2024/10/02

🟧海洋温暖化の速度は2005年以来2倍に EU報告

 人類が原因となった地球温暖化の影響で、2005年以降、海水温の上昇速度がほぼ倍増しているとするヨーロッパ連合(EU)の地球環境モニタリング計画「コペルニクス」の報告書が9月30日、発表されました。

 報告書は、地球表面の約70%を覆い、気候の主要な調整役を果たす海洋に対する温暖化の影響を強調しています。

 コペルニクスの海洋学者カリーナ・フォン・シュックマン氏によると、1960年代から海洋の温暖化は継続的に進んでいますが、2005年以降急激に加速しているといいます。

 過去20年間で、温暖化のペースは1平方メートル当たり0・58ワットから1・05ワットにほぼ倍増しました。

 調査結果は、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が、人類の排出する温室効果ガスによる長期的な海洋の加熱について述べた内容と一致しています。

 IPCCによると、1970年以降、二酸化炭素やその他の温室効果ガスの放出によって大気中に閉じ込められた余分な熱の約90%が海に吸収されています。

 温暖化した海洋は、地球全体の気象パターンや降雨の位置に影響を与えることで、嵐やハリケーン、その他の極端な気象現象を引き起こしています。

 2024年10月2日(水)

2024/10/01

🟧東工大・東京医科歯科大が統合、「東京科学大」発足 世界トップクラスを目指す

 東京工業大と東京医科歯科大が統合して1日、東京科学大が誕生しました。国立大の統合は、2007年に大阪大が大阪外国語大と統合して以来。東京科学大は、国立大学法人の経常収益でみると東京大や京都大などに次いで7番目の規模となり、世界トップクラスの科学系総合大学を目指します。

 経営を担う大竹尚登理事長(旧東工大教授)と、教育・研究を束ねる田中雄二郎学長(旧医科歯科大学長)の2トップ体制をとります。大学本部は東京都目黒区の旧東工大に置き、当面は旧2大学の学部名や定員を存続させます。学生数(学部生と大学院生)は旧東工大が計約1万人。旧医科歯科大が計約3000人。

 大竹理事長と田中学長が1日午後に記者会見します。

 旧東工大は理工系分野で、旧医科歯科大は医学分野で、それぞれ国内トップクラスの研究力を誇ります。両大学とも世界最高水準の教育研究活動を期待され、国から規制緩和などの特例を受ける「指定国立大」でした。

 それでも欧米の理科系有力大と比べて、予算規模や引用の多い論文数などで、大きく水を空けられています。こうした状況を打開するため、「医工連携」を深めるなどして世界と戦える力を持ちたいと、統合を決断しました。

 相乗効果を生み出すには、異なる文化の中で過ごしてきた両大学の教職員や学生が、スムーズに融和できるかがポイントになります。学生は机を並べて学び、研究者は協力して一つのテーマに挑戦するなど、大学として意識的に双方の出身者が集う場を作ることが必要です。

 新大学の試金石となるのが、近く2度目の公募が予定されている「国際卓越研究大学制度」です。認定されれば、政府が作った10兆円規模の「大学ファンド」の運用益から、毎年数百億円を受け取ることができます。研究設備を充実させ、国内外から優秀な研究者を集めることで、新大学の起爆剤となります。

 統合について環境・社会理工学院の2年生の女性は、「名称が変わるのは寂しいが、医工で連携する効果には期待している」。大学院医歯学研究科の博士課程の男性は、「旧東工大の研究者を通じてメーカーなど他職種の人と接点を持つことができれば、勉強になることが多いと思う」と話しました。

 旧東工大は1881年設立で理、工など6学院(学部に相当)。医科歯科大は1928年設立で、医、歯の2学部。

 2024年10月1日(火)

2024/09/30

🟧塩野義製薬、発達障害の子供をアバターで支援 2025年度にも、心理的障壁を取り除く

 塩野義製薬が注意欠陥・多動性障害(ADHD)や自閉スペクトラム症(ASD)などの発達障害のある子供を対象に、アバター(分身)技術を使って、言葉の遅れなど子供が直面する困り事に対応する支援サービスに取り組むことが29日、わかりました。2025年度中にもサービスを開始します。対面ではなくアバターを介することで、心理的障壁を取り除くことができるといいます。

