2025/05/19

🟩国内初の「献便施設」、山形県鶴岡市にオープン 難病治療薬の開発を目指す

 健康な人の便に含まれる腸内細菌を集め、難病治療薬開発に活用する国内初の「献便(けんべん)施設」が山形県鶴岡市にオープンしました。山海の幸に恵まれた食文化が腸内細菌の多様性を生んでいるといい、便の提供を募るのに最適な場所として同市が選ばれました。

 4月24日にオープンしたのは、医療・創薬を行う新興企業メタジェンセラピューティクスの運営する施設「つるおか献便ルーム」。同市覚岸寺の鶴岡サイエンスパーク内に設置されました。

 同社によると、人の腸内には、約1000種類、40兆個以上の細菌が生息しています。腸内細菌のバランスが乱れると、さまざまな病気の発症に影響します。すでに、健康な人の便に含まれる「腸内細菌叢(そう)」を疾患を持つ患者に移植し、腸内環境を変える治療法が確立されています。同社は、2020年に腸内細菌移植の研究を行っている順天堂大や慶応大、東京科学大のチームらで創業。集めた腸内細菌で、難病の「潰瘍性大腸炎」の治療薬開発を行います。

 献便ルームは約70平方メートル。専用のトイレが3カ所あり、提供者は便器内の専用ボックスに便をします。その便から腸内細菌を抽出した溶液を作り冷凍。川崎市内の施設に運び、創薬に活用します。同社の計画では、2026年に日本とアメリカで治験を始め、2032年にカプセルの飲み薬として承認を目指します。

 鶴岡市は食物繊維が豊富に含まれている山菜などが各家庭で親しまれ、ユネスコ食文化創造都市に登録されています。こうした食生活は健康な腸内細菌の素地となることから、同社は献便ルームの設置場所として鶴岡市を選んだといいます。

 献便を行う「腸内細菌ドナー(提供者)」の対象は、18〜65歳の庄内地域に住む健康な人。専用アプリで健康チェックを行い、荘内病院(同市)での問診や血液・便検査などを経て、医師が適格と判断すると提供者として認定されます。一度不適格とされても、健康な食生活を続けることで適格となる可能性もあり、地域住民の健康意識向上も期待できるとしています。

 提供者は献便の3日前から酒や生ものなどの飲食が禁じられ、3カ月ごとに検査を受けて資格を更新する必要があるものの、献便1回当たり3000〜5000円の協力金が準備されています。

 応募者のうち、提供者として適格と判断されるのは1割程度。2025年は約100人の提供者の確保を目指します。

 同社の中原拓社長は、「便由来の薬は国内にはなく、我々がトップランナーとして進めている。最高のうんちから、最高の薬が生まれると思い、この地を選んだ。ぜひ皆さまにご協力いただきたい」と話しました。

 2025年5月19日(月)

2025/05/18

🟩無痛分べん、約120人に1人の割合で合併症 日本産婦人科医会が調査

 麻酔を使って陣痛を和らげる「無痛分べん」について全国調査したところ、約120人に1人の割合で母親が出血するなどの合併症が起きていたとする結果を日本産婦人科医会がまとめました。

 調査した専門家は、「通常のお産よりリスクが増えることを理解した上で、無痛分べんにするかどうか検討してほしい」としています。

 日本産婦人科医会は、全国1900余りの産科の医療機関を対象にアンケート調査し、2023年に417施設で実施された無痛分べん、合わせて5万3000件余りの合併症を分析しました。

その結果、無痛分べんに関連した処置で母親に出血や子宮が傷付くなどの合併症が起きたケースは454件と、約120人に1人の割合でした。

 このほか、麻酔が下半身以外にもかかってしまうなど、麻酔に関する合併症が38件、赤ちゃんが出血するなどの合併症が21件あったということです。

 調査を行った聖マリアンナ医科大学の長谷川潤一教授は、「無痛分べんは痛みが少なく希望する人は年々増えている。基本的には安全に行われていると思うが、通常のお産よりも医療の介入が増えるため、そのリスクを理解した上で無痛分べんを受けるかどうか検討してほしい」と話していました。

 2025年5月18日(日)

