特別養護老人ホーム(特養)の経営者らで構成する全国老人福祉施設協議会は、2022年度の特別養護老人ホームの経営状況について、6割強が赤字だったとする調査結果をまとめました。物価高や光熱費の上昇などが響きました。介護サービスを巡る経営環境は厳しさを増していると指摘しました。
全国の約1600の特養を対象に、2023年7〜9月に調査しました。特養は社会福祉法人や地方自治体が運営していて、常時介護を必要とする要介護3以上の人が入居できます。介護保険を活用できるため、利用者は月額の費用負担を比較的安価に抑えることができます。
2022年度は62%(992施設)が赤字で、2021年度の43%から19ポイント上昇し、2005年の調査開始以降で最大になり、コロナ禍前と比べて2倍近くになりました。物価高や光熱費の上昇といった経営コストの増加が収益を圧迫しました。国からの補助金などを含んだ場合でも51%(816施設)が赤字でした。
収入に占める利益の割合を示し、経営状況に関する指標の1つとなる「収支差率」も調べました。加盟する特養の収支差率は2022年度に平均でマイナス2・8と、初めてマイナスに転じました。2021年度を3・6ポイント下回っています。
特養の経営は、コロナ禍を境に悪化が進んできました。赤字施設の比率は、コロナ禍前の2019年度は34・3%だったものの、2020年度は40・8%と初めて4割を超え、2021年度も43%とさらに拡大。補助金などを含めた赤字も急激に増え、2022年度に初めて5割を超えました。
2024年度は2年に1度の診療報酬と、3年に1度の介護報酬の改定が重なるダブル改定の年となります。協議会の担当者は、「赤字が6割を超えるのは初めてで、想像以上に厳しい状態にある」と話し、「次の介護報酬改定では大幅な報酬の引き上げが不可欠だ」との考えも示しました。
2023年10月18日(水)