遺伝性の原因により、男性に乳房の発育を認める疾患
遺伝性女性化乳房症とは、遺伝性の原因により、男性に乳房の発育を認める疾患。アロマターゼ過剰症とも呼ばれます。
常染色体優性遺伝性の単一遺伝子病で、エストロゲン(女性ホルモン)合成酵素であるアロマターゼ遺伝子CYP19A1の変異により発症します。全身の臓器や細胞で、アロマターゼが過剰に発現し、血中のエストロゲン(女性ホルモン)が上昇します。
血中のエストロゲンが持続的に高値となるため、思春期より前の小児期に発症し、症状が現れ始めます。大きな症状としては、高度で反復性の乳房増大、骨年齢進行による低身長、性欲の低下、精巣機能の低下などがあります。
乳房の増大の程度は、強い場合が多いのですが、比較的軽い場合もあります。一過性でなく、進行性に乳房が増大してくる場合、父親または兄弟に同様の症状がある場合には、この遺伝性女性化乳房症が疑われます。
男性の乳房の増大は、身体的問題だけでなく、精神的問題を引き起こします。そのため、社会的活動性の著しい低下を来すことがあります。
また、この遺伝性女性化乳房症は、女性にも発症することがあり、症状としては巨大乳房、低身長、不正性器出血などがあります。乳がんや子宮体がんが発生することも懸念され、不妊症の原因になることもあります。
遺伝性女性化乳房症の発生はまれで、かつ新しい疾患概念であるため、専門に診断や治療を行う診療科はなく、小児科、内科、外科、産婦人科、乳腺(にゅうせん)外科など複数の診療科で別々に取り扱われています。
遺伝性女性化乳房症の検査と診断と治療
小児科、外科、乳腺外科などの医師による診断では、乳房増大などの症状があり、かつ血中エストロゲンが高値があることから遺伝性女性化乳房症と判断します。確定するために、遺伝学的診断でアロマターゼ遺伝子CYP19A1の変異を検索することもあります。
小児科、外科、乳腺外科などの医師による治療では、症状が軽い場合はそのまま経過観察しますが、程度が強い場合、若年発症で低身長が予測される場合には、乳がんなどの治療に用いられているアロマターゼ阻害剤を投与することにより、過剰なエストロゲン(女性ホルモン)の産生を抑制し、症状の改善や発症の予防を図ります。しかし、遺伝子の異常によって生じる疾患であるため、根本的な治療はできません。
男児が女性のように乳房が大きくなることで身体的、精神的問題を生じている場合は、外科的手術を行い、肥大した乳腺の組織をほぼ全部、または一部を切除することもあります。
手術後にも、アロマターゼ阻害剤を投与し、女性化乳房の再発を予防します。
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