第2部会で指定が認められ、6月22日付で厚労相から指定を受けました。
指定されると、薬事承認、販売に向けて、開発にかかる経費負担軽減のための助成金交付、医薬品医療機器総合機構の職員による指導・助言、試験研究費の税控除、薬事承認審査の優先措置・手数料減額、再審査期間の延長―といった国の支援を受けられます。
インフルエンザ治療薬のアビガンは、新型コロナウイルスの治療薬としては承認を得られなかったものの、マダニにかまれて感染するウイルス感染症「重症熱性血小板減少症候群」(SFTS)に効果がある医薬品として関係者から注目されています。
SFTSは重症化すると死亡することがあり、致死率31%とする研究もあります。国内では昨年、過去最多の118人、今年も5月14日時点で43人が感染しています。ワクチンや有効な治療薬はありません。
富山化学の過去の臨床研究では、アビガンを投与した患者23人のうち19人が回復し、致死率が17・4%まで低下しました。
2023年6月28日(水)