 発達障害の子供は他人とのコミュニケーションが苦手な場合が多く、成長するに従って社会生活に困難を感じるため、周囲の理解と支援が必要になります。

 塩野義製薬は、大阪大大学院の石黒浩教授(ロボット工学)が設立し、同社も出資するベンチャー企業「AVITA(アビータ)」(東京都品川区)と協業。塩野義製薬が独自のソフトウエアを作成し、アバターの技術開発はアビータが手掛けます。

 言語の療育を行う言語聴覚士がアバターを通じて子供に接する「言語聴覚療法」を提供するサービスを2025年度中に、個人の特性に合わせて対人関係を学ぶ「ソーシャルスキルトレーニング」サービスを2026年度中にそれぞれ始めることを目指しています。

 塩野義製薬の調査では、言語聴覚士がアバターを使ってASDの子供らに接したところ、人と直接対面するよりも会話に集中する傾向があったといいます。

 アバターは自由に選ぶことができ、人間だけでなく動物やアニメ風のキャラクターなど子供の特性に合わせて設定します。声も変えることができ、子供の関心を引きやすいアバターをつくり出すことが可能。興味を引き付けながら言葉や会話の練習ができます。

 言葉の問題はその後の学習の遅れや人間関係の構築などに影響を与えることから、専門的な支援が必要とされる一方、子供の言語療育を担う言語聴覚士の数には限りがあります。アバターのサービスは同時に複数の配信も可能なため、よりきめ細かい対応が期待できます。

 3歳児健診で言葉の遅れがみられた幼児や、小学校で対人コミュニケーションに悩む児童らをサポートし、各家庭のほか、学校の支援学級、児童発達支援事業所などでの導入を想定します。

 塩野義製薬は今年2月に、小児のADHD患者を対象とした、ゲームで症状緩和が期待できるデジタル治療用アプリの製造販売承認を申請しています。治療だけでなく、困り事に応じた福祉環境の必要性から今回の事業に乗り出すことを決めました。

 担当者は、「発達障害は切れ目のない支援が必要。今後サービスの対象幅や内容を広げていきたい」と話しています。

 2024年9月30日(月)

2024/09/29

🟧うつ病治療薬「ズラノロン」、国内で製造販売承認申請 塩野義製薬、治験で即効性確認

 塩野義製薬は27日、同社がアメリカのセージ・セラピューティクスから日本、台湾および韓国における独占的開発権・販売権を取得しているうつ病治療薬「ズラノロン」について、同日付で日本での製造販売承認申請を行ったと発表しました。

 今回の製造販売承認申請は、同社が日本で実施した第3相の臨床試験(治験)の良好な結果に基づくもの。第3相の臨床試験は、中等症から重症のうつ病患者412 名を対象に、ズラノロンの有効性および安全性、忍容性の評価を目的に国内で実施された試験です。

 うつ病の重症度を評価する尺度であるHAM-D合計スコアのベースラインからの変化量について、ズラノロン投与群はプラセボ投与群に対して統計学的に有意な減少が確認され、主要評価項目を達成しました。

 また、ズラノロン投与群は、投与3日目からHAM-D合計スコアが有意に減少し、本剤の即効性が示されました。

 日本におけるうつ病の患者数は約500万人と推計され、非致死性の健康を損なう疾患の中では最多の罹病者数です。既存の治療薬は効果発現までに数週間かかることが多く、即効性のある治療薬が求められています。これまでの臨床試験で即効性が確認されている同剤は、うつ病治療の新たな選択肢としての貢献が期待されます。

 2024年9月29日(日)

2024/09/28

🟧新型コロナ感染者4週連続減少、前週比0・82倍 厚労省「夏場のピークは越えた」

 厚生労働省は27日、全国約5000カ所の定点医療機関から直近(9月16~22日)の1週間に報告された新型コロナウイルスの感染者数が2万1400人だったと発表しました。1医療機関当たり4・35人(前週5・28人)で、前週比0・82倍。8月下旬以降、4週連続で減少しています。

 都道府県別では、宮城県が6・97人(前週10・8人)となり、3週連続で最多。岩手県が6・71人(同10・11人)、新潟県が6・67人(同8・21人)、茨城県が6・66人(同7・5人)、千葉県が6・5人(同7・75人)と続いています。少なかったのは沖縄県2・04人、鹿児島県2・09人、佐賀県2・21人など。