2025/05/17

🟩愛知県の岡崎市民病院、投薬量誤り70歳代男性死亡 1000万円の賠償支払いで遺族と和解へ

 愛知県の岡崎市民病院は、2023年6月に入院していた70歳代の男性が脳出血で死亡した原因に投薬ミスがあったとして、遺族に1000万円を賠償して和解することになったと発表しました。

 これは、岡崎市民病院が16日に会見を開いて明らかにしました。

 それによりますと、愛知県幸田町の70歳代の男性は、胆管がんなどと診断されて2023年5月下旬に入院しました。

 男性は脳梗塞を予防するための薬を服用していましたが、病院の検査で腎機能障害が認められ、出血が止まらない恐れがあることから、薬の量を半分にする必要がありました。

 ところが、治療を担当した30歳代の医師は通常の量の投与を続け、男性は入院からおよそ2週間後に脳出血を起こして死亡したということです。

 病院が調査した結果、医師は薬剤師などからも薬の量を減らすよう連絡を受けていたにもかかわらず、対応を怠っていたことも判明したということで、病院は投薬ミスがあったと認め、遺族に1000万円を賠償して和解することになったと発表しました。

 会見で岡崎市民病院の小林靖院長は「亡くなられた患者とご遺族に心より深くおわび申し上げます」と陳謝しました。

 2025年5月17日(土)

2025/05/16

🟩鳥取大病院がロボット手術でミス 障害残った男性に和解金1億5000万円

 鳥取大学医学部付属病院(鳥取県米子市)で、胸部の腫瘍(しゅよう)をロボット支援手術で切除した際に医師のミスで首の動脈を損傷し重い障害が残ったとして、米子市に住む20歳代の男性が同大を相手取り損害賠償を求めていた訴訟で、14日、鳥取地裁米子支部(三島琢裁判長)で大学側が1億5000万円を支払うことで和解が成立しました。

 訴状や原告側代理人の高橋真一弁護士によると、男性は胸部の悪性腫瘍のため、2019年4月、同病院でロボットによる胸腔(きょうくう)鏡手術を受けました。その際に医師が電気手術鉗子(かんし)を深く挿入し過ぎて、首の動脈を損傷し、大量出血したといいます。腫瘍は切除されたものの脳に障害が残りました。現在は簡単な会話しかできない、話す・書く・計算に支障が出る、マンガを読んでも内容が理解できない、などの状態で、障害等級4級。通常の就労はできないといいます。

 高橋弁護士によると、病院側はミスを認めて謝罪し、当初2000万円の解決金を提示しました。男性側は「極めて不十分」として提訴しました。

 高橋弁護士は会見で、「ロボット手術とはいえ、人間が行うものでミスは起き得るとの再認識が必要。ロボットを否定する考えはない。また、病院側が提示する補償額をそのまま受け入れてはならないことを知ってほしい」と述べました。

 男性の家族のコメントも発表しました。「手術の際は事前に十分な準備を行いリスクを下げて行ってほしい。二度とこのような医療事故が起こらないことを願っている」としています。

 病院は、「和解したことは事実だが、相手があることなので詳細は控える。再発防止に努めるとともに、今後とも安全で質の高い医療の提供に最大限努める」などとするコメントを出しました。

 2025年5月16日(金)

2025/05/15

🟩子供の幸福度、日本は14位 前回より順位6つ上げる、ユニセフ調査

 先進国などの子供の幸福度についてまとめた国連児童基金(ユニセフ)の報告書が発表され、日本は子供の身体的な健康度が最も高い一方、精神的な幸福度が低く、総合順位は36カ国中14位でした。

 ユニセフは経済協力開発機構(OECD)やヨーロッパ連合(EU)に加盟している国々を対象に、さまざまなデータをもとに子供の幸福度についてまとめた報告書を14日、5年ぶりに発表しました。

 それによりますと、データが得られた36カ国のうち1位がオランダ、2位がデンマークでどちらも前回と変わらなかったほか、3位がフランスとなっています。

 日本は14位で、38カ国中20位だった前回よりも順位を6つ上げました。

 幸福度は「身体的な健康度」と「精神的な幸福度」、それに学問などの能力に関する「学力・社会的スキル」の3つの分野で測られます。

 日本は子供の肥満の割合や死亡率から算出する「身体的健康度」が前回と同じく1位で、「学力・社会的スキル」は前回より順位を大きく上げて12位でした。

 一方、「精神的幸福度」は前回より5つ順位を上げたものの32位となっています。

 これは生活にある程度満足している子供の割合が増えて各国の平均とほぼ同じ水準になった一方、自殺率が上がって4番目に高くなったためです。

 このほか報告書では、家庭や学校での人間関係などが子供の心に影響を与えるとも指摘していて、良好な親子関係を築くための保護者への支援や、学校や地域社会による暴力やいじめなどのリスクに対処などが必要だとして、各国に対策を呼び掛けています。

