滋賀県の消防本部が、新型コロナウイルスのワクチンを接種していない女性職員を隔離し、廊下で業務をさせていたなどの問題で、第三者委員会が「組織としてのコンプライアンスやガバナンスの確保、人権保障において問題があったと考えられる」と指摘しました。
滋賀県甲賀市の甲賀広域行政組合消防本部によりますと、2021年4月、警防課の30歳代の女性職員がインフルエンザのワクチン接種で副反応が出たことがあるとして、新型コロナのワクチンを接種しない意向を上司に伝えました。
消防本部は、接種の有無で区別が必要と考え、この女性職員を廊下脇のスペースに隔離して業務をさせ、更衣室の使用も制限。さらに、職場での行動記録を提出するよう求めました。
職場で接種していなかったのはこの女性職員だけでしたが、消防本部は「接種拒否者への業務区別」と題した文書を作成し全職員に伝えていて、女性職員はおよそ4カ月後の8月末に退職しました。
弁護士や医療関係者らでつくる第三者委員会は26日、中間報告書をまとめました。報告書では、女性職員が上司から電話で「皆が(ワクチン接種を)受けているのに自分のことしか考えていない」などといわれたことのほか、何度も説得のための面談を受けたことなどが明らかにされました。面談では、基本的に摂取しないということが法的に認められないというようないい方がされ、「一般は任意だが消防職員は違う」という説明がされたということです。
第三者委員会は、事実関係を確認した上で、「職員は、業務区別等の措置が続き、終わりがみえない状況で、自身の精神的苦痛が増大していった」とし、「職員の退職への判断に至る事情及び退職決意後の処遇等に関しては、違法、不当、または不適切な対応の疑いがある。関係する職員の処分等、および職員の権利救済の措置が検討される必要がある」と指摘しました。
第三者委員会の新川達郎委員長は記者会見し、「公務員としての基本的なコンプライアンス違反が前提としてあり、人権侵害やハラスメント行為が認められる」と述べました。
甲賀広域行政組合消防本部は、「『拒否者』という文言は配慮が足りなかったかもしれない。委員長の発言を重く受け止めるとともに、今年度末にいただくことになっている最終答申をもって、適切に対応してまいります」とコメントしています。
2023年12月29日(金)