 東北地方では、ほかの地域よりも1医療機関当たりの患者数が多い状況が続いているものの、その数は減ってきています。

 夏休み中に国内外に出掛けた人は多く、お盆明けに感染者が増えることも予想されましたが、結果的には前年同期に比べて大幅に少なく推移しました。

 厚労省は、「流行していたウイルスに対する免疫を持った人が増えたことや、受診する人が減ったことが要因」とみており、「夏の流行はピークを越えた可能性が高い。例年、冬に再び増える傾向にあるので感染状況を注視していきたい」としています。

 全国約500の定点医療機関から報告された新規入院患者数は1471人で、前週比0・80倍でした。

 2024年9月28日(土)

2024/09/27

🟧長崎県の新型コロナ感染者が8週連続で減少 手足口病は警報レベル続く

 長崎県内の新型コロナウイルスの報告患者数は8週連続で減少しました。一方で、手足口病は14週連続の警報レベルとなっています。

 16日(月)から22日(日)までの1週間に、県内70の定点医療機関が県に報告した新型コロナウイルスの患者は166人で、前の週より60人減り、8週連続で減少しました。

 1医療機関当たりの患者数は平均2・37人で、5月以来、約4カ月ぶりに2人台となりました。

 年齢別では、10歳代が最も多い34人、次いで10歳未満が31人、80歳以上が22人となっています。

 保健所別では、長崎3・88人、上五島3・67人、壱岐3・33人が多くなっています。

 乳幼児の発症が多い手足口病は、県内44の定点医療機関で報告数が339人(前週比60人減)。1定点医療機関当たりは7・70人(前週比1・37人減)でした。

 保健所別では、県南13・80人が最多。県央12・14人、佐世保8・83人と続きました。

 発熱や全身の倦怠(けんたい)感、頭痛、せきなどの症状が出る「マイコプラズマ肺炎」の県内12定点医療機関の報告数は20人(前週比4人減)。1定点医療機関当たりの報告数は1・67人(前週比0・33人減)。

 保健所別では、長崎、佐世保、県央、県南が3・00人。

 県環境保健研究センターは、「新型コロナ、手足口病以外にも、発熱や咳が主症状のマイコプラズマ肺炎が、過去5年間で最多の患者報告数となっている。いずれの感染症にも、場面に応じたマスクの着用や手洗い、換気、三密の回避などが有効なので、引き続き基本的な感染対策に努めてほしい」としています。

  2024年9月27日(金)

2024/09/26

🟧経口中絶薬、外来でも使用可能に 無床診療所への拡大は再審議

 人工妊娠中絶のための飲み薬について、厚生労働省の薬事審議会は25日、一定の条件を満たせば外来での使用を可能とする方針を了承しました。入院ベッドのない無床診療所での使用については、「準備が整っていない」とし、下位の専門家部会に差し戻して再度審議します。

 この薬は、妊娠9週0日までの妊婦が対象のラインファーマの経口薬「メフィーゴパック」。使用中に大量出血の恐れもあるため、厚労省は昨年4月の承認時に、適切な使用体制が確立されるまで入院可能な医療機関で使用し、2剤目の使用後は院内待機を求める通知を出していました。

 こども家庭庁の研究班が昨年5~10月の使用実績435件を調査し、「重篤な合併症はなかった」と結論付けたことを踏まえ、通知の改正に向けた議論が進んでいました。

 今後、2剤目の使用後は、医療機関から16キロ以内などの条件を満たせば帰宅できるようになります。一方、使用できるのは引き続き入院可能な医療機関に限られます。

 関係者によると、調査対象期間外で、「重篤な有害事象」が複数確認されたため、日本産婦人科医会から、無床診療所への使用拡大について慎重な対応を求める声が上がっていました。

 厚労省は「(薬の)安全性に疑義が呈されたわけではない」としています。

 2024年9月26日(木)

🟩認知症新薬「ドナネマブ」の薬価は年308万円、20日から公的医療保険適用に

 厚生労働相の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)は13日、アメリカの製薬大手イーライリリーが開発したアルツハイマー型認知症の治療薬「ドナネマブ」(商品名・ケサンラ)への公的医療保険適用を承認しました。公定価格(薬価)は、患者1人(体重50キロの場合)当たり年間約30...