 林芳正官房長官は午前の記者会見で、「精神的な幸福度に関する結果は重く受け止めている。一昨年策定した『こどもの自殺対策緊急強化プラン』に基づき、教育や普及啓発、早期発見などの取り組みを進めるほか、地域の中に安全に安心して過ごせる居場所づくりを推進し、さまざまな困難を抱える子供や若者からワンストップで相談を受ける取り組みなどを進めていく」と述べました。

 2025年5月15日(木)

2025/05/14

🟩出産費用の無償化、政府検討会で大筋了承 範囲や方策など検討へ

 少子化対策の一環として出産費用の在り方を議論している政府の有識者検討会は来年度をめどに、出産費用の無償化に向けて、具体的な制度設計を進めるべきだという取りまとめの案を大筋で了承しました。これを受けて、厚生労働省は今後、無償化する範囲や方策などの検討を進めることにしています。

 政府は出産への支援を強化する方針で、昨年6月から有識者検討会で、出産費用に保険を適用すべきかどうかなど議論を進めてきていて、14日の会合では、これまでの議論の取りまとめ案が示され、大筋で了承されました。

 それによりますと、出産費用の平均が、出産育児一時金の50万円を上回り、妊産婦の経済的負担が増加しているとして、来年度をめどに、医療機関の経営実態にも十分配慮しながら、出産費用の自己負担の無償化に向けて、具体的な制度設計を進めるべきだとしています。

 その上で、無償化の方法として、一時金の増額などが考えられるとしています。

 また仮に、保険適用した場合、医療機関の自由度が効かなくなり収入が落ちるという指摘や、妊産婦の窓口負担が増えないよう自己負担割合をどう設定するのかなどの検討課題があるとしています。

 厚労省は、今後、社会保障審議会の医療保険部会で、無償化とする範囲や方策などについて、さらに検討を進めることにしています。

 2025年5月14日(水)

2025/05/13

🟩トランプ大統領、アメリカ国内の処方薬価格引き下げへ大統領令に署名

 アメリカのドナルド・トランプ大統領は、アメリカ国内の処方薬などの価格を引き下げるための大統領令に署名し、世界で最も安い価格で販売する国と同じ水準まで価格を引き下げると主張しました。

 アメリカのトランプ大統領は12日に大統領令に署名し、アメリカ国内の処方薬などの価格を引き下げるため、商務省とアメリカ通商代表部(USTR)による適切な措置を求めるとともに、関係省庁が連携し30日以内に価格引き下げの目標について製薬会社などに伝えるよう指示しました。

 トランプ大統領は記者会見で、「これ以上、大手製薬会社による価格のつり上げを許さない。しかし、そうさせているのはほかの国々なのだ。我が国は世界のどの国よりも薬の価格が高い。10倍も高い場合がある」と述べ、不満を示しました。

 そして、ヨーロッパ連合(EU)を名指しして、適切な対応をとらない国などには追加の関税を課す可能性を示唆するとともに、世界で最も安い価格で販売する国と同じ水準まで価格を引き下げると主張しました。

 トランプ大統領は先週、「地球を揺るがす進展がある」と述べたり、11日にはSNSで「最もインパクトのある発表になる」と投稿したりして、今回の発表への期待感をあおっていました。

 2025年5月13日(火)

🟩中国から輸入のスナック菓子から国内使用禁止の酸化防止剤、輸入業者に回収と廃棄命令

 千葉市は23日、同市美浜区の食品輸入業者「清水物産ホールディングス」が中国から輸入したスナック菓子から、国内で使用が禁止されている食品添加物が検出されたと発表しました。千葉市保健所は同日、同社に回収と廃棄を命じました。  違反のあった菓子は「フライドポテト うすしお味」(1袋...